第十一話『甘い果実の中で決して崩れない約束』
天津猫です、今日は少し甘々な話を書いてみました。
ではどうぞ!
第十一話『甘い果実の中で決して崩れない約束』
「はぁ、はあ//黒波家の者として不覚を取ったしまった、ごめん陽太、そろそろ限界だ//」
「(まずいな、後十分もここに居たら、俺たち二人の理性が壊れちまう)」
陽太にとって生まれて最大級のピンチが今起きていた、陽太と有馬は現在二人とも落とし穴に落ちていた、もちろん普段の二人なら落とし穴から出るのは造作でもないのだが、今が一年生争奪戦なのが最悪であった、二人を穴に落としたのは上級生であり、もちろん落とし穴に落とした上級生は二人でボコボコにしたのだが、上級生の最後の悪あがきで能力が発動してしまい二人は食らってしまった。
「(あの野郎の置き土産で女子にしか効かない能力だったとは、しかも、効果が媚薬と同じだなんて、あの野郎絶対に碌な奴じゃねぇ)」
学園にとって有馬は男として登録されているが、有馬は正真正銘の女であるため効果の対象になってしまう、そのせいでさっきから有馬は制服の純白のブレザーはズレ、汗を大量にかき、顔は赤面し、ブレザーの中からサラシも見える状態になっていた、有馬から放たれる色気と甘ったるい匂いが感覚を狂わせてくる、ここに居るのが陽太以外の男子や女子であったなら、男女関係なく襲われていただろう。
「有馬ぁ//体が熱いよぉ//楽になりたいよぉ//」
「もう少し耐えろ、今ここから出る方法を考えてんだ」
この落とし穴は半径三メートル直径四メートル程の大きさだが外部からは見えないように細工がされており、能力を無効化できる能力を持っている人が来ないと外部からの助けが来る可能性が薄く、それに助けが来るまで耐えることは出来ないと陽太は結論付けた、そろそろ有馬が限界なのである、さっきまでは何とか男口調を維持していた有馬であったが効果の浸食が進み段々女口調になっていき、さっきよりも色気と甘ったるさが増してしまっている、陽太は根性で耐えるのも限界になってきた。
「おい有馬!後どれくらい耐えれる?!」
「……ふにゃぁ?もう私限界に近いよぉ//」
「(クソ!有馬の『死者の軍隊』で出る手段も考えたが、今の有馬に無理をさせたら余計に状況が悪化する、俺の能力『|一つの弾丸は百の弾となる《ワンハンドレット・バレッツ》』はリボルバーの弾を増やすだけの能力だこれじゃあ何も出来ない)」
陽太は根性で有馬の色気と甘ったるさに耐えていたが精神的に限界に迎えてきていた、これ以上ここに居れば陽太は理性が無くなり有馬に襲い掛かるだろう、そんな事をしないために必死に考える陽太の顔を見た有馬がついに禁句を言ってしまう。
「陽太ぁ//陽太ももう限界何でしょうぅ?陽太の辛い顔を私はもう見たくないよぉ//だから…………来て//」
「はぁ?有馬お前何言ってんだ!」
「……!だってぇ~陽太があまりにも辛そうだから//」
有馬はもはや考える頭が残っておらず、陽太を少しでも早く辛いことから解放してあげようとした、有馬の優しさであったがそれは陽太にとっては自分で決めた有馬に手を出さないという約束を破ってしまう、陽太にとって約束を破るのは死と同じくらい重いのである、怒った陽太は有馬に怒鳴った。
「ふざけるな!俺は絶対に約束を破らない!」
「なんで陽太はそんなに約束を守ろうとするの?」
「……!そ、それは」
「私の秘密を知ってかもずっと約束を守ってるよね、どうしてそこまで約束を守るの?」
「それは、もう二度と――――」
陽太は今の状態の有馬の真っ直ぐな質問にどう答えようか迷ってしまった、その時陽太の頭の中に一人の女性の姿がよぎった。
【ああ、貴方は誰よりも優しい子、ここに居てはならない逃げなさい、ここは悪魔のおもちゃ箱なの】
