Madder Lesson End
「並行空間解放ッ!! M G F!!」
その刹那、視界が一瞬だけ暗転した。そして、次に見えたのは月面のように凸凹として真っ白な無機質な場所。空は暗く、宇宙のようだ。
「おめでとう、訓練は合格だよ。ここからはちょっとした体験学習と行こうか」
上から声が聞こえて見上げてみると、カイセイさんが上空に漂っていた。
「ここが俺の並行空間。今回は戦闘を想定していないからあまり大きく生成していないけど、生命力まで全部使い果たして生成すれば日本くらいのスペースが作れるよ」
「なんで……当たってない?? 確かに斬撃を至近距離で飛ばしたはず」
「そうだね、アレが直撃してたら流石の俺でも救護室送りだった。でも、俺の並行空間の性質は水金地火木土天海の『八大星』だ。その特性を利用して真上に思いっ切り跳んで回避した」
「へぇ……」
「今は『月』を使っているから月の特性が出てる。地球に比べて重力が弱いのを利用して高いジャンプで避けたんだよ。そして、こんなこともできる」
カイセイさんがパンッと手を叩くと、上に見えていた太陽らしき星がぐるりと今立っている場所の反対側の方へ回って隠れてしまった。並行空間全体が暗闇に包まれる。
「あのぉ……なんか暗くなると同時に寒くなりませんでした?」
「当然だよ。太陽が届いていない月面の温度はとても低い。とはいっても、さすがに本物と同じ温度をここで再現するわけには行かないね。俺も死んじまう」
そして、カイセイさんが地面に着くのと同時に再び手を叩いた。すると、景色が元のグラウンドに戻る。
「さぁ、これにて訓練は終了だよ。お疲れ様」
「全過程が終わったってことですか?」
「そうそう、多分もう終わりだったはず。俺に並行空間を使わせるまで追い詰めれたのならマイカさんやボスも納得してくれるはず」
俺の全身から一気に緊張が解けた。ふと、空を見上げると訓練開始直後から小雨だった空から光が差していた。嫌な湿り方をしていた冷たい空気を浄化していくように、その日差しは広がっていった。
「飯……行く?」
カイセイさんのお誘いにニヤリとした顔で頷いた。きっと奢ってくれるのだろう。
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「「いただきます」」
俺はアツアツのカツ丼を口に運ぶ。一仕事終えた後の飯はやっぱり一番美味い。
「すみませーん、ビールを……」
カイセイさんがそう言いかけた所で俺の方をチラッと見てきた。なので俺は、笑顔でグイッと飲むジェスチャーをして答えた。
「ビール二つお願いしまーす!」
「はいよー」
気付けばカイセイさんはもう食べ終わっていて、煙草に火を付けていた。
「ここ、吸って良いんですか?」
「ん? あぁ、いいぞ。半分屋外みたいな席だしな。それに、ここは法治国家ではあるけど荒れ放題の自由な場所だ。礼節を説いてくる奴には中指立ててやるのが筋ってもんよ」
……なんというか十契の幹部は、幹部らしくない人が多いな。前にも思ったが。
“ヴヴヴ……”
と、机に置いていた俺のスマホに通知が来た。
「ん? おぉ、マイカさんじゃあねえか。多分訓練終了の通知だぜ、良かったな」
軽く覗き込んだカイセイさんがそう言い、俺に煙を当てないように気を使いながら煙草を吸い続けている。届いたメールを見てみると、やはり訓練終了の知らせだった。なんというか、一人前として認めてもらえたような気がしてとても嬉しい。そして、もう一つ気になる情報が書かれていた。
([あなたが探しているハル君という人は、十契のシマでは見つかりませんでした。見落としてしまっているだけかもしれませんが、レスパリの仕切る地区に居る可能性が高いと考えられます]……だと!?)
「どうした、そんな顔して……」
どうやら無意識に顔に出ていたみたいだ。
「いや……俺の探している友達が、レスパリの仕切る場所に居る可能性が高いって…………」
「まあ、レスパリの方が持ってる領土は広いからな。しょうがないんじゃねえの? 大丈夫、レスパリだって一応は仁侠を重んじるジャパニーズヤクザなギャング組織だ。まあ違法な事もガンガンやってるが、そのご友人がレスパリにしょーもない事して目をつけられたりしなければ基本的には普通に暮らせるぜ」
カイセイさんは普通に言っているが、俺からすれば気が気でない。ハルが居なくなってしまったら、俺が腹を割って話せる人間はどこにもいなくなる。新しく交友関係を作ろうにも、あんなに仲良くなれる気がしない。不安だ。だが……
「カイセイさん」
「ん?」
「レスパリを十契が倒せば、領土は手に入りますか?」
「そりゃあね……勝った方が正義だから、負けた側は相手に全てを捧げなければならない。」
「決めました。俺、レスパリを根絶やしにします」
俺はそっと机に置かれていたビールを手に取り、そう宣言してグイッと飲んだ。
昨日張り切りすぎた反動で、今日は短めです……すみません。
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を場面の切り替わり等で使っていますが分かりにくくはないでしょうか?
ちゃんと伝わっていると良いんですが……




