最初の任務②
「アイツの部屋は七○二だ…まず俺がドアを叩く。そんで返事が無ければ強行突破して制圧だ。OK?」
「OK!」
“ドォン!ドォンドォン!”
ショウタがドアを三回叩いて少し後ろに下がる。と同時にドアが勢いよく開けられ、ショウタは七階の廊下から突き落とされた。落ちるショウタに気を取られた一瞬、俺はショウタを突き飛ばした男に体当たりされ倒れた。さらに倒れている俺に走ってくる。手には包丁が握られていた。俺は刀の鞘を投げ飛ばすように抜いて、鞘を男の顔面に直撃させた。男が鼻の辺りを抑えて軽くうずくまった隙に、俺は刀を男の頭部に向けて振った。今回は指導とやらなので、峰打ちだ。多少苛立ちはあるが、斬ったりはしない。男は脳震盪を起こしたようで、
「うぅ…」
という声で呻いて倒れた。
「リク、そいつメインターゲットじゃないかもしんねえぞ?」
「あ、ショウタさん…大丈夫そうですかぁ?」
「あぁ、問題無え。」
そう。ショウタさんは『守護獣』の能力者。白いフクロウの『守護獣』を持っている。かなり大きな見た目をしているので、人を一人持ち上げることぐらい簡単なのだろう。
「で、ソイツの顔一瞬見えたけどさ……顔が全く違うしまだ意識があるはずなのに茜術使わないってことは多分ソイツは俺らの標的じゃないぜ?」
「え?じゃあ誰が…」
そこまで言うと開きっぱなしになっていたドアの中から、もう一人の男が出てきた。
「チッもう居場所バレたのか。お前ら十契の刺客だろ?」
「リク、コイツだ。今回のターゲット。」
特に特徴の無い男のようだが…確かに顔は一致していた。
「念の為にパシリを雇っといたが……マァジで使えねえなコイツぁ」
そう言うと男は、さっき俺が峰打ちした奴の腹を軽く蹴った。
「お前…何者だ?刺客がどうのと言ってたが、俺達は単にお前がウチのシマでやらかしたから軽く指導しに来ただけだぜ?」
と、ショウタさんが尋ねる。
「え…?あ、ヤッベ。余計な事言っちまった。」
そう言って男が左手で右肩を軽く掻く。そして服の中から少しだけ彼岸花の入れ墨が見えた。
「………ッ!!」
その瞬間、ショウタさんが『守護獣』から飛び降りて男に飛びかかる。
「リク、逃げろ!応援を呼んできてくれ!!コイツは……レスパリの幹部だぁ!!!」
ショウタさんが振り下ろしたナタは男の頭部に直撃する、そう見えた。だが、ナタは空を切った。
「…!?居ねえぞ!どこにも。」
そう、あの男は姿を消した前後左右上下全てに視線を移すが、見当たらない。
「びっくらこいたかぁ?これが俺の茜術だぜぇ…」
先程からずっと開いていたドアの中から声がした。そして、ヌッと男が出てきた。
(どういうことだ?瞬間移動か?いや、それなら背後を取って殺すはず…なぜそうしない?)
「指導ってことはさ…お前らアレだろ?俺が昨日調子乗ってたガキを汎用属性でボコボコにした件で来てんだろ?道理でショボい連中なわけだ。俺ぁ最強の組織。『高潔の紅華』幹部の明平ジェイキーだ。親が片方外国人なんでな…で、俺を止めたいならもっと上の奴連れてこねえと無理だぜ?ま、俺が潜入してるのバレたらダルいから殺すんだけどさ。」
そこまで言うとジェイキーは俺を標的にしたようで、急に俺の方へ詰め寄ってきた。だが、俺は至って冷静に対処する。ジェイキーが放った拳を少し腰を落として避けて、下半身に溜められた力を解放するように刀を振った。だが、これもまた空を切る。
「う〜ん…気分が良いな。最高だぜ。」
視線を上げると、ジェイキーはドアを出てすぐの場所に立っていた。
「これはもちろん、俺の固有術の効果だ。『動再生』と名付けている。」
分からない。一体何が起きているのか。俺は確かに、奴を袈裟斬りにできる位置に居た。そして、刀を振り下ろした。だが、当たっていない。俺が移動したのか、ジェイキーが移動したのか、はたまた誰も移動していないのか…
「俺はこの能力で幹部にまで登り詰めた。そういうプライドがあるんだよ。だから、今ここでお前らを全力で潰す。お前らは俺に指一本触れることはできない!」
そう言い終わる前に、ショウタさんが背後からナタでジェイキーを突き刺そうとした。体ごと前に押し出して突く。確実に殺そうとしている。だが、この攻撃も当たらない。ジェイキーがまた姿を消したのだ。ショウタさんとそのナタは、ジェイキーがいた場所を通過した。その直後、ジェイキーは再び同じ地点に立っていた。何事も無かったかのように。
「お前も…そうは思わないか?」
ジェイキーが右手をショウタさんの背中にかざす。どうやら、指輪に結晶が埋め込まれているみたいだ。『奇術師』なのか…?コイツは。
「オウルベルド!逃げるぞ!!」
ジェイキーが何かを放つその直前。ショウタさんはそう叫んだ。すると、待機していた。フクロウが動き出し、ショウタさんを掴んでジェイキーにクチバシで攻撃をした。ジェイキーは咄嗟にドアを閉めて中に籠もった。クチバシはドアに当たると、大きな音を立ててドアを歪ませた。
「リク!速く落ちてる鞘を拾ってくれ!!逃げるぞ!」
その声で我に返ると、急いで鞘を持ち刀を納めた。
「オウルベルド、行くぞ。」
ショウタさんの言葉に軽く首を立てに振ったフクロウは、片足に俺。片足にショウタさんを持って音も無く静かに夜の街の空を滑って行った。
申し訳ない……水曜日と木曜日は投稿するの厳しそうです。当方、学生なので平日は結構忙しいんです……(泣)どうかご容赦ください。お願いします。




