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Madder Lesson!!⑥

「「いただきます」」

 カイセイさんに吹っ飛ばされて気絶してから約一週間が経過した。これは俺の判断じゃない。ヒロ曰く、このままカイセイさんとの過酷な訓練を続けていたらいつか死ぬらしい。だから、今はとにかく基礎訓練と任務を続けている。指導案件に二度出向いたが、もうチャーリィの時のような事は起こらなかった。

「なあ……カイセイさんの奥の手って何なん?」

「え、どうしたんだよ急に。もう挑む気なのか?」

「そう。もうそろそろ良いかなって」

「そうだな……リクもあれから結構鍛えたしそろそろかもな」

「で、奥の手って?」

「あぁ。俺も細かくは知らないんだが、高度な技術を持っている奇術師(マジシャン)は全員、『並行空間(ディメンション)』っていう能力が使えるらしいんだ。多分カイセイさんが言っているのもそれだろう」

並行空間(ディメンション)? なんだそれ」

「その術者が生み出したもう一つの小さい世界? みたいなものだ。どういった物なのかは個人によって違う。第二の固有術みたいな感覚だな。俺も当時の二眼、四眼と組んで行った任務で一度だけ並行空間(ディメンション)に引き込まれた事がある。どこまでも続く広い螺旋階段だったな。真ん中に大きな穴が空いてた。二眼は生き残ってそのまま今も同じポジションにいるけど、四眼は並行空間(ディメンション)で死んだよ。ずっとこっちの世界で戦っていれば間違いなく全員生きて帰れたはずだったのに……まあ、そんだけ強いってことだ。気ぃ付けろよ」

「おう。任せとけ!」

 俺は飯を食い終わると軽く首を鳴らす。刀を取り食器を戻した。そして、カイセイさんの家に向かう。うちの組織は、自宅に住むか組織の建物に住むか選べるのだ。幹部は殆ど、自分の家に住んでいる。

「おぉ、リク君。ここに来たという事は……?」

「はい。もう準備は万端と判断いたしました。改めて、訓練よろしくお願いいたします。」

「そうか……じゃあ、またあの場所に集合で」

 カイセイさんはそう言うと一旦自宅に引っ込んだ。俺は朝焼けで蒸発していくアスファルトに染みた昨日の雨の香りを感じつつ、半端に荒れたビル街を歩いて組織の建物に向かった。毎度思うが、組織の建物に行く度にちょっとした山を登る必要があるのダルすぎる。

━━━━━━━━━━━━━━━一時間後━━━━━━━━━━━━━━━

「じゃあ……始めようか」

「はい!」

 俺のその一言で一気にグラウンドの空気が張り詰める。カイセイさんは杖を振り上げて、魔法陣を上空に三つ展開した。そこから火球が連射される。俺は冷静に刀の刃部分にのみ水を纏わせて火球を斬り落としていった。

「流石に、君も成長しているね! 殺す気で掛かって来なよぉ!!」

 正直、ここまで苛烈な攻撃が最初から来るのは想定外だった。だが、ずっと基礎を積んできたおかげかかなり動ける。

「そろそろ使うかー……『凶星(バッドメテオ)』」

 すると、地面を這う球が二つと空中を飛んで向かってくる球が一つ出て来た。

「落ち着け……軌道をよく見るんだリク君。そうすればきっと避けられる…………」

 カイセイさんの呟く声を聞き、俺は一旦止まって軌道をよく見た。

(蛇行している……地面を這う球の方が速くこっちに来てるな。ん……?そういえば前回は球と球が衝突したら爆発したよな。単体じゃ爆発できないのか?球を複数個全部思い通りに動かすことはできないのか……それを踏まえて見るとあの軌道、もしかして……)

 俺は試してみることにした。一番先頭で動いている球だけに意識を集中させて動きを見る。そして、刀を投げて球を地面に固定させた。すると、他の二つの球はそれに吸い寄せられるように動いた。接触すると、予想通り爆発する。

(汎用属性で刀を保護しといて良かったぜ……予想は大当たりみたいだな)

「理解したみたいだね。そう、俺の凶星(バッドメテオ)は複数個で運用する場合、親機となる球以外は意図的な制御ができない。子機は親機の引力に引き寄せられるように飛んで、それぞれが接触すると爆発する。正解だよ、リク君」

 となると、もう特に大きな障害となるものは無いだろう。ただ、最も怖いのは十〜三メートル程度に近づいた時だ。中距離戦は俺の圧倒的不利。茜術を速射されたら反応できない。だが、近づかないでそんな事だけ考えていたってどうしようもない。

 俺は突き刺した刀を抜くと、もう一度走りだした。カイセイさんとの距離は約二十メートル。なぜかカイセイさんは術を打ってこない。なぜだか分からないが、今はとにかく走るしかない。そしてカイセイさんとの距離は十メートル程までになった。

(ここで勝負に出る!!)

 俺は姿勢を少し低くすると、全力で地面を蹴り加速した。茜術による基礎身体能力の向上をフル活用して一気に距離を詰める。そのまま俺はカイセイさんに刀を振る……はずだった。

「焦ったね、リク君。足元が見えていない」

「……ッ!?」

 足元には小さな魔法陣があった。

(ヤッベェ! しくじった)

 魔法陣から急速に木が生えて伸び、俺を絡め取った。

「いやー、惜しい惜しい。過去最高記録かな? リク君」

「そうっすね……でもカイセイさん。あなたも気付いていないようだ」

「……? どういう事だ」

「アンタが最初にバンバン火球打ってくれたおかげでぇ……逆転できますわぁ!!」

 そう。俺の斬撃は序盤の火球を斬り落とす工程で溜められていた。俺とカイセイさんの距離は約三メートル。届くッ!!

 俺は刀を振って斬撃エネルギーを飛ばした。カイセイさんに触れる……その瞬間。

並行空間(ディメンション)解放ッ!! M G Fムーングラビティ・フィールド!!」

 その刹那、視界が一瞬だけ暗転した。

現実を直視しすぎて失明しそうだったので一日で二話書きました。

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