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相棒は仕返しをする

3/17) ステータス表示の変更。所持ジェム数の表示は諸般の事情で削除しました

「小森ちゃん、早く食べさせておくれよ」

「……えぅ……」

「早く~、さあさ、は~や~く~」

「…………ど、どうぞ」

「おわっと!? あーあ、零しちゃってまあ、なにを恥ずかしがってるのさ」

「うぅ……後で覚えておいてくださいね……」


 なんて感じで、おっかなびっくりスプーンを差し出すもんだから、朝食は結構たいへんだった。

 たぶん自分で食べた方が楽だっただろうけど、俺には一片の後悔も無い。

 昨日はあんなに働かされたのだ、この位はしてもらわんと割に合わない。


 そんな楽しい朝食の後にもう一眠りして、やっとこ立ち上がれる程度には回復したのだった。



 今はお腹の空き具合からすると、たぶんお昼はまわっている時間帯だ。

 正直言うと今日はこのまま休んでいたいところだが、そうも言っていられない。


 街の中では俺達のスキルを発動できない。

 どうせ休むなら街の外でテントを設置し、その中でスキルを試しつつ身体を休めた方が効率的だろう。

 魔物に襲われる危険も有るだろうが、昼間で街の近くならその危険性も少ないはずだ。


 まずは、重い身体をどうにか引き摺って街の外に出る。

 今日は小森ちゃんも自力で歩いているため、昨日ほどきつくは無い。

 後は外壁に沿って歩き、衛兵達の死角となる位置でテントを設置して中に入る。


 最初は2人してテントの中で休んでいたのだが、密閉された空間というのが祟り、困った事態が発生してしまう。

 端的に言ってしまうと臭かったのだ。特に俺がだ。


 こちらの世界に召喚されてから既に丸二日が経っている。

 そら身体も臭くなるわ。オッサンだもの。


 一応、消臭効果のある自宅警備員Tシャツを着たものの、完全には臭いをシャットアウト出来なかった。

 30過ぎのオッサンの臭いはそんな甘いものでは無い。


 結果、俺は陽の光の下で風に揺られながら、竹筒入りの麦茶片手にテントの外に座り込んでいた。


 最初こそ、警備用品ガチャをやろうかなぁとか勢い込んで見たものの、これ以上荷物が増えるとマズい事に気付いてしまった。

 結局は何も出来ずに、一応は敵の警戒とばかりにボーっと周囲を眺めるばかり。

 なんだかなーって感じだ。


 ちなみに今のステータスはこんな感じ。


┌─────────────────────

│【小森 陽雪】引きこもりLv3

│[パラメータ]

│ 筋力:1(+2) 耐久:1(+2) 敏捷:2(+2)

│ 器用:5(+2) 魔力:7(+6) 精神:1(+4)

│[クラススキル]

│ 内弁慶、情報端末[T]

│[コンビスキル](SP:0)

│ 通販生活Lv3、収納上手Lv1

│[ドレススキル]

│ 聴覚強化、消臭、魔力強化[小]

├─────────────────────

│【山城 護】自宅警備員Lv3

│[パラメータ]

│ 筋力:3(+2) 耐久:2(+2) 敏捷:2(+2)

│ 器用:6(+5) 魔力:5(+2) 精神:3(+4)

│[クラススキル]

│ 内弁慶、情報端末[S]

│[コンビスキル](SP:2)

│ 拠点設営Lv1、遠隔回収Lv1、領域拡張Lv2

│[ドレススキル]

│ 消臭

└─────────────────────


 ステータスを見てもらえば分かる通り、レベルが足りない、SPが足りないのないない尽くしだ。

 更には小森ちゃんのジェムは残り3ジェムと、遠足のオヤツは3ジェムまでですってレベルである。


 俺のほうは56862ジェムと結構あるようにも見えるが、これはまともな拠点を買えば直ぐに吹っ飛んでしまうような額でしかない。

 実際に拠点設営Lv3で購入できるようになる、俺が欲しい拠点は3万ジェム必要だったりする。

 その上でガチャを回したりだなんだすれば、すぐに使い切ってしまうだろう。


 ちなみに小森ちゃんのジェムがまた減っているのは、『通販生活』で必要な物を購入し、早速使用しているからだ。


 その内訳はだいたいこんな感じだったか。


 魔導コンロ:200

 ヤカン:25

 木桶:15

 水1ℓ×10:10

 シャンプー300mℓ:10

 歯磨き粉×2:10

 歯ブラシ×2:10


 合計:280ジェム


 魔導コンロというのは、電気やガスの代わりに魔力を充填することで使用可能なコンロで、『ネット通販』で購入可能な燃料の必要な商品は、ほとんどが魔導なんちゃらになっているらしい。

 後、水1ℓは別売りの容器を指定して購入するタイプの物らしく、今回はヤカンを指定して購入したようだ。

 ちなみに、竹筒の容器付きの場合は水300mℓで1ジェムになるらしい。

 残念ながらペットボトルのような便利な容器は商品に無く、容器は木や竹などになるようだった。


 購入した商品を見れば分かると思うが、これらは洗髪に歯磨き、湯で身体を拭くための物である。

 つまりは今、テントの中では小森ちゃんが、あられもない姿で身嗜みの最中なのだ。

 俺は覗いてしまえという悪魔の誘惑と戦いながら、彼女の身嗜みが終わるのを大人しく待っていた。


 あれ? よく考えると待ってる余裕なんて無いんじゃないかなこれ?

