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相棒は早々に破産する

 お腹が空いたのに目の前の果実には手が届かない!

 高い木の枝におパンツが引っかかって取れない!

 遠くの敵を倒したいのに槍を持って無い!


 そんな悩みをお抱えのかたにはこちら!

 『のび~る切る伐るくん』でどんな物でも楽々切断ライフを!


 さて、パッと見は私の背丈ほどの長さのこの商品、そんな長さではトロルの顔にも届きはしないと呆れ顔のかたも居るかと思います。

 ですがこの商品、なんと5段階の長さ調整が可能で、通常状態で1.8mの長さが最大で3mを超えるのです!

 これでトロルの潰れた醜いお鼻だろうと、崖に咲く一輪のお花だろうと華麗に切断できること間違いなし!


 なになに? 女性でも大丈夫かって?

 もちろんでございます! 

 超軽量のアルミ合金を用いたボディは、なんと800gという軽さ。

 800gといえば大根1本よりも軽いんですよ~。


 お年寄りから子供まで、もちろん主婦の皆様だって軽々扱えるこの『のび~る切る伐るくん』。

 今ならなな、なんと! 98ジェムとお得な価格でお買い求め頂けます!


 お求めはこちらの小森ちゃんまで!

 これで、あなたも異世界ハッピーライフ♪

 


「えっと、何一人芝居してるんですか……?」


 さすがの小森ちゃんもドン引きである。


「正直すまんかった。なんだかテンションがおかしなことになっててさ」


 あれだ、『内弁慶』スキルの所為だ絶対。そうに違いない。

 

「まあ良いですけどね……。では、この高枝切バサミはお渡ししますので後はお願いします」

「あいよ任せてくれ。だがこの商品名は『のび~る切る伐るくん』だからな、そこんとこ間違っちゃあかん」

「のび~るでもくるくるでもので、はよ取ってください! けっこうこれ重いんですから」


 小森ちゃんが『のび~る切る伐るくん』を、重そうに抱えて来て手渡してくれた。

 つうか子供でも軽々じゃなかったのか? 誇大広告ならJAR〇に訴えないと!

 いやでも、小森ちゃんが子供以下という事かも……まっ、そういう事にしておこう。


 俺はついさっき逃げ帰ってしまった戦場に再び立つと、『のび~る切る伐るくん』を最大まで伸ばす。

 刃の部分を悪草エビルウィードの根本に慎重にあて、手元の持ち手を引き絞る。


――バツン!


 気持ちいい音と共に悪草は根元から切り裂かれ、若竹のように柔らかくしなやかな茎と笹のように鋭利な葉っぱは、苦しそうに蠢きながら地面へとくずおれた。


 正に一撃である。たぶん普通の槍ではこうはいかないだろう。


 この『のび~る切る伐るくん』は先端のハサミの部分が、片側は頑丈で鋭利な刃となっており、もう片側がギザギザな形状で滑りにくくなっている。

 この2つが添うように湾曲しているため、挟まれた物を逃がす事無く切断できるのだ。

 これを3m以上離れた安全なところから操作できるわけだ。


 なんというチート! 正にチートアイテムと言っても過言ではないな。

 さすがは日本の高枝切バサ……『のび~る切る伐るくん』だ!


 バツンバツンと片っ端から、悪草を切り落としていく。

 最初こそ時間を掛けて慎重にやっていたものの、慣れれば簡単だった。

 1体刈り取るのに10秒と掛からない。


 およそ1時間ほど刈り続けただろうか。

 びっしりと悪草が生い茂っていた箇所の一角、3メートル四方ほどの領域が綺麗に切り取られていた。


 全体から見ればほんの一部ではあったが、それでもかなりの数の悪草を刈ったはずだ。

 そう言えば刈り取った分の魔石はどうなったのか? とスマホを確認すれば、マップ上の表示が変わっているのに気づく。

 さっきまでマップ上で赤く表示されていた光点が、刈り取った部分だけ紫色に変わっている。


 もしやと思って紫色の光点を指でなぞると、光点がピョ~ンと飛ぶエフェクトと共に画面右下に消えて行く。

 そして消えた分だけ画面右下には数値がカウントされていく。たぶんこれが回収したジェム数だろう。


 どうやらマップ上の赤点が魔物の表示、紫点が倒した魔物もしくは魔石の表示で、紫点をなぞることで『遠隔回収』スキルが発動するらしい。


 結果、悪草1体で1ジェム換算らしく、回収した魔石の合計が296ジェムとなった。

 この回収したジェム数に触れると、俺と小森ちゃんのどちらに加算するかの選択が出来るようだ。

 俺は少し迷ってから小森ちゃんのほうにジェムを送る。今のところ俺のほうが多いしな。


―― 小森陽雪:+296ジェム ⇒ 合計303ジェム


 画面に現れた表示を「ん?」と二度見したが、見間違いではなかった。

 確か小森ちゃんって1400くらいは有ったはずで、『のび~る切る伐るくん』の分を引いても1300はあるはずだよな……。


 なんとなく予想はつくけど考えたくもないわ……。

 


