めんどくさがり、交渉する。
使い込んでいたシワだらけの服から着替えさせられた後、王城に連れて来られて、礼儀が分からないと言ったら隣の真似をしろと言われた。
その隣とは、鎧と剣を持った騎士。何かをしたときに取り押さえる・始末する役割もあるのだろう。
あと、「この腕輪をしてください」と腕輪を渡された。
謁見の間の扉が開けられて、レッドカーペットの先に、国王らしき人物が数段上がった先の玉座に座っている。
騎士が跪いたので同じくらいの位置で跪く。
「面を上げよ。」
顔を上げる。
「先ほど余の愛娘を魔境から助け、ここまで送り届けてくれたこと、感謝する。」
これは答えていいのだろうか。
答えてくださいと騎士から耳打ちされたので、
「いえ、当たり前のことをやったまでであります。」
とでも答えておこう。
「そう謙遜しなくてもよい。そなたの武勇はこの国の英雄たちにも劣らないだろう。さて、そんな英雄のそなたには、余の剣となり、この国の民たちを守る手助けをしてほしいのだ。」
だっる。
「王よ、私は、人間関係や政治が、あまり好きではないのです。ですから、あのような魔境で1人で細々と静かに生きていたのであります。」
関わりたくないって伝わったかな。
「ふむ。だが、この事が広まれば世界中がそなたを放って置かぬ。そして何より、我が国に接する森の奥地に余に従わない存在がいるとなれば、それを脅威を見做さざるを得ないのだ。」
「この国が私のことを脅威と見做すかどうかなど、私には関係のない話でございます。」
「いいや、そなたにはその従属の腕輪を身につけてもらった。余がそなたを脅威と見なし、この水晶を破壊するか、そなたが余の許可無しに魔力を使おうとするか、腕輪を破壊しようとすれば、腕輪が作動し、そなたは死ぬことになる。」
脅迫か。ならばこちらも武力をちらつかせるまで。
「では、私があなたの四肢と首を斬り、水晶を奪って姿を眩ますのが先か、あなたが水晶を壊すのが先か、試してみますか?」
「余を斬れば追っ手がかかるぞ、よいのか?」
「それらも斬るまで。面倒になったら、この国にまで波及させていただくとしましょう。」
全然折れないなこいつ。めんどくさくなってきた。
「今更ですが、私は貴殿らに干渉しない、その代わり、貴殿らも私に干渉しない、相互不干渉というのはどうでしょう?」
「信用できないな。」
一応聞いてみたけど、無理か。じゃあ、言葉で付き合う必要はないな。
「ええ、私も信用できません。貴殿が諸刃の剣を持とうとするとは思えない。」
「諸刃の剣?余はそなたの生殺与奪を握っているのだぞ?」
「では、これでどうでしょう?」
腕輪を、破壊する。
魔力の使用や破壊しようとしていることを感知され、殺害の魔法のスイッチに伝達が行く前に破壊すればよいだけ。
「な!?ありえん!腕輪に手違いは無かったはずだ!」
「そもそも、なぜこんな道具で私を縛れるとお思いになったのですか?私は、魔境で戦うどころか家を築いて暮らすことができていた。それは、件の姫君から聞いているはずです。 あんな魔境に定住していると印象に残るはずですから。」
「それで、どうしましょう?縛るものも無くなりましたし、そちらが強硬な手段を取ってくるのであれば、私は先ほど言った『この国に波及する』を今実行してしまってもよいのですよ?」
「わ、わかった、先ほどの、相互不干渉を呑もう、それでよいであろう?」
冷や汗をかいている王は観念したようだ。
「わかってくれたなら、いいです。では、さようなら。」
踵を返し、扉を開けて立ち去る。それを止められる者はいなかった。




