再会
妹は剣を振って騎士団長と模擬戦をしている。
団長はただ避けているだけで攻撃する気配がない。
よく見るとこれは模擬戦ではなくただの稽古だった。
妹は突きを主体とした剣の使い方をしていた。それなのに持っている剣は長剣のツーハンデッドソードだった。
突きを主体としたいならツーハンデッドソードではなく。エストックかレイピアを使えばいいのになぜそれ使っているのか?
騎士団長が間違えて持たせるとは思えない。ではなぜか?
妹の剣をよく見ると私が城から出る前まで使っていた剣によく似ていた。
もしかするとあの剣は私が昔使っていた剣なのかもしれない。だが、自分に合わない剣を振っても意味がないし体を壊す。
止めるべきかと悩んでいるところで「そこにいるのは誰!?」と声をかけられる。
それと同時に妹の訓練は中止した。
私は御呼ばれされているようなので受けることにする。
「すまない。ただ見ているだけだったんだが」
「ただ見ているだけなら熱心に人の顔や剣を見るとは思えません。もう一度聞きます。貴方は誰ですか」
私を誰かと聞いてくるのは私の母、元皇妃閣下だった。今思うと両親の名前って何て名前だっけ?
彼女は私のことを誰かと聞いてくるが、彼女には私が誰だかわかっているように見えた。
「自己紹介を求められているのかな?私の名はユースティアナ・アークヴァルMK=2といいます。アーザンブルグ皇妃様」
母は一瞬、目のふちが上がった以外何もない。
「ユースティアナさんですね。ティアと呼んでもよろしいでしょうか」
「ご自由にどうぞ」
「ありがとうございます。ティアさんもご存知である通り、私は元アーザンブルグの皇妃、エリザベート・アーザンブルグと申します。ふふ、こうやってティアと会話するのは久しぶりね」
母は私に自己紹介した後、扇子を取り出して口元にやった後、小声で何か言っているように見えた。
それとどことなくうれしそうにも見える。
やはり、一目見て私との関係性を見抜いてるとみて間違いないかもしれない。
「お聞きしますティアさん。貴女はなぜ二人のことを見ていたのですか?」
「ただ声が聞こえたのでこちらに来たまで。ほかに何もない。まぁ、ただ、今ここにいる理由ができたかな」
「ここに理由とは・・・、いえ、聞くまでもないですね。私どもがなぜここにいるのかですね」
母のエリザベートは確信的に言ってはいるが、私がここにいたくなったのは、
「いえ違います。皇女様の剣の選びが明らかに間違えているからそれ指摘しようと思ったまで」
「ほう。一目でそれを見抜くとはそれなりに実力はあるようだ」
ここで休憩がてら母のそばまで来ていた騎士団長夫人が会話に入ってきた。
「皇女様はなぜ?ツーハンデッドソードを使っている?戦いからしても明らかに間違えているとしかいいよ言うがない」
「簡単な理由ですよ。エルレインが持っている剣は姉のユースティアが練習用に使っていた剣なのですよ。あのこにはあの剣が姉の形見でも持っているのかしら?」
「ただあの剣はユースティア様が持っている時から刀身が錆びついている。これから冒険者になろうとされているのにあれを持ち続けてはだめだ。早く別のものを持ってもらいなれてもらわないのに頑なに拒否されて困っている」
エルレインが使っていた剣は、私が昔練習用に使っていたツーハンデッドソードだったか。
頑なに拒否して別の剣を持とうとしないか・・・、エルレインは私の影でも追っているのだろうか?
考えても意味のないことか、それにエルレインも冒険者になろうとしていたのか・・・、私を探そうとしているのか?
これは聞くなりするしかないか。それにしても、
「それにしてもただ通りすがりにそんなこと話していいのか?」
「あら、確かに貴女は通りすがりですが・・・、“初めまして”ではないでしょ。昔は何度も会話しているのですから話したのです」
母はやはり私の正体に気がついていた。
他は私の正体に気づいている様子はなし。
それどころか騎士団長夫妻以外、皇妃と面識がある少女がいることに驚いていた。
どう説明したものかと思ったやさきに母はある提案を私にしてきた。
「ちょうどいいかもしれません。貴方にお願いあります」
「なんでしょうか」
「今更、かしこまらなくていいのですよ。貴方と私の仲ではないですか」
かしこまるなというが、“アーザンブルグ皇妃の顔を知っているだけの一般人”と“すでに面識があり会話したことがある関係者”とでは対応間違えると周りの奴に何されるか、わかったものではない。
それなのにかしこまるなとは無茶な!