 とにかく確認は必要だよな。

 

「小森ちゃん、ちょっと確認しなきゃならん事が有るんだが……」


 そう声を掛けてテントの入り口を開け、中に入ろうとした俺を。


「キャーーーーーーーッ!」


 かぼそい少女の悲鳴が出迎えた。


 テントにの中には下着姿の小森ちゃんが中腰でこちらにお尻を向けており、下着にプリントされた兎さんがコンニチワしていた。

 お尻越しに振り返った彼女の顔は瞬時に真っ赤に染まり、慌てて立ち上がった彼女の頭がテントの天井にぶつかり跳ね返る。


 あっ、転んだ。

 反動でうつ伏せに転んだ彼女は、お尻だけが高く上がってウサギのプリントがフリフリ動いており、まるでウサギが顔を上げて周囲を警戒しているようにも見えた。


 俺は無言で入り口のジッパーをそっ閉じし、見なかったことにする。

 まさか兎の子供パンツとはな……。


「あーすまん、準備が良くなったら教えてくれ」

「すっ、すっ、すまんじゃないですよ~! 入る前に一声かけるのが常識じゃないんですか!?」

「確かにそうなんだけど、どうにも女の子と一緒ってのが慣れて無くてさ。小森ちゃんだって不用意に着替えなんてしてたじゃないか」

「うっ、確かにそうですけども…………」

「だろう? だから今回はお互い過失ということにしておこう。それよりも、小森ちゃんのジェムが激減してるんだけど、何か心当たり無いかな?」

「ひぅ!? …………なっ、何のことですかね? そんなはずは無いと思うんですけど……」


 ……黒だなこれは。


「言い訳はいいから、さっさと着替えてここを開けろ! 3分以内、終わらなくても無理矢理開けるぞ、はい初め!」

「はいぃ~!」


 俺が「いーち、にーい」とカウントするたびに、テント内でドタバタと着替える音がする。

 たく、俺が頑張って魔物を倒している時に何をやってるんだかな……。




 そして3分が立ち、俺はテントを開けて中に入る。

 まだドタバタしており着替え中だろうけど、知ったことか!


 幸か不幸か小森ちゃんの着替えはほぼほぼ終わっており、丁度靴下を履いているところだった。

 目の前に蹴り出されるニーソックスに包まれたおみ足に、なんとも言えない魅力を感じる。

 そして何故か、小森ちゃんの服装は一新されていた。


 ブレザータイプの制服は、ピンク色のパーカーに変わっており頭を覆うフードには兎の耳らしき飾りも見える。

 パーカーの下には白いTシャツを着ており、何故か胸元一杯に「働いたら負け!」とプリントされている。

 目線を下に向けると、細い下半身はデニムのホットパンツに申し訳程度に覆われており、太股というと語弊がありそうな脚が2本突き出ている。

 そして、太股の途中からはボーダーのニーソックスに包まれているのだが、何故か左右で色が違った。

 さっきまでは、靴下も普通の紺のソックスだったと思うんだけどな……。


「もしかして小森ちゃんてさ、ウサギとか好きだったり?」

「ふぇ? ……好きは好きですけど、何でです?」

「だってさ、そんなパーカー着てるし、あんなとこまでウサギじゃん? 個人的に嫌いじゃないけど、今時、子供パンツはどうかと思うけどな……」

「えぇっ、見なかったことにしてくれたんじゃないんですか!? ちっ、違うんですよ! こんなの私の趣味じゃないんですよ~~~っ!!」

「そんな否定しなくたって良いんだ、服の趣味は人それぞれだからな。あれはあれで可愛いと思うし、大人っぽいのよりは似合うと思うよ。ほら、君ってそこはかとなく……あっ、アレだしね」


 くっ、うまいフォローが見つからない。


「うぅ、酷いです……まったくフォローになってないじゃないですか~。本当に違うんですよ、これは私が選んだんじゃないんですってば~」

「じゃあ、どうしてそんなのを着てるんだ?」

「せっかくガチャで出たので、他に着替えも無いし着とこうかなぁって……ただそれだけなんです!」


 やっとこゲロったか。

 俺はおバカな兎を追い詰める。


「ほほう、ガチャでなぁ。で、どんだけ回したのかねキミは? おじさんによーく教えてくれるよね」

「ほっ、ほんのちょっとだけですよー。そう、ほんの1300ちょい、です……あはははー」

「お前はほんのちょっとで全財産使うのかよ!? まったく、この先どうやって過ごす気だったんだか……」

「大丈夫です! きっと山城さんが何とかしてくれるって、そう信じてましたよー私は。ほら、もう300も溜まってるじゃないですか! これでまた何回か回せますね!」


 駄目だこいつ……早くなんとかしないと……。


 本格的にこのさきが心配になって来た。

 守護契約ってクーリングオフ出来るよな?

 きっと出来る、俺はそう思うことにした。






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