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SENA  作者: 雅号丸
第1章 CTBT:Comprehensive Tactics Beta Test

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32/47

32話 インゴット

セナは仮説のテント内部で、腕を広げたまま装備を外して裸の状態になる。高圧の洗浄機により清掃がされていく。洗浄機を持っているのはヴェロニクで、時折意図的に顔にかけられる。

ヴェロニク「えいえい」

セナ「あの、顔はもう綺麗事ですからああばぶぶぶば」

ヴェロニク「うん。綺麗過ぎてなんかウザいから~」

セナ「口に入れるにはご遠慮下さい」

ヴェロニク「人工皮だっけ、全身綺麗で、すごいよねぇ。局部いっさい無しはちょっと惜しいかも。私も機械になろうかなぁ」

セナ「ヴェロニク様は、なぜ兵士に?綺麗でありたいなら、兵士はかなり難しいものでは?」

ヴェロニク「なんだろうねぇ、私も分かんない部分いっぱいで……でも、どこかで私は、誰か他に死ぬくらいなら、私が変わりに戦いたいって思うな。セナは私のこと、データで知ってるでしょ?」

セナ「はい、元々男性だったと」

ヴェロニク「なんていうか、戦争で死ぬのって男の人ばっかじゃん?」

セナ「筋肉量の平均では、女性より男性の方が有利ですから……」

ヴェロニク「私、男でいることに疲れたんだよね。でも年齢が上がっていって、ちゃんと世界のこと知っていったらさ……やっぱ、男って肩身狭いなぁって思ったの。社会的に評価できる何かを持ち合わせないと評価されにくくて、でも見た目とかの、生まれ持った素養には負けやすい。年齢が上がってもお金さえあればある程度人生逆転できる機会はあっても、自分が愛される訳じゃなく、自分の持ってるものが愛されるという現実。線路から外れたら人生真っ逆さま、努力の果てに疲れ果てても誰も助けてくれない。知ってる?男性に対する差別的用語って女性より多いんだよ、ネットスラング合わせてもね。年々増加する男性の自殺率、私はそこから逃げた、たまらず逃げた、傷付いて、逃げた……この人生は誰にでも歩めるものじゃない、そう思うとどうしても、私くらい精一杯理解しないと、って思うんだ。どこかその重荷を背負えるなら、頑張ろうって……たぶん、だから兵士になったんだよ、私は」

セナ「特殊、ですね」

ヴェロニク「これ、言ったの始めじゃないんだ~。晴翔くんには、もう言ってあるんだ」

セナ「仲良いですよね、お二人」

ヴェロニク「明日死ぬかもなのにね」

セナ「それが兵士です」


セナの顔に再び洗浄機の水が当てられる。


セナ「あのああばぶぶぶば」

ヴェロニク「えいえい」


仮設テントに、エメラルドが入ってきた。厚着をしている


エメラルド「進捗は?」

ヴェロニク「お顔を洗浄ですエメラルドさん、この子綺麗過ぎると思いませんか?」

エメラルド「まぁいい。セナ、イギリスで録ったデータを元に、お前の指揮官としての能力に限定されるが、バージョンのアップデートがあるそうだ」

セナ「了解しました」

ヴェロニク「どーぞ」


ヴェロニクは洗浄機のノズルをエメラルドに渡した。


セナ「……あの」

エメラルド「……ふっ」

セナ「私は機械なので問題ありませんが、皆さんを害した覚えがああばぶぶぶば」

ヴェロニク「エメラルドさんも、ふざける時あるんですね」

エメラルド「そう……だな……」

ヴェロニク「?」


エメラルドはヴェロニクの後ろに向かいノズルを渡す。直後、ヴェロニクの背中から手を出して、セナに数字を見せた。


【140.66】


数字時間後、夜は訪れる。夜通しで作業されていき、アノマロカリスは徐々に解体されていく。那東や狙撃兵、斥候たちがセンサーとナイトビジョンや赤外線で敵を捜索しながら、アノマロカリス解体の安全を確保する。


