12話 台湾事変および第二次日露戦争
早朝、イギリスの空軍基地ブライズ・ノートン。ORCAの面々は、長机と椅子の並ぶ部屋に通される。エメラルドが、猫耳フードのふわふわしたピンク色のパジャマを着こんだまま、長机に突っ伏して大量の資料と共に寝ている。
ベネット「ブリーフィングの部屋って、どこも似たり寄ったりだな」
ヴェロニク「あぁ、寝不足かもぉ……」
那東「朝の4時、呼び出し、何かあったでござるな」
ベネットがエメラルドを起こすと、ヨダレが資料にへばりついて糸を引いた。目のクマが酷い。
エメラルド「……マズいことになった」
ベネット「そんくらい分かってる。何があった?」
エメラルド「第三次世界大戦終結直後、台湾に中国、日本に新ソ連が宣戦布告を行った。当初から想定されていた台湾事変、第二次日露戦争が勃発。台湾は上手く対応できているそうだが、日本が押されている。日本は既にサハリン(樺太・千島列島)が奪取され、北海道に進撃を開始した新ソ連に自衛隊がまったく動けていないようだ。一部自衛隊は上層からの指示を無視して北海道で交戦中だが、大部分の自衛隊は上から指示がないことで、対応が遅れている」
那東「日本は現在、事実上親中国政権によって支配されている。だが、親しいのは中国とだけだと思っていたが、どうやらそもそも共産圏に与しているようだな」
エメラルド「こちらの調査結果だが、どうやら日本政権はBRICSへの加入やNATO脱退を考えていたようだ」
マイロー「ブリックス?」
セナ「Brazil, Russia, India, China, South Africaの頭文字を取った、東側がにおける主要国首脳会議(G7)に類する会議です」
エメラルド「手土産としてサハリンを割譲する代わりに、日本をBRICSへ加入させる算段だろうというのが我々の見解だ。これは予想だが、国民の誰もが望んでいないことだろう」
那東「日本人はとにかく政治に興味がない。話題としてもタブーであり、嫌われないために政治に興味を示さないなんてこともあるくらいにだ。政治家はそれがとても都合良かったのだろう。さらに国民は政治や軍事に興味がないクセ、核武装反対、移民受け入れ反対は差別、可哀想だから人を殺した熊を殺すななどとのたまう人間も存在するほど、自分が善人であることを訴えたがる国だ」
ヴェロニク「なんか声に力入ってるねぇ~」
エメラルド「我々はこれを日本の上層による暴走として、NATOとして扱い対処する。那東は北海道出身だ、現地での仲介を頼むぞ。では各員、定刻12時に日本へ出発する、それまで……私を、起こす、な……」
エメラルドは座ったまま、頭を資料に突っ込ませた。
2040年5月25日、12時30分。軍用の輸送機に貨物ごと搭乗したORCAの面々は、同乗されている戦車の回りに集まる。ヴェロニクが砲塔に座った。
ヴェロニク「日本かぁ、色々と知ってはいるけど、行ったことはないなぁ」
マイロー「どんな国なのでしょう?治安が良いとは聞いたことがありますが」
那東「財布を盗むために手首ごと切り裂いて強盗した人間や、3人の中学生を強姦した人間がなぜか不起訴になる国でござる。海外への妙なまでのばらまき政策、海外実習生制度などの実質的移民受け入れ制度、度重なる政策失敗で今や最も貧しい先進国になっているでござる」
ヴェロニク「ドイツに次いで土地がヤバいよねぇ。海に囲われてるからまだマシだけど、上が新ソ連、西は中国に韓国に北朝鮮。地震台風火山噴火大雨洪水、中国からは黄砂、森からは花粉、国内にはアメリカの軍事基地……」
ベネット「アメリカの軍事基地を敵みたいに言うなって」
ヴェロニク「でも、実際そうじゃない?日本って、例えば核武装してないじゃない?アメリカが日本への核攻撃に報復するって話だけど、やらない可能性だってあるわけで、軍隊も持てないから自衛隊なんて名乗ってる。記憶が確かなら自衛隊は2個師団程度しかいないし、国内の軍事関連の企業はまったくないし……自立して国防することすら難しいのに、まわり敵だらけ」
那東「かなり詳しいでござるな」
