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SENA  作者: 雅号丸
第1章 CTBT:Comprehensive Tactics Beta Test

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23話 ファリャ スペイン舞曲第1

ORCAは敵戦線を突破し浸透、それに気付いた敵部隊をいくらかはねのけると、まだ無事な建物を入る。セナが目を閉じると、帯電を始めた。帯電は収まると、ORCA各員の端末に、赤点と矢印が映る。


セナ「現在の敵配置を検知、端末へ映しました。衛星写真から地形を把握、大まかなルートを計算、表示します」

那東「とんでもない技術でござる。いったいどうやって?」

セナ「相手がイスラエル軍ならこうはいきません、ですが現在相手しているのはアルバタルです。旧式の装備・兵器を多分に利用する彼らは電子戦は不可能、なんらかの電波を出さない方が難しいです」

ヴェロニク「なんでイスラエルはアルバタルなんて雇ったのかな?っていうか、アルバタルってジハーディストでしょ?ガザ地区はハマス、つまりイスラーム原理主義者の場所、戦う理由なんてなくない?反乱されたらどうするの?」

セナ「報告によれば、アルバタルは他のイスラム過激派テロ組織とは違う思想を持つとされています。イスラム原理主義、サラフィー主義、汎アラブ主義……テロリストたちにも様々な主義主張が存在しますが、アルバタルの主義主張は、汎アラブ主義と資本主義。大抵のイスラム過激派には反シオニズム、反ユダヤの思想があり、資本主義を掲げる都合上、味方は限定されます。イスラエルに渡ったのは、あるいはイラクやアフガニスタンでは極少数派だからかもしれません。噂では、元々支配者層が中心だったシーア派ムスリムのテロリストなのではという憶測もありますが、新興の派閥な関係上組織全体の把握や利害関係の捜索は、イギリスでも難しかったようです。なぜイスラエルにアルバタルが行動範囲を映したか、なぜガザ地区を標的に戦っているのか、ここが大切になる可能性があります」

ベネット「案外イギリスの時みたく、また金目当てだったりしてな。だとしても、そこまで金が必要な理由も分からないが」

セナ「私の探知範囲や衛星写真にドローンは写っていません。サーヘルはもっと奥にいます、進みましょう」


目視で環境を、端末で敵を見ながら、瓦礫や死体を活用して移動を繰り返し、様々な敵兵士に発見されることなく移動をしていった。ビルの瓦礫が遠くに見えるなか、倒壊していない建物群が現れた。


セナ「デイルバラ南方……本来はここまで進んできた全ての領域がハマス、つまりパレスチナ側のものです。戦車隊が破壊された時点で、防衛不可能として戦線を後退、そこにアルバタルが侵攻をしました。もし拠点を構えるとしたら、ここにあるビル群でしょう。防衛を強化する目的で輸送中だったハマス側の戦車隊は、このあたりにある道路で破壊されています」

ベネット「セナ、サーヘルを発見できるか?ヤツがドローンを操作しているなら、コントローラーとドローンの間に何らかの電波が飛んでるはず。その電波の集合場所こそ、ヤツのいる場所だ」


セナは再度雷を纏う。


セナ「とりわけ電波が出ているわけではないようです。おそらく今は操縦をしていないかと」

マイロー「バイオリンの音を探しましょう、手癖で演奏しているかもしれません」

セナ「指向性マイクを展開します」


セナが手のひらを、様々な角度に向ける。セナは電波を受信していく。会話の声、電話のノイズ、砂と布が擦れる音。そのなかに、羽音が混じる。感度を上げていくと、喉からえぐり出すような声が聞こえる。


???「行、け」


演奏が聞こえてくる。ファリャ スペイン舞曲第1、その雄々しく自由奔放なメロディーは一切の曇りがない。周辺の至るところの瓦礫の隙間から、音に慌てて飛び立つ鳥の大群にも見えるドローンたちには、各々小銃やロケットランチャーを備えていた。


セナ(ド起動するまで、ローンが探知できなかった。あのバイオリンは、そもそもドローンたちの電源すら操作できるということでしょうか?)


