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試験終了

「そろそろ起きな、リク。」

「あ……あぁ…」

どうやら、あまりの疲れと緊張から気絶したみたいだった。俺はゆっくり起き上がると、腕章が無いことに気付いた。

「腕章ならマイカさんが持っていったぞ。もう客じゃねえってさ。それより、飯行こうぜ。つっても食堂すぐ下だけど。」

「そうだな。」

俺は、ヒロと一緒に下の食堂に降りた。そして食券機に向かう。

「リク、何食う?俺が奢るぜ。合格祝いだ。」

「マジか、じゃあ……カツ丼!大盛りで!」

「なら俺もそれにしよ。」

機械から出てきた食券を持ってカウンターまで行く。厨房では、若い男女が二人ずつ働いていた。

「ミッさん。カツ丼大盛り二つお願いねー」

そう言ってヒロは食券を女性に渡した。

「はいはーい、ん?横の子、お客さん?」

「もう客じゃねえ、さっき試験に合格したからな…もうすぐ契約者になるぜ。」

「へぇー、凄いねぇ。じゃ、お祝いに普段より量増やしてあげる。リンタロー!!カツ丼大盛り二つ!一個はさらに盛っちゃってー!」

「了解!」

随分と元気の良い掛け声と同時にカツ丼が爆速で出来上がる。超美味そうだ。

「はいよ、カツ丼二つ!」

「ありがとよ。じゃ、テーブル席行くぞリク。」

美味そうなカツ丼がテーブルに並ぶ。

「「いただきます。」」

お互いに限界まで空いた腹を満たすべく、勢いよく食べる。ヒロが先に食べ終わり食器を戻しに行くと、入れ違いの様に俺の横に一人の男が座ってきた。見た目は俺より少し年上程だ。

「君ぃ…新入り君?」

「え…あぁ。そうです。」

「じゃあさ、何で挨拶しに来ない訳ぇ?オイ。ナメられちゃあ困るんだよ…分かるだろぉ?なあ。」

「……何が言いたいんですか。」

あっヤバい。あまりにも疲れてる時にクソしょうもない輩に声掛けられたストレスで、つい反論しちまった。

「元気なのは良いこと。だけど相手を間違えちゃあいけないよねえ?」

そう言うと男は、テーブルの上の俺の左手首にスッとナイフを突き立てる

「茜術使って疲れてるお前を殺すなんて簡単だ。なあ、それくらい分かるだろ?」

俺の耳元で男がそう呟く。何だコイツは?ガチでヤる目をしてやがる…どうなってんだこの組織……

「よう十眼。俺の受け持ちになんか用か?」

背後からヒロの声…助かった!男はナイフを袖口に隠して振り返り、明るく振る舞う。

「おーう()()()()ヒロ君じゃあないか…どうした?何か用か?」

「スッとぼけるな。今、また脅迫してただろ。」

ヒロがそう言うと、男の貼り付けたような笑顔が消失する。そして、手をヒロの肩に置くようにしてナイフをヒロの首元に突き立てた。

「なぁ…冷静になろうぜ?俺は十眼。お前は十一眼。つまりどっちが立場が上か…なぁ?お前でも分かるだろ…?調子に乗ってっとブチ殺すぞゴラァ。」

(コイツゥッ…!周囲の構成員達には聞こえない程度の声量で言ってやがる…!!)

どうするか…俺も加勢すべきかと迷い、四尺刀に手をかけた。だが、その必要なかったみたいだ。

「みみっちぃ脅しばっかやってんなよ!!」

ヒロはそう叫び上着の内側から拳銃を取り出すと、男と少し距離を取ってから銃口を向けた。

「俺はテメェとは違う!ヤるんなら正々堂々と真正面から相手するぜ!隠したりはしないッ!」

「野郎ォ…殺されてえのか……?」

「なんだお前?闘技大会で一度だって俺に勝てたことないだろうが。眼の番号がそのまま強さを表してる訳じゃないのはお前だって分かってんだろうが。」

「………ッ」

「分かったらさっさとナイフを下ろして回れ右。食堂を出ていけ。」

ヒロは一切男から目線を外さない。しばらくの睨み合いの末、男は舌打ちをして去っていった。

「みんなすまない!気にしないでくれ!」

ヒロは食堂にいる十数人の構成員に向けて大声でそう言うと、さっきと同じ俺の向かいの席に座った。

「気にしないでいいんだ、アイツは……頭がおかしい。お前が契約した後どこの隊に行くから分からないが、あのスカスカ脳味噌野郎の所には行かないように俺から頼み込んでやるよ。」

「ああ…ありがとう。」

俺はゆっくりとカツ丼を完食すると、席を立つ。

「そろそろボスの部屋に行くか…」

俺は食器を厨房に戻して、中央棟の階段を登りボスの部屋まで行く。やはり扉を開けるのは緊張する。あのひとの威圧感だけは段違いだ。

「すまないが…俺が来れるのはここまでだ。契約に立ち会うことはできない。そういう決まりだ。」

「マジか……しゃーない。俺一人でなんとか頑張るぜ。」

「おう。って言っても、もう何か試される事なんてないと思うけどな。」

俺は思い扉を開ける。薄暗い部屋の中……ボスは居た。そして隣にはマイカさんが立っている。

「試験合格おめでとう。そこの椅子に座ってくれ。」

少し冷たい印象を受ける声。俺は言われるがままに手近な椅子に座る。目の前には会議用のような大きな机があり、対面する位置にボスが座っていた。そしてマイカさんが腰の刀に手をかけてボスの横で俺を見張っている。

「大丈夫、そう緊張しないで。マイカは護衛だ。君が妙な行動を起こさない限り何もしない。」

そうは言われても威圧感が凄い。本当にこのボスのことを慕っているんだろう。恐怖で支配されていたり、利害関係の一致なんてものじゃあ到底実現できない一体感だ。

「では早速、この書類に目を通してほしい。問題ないと思ってもらえたら、一枚目の下の所にサインしてね。ペンは既に君の手の中にある。」

(へ……!?)

右手をふと見ると、そこには高級そうな黒光りするペンが握られていた。

「さぁ…書類を呼んで。」

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