ヴェロニク「私、生まれてからずっと、軍人になりたいって思ってたんだよね。でも、身体がどうしても強くなっていかなかったの。今でこそロケットランチャー担げるけど、昔はもう全然……だから、知識はいっぱい頭に入れてあるわ」
セナ「しかし今後、私のようなアンドロイドが代替する可能性があります」
ヴェロニク「今のうちに軍人っぽいこといっぱいしないとねぇ。力も技も、今ならあるし」
ベネット「なぁ、俺みたく嬢ちゃんも軍隊にいたのか?」
ヴェロニク「いなかったわ」
ベネット「嘘つけ」
ヴェロニク「本当よ、ちょっと事情があって、どうしても軍に入れなかったの。いや、なんとか入ろうとはしてたんだけど」
セナ「フランス軍の倍率はそこまで高くなかったはずです」
ヴェロニク「いや、まぁそうなんだけど……」
那東「ふむ、話を戻してすまないが、というか純粋に気になるのでござるが、セナ殿は本当に兵士や軍人の代替となるでござろうか?」
セナ「……?」
那東「アンドロイドの製造は簡単ではないでござろう。技術を持つ国ならば露知れず、そうでない国々、それと鉄資源やレアアースの不足する地域では結局、人が軍人なのではないかと思ってしまう。軍人よりアンドロイドが人件費として安くなる可能性は極めて低く、ビジネスモデルとしては量より質が妥協点。儲かるビジネスとは思えないでござる」
セナ「マザーの目的はお金を稼ぐことではありません」
那東「然り、故に疑問なのでござる。その夢、どうやって叶えるかと。兵士をアンドロイドに置き換えるなどというには大きな夢、だからこそ他者を巻き込まなければ、それは叶わない。そして他人を動かすのに最も効果的なのは、ビジネスモデルとして成立させること、つまり儲かる所にあるでござる。アンドロイドで儲けるビジネスモデルが、拙者は気になるでござる。お金は持っている手前、できれば今のうちに投資しておきたいでござるが、例えばアメリカはどのように利益を算出するつもりでござるか?」
セナ「それは、インサイダー取引の申し出ですか?」
那東「拙者、剣客ゆえ、むしろ部類はアウトサイダーにござる」
ベネット「マイロー、これ上手く言えてると思うか?」
マイロー「いえ、サイダーでかけているだけで、インサイダー取引の持つ意味合いとは関係ありません」
那東「渾身の切り返しも不発、しょんぼりでござる……」
セナ「参考になります、今のは面白くない、と……」
ヴェロニク「切れ味すっご、日本刀かな?」
パイロットたちから、連絡が入る。
パイロット(無線)「風速、機体、共に安定。オートパイロットに移行します。ORCAの皆さん、今のうちに寝てください」
海を超えて東南アジアへ入り、給油したのち北東へ飛んでいく。日本、千歳基地に到着した。米軍と自衛隊の装備や人員が、入り交じっている。中へ中へと通され、周囲がブリーフィングルームと呼んでいた場所に入る。那東が呼び止められる。
??「那東くん」
那東は振り向いて、その壮年の顔を見た。
那東「……安達殿。あなたは公安の検察だったはずです」
安達「上の動きがおかしいってんで、北海道在住の自衛隊の幹部が、警察とか、戦えそうなマタギも全員動員するってんで、今ここにいるってことよ」
那東「あの時は、お世話になりました」
安達「胸糞悪い連中を一掃してもらった礼だよ、礼。あの後、しっかりぎっくり腰になった上層をなんとか説得して、法整備を進めさせてもらった。あんな事件はもう二度と起こらないよ。しかし驚いた、アメリカから特殊部隊が来るって聞いたから、エ○スペンタブルズとか特○野郎Aチーム的な連中が来ると思ってたんだけど、多国籍なんてもんじゃないね、これ。あのメカメカした娘だれ?鉄腕ア〇ム的なアレ?」
ヴェロニクが那東の隣に来た。
ヴェロニク「ご家族ですか?」
安達「まぁ、実質そう……なのかな?」
那東「紹介しようヴェロニク殿。こちら拙者の恩人、日本の警察の安達健二検事だ」
安達「どうも、安達です。初めまして」
安達は頭を少し下げる。
ヴェロニク「わぁ、やっぱ日本人って頭下げがちなんだねぇ。宜しくぅ」
安達「あぁ、これはもう染み付いたものですから。しかし、那東くんもすみに置けないねぇ。これなら……いや、それより作戦会議の時間のはずだ。北海道の安全が確保されたら、パトカーで良ければあそこへ連れてってあげよう」
