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契約

「俺の手に…いつの間に?」

「さあほら、注意事項の欄とかもしっかり読んでくれないと…」

「あぁ…はい。すみません」

 これはきっとパフォーマンスの一環だ。圧倒的な実力差を見せつけるためのパフォーマンス。現に、俺は今何が起きたのか分からなかった。一瞬の恐怖が、水に垂らした絵の具の様に全身に広がる。

「お前……なぜ今全身に茜力を巡らせた」

 マイカさんが刀を握り込む。いつ抜いて斬りかかってきてもおかしくない。

「へぇ!? い、いや……違うんです……!」

 ボスも怖いが、マイカさんも超怖い。特にボスが絡むと本当に。

「マイカ、やめな。今のは俺がおどかしたのが悪い。ただの防衛反応だよ。リク……すまないね」

「いや、いいんです。気にしないで、ハハハ……」

 俺は苦笑いをしつつ、気まずさを誤魔化すように契約書に目を通す。

(特に変な内容は無いな……)

 俺は念の為にじっくり時間をかけて二周読んだ。そして、サインを書く。

「これで良いでしょうか?」

「うん。横の判は俺が押す奴だから、気にしないで良い。それにしても……こんなにじっくり読んだ人は君が初めてだ」

「あはは……すみません。では、失礼しますね」

「うん。外に部下を待機させてあるから、その人に施設内を案内してもらってね」

「それはどうも……お気遣いありがとうございます」

「じゃあ、今日はもうゆっくりして良いよ」

「ウッス」

 そう良い俺はドアを開けて部屋から出た。

「あ゛あ゛あ゛ぁーー……緊張したー…………」

 優しいのは分かる。実際、悪意は感じなかった。でも圧倒的な実力差が分かるから怖えよー…

「君がリク君……かな?」

横から声を掛けられる。元気で明るい女性の声だ。

「はい……もしかしてあなたがボスの言っていた……」

「あー、そうそう! アタシの名前は松香 結衣。一応この組織の二眼だよ。よろしくねー」

「よろしくお願いします……って、二眼!?」

 この明るい女子大生みたいな人が二眼だって言うのか……?

「そうだよー、全然そんな風に見えないよね……ハハハ」

「二眼ってことはこの組織でボスを除いて二番目の強さってことですよね!?」

「惜しい。ボスを除いて一番強いのはマイカちゃんだから、アタシは三番目かなー」

「そうなんですね……」

 ダメージジーンズに浮き出る太もものライン、少しピチっとしたシャツ……整った顔立ち……谷間の見えるデッカイ胸……いかんいかん。ユイさんに失礼だ。

「じゃあ案内するよ、付いて来てー」

 まず、俺は中央棟四階から、そのまま隣の棟まで小さな渡り廊下で移動した。

「ここが南棟。この階と一個下の階は教室だった所にベッドとか仕切りとか置いて、隊員の寝る場所を確保してるの。リク君もここら辺で寝るはず」

「そうなんですねー……」

「じゃあ、この一個下の階は大して変わらないから飛ばすね。二階行くよー」

「はい」

 二回に降りる。途中で何人かとすれ違ったが皆ユイさんの足に目が行っていた。

「ここは主に救急医療に使われてるね。ズッタズタで帰ってきたらまずここに運ばれる」

「そうなんですねー……」

「じゃ、どんどん行くよー」

そう言うとユイさんは下に降りた。

「ここは娯楽室が揃ってるよー。右側の突き当りにある教室では賭けアリのゲームを。その一個手前は賭けナシのゲームを。トイレと階段挟んであっち側は電子機器を使うゲームなんかが使える部屋。一番奥は……その他だよ」

「その他?」

「いや……そのぉ……午後十一時から使えるようになるんだよ。で、ほら……男女がペアで入って行っちゃったりしてさ……? 後は察して欲しいなー……なんて。」

(この人……ピュアだッ!! 顔合わせてくれないから確証はないが耳が真っ赤だ! こんな純粋な推定女子大生がこの世にいるのか!?)

 俺はその後の案内でもずっとそんな事ばかりを考えていた。そして紹介が終わると、そこそこな時間帯になってきたので、大会議室を贅沢に改造した風呂に入り夕食を食べるために食堂へ行く。食堂に着くと、ヒロがいた。

「ヒローー! 一緒に飯食おうぜ」

「あ、リクか。おう、あっちのテーブル席で待ってるぞー!」

「了解ーー!」

 俺は食券機で煮込みハンバーグ定食を選び、カウンターで引き換えてからテーブル席へと向かう。するとそこには、ヒロ以外に二人が座っていた。

「この子が……新入り?」

「良い面してるぜぇ……さすがヒロさんが直接試験した男だ」

「え? あぁ……ありがとうございます」

「おう、リク。悪いな…コイツらは俺の隊の奴らだ。不躾だけど悪いやつじゃねえから安心してくれや」

「お、おう。分かった」

(そりゃあそうだよな……なんならヒロにとってはこの人達との付き合いのほうが俺よりも長いだろう)

 俺はテーブル席に座ると、そんな事を思った。

今回は、22時ちょうどぐらいから書き始めたんでそこそこ急ぎめでした…どうしても一日一話ペースで更新したいという意地があるんです…!!文字数がいつもよりも少ないのは許してください……。

毎話の更新が日によって一時間前後ずれるので、もし投稿を待って遅くまで起きてくださっている方がいらっしゃったら申し訳ない。

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