相棒はクーリングオフ不可
3/17) ステータス表示の変更。
やはりというか何と言うか、俺の端末だけでは無く彼女の端末にもガチャが実装されていたそうだ。
そして俺が離れたほんの1時間ほどでガチャ破産していた小森ちゃん。
そんな彼女はまだガチャると言う。
ちなみに彼女の情報端末から利用できるガチャは『部屋着ガチャ』というらしく、衣装ガチャでなく部屋着という辺りが、流石の引きこもりクオリティだ。
「なあ、小森ちゃん。君のこと、ここに捨てていってもいいかな?」
「……そ、それを捨てるなんてとんでもないです!」
「……………………」
「……………………」
「…………強く生きろよ」
「なんでですかぁあああ!! 今朝は私のこと見捨てないって言ってたじゃないですか!?」
今朝までのしおらしい小森ちゃんならまだ許せたかもしれない。
だが、こう開き直られるとなぁ……。
「何でって……そんなの、自分の胸に聞いて見なよ」
「自分の胸……ですか? はっ! 私の胸が無いから捨てるんですね!? この鬼畜! 変態! 山城さんはオッパイがそんなに大事って言うんです? オ、オッパイなんて飾りです、エロい人には分からんのですよ!」
「お前……実はふざけてるだろ? 胸とかそういう話以前の問題だからな! はあ、もういい……俺は行くぞ!」
「あうぅ、ごめんなさい~、謝りますから捨てないでくださいよ~!」
踵を返した俺の足に、取り縋る小森ちゃん。
意外なほどに力強く振り払うことが出来ない。
あっこら、くっつくなって! そんなくっついたら胸の感触が…………しないな。
ごつごつしてるこれは、肋骨かな……。
「お前どんだけ自分がポンコツか分かってないだろ? ちょっとは自覚しろ、このバカ!」
「あ、バカって言いました!? そんなのはですね、言われなくても分かってるんですよ! 自慢じゃありませんが、17年生きて来て私よりダメな人って見たこと無いですからね!」
「ほんと自慢にならねーからなそれ! もう、いいから放してくれ、そんで守護契約なんて解除だ解除!」
「ふっふっふー、契約解除なんて出来るわけ無いじゃないですか~。山城さんのほうこそ、おバカなんじゃないですかぁ?」
必死に取り縋りながら、勝ち誇ったような声で言う小森ちゃん。
いっそ、蹴り飛ばしてやろうか……?
「そんな出鱈目言っても駄目だからな、何と言おうと解除するからな!」
「ですから解除なんて出来ませんて! 契約者と守護獣の魂が繋がることで、レベルやスキルが共有されるそうなんです。そして一度そうなると二度と引き離すことが出来なくなるって神官さんが言ってましたよ」
「な、な、何、だと…………えっ嘘……マジで?」
「マジです」
「……嘘だよね?」
頼むから嘘と言ってくれー!
「マジもマジ、大マジです。だから逃げようったって無駄ですよ~。私達は一心同体と言っても過言ではありません。これから一生、運命共同体なんですから仲良くしていきましょうね!」
「い…………」
「い?」
「一生て?」
「はい、守護契約は解除不可ですし、言葉通りの一蓮托生です。私が死ねば貴方も死にますし、貴女が死ねば私も死にます。これはもう山城さんに一生、面倒見てもらうしか無いですよね♪」
「い…………」
「い?」
「嫌だぁああああーーーっ!!」
「我がまま言わないでください! これでも私、現役JKなんですよ? そんなに嫌がらなくたって良いじゃないですかぁ……」
現役JKておまえ……自分で言っちゃうのかよそれ。
「つうか小森ちゃんは何で黙ってたんだよ!? こんなオッサンと一生一緒とか嫌じゃねーのか?」
「そりゃあ最初、嫌じゃ無かったと言えば噓になりますけど~、今は契約して良かったなぁって思ってるんですよ。ほら、今朝もなんだかんだで面倒見てくれましたし、チョロ……いえ、優しい人だなぁって」
「優しい人てな、そんなんで良いのかよ……。たく、もう気が抜けちまったよ、こういう所がチョロイって言われんのかね」
よく確認もせずに契約しちゃった俺も悪いんだし仕方が無いのかな。
これから小森ちゃんの面倒を見ながら、慣れない異世界で生活すんのか……。
小森ちゃんのこれまでの行動を考えると、某鉄道ボードゲームを貧乏神が付いたままでプレイし続けるような物だよな。
せめてミニくらいになってくれんと、あっさり破産するなこれ。
「あーもう分かった、降参だ降参! ただしだ、これからは勝手に思い切ったは行動しないでくれよ。せめて一声かけてくれ」
「了解です! では早速なんですが……えと、おこづかいほちいのねん!」
「却下だ! どんだけガチャしたいんだよ!? つうかキミ、自分で無駄遣いしてる自覚あるだろそれ?」
