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SENA  作者: 雅号丸
第2章 RDI:RemeDyarchIst

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7話 こんな小麦が育つ訳がありません!

KACST、内部。部屋中にある無数の端末に表示されたカメラの映像が写される。全てナイトビジョンで撮影されている。


エメラルド(前提としてこの作戦は、やったこと自体を隠す必要はない。形式上は新ソ連対NATOのLVOとして他国に擦り付け、責任がグレーゾーンでの衝突に収まれば良い。旧ウクライナは新ソ連はによる管理で事実上、立入拒否地域。EMCONおよびシグネチャー・マネジメントを完璧にした、ドローンを軸にした調査を実施し、基地破壊までのプロセスを大幅に減少させる必要がある……そのために、またマザーに夜なべしてもらった訳だ。無許可で私独断の軍事行動、一秒でも長くNATOがバカであってくれるのを期待しよう)


エメラルドが席を立ち、部屋に敷設された巨大な水槽を眺める。中に、解放された頭部から無数の有線を別のPCに接続しているセナが入っている。水泡が上がっていくようで、セナが起動しているのが分かる。


エメラルド(無線)「セナ、湯加減はどうだ?」

セナ(無線)「良好です。まさか、私専用のクーラント設備とは。CPU温度安定、作業を続行します」

エメラルド(セナの本体であるAIのサーバーは、サウジアラビアが秘匿・管理するもの。今回の身勝手な作戦に使用するとなると、必ずサウジアラビア経由でNATOに連絡が入る。そしてマザー曰く、セナという子機自体の動きを把握するようなセーフティは、大規模な運用をまだ見据えていない、この試験中であるという現状故に搭載されていないという。だから、セナ自身に搭載された演算処理能力でAIを個別に立ち上げ、稼働させている全てのドローンの映像を解析・情報処理させれば情報は秘匿される。本来なら、もっと高性能のPCでもあればそれらを連結させて運用したかったが……AI自体が独自規格だから既製品の軍用機材では立ち上げられないときた。ここに来て汎用性バッテンとは驚いたが、まぁ軍用の最重要AIが既製品で運用できるのも、おかしな話ではあるか)


エメラルドが一つ端末を開くと、矢印がウクライナ南部から東側へ伸びていく。


エメラルド(BRICS+のうち最もNATO寄りであるインドへ個人的に話を通し、新ソ連への輸出品に混ぜドローンやUAVを貨物コンテナとして積載。スエズ運河経由でキプロス~トルコ~黒海を越え、ウクライナの都市オデッサへ輸送。改造されたコンテナから一斉に発射し起動、極低空飛行でレーダーを掻い潜り、右へ向かってひたすら、ただひたすら捜索する。長距離飛行型UAV10機、ドローン369機、述べ379機による同時捜索。ドローンもカメラも一つ一つ捜索・監視するのは無理があるからこそ、セナというAIを使って調査する。電子機器の中でも特段簡素な設計のカメラ、ジャミングもガッツリある。それでもいい、絞り込めれば、それでいい。ジャミングがかかるような場所は、逆に怪しいからな)


端末にバツ印が増えていく。


エメラルド(無線)「セナ、映像は?」

セナ(無線)「どの地方も強力なジャミングが施されています。GPS座標が乱れています」

エメラルド(無線)「奴らウクライナの農村部に、クレムリン以上の電子戦対策を施してるのか……益々信憑性が増すな」

セナ(無線)「UAVがミサイルの発射を確認。フレア展開、回避行動。ミサイル、回避しました。座標、リージョンBravo」

エメラルド(無線)「他は」

セナ(無線)「リージョンAlfa、CharlieにUAV接近……Alfa付近のUAVに弾幕が展開されました。CharlieのUAVには……ジャミングがありません」

エメラルド(無線)「AlfaとBravoを徹底して洗え、Charlieは捨てろ!」

セナ(無線)「了解、全ての偵察機をAlfaとBravoへ寄せます」


続々と端末へ送信されるバツ印が、ある地点に固まっていく。


セナ(無線)「ドローンとの交信途絶から数秒手前の座標とミサイルや弾幕の軌道から、重要拠点と思しき場所の輪郭を表示。リージョンAlfaおよびBravoを、サイトAlfa、Bravoへ絞り込めました。ドローン全滅、作戦継続不可能」