 気付いたら残りがまた3ジェムとか……しゃーない頑張ろう……。


 俺はただ悶々と待っているよりはと、高枝切りバサミを片手に周囲の悪草エビルウィードを刈っていく。

 昨日拠点にした場所ほどには生えていないが、スマホの地図を見る限りでは拠点領域内に100本くらいは点在している。

 それだけ刈れば食費くらいにはなるはずだ。


 バツンバツンと小気味いい音を立てて刈っていくと、だんだんとノッて来る。

 筋肉痛の時って適度な運動をしたほうが調子よかったりするんだよな。

 後で反動が来たりはするけどね。


 ともあれ気づいたら、拠点領域内の悪草は全て刈ってしまっており、スマホのマップ表示は全て魔物を示す赤点から魔石を示す紫点に変わっていた。

 マップ画面をなぞって『遠隔回収』スキルを発動し、回収した114ジェムを小森ちゃんに振り分けて一息つく。


 一仕事完了した俺がテントへと戻ると、テントの入り口は開いており、中で小森ちゃんがくつろいでいた。


「おかえりなさ~い、また悪草を刈っててくれたんですね」

「ああ、さすがに食費くらいは必要だからね」

「今日もお疲れ様でした。麦茶をどうぞです」


 礼を言って竹筒を受け取り、一息で飲み干す。

 一仕事終えた後の麦茶も悪くない。

 これが麦のお酒だったら更に良いんだけどな。


「あっ! レベルも上がってますよ~、増えたSPで私はどのスキルを取りましょうか?」

「そうだなぁ……『内助の功』を取ってくれるかな。急がば回れとも言うしさ」

「はーい、了解でーす!」


 『収納上手』のレベルを上げて収納量を増やし、俺の『警備用品ガチャ』で戦力強化もしたいところだが、『内助の功』の経験値倍化は美味しすぎる。

 まずは何よりも先に『内助の功』のレベルを上げるのが先だろうな。


 俺のほうはどうしようかなぁ……まっ『領域拡張』で良いか。

 どうせ『遠隔回収』を上げても、悪草を相手にしている内は意味が無さそうだし、『拠点設営』を上げて新たな拠点を購入しても、こんな平地で設置するのは目立ちすぎる。


 レベルが1つ上がりSPが2から4になっていたので、SPを3使用し『領域拡張』のレベルを3に上げる。

 スマホのマップを確認すると、拠点領域が半径120mから半径240mに広がっていた。


 240mといったら徒歩3分くらいの距離だ。

 面積で言うなら、えーと円の面積は半径×半径×円周率だから……約18万㎡くらいかな?

 それで確か東京ドームが4万7千㎡くらいのはずだから、東京ドーム4個分にはちょっと足らない面積になるのか。

 

 よく聞く例えだけど、具体的にどんくらいの広さかってのは今一イメージが湧かない。

 それでも広いって事だけは分かる。


 等とどうでもいい考えに浸っていた俺は、小森ちゃんの呼びかけにより現実に引き戻される。


「スキルのほうは取得しました。テントの中にお湯は沸かしてありますので、山城さんも頭を洗って身体も拭いてきちゃってください。あ、これタオルと替えの下着ですので使ってくださいね」


 そう言って、シャンプーにハンドタオル、バスタオルにトランクスと靴下まで渡してくれた。

 

「ありがとな。でも、やけに気が利くけどどうしちゃったの?」

「どうしちゃったも何も、私は元から気が利く女の子ですよ。どうです、惚れ直しましたか?」

「いや、元から惚れてないしな。でもまあ、ちょっとは見直したよ」


 軽口を受け流してテントに入り、服を脱いで裸になる。

 木桶に湯が張ってあったので、ハンドタオルを濡らして身体を拭いていく。

 身体を一通り拭き終わったら、新しい下着を履いてハンドタオルを濡らし、髪に被せて湿らす。

 思いっきり湯を被りたいところだが、それはシャンプーの後だ。


 屈んでシャンプーをしている時だった。


「ぬ、脱いだ服をください! わ、私が収納スキルで仕舞っておきますので、ふひひ」

「ちょ!? 何で入ってきちゃってんのよ?」


 入り口のファスナーが開く「ヂーーッ」という音と共に、小森ちゃんが乱入してきたのだ。

 顔を赤くしながらも目を俺からそらそうとしない。

 この子、間違いなく確信犯だろ。


「な、なあ、はよ出てってくれんかな?」

「にゅふふ、あれれ~、何をそんなに恥ずかしがってるんですか~? 私は衣服を回収していきますので、気にせず続けてくれていいですよ~」


 俺が焦っているのに優越感を感じたのか、楽し気に喋りながらテントに入ってくる彼女。


 なるほど、朝の仕返しのつもりか。

 良いだろう、受けて立ってやろうじゃないか。


 俺はある物を拾い上げると、彼女へ向かって放り投げた。


「だったらこれも頼むよ。…………あっ」


 彼女の手元に落とすつもりが、思った以上に飛んだ布切れ――つまり俺の下着――が、彼女の頭上に綺麗に着地をきめる。

 

「あえ……? ひ、ひあぁあああああああ!!」


 …………ふっ、勝ったな。戦いはいつも虚しい。

 得るものの何もない、本当に虚しい勝利だ……。


 当然のように、悲鳴を上げてテントから慌てて出ていった小森ちゃんは、律儀にも拾い集めた衣服は持って行ってくれたみたいだ。


 さて、俺は洗髪の続きと行こうか。


 何はともあれ、やっちまった感はあれど、今日も俺の勝ちには違いない…………はずだ。


 


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