【嫌だ嫌だ、先生も一緒に逃げようよ!】
【それは出来ないは、私の心臓はあと少しで止まってしまう】
【そんなの嫌だよ、大好きな先生が死ぬなんて】
【ありがとう、私の様なクズにそんな言葉をかけてくれるなんて、最後の最後に私は貴方に呪いの言葉を残す、どんな約束でも守りなさい、些細なことでも絶対に守るのよ、好きな子を見つけなさい、貴方のその空白を好きな子を見つけて埋めなさい、どうか、幸せにね陽太】
その女性は最後に陽太の頬を撫で笑顔を向け事切れた、その記憶が陽太の頭の中にフラッシュバックしてきた、その女性と約束したことを守るために、たかが性欲ごときに
負けてられないのである。
「――――大切な人を失わないタメだ」
「え?」
「ありがとう有馬、お前の言葉で覚悟が決まったよ、俺はあと一歩踏み出す勇気が足りなかった、自分の能力のせいにしようとした、俺は弱虫でかっこつけようとするだけだった、誰も救ってやれないどうしようもない男だった、俺はヒーローにはなれない」
「そんなことは「だが!」……!」
「お前の秘密を受け止めてやれる様な奴にはなれる」
ついに陽太は思いついたのである、なぬいの様な頭が良くない陽太が、体力馬鹿の陽太が思いつく単純な脱出方法、陽太は立ち上がり有馬を抱きかかえた。
「ちゃんと捕まってろよ有馬!」
「へ?にゃにお……キャ//」
「最初から簡単だったこうしとけば良かった」
「よ、陽太ぁ~//これって//」
そう、今陽太は有馬のことをお姫様抱っこをしていた、突然の陽太の行動に驚き可愛らしい声をだす有馬であったが、ちゃんと両手を陽太の首に巻き付けていた、そして陽太は直径四メートルの垂直な壁を足だけで登ろうとしていた、だがこのままでは陽太の身体能力が高くとも一発で登り切るのは不可能、それにもし、失敗した場合、陽太と有馬は動けなくなり今度こそ終わりである、だが陽太は自分の持っているリボルバーを有馬をお姫様抱っこをしながら右手で持ち、自分の能力を発動した。
「能力『|一つの弾丸は百の弾となる《ワンハンドレット・バレッツ》』!!」
カン、カン、カン、陽太の放った弾が落とし穴の中で跳弾する、そしてその中の一発が陽太に目掛けて飛んできた、だが、この時を待っていたかのように陽太はジャンプをしたがそのジャンプ力は余裕で直径四メートルの穴を抜け出せる程に高かった、人間は自信の危機のときに普段の身体能力が向上するのである。
「(やっぱり凄いな陽太は、私はもう諦めてたのに陽太は私にとってヒーローだよ)」
有馬は穴から出たとたん意識を失った、それを見た陽太はすぐさま有馬をお姫様抱っこしたまま人目の付かない場所で一年生争奪戦が終わるのを待った、その後一年生争奪戦は無事に終わり、明日の放課後から研究会を自由に見学できるようになった、そして、なぬいと別れた陽太が帰ろうとするとき後ろから声が聞こえてきた。
「待ってよ、陽太!」
「ん?有馬か、体長はどうだ?」
「おかげさまで僕の体は大丈夫だよ」
「そうかそれなら良かった、俺はこっちだから、また明日な!」
有馬の口調がいつものに戻り陽太は有馬に体調を聞いた後、有馬に背を向けて帰っていった、その背中を見て有馬は心の中で呟いた。
「(ねぇ陽太?私あの時のことを余り頭がぼんやりしてたけど、陽太のことを誘惑してた時、少しだけ本心が入ってたんだよ?」
少しずつ二人の距離は縮まっていく、今日のような甘い果実の中で決して崩れない約束をした二人は夏休みにお互いを受け止めたことになるのはもう少し先の話。
今回も最後まで読んでくれてありがとうございます。少しずつ距離が縮まっていく二人、次回はなぬいがある先輩と会うお話です。
では、バイバイ!




