11話 オペレーション・スターウォーズ
2040年5月20日17時58分30秒、ドイツ北部、ベルリンから約300kmの位置にあるブレーゲという場所に、アメリカ軍の巡洋艦がたった1機のみ停泊していた。
装備にミサイルポッドなどは存在せず、代わりに甲板には5機のレールガンが搭載されている。陸に向けられており、人が入れるような大きさの口径のそれに、実際に人が入った砲弾が装填され、充電が始まった。
砲弾の中に入った人に、無線機から通信が入る。
エメラルド(無線)「これよりSeven Nation Armies作戦、第3段階へ入る。本作戦は、イージスシステムを組み込んだタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦を改造したものに、キサマらORCA特別分遣隊を乗り付け、レールガンにて敵国の首都ベルリンに人間大砲で突撃、敵ネオナチ勢力であるUHK、Unternehmungslustig HakenKreuz(意欲的な鉤十字)の現トップにしてドイツ首相、アデリナ・ヒトラーを殺害することにある。ベルリンに接近し次第、砲弾はAPSFDS弾の要領で分離し、キサマらを飛ばす。そこからは支給した滑空用特殊ジャンプスーツとパラシュートで降下しろ。この作戦で最も死ぬ可能性が高いのが、パラシュートによる降下時だ。できるだけ降下の時間を減らすよう、事前に訓練した通りに動け。作戦を完了し次第、現地で逃走計画を組み立てる、という必要はない。アデリナ・ヒトラーはESP技術を利用し、サイコキネシスで科学的にナチズムの洗脳を施しているだけであることが判明した。アデリナ殺害と同時に国民の洗脳は解かれ、兵士の指揮は完全に崩壊する。崩壊と同時に敵の軍事情報を抜き取り、セナを介して敵の情報を送信しろ。
成功すれば、この戦争は勝ったも同然、いや正確に勝ったと言える。全くの過言ではないからこそ、この作戦には多くの意味があり、成功すればキサマらは歴史書に少なくとも次のネオナチどもに検閲されるまでは乗るだろう。西暦二千年を越えた今、鉤十字のバカどもなど、ただの時代遅れの塵芥。奴らの歴史など、負けたという言葉だけで十分だ。それが世界の意見であり、決定事項である!では総員、作戦時間まで、砲弾のなかで待機せよ」
無線が終了すると、隊員たちは一斉に会話し始めた。
マイロー「レールガンって、磁場とかローレ……なんとかというので動かしてるんですよね?無線機などは大丈夫でしょうか」
那東「体調も心配になるでござる。セナ殿、苦しくはないでござるか?」
セナ「はい、私の機体は磁波の影響は受けませんし、バッテリーなどにも影響はありません。ORCAの装備は全て高級品ですが、レールガンが発生させる磁場に耐えられる確率は、0.8%。現地で直すか、敵兵から奪いましょう。我々の通信番号は170.66です」
ヴェロニク「ねぇ~、胸苦しいんだけど~」
ベネット「HAHAHA、嬢ちゃんは防弾ベスト着てないだろ?」
ヴェロニク「私、バストサイズHカップなんだよ~?着れるわけないじゃ~ん」
マイロー「よくそんな面倒な身体で、特殊部隊に入れたものですね」
ヴェロニク「マイローくん、そんなに私のおっぱい気になるの?」
マイロー「その呼び方は、あの……」
ヴェロニク「嫌なの?可愛いじゃん」
マイロー「嫌ではないですよ、ですがどうしてもココア飲料が頭をよぎりますね。フォネティックコードのKとも少し被ってて、無線が混乱するからやめておけと指揮官からも……」
セナ「マイロー」
マイロー「なんでしょう、セナさん」
セナ「少し、雑談できるようになりましたか?」
マイロー「……かも、しれません」
ベネット「そろそろ時間だ。喋ってると舌噛むぜマイロー、セナ」
セナ「音声でしかないので、私は舌を噛みません」
マイロー「残り時間は……」
無線機に連絡が入る。
マザー(無線)「2、1、発射ぁ!!!!」
2040年5月20日18時00分00秒。三日月の夜に、5つの砲弾が電気を帯びながら飛ばされていった。