那東(無線)「HQ、こちらORCA4。定期連絡、敵影無し、オーバー」

エメラルド(無線)「こちらHQ、定期連絡を受理。那東、次の作戦が決定した。30分で交代が向かう。帰投せよ、オーバー」

那東(無線)「了解、ORCA4アウト」


ORCAの面々は装甲車内部に集まる。


セナ「エメラルド様はいらっしゃらないのですか?」

ベネット「何だ、アイツいるのか?じゃあ、何か指示を聞いてるか?那東から詳しく聞いて、ここにいる訳なんだが……詳細を誰も知らないんだ」


セナはエメラルドに見せられた無線の番号を思い出し、連絡する。


エメラルド(無線)「ではブリーフィングを始める。これは録音であり、終了と同時にデータは消失する。端末にはシステムが自動で映像を映されるため、一時的に操作は不可能となる。」


各々の端末に動画が流れ始める。


???「続いてのニュースです。先ほど報道した、新ソ連によるワルシャワ攻撃に伴い、NATO各国はによる新ソ連への軍事的制裁および新ソ連側との貿易が停止されましたが、これにより、新ソ連の貿易商品にある小麦価格が世界的に高騰することが、専門家たちによって見込まれています。この対策として。NATO各国は既に増産体勢は既に確立されていると、1時30分、現在時刻より1時間前に発表がされました。第二次緑の革命計画と称される計画だそうで、具体的な増産体勢に関して、専門家との映像が繋がっています。中継を」


映像は途切れた。


ベネット「これは……」

エメラルド(無線)「NATOは新ソ連へ軍事的制裁を加えることを公式に発表した、アノマロカリスによるワルシャワ攻撃を起点としてな。そこで手始めに貿易を完全に停止したんだ」


端末にデータが多数写し出される。


エメラルド「小麦の増産体勢は急ピッチで進んでいる。だが計画はウクライナ侵攻時点で存在し、徐々に始まっていた。脱ロシア産小麦を目的とした計画、第二次緑の革命計画だ。各国総出で行う増産計画、それに伴い、様々な問題が存在。そして世界中に今、この計画がニュースとして流れている。だが、ここからが問題だ」


端末に、工場が映される。工事には武装した一般人が、かなりの数たむろしている。


ベネット「正規の軍隊じゃないな、それに」


それらの武装は、銃だった。

マイロー「AK-12に、防弾ベスト?新ソ連の正規軍くらいの武装ですね」

エメラルド「分かりやすい妨害行為だ。新ソ連は我々NATOの食糧事情を鑑みて、即座に妨害行為を開始。それだけなら問題じゃない。コイツらは新ソ連が雇った傭兵でも、新ソ連軍でもない。コイツらは……環境活動家だ」

那東「環境保護団体が、小麦という植物が増えることを拒む理由が?」


データは変わっていき、ある名簿が映された。


エメラルド「食糧増産に必要な肥料を製造するために、ハーバー・ボッシュ法というのがあるが、その方法には、化学反応を引き起こす触媒が必要なんだ。第二次緑の革命計画で全体通して触媒として採用されたのが、日本で開発費された最新の触媒。従来では、ルテニウムやプラチナなどの貴金属を触媒として利用しており、それを超高温のエネルギー下で行う生産方法であり、現在の主流となる。だがこの最新の触媒はランタンとコバルトという貴金属ではない素材からなる触媒で、従来よりも低温のエネルギー下で化学反応を引き起こせる。熱を与えるための液体燃料は少なくなるし、生産性も向上するんだ」


データは工場の映像に写る。


エメラルド「映像にあるのは、その最新の触媒を生産している日本が所有する工場だ。環境活動家たちはピンポイントにここへ集結し、高度に統制されていたはずの日本の銃規制を掻い潜って銃器を手に入れ、工場を占拠。それらの主張はこうだ。ハーバー・ボッシュによる生産を止めろ、石油を使うな、地球を汚すな。ハーバー・ボッシュ法は多量の液体燃料を消費するから、それだけならば筋は通ってる。但し、今や世界の生産物の半分がこの技術で作られている関係上、この筋を通すことは不可能だ。またこの工場は従来の非効率な触媒の工場ではないため、彼らの行動は根本から間違っているとも言える」

