めんどくさがり、得物を抜く。
探索者になってしばらくした頃だ。学園も長期休暇でひと段落してるから、イルミナ王女の期待通りのはたらきをするために迷宮に潜って魔物狩りに勤しむ。
今は2人ともCランク。どうやら期待の新人扱いされているらしいがどうでもよい。
「魔物の数が多いな。適正がCランクの探索者ならかなり消耗するんじゃないのか?」
「ん。多い…」
ルナは魔法神だけでなく武神にも仕えていた頃があったらしく、剣と魔法両方できる。ルナを相手取るなら得物を使わないと勝てないだろう。
ある程度狩って引き上げ、褒めちぎってきたり羨ましそうに見てきたりするのを右へ左へと受け流し、来るたびに模擬戦を挑んでくる戦闘狂を叩きのめし、素材を換金して、どうやらこれでC+ランクに上がったらしい。
「すみません」
「どうしました?」
振り返ると、知らない青年。
「私たちとパーティを組んでもらえませんか?」
持っているものに怪しいものはない。実力を隠している強者の気配でもない。本当にただのお願いのようだ。
この青年、ニックが言うには、前衛が負傷してしまい、しばらく戦えない。が、彼の母親の病の治療のためにできるだけ早く金の工面をする必要があるらしく、補充するということになった。
断る理由もない。受ければ期待できるが得体の知れない新人から、ポジティブなイメージを多少付け加えることができる。そういうもの、つまり信頼は今後探索者をするにあたってあればあるほどいいものだ。
「紹介するよ、パーティの話を受けてくれた、レイさんとルナさんだ。」
「「よろしく」」
「例の新人じゃないですか。願ったりかなったりですね!あ、僕はサム、弓使いです、よろしくおねがいします。」
「ちなみに私は僧侶です。」
まあ2人とも見た目からしてそんな感じだ。
「えーと、2人とも剣士です。攻撃魔法も使えます。」
大体の役割を確認し終えたら、早速潜る。彼らもC+だそうで、しかし最近は魔物の量が増えている、実際に負傷が出たということで慎重にC-からスタート。大丈夫そうなら翌日にC、明後日にC+と上げていくそうだ。
「一旦、この部屋で休憩しましょう。」
迷宮には、たまに休憩部屋らしき安全地帯の小部屋や、逆にモンスターが無限湧きするモンスターハウス、宝箱、ミミックなど、さまざまな仕掛けがある。入るたびに位置は変わるようで、地図は作られていない。
そうして、安全な小部屋で休憩していたのだが…
ぐにゃり、と景色が歪む。
次に目を開けると、先ほどよりもはるかに淀んだ空気が流れている。
そして何より、通路がやけに広い。
「き、帰還の───」
帰還の玉。割るとその周りの人が迷宮から出れる。
急な転移で一瞬戸惑っていたのだろう。だが、その戸惑いの時間は。
「「っ!」」
「「!?」」
魔物が襲いかかるには十分だった。
パリン、と、帰れなくなった音が響く。
俺とルナはニックを突き飛ばそうして、突き飛ばせたものの、ニックへの攻撃の回避は失敗。あまり速すぎると殺しかねないからだ。
だが急所は外れたようで、ルナが回復を素早くかけてくれた。
…来る!
パキン。
剣が折れる音。どうにか被害は逸らしたし、回復魔法で全快はできたが、剣を失った。
予備の剣を抜いても折られるだけだろう。
…しょうがないか。
「ルナ」
「ん!」
「ニックさん、サムさん、ここで見た私たちの情報は、全て口外禁止とさせていただきます、いいですね?」
「何を言ってるんだ!攻撃が」
ズン…
近づいていた魔物が倒れる音がする。
やっぱりこの剣、無法な性能をしているな。