セナ「装備を確認します。メインウェポン、F2000 Tactical ORCA Custom。F2000 Tacticalをベースに改良した特注モデルで、以降のORCA特別分遣隊のサービスライフルとなります。通常のF2000と違いコッキングハンドルの構造を簡素にし強度を高めてあります、HKスラップを多用しても問題ない構造となります」
ヴェロニク「HKスラップ。銃のコッキングハンドルを溝に引っ掛けてからマガジンを交換、その後に引っ掛けたコッキングハンドルを叩いて弾薬を装填するリロード方式。MP5とかG3とかの、ボルトストップができない銃で必要な行為。H&Kっていう会社でよく採用される方式で、めっちゃカッコいい!」
那東「最後のは予備知識と感想でござる」
マイロー「じゃあこれもH&K社製でしょうか?」
ヴェロニク「ううん違うよ。F2000は、FNっていうベルギーの会社のヤツ。わざわざドイツの銃使ってやる義理もないわよ」
セナ「排莢用チューブを改修し遊底とハンドルを設置、チューブ内の薬莢を一発ごとに排莢ができ、セミオート射撃ならば、任意のタイミングで薬莢を排出できます。ピカティニー・レールにはEOTECH EXPS2-0GRNとG43の4倍率マグニファイアを搭載、マズルにはサプレッサーを装備。通常の5.56mm×45NATO弾の他、5.56mm×45遷音速弾を使用します。マガジンはM4A1やHK416などNATOで多く採用されるSTANAG マガジンが入るため、ヨーロッパ圏内ならば補給は容易に可能となります。様々なタイミングで発生するメカノイズを、ある程度自分で操作できるため採用に至ります。本作戦は全ての兵士を暗殺しながら行動するため、支給される全ての弾丸が遷音速弾となります。通常弾より弾速が遅い関係上、弾道落下は激しいです」
ベネット「サブウェポンは……グロックだな。なんかでも形が妙だぜ」
セナ「グロック34。競技用にカスタマイズされたもので、精度を上げるためにバレルとスライドが延長されています」
エメラルド(無線)「ベルリンまで、残り150km」
ベネット(無線)「えっ、もう150km飛んだのかよ!」
ヴェロニク(無線)「G凄いけどねぇ」
セナ(無線)「結構喋ってます、ヴェロニクさん。体調は大丈夫ですか?」
ヴェロニク(無線)「もっと心配してくれたら、私もぉっと嬉しいなぁ~。具体的にはこう
、全肯定する感じで声をかけてぇ、それから」
セナ(無線)「了解、私はあなたの全てを肯定します」
エメラルド(無線)「ヴェロニク、マザーから伝言があるが、オブラートに包むか?」
ヴェロニク(無線)「お願い~」
エメラルド(無線)「シね、だそうだ」
ヴェロニク(無線)「包んでそれぇ~!?」
エメラルド(無線)「まもなくベルリン上空だ。弾頭は分離し、キサマらだけがベルリンへ突入していく。本作戦に際して、通常のパラシュートでは衝撃を緩和できない。よって
ジェット機の着陸に利用されるような横向きのパラシュートであるドラッグシュートと、ウィングスーツを用いた事実上の胴体着陸になる。ベルリン、国会議事堂正面には、Platz der Republikという芝生がある。若干短いが、着陸するならここだ。弾道の軌道は北から南へとなっている。その方角からでは着陸は難しい、ウィングスーツで方向転換し西から東へ入れ」
ベネット(無線)「そこにアデリナはいるのか?」
エメラルド(無線)「衛星と諜報班から確認・裏打ちできている、彼女は普段からそこにいる。朝から夜、ずっとだ。暮らしているとも言えるな」
ベネット(無線)「家とか親とか、確認できないのかよ」
エメラルド(無線)「まったく確認できていない。このテの者は大抵は傀儡だからして、付近に側近がいるはずだが、それも見当たらない」
ベネット「OKだ、こっからは現場作業だぜ」
エメラルド(無線)「弾頭分離まで、5、4、3、2、1」
セナ(無線)「ムササビになってきます」
