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バジリスク③

 バジリスクは推定四十メートル以上ある。あくまで守護獣(ガーディアン)であるはずなのに、立ち上る気配は幹部そのものに近い。だが、ヒロが来るまで耐えればきっと勝機はあるはず……!

「シンタロウ! 恐らくそのショットガンは不意打ちじゃないと当たらない! 俺がコイツと戦うからシンタロウは援護射撃をしてくれ! 頼む!」

「……ッ!? 無茶だ! コイツは……恐らく三眼隊の隊長にも並ぶレベルだ。視線だけで死ねるぜ、とんでもない圧迫感をビリビリ感じるぜッ! 一人で相手するなんて……耐えられねえぞ」

「いや、大丈夫だ。ヒロさんに助けを求めた。きっとすぐに来てくれる。希望があるから踏ん張れるんだよ、俺は十契の仲間達を信頼している。一緒に帰ろうぜ」

 俺はそう言って刀を腕で大きく回して血を払った。飛び散った飛沫の線が、俺達の進むべき道を示してくれているように見えた。

(バジリスクの体を切断するのはほぼ不可能……というか、コイツがどんな能力を持ってるのかも分からない。ここは、ただ防御だけを考えよう。死なずに耐えきれば勝ちだ)

 すると、バジリスクが持ち上げた首を真っ直ぐ俺に向かって伸ばして来た。これは、直線的な攻撃なのですぐに回避できた。だが、バジリスクは突っ込んでくるのと同時に薄紫の煙のようなブレスを吐き出していて少し吸い込んでしまった。ツンとした刺激臭が鼻を突く。

(やっべぇ、何の効果があるか知らないが絶対吸い込まない方がいいヤツだろこれは……)

 だが、体には何の変化も起きなかった。痺れや目眩は無く、至って正常。まあ、それなら今は気にしないほうが良いだろう。

 バジリスクは回避された頭をそのまま突き進めて壁を突き破ると、そのまま吸い込まれるように穴ボコだらけの建物内へ姿を消した。

(まずい。移動する時の振動が大きすぎて、これじゃあどこから来るのかも分からないな。しかも、相手は濃い緑色の体をしていて影から来られると見分けづらい……あの長い体を隠しながら俺に接近できる方法は何か……視界に入らずに近づく……まさか!!)

「リク! 上から来るぞ! 気をつけろぉ!」

 シンタロウのその言葉で上を見ると、既にバジリスクが俺を飲み込もうと牙を突き立てて斜め上から突進して来ていた。もう避けられる距離じゃない。俺は刀を振って、バジリスクの巨大な牙に叩き込んだ。

(重いッ!! だがここで退いたら潰される!! 全力をぶつけるしかない!!!!)

 俺はギリギリで耐えている刀の峰を片足で蹴り抜いた。すると、刀は見事にバジリスクの右牙を破壊した。痛みを感じるのか、バジリスクは長い体を仰け反らせて、さらにバランスを崩したのかヌルッと滑り落ちて来る。

(この体勢なら!)

 俺は少し下がって、落ちて来たバジリスクの上に飛び乗ると背中の上を尻尾の方へと走りながら背中を一心不乱に切り続けた。すると、羽飾りのように派手な尻尾が急にピッと立って針のような先端を俺に伸ばして来た。

(やべぇ、大きく振っちまったから対応できない!)

 俺は覚悟を決めて前方に茜力を集中させる。だが、シンタロウが援護射撃をしてくれた。それを回避するようにバジリスクの尻尾は引っ込んだ。俺はそれに合わせてバジリスクの体の上から降りる。そして、ひとまずテナント内に入って大量に空いてる穴を通り物陰に逃げ込んだ。完全に視界から外れたので、少しだけ息を整える。

(これからどうするか……アレを殺すのは不可能。だけど、かなりギリギリで戦ってるからこのままだと絶対に殺される。生き残るにはどうするか……勢いで逃げて来ちゃったけどシンタロウは大丈夫かな……)

“シュルルルルルルルル”

(…………ッ!? バカな、かなり遠くまで走って逃げたぞ。探知できる訳無い、偶然か?)

 物陰から少し顔を出すと、バジリスクは明らかに俺の居る所へと向かって来ていた。なぜだか分からないが、確実に居場所がバレている。逃げるしかないな……

 俺はなるべく音を立てないように走ってさらに奥へと逃げ込んだ。そして、落ちていた鏡の破片を使ってバジリスクの動きを観察した。すると、バジリスクは急に止まると頭をブルブルと震わせだした。

(……? 何をするんだ?)

 そう思っていると、折った牙が根本から抜けてニョキッと新しい牙が生えた。さらに、震えた勢いで飛んだ牙が古びた鏡のキャスター部分に当たり、鏡がズレて鏡越しにバジリスクと目が合った。

(おっと……これはまずい)

 バジリスクは鏡に写る俺を認識すると、狂ったように鏡へ突進した。それと同時に俺は全力で走り出した。背後から俺に向かって這う音が聞こえてくる。

 俺は何度も角を曲がりながら逃げていると、急に数メートル先の天井を突き破ってバジリスクが正面に回り込んで来た。そして流れるように蛇行しながら斜めに俺の方へ突進してきた。

「……ッ!!」

 俺は焦って、刀を防御するように全身に沿わせて一撃を受けた。牙の破壊を恐れたのか、口を閉じて突っ込んできたおかげで飲み込まれずに済んだが、そのまま俺ごと壁を突き破られたので一瞬息が止まった。

「グハッ……」

 俺は床に倒れ込んだ。そして周囲を見てみると、最初の場所に戻ってきていた。上でシンタロウと幹部の男が戦っているのが見える。

(ダメだ……衝撃が強すぎる。もう意識が……)

 そこで、天井の明かり窓が叩き割られて誰かが降りてきた。

「すまねえ、リク。遅れちまった」

「遅えよヒロ……イテテ…………」

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