ヴェロニク「アホじゃん、効率良いんだよ?」

エメラルド「事態は急を要する、だが問題は他にもある」

ベネット「裏に新ソ連がいるってことか?それとも、どうやって日本に持ち込んだかってことか?」

エメラルド「占拠を実行している全員が、政界の有力者や大企業幹部の子息たちで構成されているんだ。ブリーフィングは以上となる。各自、自由に行動せよ」

那東「?」


無線は終了した。ベネットは溜め息をついた。


ベネット「まさかとは思うが……この作戦、公式には受理されてないのか?」

マイロー「どういうことでしょうか?」

ベネット「政界の有力者や大企業幹部の子息って点がヤバいんだよ。まぁ言い方はあれだが。環境活動家なんてのは大抵SNSを見て感化された、俗世間を知らないボンボンだ。何も知らない、何も掴む必要がない、余裕はあっても夢も渇望もない人生だからこそ、大きな思想に巻かれて、世界のためになると信じて疑わない、活動家の多くはそういう、思想という理想に陶酔する連中だ。問題は、活動家たちが政界の有力者や大企業幹部の子息、つまり、俺たちORCAの上や、出資者、国政関係者の子供だってこと。バカでも子供で、親は親だ。作戦に対して発言が出来る立場の人間が、自分の子供を兵士に殺させる訳にはいかないとして、反対意見を作戦会議で出したり、出資停止をちらつかせて軍部を黙らせてるってことだ。極めて少数の人間のせいで、何億人の食糧事情から戦争の行く末まで左右されている状況。エメラルドに作戦を押し付けたのは、そんな状況にシビレを切らした上の誰かで、その誰かは俺たちが正式な作戦として誤認させて、勝手に事態を収束させてしまうことを狙っていた。エメラルドが口を今いま割ったがな。で、この事件を勝手に解決したら俺たちはどうなると思う?おそらく、越権行為および虐殺行為として、軍部や政界から処分される」

マイロー「!?」

ベネット「なぁ、これを言ったエメラルドは、ここからどうなると思う?なんでアイツはここにいて、でも今いないんだ?セナ、アイツにおかしな点は?」

セナ「さっきの電話番号を、ヴェロニク様の後ろから、私にだけ見えるようにして」

ベネット「その時点で監視があった可能性はある。盗聴機か?」

セナ「それから、テンションも少しおかしかったような。私に洗浄機を向けてきたんです。笑っていました」

ベネット「アイツ追い込まれると、逆にテンション上がるんだよ。くっそ。通信履歴から逆算して発信位置を割り出……いや、録音だっよな。何が起きてるかは分からねぇ、だがアイツがピンチだってのは分かる」

セナ「はいっ!」


エメラルドは、川にいた。月明かりで多少だけ周囲が見える。アノマロカリスがえぐった大地が見える。


エメラルド(まぁ、味方の斥候には見つかってるだろうな)


エメラルドは月を見上げ、腰くらいまで川へ入っていく。白い息が月に照らされるなか、上着を脱いだ。着ている防弾ベストのようなものには、心臓部に近い場所に円形の地雷のようなものが敷設されていた。


(起爆と同時に、胸部の爆弾に搭載された金属が流体化し身体へ突撃、心臓を貫く、か)


エメラルドは深呼吸をした。


(最後に合えたのがセナでよかった。だが、やり残したことが多すぎるな)


エメラルドは過去を思い返していく。


(幼少、父と母は仲良くしていた。年中、父は現場作業中に死亡、母が傷心。気付けば母は白人至上主義に呑まれていた、夫という白人が死んだのは下層階級の黒人やアジア人が働かないからだと言って、私にもそう教えていた。数日後、母は突然アメリカへ向かうと、銃を使って小学校を襲った。黒人やアジア人の子供だけをターゲットに殺し回った。母の行動は、私にも響いた。世間に私は公表され、顔が晒され、殺人鬼の子として蔑まれた。今思い出すことがこんなことか……でも、大学は楽しかったな)


エメラルドは腰をポケットに振動を感じ、携帯を取り出す。手のひらにすっぽり収まる小さな携帯。画面は割れている。番号を確認し、目を見開いた。電話に出る。


ベネット(携帯)「……良かった、まだ持ってたな」


エメラルドは、少し口角を上げながら、鳴き始めた。


エメラルド「……捨ててなかったんだ。あんなに一方的に別れたのに」

ベネット「まぁな。予想だが、お前が俺から離れた理由は1つだ。親が白人至上主義の殺人犯。お前、俺という黒人と仲良くしてたことで引け目を感じてたんじゃないか?大学の時点で俺は随分と優秀だったしなぁ」

エメラルド「……ありがとう、仲良くしてくれて」

ベネット「今、お前の通信してる場所にセナが全力で向かってる。周囲は今のところ敵はいないようだから、お前を消し込む方法は銃じゃないな。セナには爆弾解除の装備を持たせてある」