火薬が炸裂し、ORCAを積んだ全ての弾頭は4つに分離する。ジャンプスーツにより、全員がムササビのように宙を貫いていった。首都ベルリンを見据えてバルニム自然公園に弾頭は落下していった。都市は輝いて見え、しかし赤と黒の鉤十字の旗が多く乱立している。
エメラルド(無線)「バードストライクに注意せよ」
セナ(無線)「風向きの関係上、丁度よく西側へ流れています。ベルリン西部テーゲル湖が目視で確認でき次第、東へ方向転換。シャルロッテンブルク宮殿を通りすぎて、ブランデンブルグ門へ繋がる国道を、やや左寄りで通過、Platz der Republikへ着陸します」
ベネット(無線)「先導頼むぜ、セナ。こりゃほぼ戦闘機みてぇな速さだ。俺たちじゃどうどうにも判断が難しい」
超低空飛行でベルリンへ入り、街中を何一つ観光できない速度で通過していく。セナを先頭にして、建物を縫うように移動する。地上には無数の兵士がいるだろうが
弾丸は飛んでこない。
那東(許可もなく発砲という訳にはいかないようだな)
国道をやや左寄りで通過していき、国会議事堂が迫った。
セナ(無線)「ドラッグシュート、レディ」
全員が、背中に背負う巨大な鞄に繋がる紐を握る。
セナ(無線)「アンフォールド」
ドラッグシュートを展開し、全員が大気を掴み取り、後ろに引っ張られる。急減速しながら芝生に滑走していき、地面を掘り起こすかのようにして、ほぼスライディングの姿勢で全員が着地した。着地と同時に煙幕を展開しスーツを脱ぎ、全員がヘルメットに装備したサーマルスコープで敵を狙い、煙の中から狙撃していく。国会議事堂の入り口に向かって、ヴェロニクは背中に携行している2丁の6連装グレネードランチャーを装備。煙幕のなかから狙いを定め、両手で射撃、進行ルートの障害となり得る箇所全てに擲弾し、スモークと榴弾が入り乱れて展開した。
ベネット「お前、そんなの(ダネルMGL)持ち込んでたのかよ……」
ヴェロニク「いいじゃん」
スモークの中に突撃してくる兵士たちは、那東の刀によって切り伏せられていく。
那東「発煙さえ撒いてくれれば、周辺の敵は拙者が受け持とう」
セナとマイロー、ベネットが正面の敵を倒しきり、国会議事堂へと侵入した。外観に反して内装はモダン、議事堂内は中央に向かって下がっていくように窪んだ形状をしている。セナが帯電し始めると、壁を打撃し振動を受けとる。
セナ(無線)「震源、議事堂上部のガラスドーム最上階に確認。体型から、アデリナ・ヒトラーと推測」
ヴェロニク(無線)「ここのドーム登れっていうの!?全面ガラス張りよ!?」
那東(無線)「いや、ドームはそもそも議事堂に自然光を入れるための装置。C4やヴェロニク殿のグレネードランチャーで基盤を破壊すれば一瞬で自壊するでござる」
ベネットが入り口にスモークを撒いた。突撃してくる兵士を続々と切り伏せる。
ベネット(無線)「入り口は俺と那東で凌ぐ!マイロー、セナ、ヴェロニク!アデリナを仕留めろ!」
議事堂に侵入していくマイローたち3人。帯電するセナを先頭に階段を登りながら伏兵を仕留めていく。天上のドームに到着すると、中央には逆向きの円錐状に配置された、ガラスの柱がある。周囲を支えるのはただのガラスだった。マイローとセナがC4を設置、ヴェロニクがグレネードランチャーを発射。着弾と同時にC4を起動し発破。ガラスの柱が崩れ、階下の議事堂に向かって落下していく。
セナ「アデリナの生存を確認。ここから降りて殺害します」
マイロー「高すぎます、階段を降りて確認にいきましょう」
ヴェロニク「私は上から見てた方がいいかな?」
セナ「グレネードランチャーで入り口の援護をお願いします。歩兵戦車程度ならそろそろ駆けつけるでしょうから」
マイロー(無線)「全員で降ります。私とセナでアデリナを、ヴェロニクが入り口の援護をします」
ベネット(無線)「OKだ」
那東(無線)「頼んだでござる」
ガラス片と埃がまう議事堂に、マイローとセナが向かう。足並みを揃え、アサルトライフルを構えて近寄る。埃から放電が始まり、何本もの電撃が周囲を攻撃性し始める。セナは帯電しながらマイローを担いで飛び上がり、遮蔽へ隠れた。少女は周囲の議席や机を電撃で床から引き剥がすと竜巻のように纏う。