那東「宜しくお願いします」
ブリーフィングルームに通されると、いつものような、青く白いホログラムの浮かぶ、暗めの部屋に通される。長机の先に、エメラルドがいた。
ベネット「あれっ、お前も来るのかよ、てかどこいたんだ」
エメラルド「お前らが談笑していた戦車の中で眠っていたんだ、寝れなかったがな。まったく……ではブリーフィングを始める。各自、端末からデータを確認しろ」
各員端末からデータを見る。
ベネット「こりゃ、随分だな」
エメラルド「現在、小樽・旭川・網走を繋いだ経路にある国道がそのまま前線となっており、敵主力は札幌に向けて現在進行中とのこと。現存する兵力でこれの当たる場合他の地点の防衛を疎かにしなくてはならない。札幌を防衛させて穴を作り、そこに電撃的に攻撃を加える算段だろう。日本が公的に、北海道侵攻に際して動かしている自衛隊はほぼ存在しない。現政権は完全に新ソ連に、北海道全域を割譲しようとする動きと捉えて良い。共産圏拡大を防ぐため、米軍はこの度、日本の売国奴勢力が謎の連続死を遂げたことで、新たな法的措置と部隊を組織することに成功した」
ベネット(絶対にウチがなんかしたなこれ……)
エメラルド「これは有事の際、他国の援軍に限り、自衛隊の規定である動員可能上限を大きく越える動員を可能とすることになった。指揮系統もこちらで管理することになるため、日本政府からの指示は我々米軍より優先されることはない」
ベネット「じゃあ、自衛隊は完全に米軍傘下になるわけか」
ヴェロニク「傀儡政権待ったなしだねぇ~」
エメラルド「新ソ連の北海道上陸を阻止しているが……奴ら、とんでもない作戦を展開し始めている」
ベネット「……こりゃ、あなんだおい」
ベネットは端末に表示されるデータに驚いた。
エメラルド「奴らは飛行ドローンによる反応装甲、およびレーダージャマーを展開。たかが数万円のドローンに数千万のミサイルをぶっぱなす必要が出ている」
マイロー「ドローンによる反応装甲?」
エメラルド「手動でドローンを操作し、中距離はドローンに積載した9K38イグラなどの携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)による迎撃。近接防御は、爆弾を積んだドローンによる自爆特効で実質的な反応装甲としてカバーするというものだ。全方位・全射角に対応した反応装甲は、確実に相手は初弾を回避できるというわけだ。海戦・陸戦でかなり強く出られている。陸・海で同様の装備を持っており、現在三菱の高出力レーザーやアメリカのP-HELなどの、レーザーによるドローン破壊をするための、指向性エネルギー兵器を運搬しているが、相手はそれを待つことはないだろう。現在の対応としては、榴散弾や散弾銃による面制圧射撃が関の山だ。我々の目標は稚内にある新ソ連日本侵攻指令部を破壊する所にある。セナ、キサマならどうする?」
セナ「ドローン対策の不足に対する提案、広域に通信ジャマーに類する電波を流す。私のデータにはありませんが、EMP兵器は現在開発されていますか?」
エメラルド「EMP兵器は現在のところ開発はできていない。また核弾頭による擬似的なEMPは範囲が2000kmを越えるため実用性皆無だ。何より、日本国民が核使用に反対するだろう」
セナ「であれば、ヘリコプターを利用して日本海側から大きく迂回して、稚内へ直接ヘリボーンを行います」
エメラルド「制空権は取りきれていない、成功確率は低いだろう」
セナ「現在展開している自衛隊および米軍のデータを要求します」
エメラルド「あぁ、すまない。今送る」
セナ「予測、睡眠不足」
エメラルド「直近48時間の睡眠が4時間だからな……」
セナは帯電しながら、目を閉じてデータを解析していく。自衛隊の人間が目を輝かせていた。帯電が終わり、セナは目を開ける。
セナ「しじま作戦を提案します」
セナはホログラムを投影していく。札幌を狙う主力を赤い大きな凸の字のマークで描き、青色の凸が日本海を迂回して稚内の港へ潜入していっている。
