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Madder Lesson!!④

「すまないハマ爺、少々手荒にやっちまった」

「良いってことよ、気にするな。ああいうバカは一度正面から潰さんとな」

 俺は一仕事終えた気でウイスキーをテーブルに置き、ゆったりと椅子に座り残りの料理を食べた。そして、まだ深い青色が底の方で輝いているC-ABYSSを飲み干す。食欲が満たされたことで、じわじわとまた眠気が来た。不意に欠伸が出る。

「リク、明日の訓練だろ?もう帰って寝直した方が良いんじゃねえの? ここは俺が払っとくから、帰ってても良いぞ?」

「マジで……? 助かるわ。人生初の酒だしな……結構眠いわ」

「ほぉ……うちの酒が初とはなんともありがたいですなぁ」

 ハマ爺は嬉しそうに微笑みつつ、ヒロの分の酒を作っていた。実はここに来る前に缶の酒を飲んでいたことは内緒にしておこう。

「じゃあ、ありがとうございました! 美味しかったです!」

 俺は刀を腰に戻すと、元気よく挨拶をして店を出た。僅かに夏を感じさせる夜風は、俺の酔いを優しくほぐしてくれた。まだ道路にはイキリのアホ男が倒れていた。気絶しちゃってるみたいだが、まあどうでもいい。調子に乗った方が悪いのだ。

 俺は良い気分のまま自分の就寝スペースにまで帰り、ゆっくりと眠りについた。途中、深夜の娯楽室の中からショウタさんの声が聞こえたような気がしたが、触れないでおこう。

“ピピピピピピピピッッ!!”

 念の為にセットしておいたアラームで目を覚ます。二日酔いはしていないみたいだ。俺は刀を手に取ると、眠い目を擦って食堂まで歩いた。そしていつものように朝食を食べると、約束のグラウンドまで向かう。山の上に建てられていた学校なので斜面に沿うように作られていて、予定地のグラウンドは行く途中で上から見下ろせるようになっていた。見てみると、既に誰かが待っているようだ。急いで階段を降りてグランドに出た。

「あのぉ……」

 俺はグランドの観戦席の様な位置にある石段に座っていたオッサンに声を掛けた。

「お、君かな? 今日の訓練を受けるのは」

「はい、リクって言います。よろしくお願いします」

「俺の名前は伊那伏(いなぶし) 海星(かいせい)。三眼を務めているよ、よろしくね」

 優しそうなオッサンで良かった……

「早速だけど今日の訓練の細かい内容を伝えるよ。まず、俺が茜術で攻撃をするから君にはそれを避けるか捌くかしてほしいんだ。そして、俺に一撃を入れるか奥の手を使わせるまで追い詰めれば合格。君の勝ちだ。」

「奥の手って……?」

「そりゃあ奥の手だから言えないよ。まあ、ソレを使えばすぐに分かるよ。じゃあ、始めようか」

 オッサンはそう言うと、手元に置いてあった長い杖を持った。

「俺はグラウンドの端まで行く。そこから合図を出すから、まずは俺の所まで来れるかを試そう」

 俺は無言で頷くと、カイセイさんが端まで歩いていくのをじっと見ていた。一見、普通のオッサンに見える。というか、幹部は一般人に見える人が多いな。普通の若者、OL、オッサン、一貫性は無いがどこにでも居そうな人達ばかりだ。と考えていると、カイセイさんから指示が出た。

「じゃあ始めるよーーーー!!!! もう準備できてるからいつでもかかっておいでーー!!」

 その合図を聞くと同時に、俺は刀を抜いて全力でカイセイさんの方へ走った。そしてカイセイさんが杖の先端を軽く地面に擦るように振り上げると、黄色い炎が舞い上がった。さらに、舞い上がった炎が数個の火球になって俺の方へ飛んでくる。簡単に見切れる速度ではあるが、念の為に俺はたまに左右にステップで回避しながら走った。

「うんうん、ずっと直線で向かってこないのは良いね。でもそれだけだとねぇ……」

 カイセイさんは、やれやれといった表情を浮かべ杖を素早く真横に振る。すると、扇状の炎の刃が生成されて広がる。切れ目は無い。

(やばい……! 範囲が広すぎる!!)

 俺はなんとかスライディングして、炎の刃を避ける。そして再び走り出した。

「対応力も悪くない。サユ君の所で鍛えられたのかな?」

 想定内といった表情でカイセイさんは呟く。そして、俺の方へ袈裟斬りをする様に杖を振った。すると今度は、ピンポイントで俺の方へと炎の刃が飛んできた。しかも、微妙に上下に揺れる不規則な動きをしていた。

(まずい……これは避けきれない。あんな高温そうな炎を刀で受け止めて大丈夫なのか!? あ、そうだ!)

 俺は咄嗟の判断で刀に水の汎用属性を纏わせて炎の刃を受け止める。ジュウウウゥゥゥゥ……という音を立てて、炎の刃はじわじわと鎮火していった。契約試験がここで活きてくるとは……

「やっぱり良い対応力だね。あとは視野をもう少し広くしようか」

「え……?」

 何を言っているか分からなかった。だが、その直後に俺の背後から轟音が鳴り響くそして見当違いな方向へと吹き飛ばされた。

「これが俺の固有術『凶星(バッドメテオ)』汎用属性を凝縮させた球を自在に操って爆発させたり抉ったりすることができる。ちなみに、最初の火球は固有術じゃないよ」

 カイセイさんは落ち着いて説明しているが、俺は衝撃で立ち上がれないでいた。完全に想定外の背後からの攻撃。一対一で相手が前にいるという状況のせいで、攻撃は前からしか来ないという短絡的な思考に陥っていた。恐らく、俺が炎の刃に気を取られている隙に属性球を地面に這わせて俺の後ろに回して爆発させたんだろう。

「あぁ……結構効いてるみたいだね。立てるくらいに回復したら自分で立ってね。もう一回戦やろう」

 ヤバい。この人強すぎる。

ちなみに、ハマ爺が出す「C-ABYSS」にはモデルがあります。

十年弱前に、婆ちゃん家に家族で行った時外食で一度だけ行った恐らくチェーン店の焼き鳥屋?焼肉屋?のノンアルメニューの中にあった綺麗な青色をした飲み物が元ネタですね。それの味があまりに美味しくて……(作中通り、濃いラムネのような味わいでした)商品名も忘れてしまいましたが、味だけは今でもずっと忘れられずにいます。誰か知ってる人いたら教えてくださいお願いします。あと一度で良いからあの味が飲みたい……確か当時既にタッチパネルで注文するタイプの店でした。


※ダブル伊那伏を修正いたしました

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