エメラルド「ありがとう」

ベネット「どれの話だ?お前の事情を知ってる奴がお前をいじめてた時のか?なにも知らねぇナンパをぶっ飛ばしたときか?」

エメラルド「携帯。これ、父さんの携帯。古すぎて直せないって言ったら、修理部品とか、ジャンク屋回って探してくれたじゃん、私の知らない所で」

ベネット「あぁ~」

エメラルド「おじいちゃんもおばあちゃんも、世間体を気にして私は預かれないって言われて、お母さんはもういなくて、お父さんもいなくて、残ったのがこれだけだった……」

ベネット「聞いた。だから探した」

エメラルド「あなたは、私の側にいる人として、優しすぎる」

ベネット「女の前でくらいカッコつけさせてくれよなぁ、逆効果だったとは」

エメラルド「?」

ベネット(無線)「セナ、間に合うか?」

セナ(無)「目視で確認しました、接近します!!」


エメラルドの胸元の爆弾が起動、小さく赤点滅し始め、カウントダウンするよう、ピッピッピッと音が鳴る。


ベネット「セナ、急げ!」

エメラルド「ありがとう。最後に、声が聞けてうれしかった」


セナが草原を雷を纏って走っていく。川沿いの一部で、閃光が走り爆発音が聞こえた。


セナ「そんな……!?」

セナが現場に駆けつける。脱ぎ捨てられた厚着の側で、川に浸かったままのエメラルドが、確かに息を吸ってそこにいた。

セナ「エメラルド様!」

エメラルド「……セナ?」


胸元の爆弾がの点滅が止まっているのを、エメラルドは確認した。


エメラルド「私は……そうだ、爆弾が爆発して」

セナ「いいえ、その爆弾は起動が停止しています」

エメラルド「……?」


セナはエメラルドが脱ぎ捨てたであろう上着の側に、起動済の手榴弾を見た。


セナ「スタングレネード……?」

エメラルド「何のことだ?」


セナは過去、スタングレネードが使用された痕跡が、中国のミサイルサイロ付近であったのを思い出す。腰から拳銃を抜いてエメラルドを抱えると、周囲を警戒し始める。


セナ(無線)「敵の痕跡を確認!」

???「そんなもの、は、いら、ない」


セナは音の方角に銃を向ける。誰もいない。人工皮に乗る感触が、柔らかい。


???「私のと、なりにピッタリ」


フードを脱ぐように顔だけ姿を現したのは、サーヘルだった。サーヘルはあうでに、セナの頬に唇を当てている。セナはサーヘルを振りほどいて蹴り飛ばし、銃を構えた。カメラの機能を変えるなどするが、サーマルなどに引っ掛からない。


サーヘル「無駄。でも、放電しちゃ、ダメ。エメラ、ルドは今あなたのそ、ばにいる」

セナ「何をしに来たんですか?」

サーヘル「科学技術振興機構(JST)の開、発した貴金、属を使わないエ、レクトライド。凄い、と思う。わざわざわた、したちはチェルノー、ゼムを持ったけれど、ね」

セナ「……だからなんだと言うのでしょうか?」

サーヘル「あなたに近寄、ったとき、懐にデータ、を入れた。それを実、行しなさい。我々、は、ここより2、km地点にす、でに部隊を展開している」

セナ「……!?」

サーヘル「NATOが中、国にしたことと同じ。大部隊をステルスにし、た奴」

セナ「早いですね」

サーヘル「24時、間以内に、データ内の指、示を実行して」


サーヘルはもう、いなくなっていた。


装甲車内部に揃ったORCAの面々と濡れたエメラルドが、ブリーフィングを始める。


エメラルド「まずは各員、迷惑をかけたな」

ベネット「無事ならいいさ」

那東「斥候部隊のうち2組が、エメラルドの移動を感知していた。故、拙者の方で動きを封じておいたでござる。エメラルド殿に爆弾がどうのこうのというのは、誰も存ぜぬ状態でござる」

マイロー「データというのは?」

セナ「サーヘルから渡されたデータは、マザーによって解析されました。安全を確認したした上で、データを各員へ転送します」


端末に映されたデータには、工場が映っていた。そして、指示も表記されている。


ヴェロニク「日本って。待って、24時間しかないんだよね!?」

エメラルド「指示はこうだ。日本へ向かい、指定された箇所にあるトラックから【鉄インゴット】を入手、件の工場を武装集団から奪取後、指定されたインゴットを、工場に既にある、触媒の主成分として使用される予定の鉄インゴットと交換する。置き換えるだけでいい。交換後、指定チャンネルにビデオを私が送信、以後インゴットを再び元の物と置換することはどうやら不可能で、相手はそれが分かるとのことだ。我々が下手に細工をすると、相手は残り一台のアノマロカリスで再びワルシャワを攻撃するとのこと」

