再会してからの夜
私は母たちの家に泊まることになってからの初夜、速攻寝ようとした矢先、母エリザベートに止められた。
エルレインと少年にはすぐに寝るように言いつけて私に用事があるようだ。
「何の用ですか?私は早く寝て明日に備えたいのですけど」
「今日はあまり時間を取らせないわ。私にべったりな男の子について話そうと思って」
私は少年のことはあまり気にしていなかった。
改めて言われてみれば普通にここにいること自体おかしいように思てくる。
「あの子はあなたが無視されるようになってから生まれた子なのよ」
この一言であの少年は私の弟であることはわかった。
それとよく思い出すと私が城の外に出ていくことになった少年に似ていように思えてくる。
そことを聞くと母は口を閉ざした。
やっぱりと疑問がすとんと胸に落ちた気分だった。
話では弟はエルレインに似た私が城内を勝手に歩き回っているのが気に食わず、あのようなことをしでかしたという。
弟にとっては身元不明でも周りは私のことは熟知していたはずだ。
いない者として扱ってきたから誰もくわしい事情を話さなかったのが原因だという。さらには父方の祖父母に聞いたといっていたが、その祖父母から何聞かされたか教えてくなかったという。
そもそもあの城に祖父母なんていたのか疑問に思った。
祖父母は城にはいないが行事や重大なことが起きるまたは起きたとき、あとは気まぐれで時々城に訪れるという。
だが、私は一度たりとも会ったことがない。そもそも祖父母の顔を知らないから気づいていないだけで会ったことがあるかもしれない。
祖父母の影響力は当時、世代交代しても強く私が空気扱いされるようになったのは祖父母の命令だったという。そして、母はそのことについて謝罪した。
私が空気扱いとなりネグレクトされたのも、弟に変なことを教えて私を外に誘い出されたのも、結果師匠たちに会うことができたのもすべて祖父母のせいか。
今の私にとってはどうでもいいことだ。だけど今後、祖父母と会うことがあったらグランニューレを装備してスラスターを全開にしてぶん殴ってやる。覚えていろよ。
もう気にしていないことを母に伝える。
それを聞いた母は安堵した顔をしていた。
「あの人が聞いたら喜ぶことでしょう。今どこにいることやら、ティアはここにいるのに」
「あの人とは?」
「陛下のことですよ」
父が喜ぶと聞いて私はただ乾いた笑いしかできなかった。
元々、父と一緒にボーゲンに来る予定だった。だが、警邏隊に見つかっておいて来てしまった。
あそこから陸路では3ヶ月の旅路、グランニューレで空を飛んで来たから5日でついた。
父とすでに再会しいていることを母に伝え、うれしそうな顔をする。
再会した場所が遠いから戻ってくるのに時間がかかることを話す。
どこで会ったのか聞かれ素直に答え、ついでここに来た手段を教えると母に驚かれた。
「あんな遠いところからよくもまあ。それに空を飛べば5日で済むのですか」
話によるとエルレインの全魔力を開放しても現在は数秒浮遊することが限界で空を飛ぶことは未だに不可能である。唯一の例外として勇者と勇者に似た装備を持った少女が飛ぶことができる。
どの国も勇者を探し出して自国に招こうとしているが行方が分からないため、勇者に似た装備を持つ少女を捕まえてその技術を欲している。
今では各国が協力し合ってその少女を捕まえようとしているということも聞かされた。
これまで私が追われていた理由はこれでわかった。
なおその少女はどこにも所属していないことを良いことにできることで、国に対抗できる組織に入ることができれば追いかけることはできなくなる。
冒険者ギルドは各国から干渉を受けない。よって冒険者ギルドに入るということは各国からの追跡を撒くにはちょうどいい。
更には個人の装備の詮索はご法度なのである。
勇者に似た装備を持っていようと詮索されない。もし詮索されてもその時に怒ってしまったトラブルで何かされても文句は言わないし、言っても周りが黙っていない。
「冒険者になるということは国からの追跡を撒く絶好の機会ね」
「いや突然そんな結論を聞かされても困るんですけど」
「ごめんなさい。あなたが冒険者になることはいいことばかりだということ」
母から私が冒険者同士のタブーや冒険者ギルドに入ることでこれまでの追跡が終わる可能性があること教えてくれた。
「今度はあなたに聞きたいことがあるの」
「何?」
「この4年間どこにいたの。私たちは先代王と王妃には隠れて捜索隊を出したけど一向に見つからなかったの」