エメラルド(無線)「構わん。ORCA各員、聞こえているな!?仕事の時間だ、降下準備!」


トルコ上空。山脈を駆け抜けるように急旋回を繰り返しながら、海に出ていた。東側に見える地平線から、太陽が登り初め、日差しが海に差し込んで反射する。その海面をスレスレで飛行する戦闘機が5機、海面を吹き飛ばして飛行する。戦闘機は単座型で、ORCAの面々が一人ずつ座っている。全員が操縦桿を握っていないが、でも動いている。


ヴェロニク(無線)「はや~~い!!!」

那東(無線)「誰が何処へ向かうでござるか?サイトAlfaとBravo、2ヶ所であったか?部隊を2つに?」

エメラルド(無線)「いや、一つにまとまったままだ。貴様らは戦闘機を使い捨てる形でサイトAlfaに向かい、現地で基地を発見し破壊しろ。破壊目標はサイト内にある地中電極および通電設備。電極と送電線の両方を機能停止にする必要がある、頭に入れておけ」

ベネット(無線)「Alfaをやったらどうする?Bravoへ直行か?」

エメラルド(無線)「いや、もう一ヶ所はセナが単独で制圧する。Alfaを破壊し次第、貴様らは撤退しろ。撤退には行きで使い捨てるその戦闘機内にあるフルトンを起動しろ。回収装置は核フィルターレベルの強度で梱包されている」


正面に、暗雲が立ち込めてきた。


エメラルド(無線)「消火に時間がかかるのが懸念点だが……今日ばかりは問題ない、現地は雨だ。暗雲だからと気を落とすな。それは味方だ。それから……マイロー」

マイロー(無線)「はい、既に抗不安薬は服用してあります」

エメラルド(無線)「お前ばっかりには言っておく。ド派手にやれ、以上だ」

マイロー(無線)「?」

ベネット(無線)「でも突っ走るなよ。いつだったか、空軍基地制圧のとき、マジでついてくの大変だったからな」

セナ(無線)「私がいなかった頃のですね。敵から奪ったショットガンとアサルトライフルで室内に突撃し、敵の弾薬庫を制圧した、とか」

那東(無線)「言葉で聞くと本当にバケモノでござる。味方であることのなんと心強い」

エメラルド(無線)「よし。全員、武装の最終チェックと着地までの行程を思い出せ。ドローンの大群を先行させたんだ、防空網はかなり強まっているはず、タダじゃ済まないだろう」

セナ(無線)「何としても私がサイトAlfaへ届けます。操縦桿は全て私が握っていますので、皆さんはとにかくGに耐えてください」


戦闘機群の前に、7機の戦闘機が現れる。


ベネット(無線)「見えてるかセナ、対応を頼む」

セナ(無線)「問題ありません」


戦闘機群はORCAたちの乗る戦闘機たちの上をいって過ぎ去っていく。


ヴェロニク(無線)「あれっ、見えてない……?」

セナ(無線)「現在搭乗している機体は、サウジアラビア内空軍基地に格納されていた米軍ステルス戦闘機Lockheed Martin F-22 Raptorを、時間の許す限り外見のみ改造し新ソ連の戦闘機、Su-57に見えるよう設計したものです。Seven Nation Armies時点での指示系統がサウジアラビアの場合、ペンタゴン→サウジアラビア→KACST→軍隊という異例の状態だったため、その延長線上として指示を出し、現場の作業員に工作を手伝ってもらいました。またオートパイロット機能を勝手にアップデートし、私が操作しています」

ヴェロニク(無線)「この機体、法律で輸出禁止なんじゃ……サウジアラビアでバラした時点で機密駄々漏れ」

セナ(無線)「理由は不明です。あったので使いました。通り過ぎた敵機と、こちらのIFF信号をデータ上で入れ替えました。レーダー上では、すれ違ったタイミングで我々と敵機が入れ替わっています。敵機には気付かれますが、地上部隊は陸軍のため通信は混線し、最悪自軍の攻撃で敵機は落ちます。速度を上げて、一気にサイトまでいきます。片道なので、ここからはアフターバーナーです」