ヴェロニク「そのインゴット、何か変なモノじゃないよね?」

エメラルド「交換した後は、成分を分析しても良いとのことだ。また生産後の完成品であるアンモニアおよび硫酸アンモニウムは、徹底して管理される。科学的にそれら肥料でなかった場合、そもそも肥料として使用はできない。何より敵の術中にわざわざハマる必要はない。得体の知れない物が関わったものを、肥料に使うなどイカれてるとしか言えん。工場で生産されるものは徹底して検品させるし、商品として輸出させることもさせん。だが、このことを他言できる環境でもない。マザーに伝えられたのは、武装組織に対して作戦が立案できないという状況までだ」

ヴェロニク「そもそも、本当にやっていいの?私たちの立場は?」

セナ「作戦自体は、現在作成中とのことです」

那東「やれるのであれば最初から作れば良かったではないか」

セナ「作戦立案が困難である点と、その理由が活動家たちの血筋である点。これらをKACSTが入手した情報として、先ほど世界中のマスコミに流しました。NATO各国およびアメリカの与党や軍事関係者の公式SNSは現在全て炎上中。彼らは政権交代を恐れて、早急に事態終息を宣言、活動家の血縁や関係者は全て拘束されました」


ベネット「エメラルドが命張った意味はあった訳だ」

セナ「政権交代を恐れてというのは、私の予測でしかありませんので、何とも言えません。またこの作戦を行う部隊として、我々が抜擢されていると、KACSTが先回りでマスコミに発表しました。これは私がマザーに提案したものです」

ベネット「いいじゃないか。先回りで勝手にでも情報解禁をさせれば、各国は後に引けなくなる。緊急性からして、俺らってのも妥当だしな」

セナ「ここから東京まで移動で約20時間かかります。東京から指定のトラックまで30分。件の工場までは3時間の移動が必要になります」

マイロー「作戦時間30分ですか……それに、嫌な予感もします」

エメラルド「まぁ……懸念点があと一つあるな」


エメラルドに連絡が入る。端末を確認した。舌打ちが聞こえた。


エメラルド「……全員、武装は非殺傷だ。殺さず工場を制圧しろだと」

那東「内部に余程の数の関係者がいるということでござるか?」

エメラルド「あるいは、拘束できない立場の人間がいるってことだ。やれるか?」

マイロー「やるのが我々です。ですが、殺傷無しで、工場を30分で制圧ですか」

セナ「意見宜しいですか?」

エメラルド「あぁ」

セナ「後発の活動家らが同様の行為を行わないようにする必要があります」

エメラルド「それもそうだが……」

セナ「はい。そこで提案なのですが……SNSを活用してみては如何でしょう?」

エメラルド「任せる」


ORCAの面々は、輸送機を乗り継いで17時間の移動を行っていく。セナは一言も話すことないでいるので、ヴェロニクが頬をいじり身体を触って遊んでいる。輸送機の日本への着陸と同時に、セナはヴェロニクの頬をいじるのを止める。


セナ「お待たせしました。作業完了です」

ヴェロニク「もー。何してたの?」


セナはしばらく黙ったままでいる。


ヴェロニク「……?」


セナはヴェロニクの頬をひっぱたいた。輸送機の中で、ヴェロニクは程よく吹っ飛ばされる。

セナ「あぁ、すみません。威力間違えました」

ヴェロニク「痛っ!!ガチ痛っ!!奥歯、奥歯無事!?」


マイローが水を吹き出した。堪えていえうようで、だが少し笑っている。


那東「珍しくマイロー殿が笑っているでござる。セナ殿、でかした!」

ベネット「で、お前は長々と何してたんだ?」

セナ「はい。最初の30分で、インターネット上のあらゆるWebサイトやSNSに、我々ORCAの作戦中の映像をアップロードしました。残る全ての時間を用いて、それら動画を、アカウントを大量に開設して拡散しました」