そのネタ知ってるのもすごいが、よく俺の望みが分かったな。
もしかして魂が繋がってるとかそんなのが関係してんのか? いや……まさかな。
「仕方ないですねー。なら、通販で何か買いますかねぇ、せっかくレベルも上げたとこですし……」
「ちょ、レベル上げたって、どゆことそれ?」
「ほら、山城さんが悪草を倒してたじゃないですか。それで、レベル3まで上がってましたので、溜まったSPで『通販生活』のレベルも上げたんですよ~」
「それを早く行ってくれよな……」
「むぅ、言う前に怒り出したのはそっちなのに~」
小森ちゃんが「ぶーぶー」言ってるが気にする必要は無いだろう。
ステータスを確認してみると確かにレベルが上がっていた。
┌─────────────────────
│【小森 陽雪】引きこもりLv3
│[パラメータ]
│ 筋力:1(+2) 耐久:1(+2) 敏捷:2(+2)
│ 器用:5(+2) 魔力:7(+6) 精神:1(+4)
│[クラススキル]
│ 内弁慶、情報端末[T]
│[コンビスキル](SP:1)
│ 通販生活Lv3
│[ドレススキル]
│ 聴覚強化、消臭、魔力強化[小]
├─────────────────────
│【山城 護】自宅警備員Lv3
│[パラメータ]
│ 筋力:3(+2) 耐久:2(+2) 敏捷:2(+2)
│ 器用:6(+5) 魔力:5(+2) 精神:3(+4)
│[クラススキル]
│ 内弁慶、情報端末[S]
│[コンビスキル](SP:4)
│ 拠点設営Lv1、遠隔回収Lv1、領域拡張Lv1
└─────────────────────
なるほどSPが4増えてるな、レベル1つ上げるとSPを2獲得できるっぽい。
あとなんか小森ちゃんに『ドレススキル』なんて追加されてるけど、もしかしてこれ装備のスキルか?
ガチャで手に入れた部屋着に着替えて、付いたんだろうなきっと。
今一微妙なスキルではあるけど、1300ジェムで3つも手に入るならガチャも悪くないのかもしれない。
かといって、1人でガチャって破産したことは許しちゃ駄目だと思うけどね。
あとはなぁ……なんで早くもSP使っちゃってんのこの子?
「なあ小森ちゃん、どうして『通販生活』のレベル上げちゃったのかなぁ? ちゃんと他のスキルを確認した上で上げたって思って良いんだよな?」
「それは勿論です! 『通販生活』のレベルを上げると色々と便利な物が買えるようになるんですよ~」
「確かにな……この『のび~る切る伐るくん』は素晴らしいアイテムだ、他にも素晴らしいアイテムが?」
「そうなんですよ! レベル4まで上げるとですねぇ……なんと、日本の漫画が買えるようになるんですよ! ねっ、素晴らしいですよね!?」
確かに素晴らしいな、こっちの世界でも漫画が読めるとはなんてチートだ……って、んなわけあるかい!?
「金輪際、勝手にSPを振るなよ!! いいか、前振りじゃねーからな!」
「えー、山城さんだって漫画読みたいですよね? ね?」
「確かに読みたいけどな、物事には優先順位ってのが有るんだよ。まずは生活水準を上げる事、娯楽はその後。しばらくは他のスキルを優先する事、いい?」
「うぅ、分かりましたよぅ。じゃあ、えーっと……何から取りましょうか?」
もう俺が直接見て判断したほうが良さそうだな。
確か情報端末で取得可能なスキルも見れるはずだ。
「小森ちゃんのタブレットを貸してくれるか? それでスキルを見せてもらうから。あと、ついでにガチャで手に入れた衣装も見せてくれ、一通りチェックしたいからさ」
「あ、はい。――――どうぞ、これで全部です」
タブレットタイプの情報端末と、ガチャで出たらしき衣装や小物類を受け取る。
「これで全部だな?」
「あ……いえ、その……」
これはまだ何か隠してるな。
なんか後ろ手に何かを隠したの見えたし。
「この期に及んで隠し事か、俺達は運命共同体なんだろう? この際、隠し事は無しにしようや」
「…………うぅ、分かりました。では、お見せしますね」
そう言ってホットパンツに手を掛けた小森ちゃんが、ホックを外して……。
「って、ちょっと待ったぁあああーーーっ!! 何脱ごうとしてるのさ!?」
「えっ、だって全部出せって言ったじゃないですか……」
「着てる分は良いんだよ! そうじゃなくてさっき後ろに隠した奴を出せって言ってんの!」
「あっこっちですか……まあ、これくらいなら……。――――はい、どうぞ。えっと……匂いとかは嗅がないでくださいね、私も恥ずかしいので」
等と囁かれて渡されたのは、複数の女性用下着であった。
しかもその中の1枚には、仄かな人肌の温もりが残っていた。
俺、ガチャで出たのって言ったよな、なんで違うのが混じってんのよ……。




