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割狂の舞槍②

 何故か、俺の体が一瞬だけ矛の先端に触れただけでMDSが砕けた。俺の体からMDSの破片が剥がれ落ちる。纏っている時は全く見えないが、砕けるとそのガラスのような破片となって見えるのだ。そして、割られると俺は数秒間だけ力が抜けて動けなくなるというのをヒロとの訓練を通して学んだ。

(ヤバい……一回も攻撃できずに負ける……!!)

 だが俺の体はずっと立ったままの姿勢を維持できた。困惑していると、矛の柄の部分が俺の側頭部に直撃した。MDSで防いでいないので、脳に直に衝撃が行く。

(やっべぇ、何が何だか分からずに固まっちまった……)

 俺は倒れつつ受け身をして少し距離を取り、改めてMDSを張るイメージをした。そして、それを実行する。するとなぜか、破壊されたはずのMDSをすぐに張り直すことができた。どうなっているのかはよく分からないが、まあ割られていないならいい。

 少し離れて睨み合いをしていると、今度はサユさんが仕掛けてきた。変わらず手元でグルグルと縦に回しながら、腕で捲り上げるように攻撃をしてくる。だが、俺はそれを叩き落とすように真上から汎用属性を纏わせた刀を振り下ろす。激しく両者の刃が衝突する音が闘技場全体に響く。明らかにこっちの方が有利な姿勢……だが、俺の刃は無念にも弾かれた。汎用属性も、なぜか消えている。さっきから、説明のつかない事ばかりが起きている。これがサユさんの固有術と何か関係あるのだろうか?

「先に言っておくとさ……私の固有術って多対一の方が効率良く有利に使えるのよ。だから君にも勝ち目はある」

 俺は返事をする余裕もなく、後ろへ下がりながら弾かれた衝撃を消した。このままだと負けてしまう。だが、この状況を打破する策が全く思い浮かばない。……つまり、とりあえず攻撃するしかない。

 俺は鞘を地面に置き、スッと壁まで滑らせた。この人を相手にするのなら、機敏な動きは必須だろう。鞘が邪魔になる。そして、サユさんは俺の鞘を遠くにやる動作が終わるのを見た直後に突きを放ってきた。俺の一番苦手とする攻撃だ。案の定、刀で防ぎきれず左肩に矛の先端が突き立てられた。

“カチッ”

 MDSを張っていなければ、恐らくそのまま骨も貫いていただろう。MDSのおかげで、肩の皮膚に小さな穴のような傷ができただけで済んだ。まあ超軽症に見えるだけで実際はダメージが多少蓄積されているが。それにしても、さっき突かれた時に妙な音が鳴ったように聞こえた。気の所為だろうか。

 俺は突きで半身を引いているサユさんの脇腹を切り上げた。しっかりと当たった感覚があったが、少し血が滴っている程度だ。

「やるねぇ、この程度の傷なら医療班にすぐ治してもらえるから気にしないでどんどん攻撃して来な」

 サユさんはそう言って矛を半回転させると、斬り終わって前のめりになった俺の後頭部に矛の刃を刺した。これも、痛みはあるが脳髄を掻き回されるような重症ではなかった。そして同様にカチッという乾いた音が鳴ったように聞こえた。やはり気の所為ではない。確かにクリック音のようなものが鳴っている。

 俺は咄嗟に身を引いて体勢を立て直した。そして、さっき溜めた一回分の斬撃を飛ばした。サユさんは矛を左手に持ち替えながら回し始めて、矛の回転に巻き込まれた斬撃はそのままボッという音を立てて巻き込まれるように消えてしまった。

「嘘だろ……」

 そんな声が漏れる。だが、サユさんの攻撃は収まらない。重心移動を利用したステップで距離を詰めてくると、左で突くフェイントを入れた後に右へ持ち替え流れるように俺の左腕を突いた。再びカチッという音と共に少し痛みが走る。だが、俺もやられっぱなしじゃ気が済まない。

 俺は矛をガッシリと掴むと、その上に刀を滑らせるようにしてサユさんを切った。コレも決定打には欠けるようで、薄い小さな切り傷は入るが指が飛んだりはしない。期待していた様にサユさんが武器から手を離すこともしなかった。俺は一度バックステップで一歩身を引くと、前に踏み込みながら手首の回転スナップと腕の振りを利用した最速の斬撃を放った。だが、左手に持ち替えながら半回転させられた矛の柄で防がれてしまう。それでも俺は体を捻って弾かれた衝撃をキャンセルし、そのままサユさんの腹を刀で突き刺そうとした。

「あっぶない」

 サユさんはそう言って半回転しながら俺の顔面に後蹴りを叩き込んだ。あまりの衝撃で俺は闘技場の床の上を滑って吹き飛んだ。少しクラクラするが、まだ戦える。そう思ったが、手元に刀が無い。

「刀、落としちゃってるよ」

 矛をゆっくりとクルクル回しながらサユさんがそう言った。慌てて顔を上げサユさんの方を見ると、サユさんの足元に俺の刀が転がっていた。

「これ以上長引かせても意味なさそうだし……そろそろ締めようか」

 サユさんはそう言うと、右手に持った矛をグッと俺の方へ突き出した。もちろん数メートルの距離が空いているため届かない。だが、サユさんが矛を突き出した状態から上に振り上げると俺の体はそれに引っ張られるように上へ持ち上がった。さらにサユさんがもう一度矛を突き出すと、カーソルの様な矛の先端は三つに分かれて俺の左肩、後頭部、左手にまで伸びてきた。三つ同時になんとか防ごうとしたが、結局全てに対応できずに食らってしまった。今度こそ俺のMDSは粉々に割れてしまい、俺は地面に落下した。

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