飛び立つドローンたちは、大群となり、ビルを抜けて瓦礫を越えて、ORCAが来た方向へ向かっていく。いくらかのドローンは拠点とおぼしき場所へ降りていった。ベネットがそれを見ていた。


ベネット「いくらかドローンを残しているな、自衛用か。おそらく今ドローンが入っていった場所にヤツがいるな」

セナ「はい、音源の位置に羽音が足されました。足音は4つ、4人護衛がいるということでしょう」

那東「ビル群、狙撃は難しい故、拙者も近接にて対応するでござる」

ヴェロニク「セナ、付近に車両の反応あったりする?」

セナ「東側に一台、稼働中のエイタンACPの反応があります」

ヴェロニク「イスラエルの輸送車じゃない。もしかして関わってるとか?イスラエルってアメリカと仲良しよね?イギリス、つまりNATO側にテロを起こしたアルバタルに接近してるのかしら?」

セナ「アルバタルの戦闘を監視している?付近にいくらか足音があります。少し待機を、マザーや指揮官に連絡します」

エメラルド(無線)「イスラエル軍の輸送車だと……セナ、情報を集められるか?」

セナ(無線)「接近すれば可能ですが、それではサーヘルには」

エメラルド(無線)「もしイスラエルとアルバタルに関係があるとすれば国際問題だ。アメリカはイスラエルと良好な関係を築いている。NATO側で問題を起こした国際テロ組織がイスラエルと手を組んでいる場合、アメリカはイスラエルとの関係を悪化させる必要がある……」

ヴェロニク(無線)「サーヘル側で戦いがあったら、アイツら動くのかなぁ」

セナ(無線)「観戦武官のように、許可を貰って偵察しているだけかもしれません」

エメラルド(無線)「許可?これは国家間の取り決めによる戦争ではなく、あくまでも突発的な武力闘争でしかない、許可など必要なく、イスラエル軍がいるだけ……そこはもうガザ地区だろう?国境を越えている軍の部隊があるだけで問題だ」

那東(無線)「始末は?」

エメラルド(無線)「殺すことは問題ない、お前たちに個人や組織を特定できるものを持たせていないからだ」

ベネット(無線)「よし。マイロー、俺、那東でサーヘルを確保。ヴェロニクとセナは車両を調査・確保してこい」


戦闘始めていくらかそっちに向かうでしょうから、そのタイミングで奪っちゃうわ。増援気をつけてね。セナ、敵の位置よろしく」


ヴェロニクとセナが分かれ、マイローたちはビル群へ向かっていった。足音は最小限にビルの階段を登っていき、護衛が孤立したタイミングで那東が切り伏せ、喉をさして声を上げるのを防ぐ。ドローンの偵察をかいくぐり、また護衛を倒した。そして音の発生源である階の部屋の前に来る。開け放たれた扉の片側に集中して、ベネットが後ろを警戒しながらマイローが少しずつ視界をカットするように小刻みにリーンしながら部屋を偵察し、足を一本踏み入れ、1歩、2歩。奥のリビングから先は崩れている。マイローはその角を曲がる。ソファーの上でバイオリンを引く女が1人いた。


???「きた、わね」


マイローが手錠を持って飛びかかった瞬間、部屋の四方から小型のドローンが飛び立ち、マイローへ接近する。那東が銃でドローンを撃ち落とし、マイローの腕を引っ張って部屋を飛び出た。部屋はドローンの爆発で崩れる。再度マイローが部屋へ突撃すると、崩れた部屋の下から崩れた窓、ビルの外へ向かって中型のドローンに両足で乗って飛ぶ女がいた。


マイロー「サーヘル!!」


セナが声を拾う。


サーヘル「し、ね」


ドローンの大群がビルを取り囲み、ロケットランチャーで破壊し始めた。ベネットを戦闘に階段を下りると、ベネットが銃を構え、ビルを出てサーヘルを捉える。セミオートでショットガンを射撃し続け、20を越えるドローンを撃ち落とした。ペレットの一部がサーヘルへ向かうが、ドローンが束になってサーヘルへ重なり守る。ベネットはリロードに入った。