セナ「そうりゅう型潜水艦12番艦、とうりゅう。この機体は、非大気依存推進(AIP)やリチウムイオン電池により、世界にある潜水艦の中でも、トップクラスの静動を実現しています。新ソ連の海軍力のほとんどはブリゲートなどにとどまっており、また動きの遅く配備に時間がかかる潜水艦は現在、北極海における従軍が確認されており、海上はともかく、海中ならば十分に勝算があります」
エメラルド「潜水艦で稚内へ接近した後は、どうする?」
セナ「とうりゅうが発射できる魚雷発射管6門のうち5門に、小型潜水艇を装填。我々を稚内の敵司令部である、稚内港へ投射します。そこからは我々ORCAが、現地を偵察しながら制圧します」
エメラルド「航空写真や斥候で、できるだけ事前に情報は掴んでおこう。ある程度情報が集まり次第、その作戦を決行する。自衛隊幹部各員、異論は?」
自衛隊隊員「……アメリカさんの決定には、もう逆らえませんよ」
エメラルド「では、しじま作戦の決行を決定する。書類はステイツマンに何としても通させるから、我々は準備に入るぞ。小型潜水艇で向かう以上、最終的には稚内湾内を泳ぐことになる。武装は水中から運べる武装に限定される、サービスライフルであるF2000は使用できない。武装はこちらで選定する、選定が完了した時点で数日訓練、とうりゅうが北海道に到着した段階で即座に展開する。あと誰か私にエナドリを頼む」
ベネット「知ってるか?そういうのよりコーヒーの方が、カフェイン取るだけなら効率良いんだぜ?」
エメラルド「知らん、飲みたいんだ!このままだと眠ってしまう!!」
ベネット「お前じゃなくても書類くらい作れる。お前は休めって」
安達はブリーフィングルームに残るORCAの面々と会話をしていた。
セナ「疑問があります。なぜ新ソ連や中国は、このタイミングで戦争を仕掛けたのでしょうか?」
マイロー「それは確かにそうです。日本はNATO加盟国、更にアメリカの基地すらある……もっと言えば、セナさんも言うように、タイミングがおかしい。例えば第二次ノルマンディー上陸作戦時点で戦争を仕掛けるのが、得策だったと考えます」
安達「……なんというかな。ある意味でこの戦争はNATO、そしてEUが原因でもあり、また日本政府のせいでもある」
ヴェロニク「私たち、何かしちゃった、かな?」
安達「軍事的な弱点が、できてしまったんだ。日本に、核弾頭を発射する能力がなくなったという、ね」
ヴェロニク「核弾頭?」
安達「2040年現在、日本は20年以上にわたって、政権は親共産圏への道を進んでいった。国力が著しく低下するなか、日本政府は反抗してくる保守派勢力に対抗するため、SNS規制を初めとした印象操作を開始した。新聞やテレビなどのいわゆるオールドメディアを通じて、世界平和を掲げ原子力発電所の解体および国内の核物質の完全排除を宣言。外国人選挙権を成立させ、圧倒的なまでの高齢者・外国人優遇政策により、少子化も相まって国内における若者の意見を完全に封殺、保守派政権は度重なる暗殺にも見えるような謎の連続死。防衛省は自衛隊の武装を弱体化し、全てのミサイル・魚雷関連の技術を放棄。核物質であるウランやプルトニウムは国内からなくなり、また核発射技術も失われた」
セナ「日本は、持たず・作らず・持ち込ませずというフレーズを持つ、非核三原則に代表されるように、核武装こそしていませんでした。ですが、製造技術と核物質を国内に留めることによって、核兵器不拡散条約(NTP)などに抵触しない程度の潜在的核能力を保持による実質的な核武装、核保留戦略(JAPAN OPTION)を取ってきました。島国であるがゆえに、狭い面積に人口が密集することになる日本において核による被害は甚大になりやすく、そのため核抑止を捨てることは、あってはならないことと推測します」
安達「国民は流されたんだ。核は危ない、捨てなければならないという綺麗な正論に。そして、安全は消え去った。おそらく新ソ連の狙いは、核による報復がなくなったことを理由に、日本の海の資源を求めてきたのだろう。日本の海には、無限の夢が詰まっている」
ヴェロニク「……ねぇ、ひょっとしてさ、不鳴神って」
安達「不鳴神は、日本に存在していた最後の、核発射可能な装置だ。国防省は簡単に手放したがな」
ヴェロニク「そっか。分かったわ、日本がずっとレールガン開発してた理由」