「貴女にエルレインと一度、剣による模擬戦をしてもらいたのです」
この人、またとんでもないこと言い始めたよ。そのせいか正気かと疑われている始末。
エルレインは母の提案を考え中ときた。
これを受けるべきかそれとも、
「貴女のことですから、ボーゲンに来た理由は冒険者になるためと思っています。ただし、今の貴女では身元保証人がいなくて冒険者になれないのではなくて。違いますか?」
冒険者になろうと思ったのは魔王との戦いの後で前々から思っていたわけじゃないのにな。なんかすべて看破されそうで怖い。
「なんで冒険者になるのに身元保証人が必要なんだ?そんなものなくても冒険者にしてくれてもいいだろうに」
「簡単な話、犯罪者を入れないためですよ。ほとんどの人は出生国の戸籍に名前があるから身元は保証されていますが、そうでない人は犯罪者かもしれないと疑う必要がるからです。それで受けてもらえますか。受けてもらえるのでしたら私が身元保証人になりましょう」
国境を越えるためには冒険者になるのが一番手っ取り早いし、ほかの方法は今の私では使えない以上、母の提案を受けるしかなさそうだ。
「わかりました。受けましょう」
「貴女なら受けてくれると思っていましたわ。エルレイン、ティアさんと戦ってみなさい」
「頑張って勝ってみせるよ」
そう言いエルレインは離れていき広い場所で剣を構える。やっぱり構えを見て彼女が今持っている武器とは合わないと言わざるえない。
私も後を追い対峙しようと向かおうとしたとき、母が私に対して耳打ちをしてくる。
その内容に驚き、冗談で言っているのではと思い一度確認を取る。
だが、本人は正気だった。
私はそれを受け入れ、エルレインの反対側に立ち、ビームサーベルの刀身を出さず構える。
誰もが私の構えについておかしさを覚えた。
一度模擬戦を始める前に一度確認を入れるが私は気にしていないのでそのまま進めるようにいう。
ここにいるほとんど人が真剣な面立ちで見ているのに対して母だけがただ微笑んでいた。
騎士団長が審判を務め、模擬戦開始の合図を説明する。
「この模擬戦はどちらかが降参、またはこちらが止めに入るまでとする。このコインが下に落ちたときが開始の合図とする。両者準備は良いか」
「私は良い。エルレイン、そちらは」
「大丈夫よ。剣ではなく変な筒を持っているあなたなんかには負けない」
互いに確認が取れ次第、コインは空に打ち上げられ、そして、地面に落ちる。
勝負は一瞬、エルレインは私に突きを繰り出す。
わたしはこれを避けて剣に向けてビームサーベルを振りぬく。
ツーハンデッドソードはビームサーベルにいとも簡単に刀身が斬られ飛んでいく。
エルレインは驚いている。その隙をつき足払いして地面に倒し、馬乗りなって顔面に一撃を入れようとしたところで騎士団長が私を止めには入った。
「そこまで!勝者、ユースティアナ」
模擬戦の勝敗など解りきっていた。
私とエルレインとの実力差など月と鼈ほど離れている。
その力量の差を見抜いた母は私に剣を切るように耳打ちしてきたと思う。もうあの剣を使わせない為に姉が使っていた剣など使わず自分に合う剣を使わせるために。
私が立ち上がり、エルレインから離れて母たちのところへ向かう。そこで母にずっと隠れていた男の子がこちらに向かってきた。
男の子はエルレインのところに行くかと思いきや、私に向かってきて体当りしてくる。
体を少しずらして、体当りを避けて足を少し出して男の子を転ばせる。
男の子は膝をすりむきそこから血を出していて泣き出してしまった。
母の周りにいた人たちは全員、男の子のもとへ向かい慰め足の治療をし始める。
私は母の前に立ち男の子たちにい聞こえないように話す。
「言われた通りに剣を切りましたよ」
「ご苦労様です。あの剣に対する執着はなくなると思いたいのですが・・・、あとは自分で気づいてもらうしかないようですね」
「エリザベートさん、約束通り」
「ええ、約束通り身元保証人になりましょう」
「ありがとうございます。」
これで私は冒険者になることができる。
それからエルレインの特訓を見届け、全員はボーゲンに戻っていく。
私は便乗してボーゲンに入る。
すぐにでも冒険者登録をしたかったが、エルレイン皇女が特訓で疲れ果ててしまったためまずは彼女たちの住まいへと行くことになった。
皇妃様たちの住まいはもともと高貴な人たちが住むような立派な家ではなく。
周りと変わらない一軒家だった。
元とはいえ皇族が一般市民と一緒に暮らしいていること自体が信じられなかった。
そのことを聞くと自分たちは元々高貴なる立場の者ではあるが、城で過ごすより、今の家の方が過ごしやすいという。
それから夕食をいただいた後、私はボーゲンの宿屋に行こうと近場の宿屋をありかを聞こうとしたが、エリザベートに止められこの家に泊まるになるように引き留められた。
エリザベートは私が行方不明になっていたころとの話と私が知っている国が滅んだ情報が聞きたいらしい。
これらを話すと長くなりそうだが私自身話す気はないのだが、出された条件が魅力的だった。
どうやって見抜いたのか私が金をあまり持っていないことにエリザベートは気がついていた。
冒険者育成施設入学までの間、食事を含めてただでいいという。
私も含め周りの人たちは反対したが、笑顔で強権発動で反対意見は押し殺されてしまった。
唯一、私の身元を完全に見抜いているからこそできることだろうか?
その時の笑顔はとても怖く、二人の師たちが怒った時よりもはるかに怖かった。
蛇にらみまれた蛙とはこういうことを言うのではないだろうか。
私は母の笑顔に押し切られて冒険者育成施設入学するまで間、ここ泊まることにした。