ヴェロニク「16時間と30分もアカウント作り続けてたの?」

那東「ソシャゲのリセマラとは次元が違うでござるよ?」

セナ「少しでも相手の士気を落とせれば大丈夫です。上手くいっていると良いのですが」

ベネット「すげぇよなぁ。AIがヒトを操る時代になったか」

マイロー「しかも戦闘行為として、ですから。セナ、どんな動画を上げたのですか?」

セナ「できるだけ残酷で印象に残る映像を探してアップロードしました。近接で流血ありに限定して、私のカメラに残っていた映像をスキャンした結果、マイロー様と那東様がメインとなりました」

ヴェロニク「えぇ~私は~?」

セナ「ヴェロニク様とベネット様はイメージアップに繋がると推察します」

ベネット「ヴェロニクの嬢ちゃんはともかく、俺も?」

セナ「推定ですが、ベネット様はイケメンの部類かと」

ベネット「ガチ?言われたことねぇわ」

セナ「顔にはどうやら偏差値があるようです。私なりに数値化した結果ですが、この結果は開発者の意向に左右されています」

ベネット「あの婆さんは黒人が趣味なんだな」

セナ「はい、おそらく」

ベネット「ハハハ、悪い気はしねぇな」


輸送機を降りて軽車両に搭乗。東京、横田基地から埼玉そして群馬へと移動していく。高速道路を降りて一般道、バイパス付近のコンビニにある大きな駐車場に、かなり大きなトラックが置いてあった。車両の中から、トラックのペイントを確認する。


セナ「ありました。7対の刺と細い足、ハルキゲニアの絵柄です」

ヴェロニク「きっも」


車両から降りて、トラックを鹵獲する。ドアの鍵は空いており、キーは内部に置いてあった。ヴェロニクが運転席、セナが助手席に搭乗する。


セナ「ナビをします」


トラックのコンテナ内部には、大量の鉄の延べ棒があった。


ヴェロニク「はーい……ん?わぁ、違和感あると思ったら右ハンドル!」

セナ「変わりましょうか?」

ヴェロニク「いいよいいよ」


トラックが出発し、バイパスを通過していく。高速道路が見えるなか、段々と車の数が減っていき、パトカーや自衛隊の車両が増えていき、検問のようなものが敷かれているのが見える。道路に出てくる自衛隊の人間が、赤いライトを振っている。


ヴェロニク「これ、どうするの?」

セナ「大丈夫です」


セナは装備から信号弾を取り出すと、窓を開けて上へ撃った。赤い花火がはぜると兵士が引いていき、検問はトラックを無視した。


セナ「こうすれば自衛隊は分かってくれます」

トラックが通過、側面に大きな建物が見えてくる。那東は扉を開けてトラックの上にあがると、狙撃銃を構えた。


那東(殺傷兵器も、当てなければ運用可能。しかし……)

那東がスコープで敵を探すも、どこにもいない。

那東(無線)「セナ殿、敵は見えるでござるか?」

セナ(無線)「いいえ、1人も見えません」

那東(無線)「狙撃兵無し、まぁ一般人に狙撃銃を供与したところでであろうから、妥当な選択でござる。このまま右折して接近が宜しいかと」


トラックで右折すると、バリケードが積まれた駐車場があった。バリケードの外に、座り込んでトラックを睨んでくる集団がいる。その前方には銃をが捨てられてており、ヴェロニクは溜め息を出して、トラックを止めた。


ヴェロニク(無線)「奴ら、手口変えたわよ。あそこから先に進ませる気がないみたい」

那東(無線)「脅せば良いのでは?」

ヴェロニク(無線)「武装解除してるわ。まぁ手を上げてる訳じゃないから何とも言えないけれど」

マイロー(無線)「拳銃やナイフで武装している可能性もあります」

ヴェロニク(無線)「一般人がそんな軍人向けに配慮してくれる訳ないでしょ?あれで武装解除したつもりなのよ。あるいは、我々に戦意はない、その言い訳さえできれば良いってスタンスじゃないかな?後は弁護士に任せるって感じの。法律が私たちを守ってくれるって信じてるのよ」

ベネット(無線)「最初に銃を出したのはアイツらだろ?」

ヴェロニク(無線)「表現の自由とかぬかすわよアイツら」

セナ「カメラを切り替えて観察していますが、確認できる限りで、武装は確認できません」

ベネット「俺が行ってみるか?」

セナ「1人で、ですか?」

ベネット「対テロでマトモに訓練受けてるのは俺だけだぞ。下手に刺激されても困るからなぁ」

セナ「私も同伴します。つまり喋らなければ良いのですよね?」

ベネット「そうだな……分かった、頼むよ。あと、全員一応戦闘体勢で頼むぜ」

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