速度計がマッハ1を優に越えて、戦闘機群が後ろのを置き去りにして内陸へ飛んでいく。途中、レーダー照射や弾幕による攻撃は一切なかった。キャノピーに雨粒が当たり、風速ですぐに乾いて視界は常にクリアだった。暗雲は豪雨になっていき、雷が見える。


那東(無線)「雷、ということは」

マザー(無線)「こちらマザー。今、ウクライナ南部の全域に雷雨が発生中だそうだ。これは朗報だ、仮に基地が完成していて電極を作動させても、電波が世界に届くことはない。だが逆に基地が完成していた場合、この雷雨が晴れた瞬間が終焉だ。そろそろドローンのGPSが狂う地点に到着する。いいか?GPSや回線が遮断された場合、目視でサイトを確認、着陸地点を共有したら脱出装置を発動して戦闘機を乗り捨てろ。要領はドイツに突撃した時と同じだ、脱出したらジャンプスーツで着陸地点へ向かい、降りたらスーツは脱ぎ捨てろ。今回は滑走路に類するものは確認できないため、装備はドラッグシュートではなく米軍通常仕様のMC-4自由落下傘になっている。低空飛行で潜入するため、酸素ボンベと呼吸器はない。マッハ1から吹っ飛ぶ関係上、多少の皮膚の断裂や凍傷は考慮しろ。それから、脱出のタイミングはそっちが管理するんだ。作戦の成否、基地の有無に関わらず、出るならばそちらから信号を発してくれ。そのためにはジャミングの外に出る必要があるからな。オーバー」

セナ(無線)「回線ロスト予測、5、4、3、に…、い……」

ベネット(無線)「各員、目視で敵基地を探せ、無いならそれでいい」

ヴェロニク(無線)「これ、なかったら……いや、もう遅いか」

ベネット(無線)「それ込みでここへ来たんだろ。さぁて、謎にクレムリンほどにジャミングがかかった地方に、いったい何がある?」

マイロー(無線)「衛星から撮影できないならば、規模は小さ……くないはずなんですよね?」

ベネット(無線)「参考として米軍のELF通信基地を見たが、マジでデカイぞ」

那東(無線)「確かに大きかったでござる。しかし衛星からそれが隠せる場所となると……森であろうか?」

ヴェロニク(無線)「アノマロカリスの時みたく、地下とか?」


建物がまったくない、平原のような麦畑が大地を覆った。十字に道路が刻まれ、農業用の重機があちこちにある。


マイロー(無線)「衛星から見えない、という状態の原理は何でしょう?」

ヴェロニク(無線)「小さい、ことは写らない理由にならない。ましてや大型の設備」

マイロー(無線)「私の記憶が正しければ、軍用の衛星写真などはタイヤ痕も見えるとか。輸送車の稼働状態も見えないとなると」

ベネット(無線)「やっぱり地下の可能性は大いにあるな。そうなると地上にジャミングがある理由がない。見せたくないものは、確実にあるはずだ」

ヴェロニク(無線)「上からじゃ見えないような、でも普通なら見えるもの。上向きに小さい……アンテナ?」


麦畑に雷が落ちる。マイローが確認するが、周辺が燃えているわけではない。落下地点に重機がある。


マイロー(無線)(そういえばやけに重機が見える。穀物の回収に、あんなタンクローリーみたいな乗り物、あまりいらないはず。あってもトラクターとかそういう、それに……この辺りは、ロシアによるウクライナ侵攻でぐちゃぐちゃだったような。小麦が育つ環境なのでしょうか?鉛と劣化ウランの汚染も酷いはずで……上から見て小さいだけが、写らないとは限らない。いや、まさか!?)


マイローが座席のレバーに手を掛ける。


マイロー(無線)「皆さん、ここで降りましょう!地形に違和感があります、土壌汚染が酷いはず、こんな小麦が育つ訳がありません!それに、時期からしてこんなに小麦が高いこともないはず!」