私は母たちが私に対して捜索隊を派遣していたことに驚かずにはいられなかった。
空気扱いをずっとされていたから捜索隊など出していないと思っていた。
だが、実際は出していたと言う。
しかし、本当に捜索隊を出していたのだろうか。秘密裏に捜索隊を出していたというかには証拠はないんだろうけど・・・。
母は疑われていると思ったのか突如立ち上がり後ろのタンスから大量の紙束を持ってきた。
紙束には日付と捜索した場所がかかれその結果が書かれていた。
私はこれを見て手が震えた。まさかと思って紙束を読み進める。
この紙束は私の捜索に関する報告書で紙の経過具合で数年前であることが考えられた。
つまり私を捜索していたということは本当のことで、父が言っていた“私のことも愛している”ということは本当だったのかもしれない。
もしまた会うことができたら謝っておこう。
「てっきり愛していないと思っていた。私が何をしても誰も反応しないからいてもいなくても同じだと思っていた。だけど、この報告書を読む限り城の人たちは私のことを全力で探してくれていたんだ」
一言もなしで師匠たちに修行をつけてもうことにしたのは悪いことしたかな・・・、でも、世界を守るためには誰かがあいつを倒せるだけの強さが必要だった。
だから、反省はしても後悔はしない。
私は深呼吸をしてから城を出てから自分に起きたことを母に話し始めた。
“白い悪魔”と“黒い天使”に出会い。命を助けてもらってこの世界で起きようとしていること知らされて、世界を守るために自分で自国が滅びる結果になろうとも守ろうとしたことを話した。
母は何も言わずただ私の話に真剣に耳を傾けた。
「騎士団長と筆頭宮廷魔術師から、城の地下に謎の魔法陣があったと聞いていましたが、あなたも知っていたのですね」
「実は行方をくらませる前から知っている」
「どういことですか?」
私はエタニティフォースセイバーからのささやかれていてたことを話した。
エタニティフォースセイバーを抜いてしまったことにより魔王なるものが誕生し国を人が住めない土地にしてしまったことも話す。
そして、魔王の脅威は去ったがまだ世界に対する脅威はいまだに残っていることを伝える。
「まことに信じがたい話ね。未だに脅威が残っているのならそれをなくすようにしなければならないけど・・・、各国を動かすための材料がないわね。」
「たとえ“賢者の石”や“精霊石”の導きと言っても信じてもらえないだろう」
「物凄いワードが出てきたけど“賢者の石”、“精霊石”、あなたそれら持っているの?」
「さてどうだろうな」
私は言葉を濁して自分の目のことを秘密にしておいた。まぁ、母なら賢者の石や精霊石のことで言葉を濁す意味を分かるだろう。
「話を戻しましょう。2年前のことはどこの国も予言されていたから、各国は国民を受け入れてくれた。その脅威を生み出そうとしているものが残っているなら止めないといけない。でも、現状各国のトップを動かすための材料がない。そうなると知っている人が秘密裏に止めていくしかないのでしょう。あぁ、なるほどそれで冒険者ですか」
母は現状を整理していたらなぜ私が冒険者になろうとしたのか思い当たったようだ。
「冒険者ギルドに登録されると冒険者の証明のカードがもらえます。それは各国の国境を越えるときに役立ってくれるでしょう。下手に密入国して追われるより正規の方法で国境を越えた方が安全ですものね」
そう言ってから母は口を閉ざしてしまった。何か考え事をしているようだが、私は母が何かを言おうとするまで待つことにする。
「ねぇ、ユースティア、何もかも終わったらあなたはどうするの?」
母はすべてが終わった後、私がどうするか知りたいようだ。
母は私に戻ってきてほしいということだろうか。
そして、今度こそ家族として一緒に暮らしたいのだろうか。
私の答えは・・・、
「私はすべてが終わったら母さんたちに報告してから、また旅に出ようと思っている。そして、もう2度と会うことがない」
「そうですか・・・」
「まぁ、今はそう考えているけど、旅している最中に考えが変わるかもしれない。あまり深く考えない方がいい」
「ふふ、そうですね。また会えること楽しみにしていますよ」
久々に長い間、人としゃべっていたせいか疲れてしまった私は母に客室を用意してもらう。
明日になったらエルレインと共に冒険者ギルドに向かい登録手続きをして、そのあと、冒険者育成施設に入学手続きをすることになることを母に伝えられる。
それを聞いた後、私は久々のベッドですぐに眠ってしまった。