マイロー「隊長、サーヘルの足場となっているドローンを破壊してください!」


ベネット「そうしたい所だが、ドローンをドローンが守ってやがる!」

那東「拙者の狙撃で破壊を……いや、動き回るっているなら難しいか?」

ヴェロニク(無線)「何人かそっちいったわ、気をつけて」

ベネット(無線)「そっちはどうだヴェロニク!」

ヴェロニク(無線)「そっちに6人はいってるよ、2人残ってる、これくらいならなんとかするわ。1分でやる、そっちはお願い」


ロケットランチャーによりビル一階が破壊され、傾きながらビルが瓦解していく。ビルがビルに当たり崩れていくなか、ドローンは絶え間なく銃撃をORCA加えていき、各員が分断された。ビル群から狙撃があり、遮蔽に隠れるマイローの頬をかする。那東がしゃがんで狙撃地点へカウンタースナイプを行い、護衛を仕留める。


ベネット(無線)「護衛は残り1人」


ベネットの足元にグレネードが転がり、別の遮蔽へ移動しようとすると、護衛が掴みかかってきた。銃は持っていない。


マイロー(無線)「隊長!!!」


ベネットは腕を引き剥がすと、数回顔面を殴ってふらつかせ、グレネードに相手を覆い被せ、さらに上から押さえつけた。グレネードの爆風が護衛を吹き飛ばし、ベネットもまた宙に浮かぶ。


那東「ベネット殿!!!」


ベネットの着地に向かってロケットランチャーが放たれる。那東がロケットを狙撃し破壊、マイローがベネットを抱えて遮蔽に隠れる。


マイロー(無線)「イスラエル軍がこっちに向かっています、早急に仕留めなければ!」

ベネット(無線)「護衛はもういない、あのバイオリンを壊すぞ!」

那東(無線)「コントローラーを、でござるか」

マイロー(無線)「策は!?」

ベネット(無線)「賭けが一つ、保険が一つ」

マイロー(無線)「何をしますか!?」

ベネット(無線)「アルミを探せ!!あと鉄パイプ!!」

マイローが瓦礫のなかを走り回って、コンクリートのガラをどかそうとする。その頭に、過去夢で見たような光景が広がる。吹き飛ばれた部屋と、一本の腕。マイローはそれを振り払い、鍋や食器が落ちている所にアタリをつけて捜索する。芯に巻き付いたボロボロのアルミホイルと鉄パイプを見つける。那東とベネットの援護ですぐに戻ると、ベネットに渡した。

マイロー「これで何を!?」

ベネットは手持ちのC4を取り出すと、起爆の信号を受信するアンテナを除いて、ひたすらアルミホイルを巻いていった。芯のみとなったものを捨てると、遮蔽から顔を出し、立ち上がってC4をフワッと投げると、鉄パイプでぶった斬るように芯を捉えてフルスイング、放物線を描いてサーヘルに飛んでいく。ドローンはそれがサーヘルに接近する前に射撃、爆発しない。


ベネット(C4は火で燃えても爆発しねぇんだぜ?HAHAHA)


ベネットが起爆装置を起動、C4は起爆され、爆風に乗ってアルミホイルがあたりに散らばっていった。すると爆破に近いサーヘル正面のドローンたちが一斉に行動を停止、ただ浮遊するだけとなった。

ベネット(お手製チャフ、バカ簡単なECM【電子対抗手段】だ。普通なら効果ないだろうが、操る数がこんだけあって、周りは瓦礫と砂埃、最悪の電波状況のなか、電子機器はどこまで電波で繋げるんだ??)


ベネットはそこにセミオートショットガンで銃撃を加えていき、サーヘルの正面のドローンを全て破壊、ドローンはサーヘルの正面へ集まろうとする。那東が背中に背負ったドラグノフ狙撃銃を構え、ベネットの隣でしゃがみ、サーヘルの乗るドローンの羽を撃ち抜いた。サーヘルは落下する。ドローンの動きが止まり、羽音がビル群を包み込むだけだった。

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