ベネット(無線)「ウクライナ人の言うことだ、土地勘を信じよう!」

マイロー(無線)「ミサイルをできるだけ一帯の、小麦畑に撃ちます!」

ベネット(無線)「軽量化の関係で積んでないぞ」

マイロー(無線)「では戦闘機を落とします!」

那東(無線)「狙いが地面なら、どうとでもなるでござる!」


戦闘機から座席が射出、ORCAたちが発射された。ジャンプスーツでムササビのように飛行、マイローが先頭になって麦畑上空を飛行。雨風を浴びながらマイローは更に低空になっていき、身体を起こして高度が上昇、減速。パラシュートを開いた。同じようにORCA全員がパラシュートを開き、姿勢を安定させながら着陸した。直線で飛んでいく戦闘機が、小麦畑に落下し爆発した。


ベネット(無線)「敵はすぐには来ないだろうが、どうするマイロー?」

マイロー(無線)「戦闘機の落下し地点へ。それから、一緒に考えてほしいです」


マイロードはジャンプスーツを脱いで装備を整えると、走って戦闘機の近寄った。擦った地面は焼けているようで、だが抉れたはずの地面は、コンクリートが敷き詰められていた。


那東(無線)「コンクリート?では、この麦畑」

マイロー(無線)「全てフェイクです。地下に基地を立てるとき、先に地面を補強したのでしょう。そのタイミングで、上部だけ小麦畑に……おそらく、下から順に建設して補強したんですね」


後ろからヴェロニクが寄った。


ヴェロニク(無線)「何で分かったの?」

マイロー(無線)「戦争状態は2023年から2040年まで続いていました。砲弾、地雷、化学物質で畑には誰も近寄りたくなかった。なのに、こんなに綺麗に小麦が育つのはおかしいです。ここは小麦畑ですと見せたい、そんな意味を感じました」

ヴェロニク(無線)「で、このコンクリートをぶち抜く必要があると……どうする?」

ベネット(無線)「見えてるはずだな、マザーは」

ヴェロニク(無線)「見え……あぁっそうね、大前提として衛星からの映像は、SARっておう雲を貫通する撮影方法があるから、高解像度なら、こんな空でも、私たちの動きも見えると思う」


ベネットは空に顔を向けると、形式上に沿うような身振り手振りを行う。


那東(無線)「何をしているでござる?」

ヴェロニク(無線)「手信号?海軍のやつね」

ベネット(無線)「下に、目標。攻撃、求む。よしっ、離れるぞ~」

マイロー(無線)「なるほど、しかしできますかね?」

ベネット(無線)「KACSTじゃなく、サウジアラビアさえ動いてくれればだな。ミサイルの一発でもくれば、どうにかできそうだが」

ヴェロニク(無線)「相手の対空、絶対的警戒されてるよ?ミサイルなんて落とされるんじゃない?」

那東(無線)「戦闘機からフルトンだけ回収して、隠れておくべきであろう。ここは、ミサイルの弾着までの時間を生かすべきかと」


燃え盛る戦闘機へ向かっていく最中、暗雲の空が若干、一点だけ明るくなっていく。


マイロー(無線)「空が一点だけ……」

ベネット(無線)「もうミサイルが?速すぎる、一旦隠れよう」


戦闘機の裏に入って、ORCAたちは様子を伺った。燃え盛る隕石のようなものが、一つ、真っ直ぐ剥き出しのコンクリートへ突っ込んでいった。


ヴェロニク(無線)「何あれ、隕石!?」

ベネット(無線)「違ぇ、とにかく戦闘機に隠れろ!」


衝突が、地震と違うほどの振動を放ち、模造の小麦畑を一層した。穴空きの雲がしぼんでいくなか、ORCAは降ってきた物体の落下地点へ走る。コンクリートに突き刺さった円柱形のその物体はほぼ原型を止めていなかったが、側面にNASAと書かれていた。コンクリートの下は、電子基板が剥き出しの、つり橋のような通路が宙吊りな状態になっており、配管と電線が無数に繋がっていた。


那東(無線)「これは……」

ベネット(無線)「まさか、衛星を落下させたのか!?確かにこれなら撃ち落とされることないが……これ、もう俺らのこと見れねぇだろ」

マイロー(無線)「コンクリートは破壊されています。内部はやはり何らかの基地のようです」


内部から警告音が響いてきて、配管から蒸気が吹き出ている。


ヴェロニク(無線)「危ないなぁこれ……」

マイロー(無線)「先導します」

マイローがつり橋へ飛び降りる。ORCAたちは蒸気の吹き荒れる基地の中へ、消えていった。

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