安達「分かった、とは?」
ヴェロニク「イメージよイメージ。ミサイルと核弾頭は結び付いても、レールガンが核発射できるなんて国民は思わないわ。だから誰がどれだけ指示を出そうと、関係者が選挙で落とされることはない。核武装を進めながら、選挙でも勝てる」
安達「驚いたお嬢さん、まさにそうだよ。そしてそれは今、全機ヨーロッパにある」
ヴェロニク「でも、結局さ?アメリカが関わってきた瞬間に新ソ連も負けじゃない?仮に日本が核を発射できないとしたとしても、それで戦争に勝てるって踏み出すなんて」
セナ「アメリカは、最初から日本の国防に関与する気がなかった……?」
安達「新ソ連が踏み込んできたということは、新ソ連側の諜報組織は、アメリカは核を撃たない、日本をわざわざ守ることはないという結論を出したのだろう。まぁそれもそうさ、アメリカは、海と、弱い国に囲まれている。国土がどの列強とも繋がっていない、地形がそもそも強すぎる。そんなこと考えている場合でもないな。時間も迫ってきている」
マイロー「敵の主力が札幌に来ることでしょうか?」
安達「いや、中国だ。中国には、国防動員法というものがある。これは国家の主権や安全を守るため、有事の際、企業も含めて、中国のあらゆる組織の人間、資源、財源の徴用が合法化されるという、とても身勝手ながら実行力のある法律だ。中国がもし国防動員法を発動した場合、これまでの政策により中国へ売られてしまった多くの日本の土地や工場、金融機関が根こそぎ中国のモノ・領土になってしまう。日本にはそうした国家による私財の徴収に関する法律がない関係上、また親共産なため、それら徴収物を法的・軍事的に取り戻すことは不可能だろう。確実に国力を大きく削がれてしまう。今はアメリカと日本保守派勢力の関与を避けるため、つまり中国と台湾の1対1の戦争のために国防動員法は発動されていないが、それも時間の問題だろう」
セナは帯電する、しかしすぐに収まった。
セナ「敵は新ソ連だけでなく、中国もそうであると推察します。一連の親共産圏勢力による日本弱体化、およびこの日本侵攻の最大の目的は、NATO加盟国である日本を滅ぼし東側勢力として組み込むこと。それらは全て、東側全てをBRICKSへ取り込むことが目的であると推察します。また、日本の土地のなかで最も中国に買われているのは、北海道なので、もし新ソ連と中国が結託している場合、作戦として足並みが揃っていないと言えます。台湾の抵抗は成功しているため、国防動員法を発動する暇すらないのかもしれません」
安達「台湾様々ということだな。今の間に、やるだけやりたいが……はぁ、我々はやはりアメリカに頼るしかないのか」
ヴェロニク「むしろ日本は、戦争に勝ってからが大変よね。軍事的主導権はアメリカにあって、多くの土地は中国にあって、移民・難民も結構受け入れてるはずだから、ドイツみたく国民の主権も危ない、国内が政治的に割れる可能性も……」
安達「ははっ、後のことなど考えている場合ではないよ。ただ、移民や難民の問題はおそらくどうにかなる。日本が戦争状態になるにあたって、2025年以降に息を吹き替えした保守派勢力が、最後の抵抗をした。それは、移民・難民を強制的に日本国民に帰化させる法律と、徴兵令の復活および、永住権や定住ビザを持つ外国人や帰化人を日本兵士として前線に送り出せるよう整えた。徴兵令を断った時点で、永住権やビザ剥奪、国外追放などが行えるように、な」
ヴェロニク「それって……」
安達「結果、移民・難民のほぼ全員が国外へ逃げていったし、追跡ができたほぼ全ての移民が母国へ帰還した。【難民は難民ではない】という保守派勢力の言葉は一時期SNSに浸透した、すぐにトレンドから外されたがな。まぁそもそも、飛行機で日本に来れる人間がはてさて本当に難民だったのか。とにかく、日本はこの戦争を活かして、移民・難民を排除したんだ。よほど左翼の弱点を抱え込んでいたのだろうが、残りの政治的な弾数が不安になるよ」
セナは一瞬、帯電した。マイローがそれを見たが、セナはそれ以上話すことはなかった。
マイロー(セナが何かを弾き出した……不鳴神、核抑止、保守派勢力、セナはいったい何を導き出したののでしょう?)




