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魅了する光と遅延路線②

 俺は刀を構え直してレノの方を見た。

「リク君、今回は俺も前に出ますよ。コイツは強敵です。安心してください、防御系の茜術を使って自分の身は自分で守りますから。」

 シンジさんが出張ってくるのはかなり珍しい。いつも冷静に物事を見ているシンジさんは、大体の戦闘を俺に任せてくれるんだが……シンジさんの方から手伝うと申し出たのは初めてかもしれないな。それだけヤバい相手って事なのか。

「さっきのは一体何だったんでしょうか? 固有術なのは分かるんですが……一秒だけ世界から切り離された様な感覚でした。これは厄介そうですね」

 レノがそう言うのと同時に、レノの足元にレールが既に敷かれているのに気付いた。そしてレノが一歩踏み出してレールの囲いから出ると、急加速した。しかし、レールが目に入った時点で薄々勘付いていた俺は構えた刀を思い切り振る。遅延はしていない。だがレノはスッと手の甲で頭部を守ると、以前に対術特化機動隊員がやっていた様なバリアを展開して防御した。

(なるほどッ! コイツの瞬間移動のような加速の正体か! 地面に敷かれたレールの囲いに入ると遅延する……そして、囲いから出ると蓄積された遅延が一気に解放されて帳尻を合わせるように加速するんだな。というかコイツ、杖を持ってないと思ったら付け爪に結晶の粉を混ぜてるのか。洒落た奴だな)

 俺は止められた刀を一度引いて、すぐに突きを出した。だが、今度は突きが遅くなっている。チラッと足元を見ると、レールで囲まれていた。そして、レノが防御していない方の手を俺の脇腹に叩きつけようとした。恐らく、近距離で何かしらの茜術をぶつけるつもりなのだろう。遅延を受けた状態では防ぎきれない……!俺は全身に力を入れて精一杯耐えようとした。

 すると、横からシンジさんがレノに飛び蹴りをぶつけた。レノは雨で浅い川のようになった地面を転がる。それと同時に俺はレールの枠から出て加速し、レノに斬り掛かった。だが、確かに首の位置へ正確に刀を振り下ろせたはずが、振り終わった時には既にレノは倒れていた所よりも少し奥の位置に立っていた。

 反応する暇もなく、俺の顔に蹴りが入る。しかし蹴りを食らった痛みやダメージよりも、なぜ攻撃が当たらなかったのかという事が頭の中にあった。

(瞬間移動か? 加速を使えばさすがに動いた様子が目視できるはず……でも今のは全く見えなかった。斬ったと確信した瞬間に消えたッ……! シンジさんのビームの時もそうだったな)

 クラクラする頭に片手を添えてレノの方を見る。だが、さっきまで居た位置にはいない。後ろか……そう思った瞬間、後ろからドゴッという何かを強く叩きつける音と、バシャッという何かが水に落ちた音が聞こえた。急いで振り返ると、太めのパイプを持ったシンジさんと倒れるレノがいた。

「こんなものですか。レスパリの幹部候補っていうのは」

 確かに……強いのはそうなんだが、幹部レベルかと言われるとそうでもない。ジェイキーの方が圧倒的に凄かった。

「あー……なんかあなた達思ったより強いんですね。やはり本気で行くべきでした」

 その言葉を聞くと同時に俺達はレノの方へ走り出した。そして、横を走っているシンジさんが太めのパイプに茜術を込めて振りかぶっているのが見えた。レノが間合いに入る。シンジさんは、四つ足で這うような姿勢のレノへパイプを振り下ろした。そんな時、俺が急加速してパイプとレノの間に入ってしまいモロにダメージを受けた。そして、そのままレノの方へ倒れたが、なぜだかやはりレノに触れる事はなかった。バシャリと跳ねた水が顔に当たる。

 倒れたままシンジさんの方を見ると、後ろにレノがいた。シンジさんもその事に気付いたようだったが既に遅く、加速した飛び回し蹴りを頭に食らってしまった。あまりの速さにシンジさんは側転のように縦で180°回転しながら倒れ込んだ。気絶しているのか、目の焦点が合っていない。

「足痛ったー、やっぱり慣れない事はするもんじゃないですね……私は力も弱いですし、加速が無ければ大した威力出ませんね」

(まずいぞ……一気に劣勢だ。相手の茜術を使ったカウンターを考慮して立ち回りつつ、足元のレールにも気を配るなんて不可能だ。しかもこの雨で、道が川みたいになってるせいで視認性が悪い。あの瞬間移動のようなものの謎を解明しないと俺達は負ける。)

 少し脳が揺れる感覚はあったが、俺は立ち上がった。相手の能力が分からないうちは、下手に手を出さない方が良いか……否ッ!! 俺は攻めるぜ! 消極的にやってちゃ消耗していって負けだ。

 俺は雨に浸された刀を拾い上げて、縦に軽く振り水気を払う。そして、レノの一挙手一投足を見逃さないように注視して斬り掛かった。足元は見ていないのでレールが張られているか分からないが、加速も遅延もされずに刀は半月を描くように白い残像を生み出して振られた。だが、やはり当たる直前で消えてしまう。

「またその攻撃ですか……芸が無いですね」

 後ろから声がする。また回り込まれたのか……!? 背後を確認する前に、俺の側頭部に衝撃と共に焼かれるように熱い感覚が走る。炎の汎用属性で攻撃されたようだ……倒れる際に身を捻ると、レノが追い打ちをしようと俺の顔面を殴ろうとしているのが見えた。反射的に目を閉じる。だが、俺の顔に拳が入ることはなかった。ゆっくりと目を開けると、そこにはレノの腕をがっしり掴むシンジさんの姿があった。

「コレさっきのお返しですッ!」

 そう言ってシンジさんは、困惑しているレノの顔を蹴り上げた。細身な体にあの蹴りは、かなり効くだろう。

「リク君、あの瞬間移動の謎がほぼ確定で分かりました。攻めましょう」

 ここまで読んでくださっている方いらっしゃれば、分かっている人も多いと思いますが……固有術の名前にはちょくちょく個人的に好きな曲の曲名を使っています。能力の内容もそれに合わせたようなものになっていますね。元ネタを知らなくても楽しめるように工夫はしていますし、明らかに造語な曲名は使用しないでおこうとは心がけていますが、不快になられた方いらっしゃったら申し訳有りません。

 ただ、完全にこの物語が終わるまで、曲名を使うのをやめるつもりはありません。

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