マイロー「物体を自在に……!?」
セナ「情報はありませんが、娯楽作品などに登場するトラクタービームと推測」
椅子や机を次々と投げ飛ばしてくる。
マイロー「セナさん、アレに近寄ってはいけません。貴女も操られる可能性があります」
セナ(無線)「金属類を使っていない兵器を持っている方はいますか?」
那東(無線)「拙者が行こう、何があった」
マイロー(無線)「トラクタービームという兵器を使って、アデリナが抵抗を」
那東(無線)「ほほう、実用化されていたでござるか。あい分かった」
ベネット(無線)「おい那東、引け!ヴェロニクが爆撃するって顔してるぞ!」
無線ごしにポンポンと音がなる。
那東(無線)「まずい……」
ヴェロニク(無線)「ポンポ~ン、ポンポ~ン!!」
ベネット(無線)「やべぇ、嬢ちゃんが歌いはじめたぞ!!」
マイローとセナに、椅子や机が襲いかかる。射撃でそれらを破壊すると、落下していく潰れた弾頭すら竜巻に吸われていく。薬莢が足元に散らかるが、吸われてはいない。
マイロー「薬莢の位置までは影響がないようです」
セナ(無線)「那東さん」
那東「見、あっ、げっほ……見参!!!!」
議事堂に、土とススで汚れたサムライが1人、咳き込みながら刀を抜く。マイローとセナが射撃で応戦しているのをほんの一瞬観察した。
那東(素材の全てを強化プラスチックで代用した、性能と見た目以外ほぼオモチャのこの刀。大抵のものは切れるが、問題は攻撃をどういなすか……簡単な話よ。セナ殿、送った作戦はダウンロードしたでござるか?)
セナは帯電しながら高速で、入り口まで駆け抜けた。ヴェロニクが、入り口を支える4本の柱のうち、1本の接合部を両方破壊した。倒れてくる柱をセナが受け止め抱えると、やり投げの要領でアデリナへ向かって投擲した。
那東(疑問に思ったでござる。弾丸をそのままトラクタービームでキャッチすればいい話なのに、あの者はわざわざ遮蔽を作っている。おそらく、受け止められる運動量に上限があるのだ。ならば!)
那東は飛んでいく柱に飛び乗ると、アデリナを真っ直ぐ見つめた。
那東(そして保険も1つ)
ピンを抜いた手榴弾をいくつも投擲し、アデリナのトラクタービームに巻き込ませ、竜巻を破壊した。アデリナは腰の拳銃を抜くと、那東に射撃する。那東は飛んでくる弾丸を全てを弾いた。柱の弾着に合わせて大きく踏み込んで飛びかかる。
那東(超・ハイパー質量牙突!!)
那東はアデリナの胸部を貫いた。アデリナは床に倒れる。
那東(無線)「心臓、肺、動脈、全て避けた。少女よ、1つ聞く。ESPというのは君を基点に発動させているのだろう?何ゆえ、ここまで警備が手薄だった?入り口は我々一個人分隊でどうにかなる程度のものでしかなかった。装甲車の1台くらいあってもおかしくはなかったはずだ」
アデリナ「私を殺せば確かに国民の動きは止まるだろう、だが……私は何かの傀儡でもない。傀儡なのは、国民だ。私を守る必要はあった、そしてキサマらがウワテをいっただけのこと、誇るんだ。キサマらは強い」
那東「何?」
マイローとセナが那東の傍に寄った。
アデリナ「国民は、ナチズムに傾倒しているわけでもない。国民は、何か悪いことをしているという感覚もない。私はただ弁舌により、タガ、あるいは枷を外しただけだ。国民の潜在的・実質的左翼思想、愛国心に火をつけただけに過ぎない」
マイロー「左翼?ナチズムは右翼だです」
アデリナ「学のない者だ。かの者が掲げた政党の名は、国家社会主義ドイツ労働者党。社会主義とは、資本主義の弊害を計画経済など政府の介入によって和らげる意味を持つ。共産主義と比べて右翼というだけで、我々の本質はむしろ左翼だ。政府の介入、この場合軍事力による移民の虐殺によって民族的浄化を促し、これまでの資本主義的経済政策を破壊する。これは立派な社会主義だ」
セナ「ドイツの政策はむしろ移民受け入れなど、グローバリズム的政策だったと伺えます」
アデリナ「あんなもの、賄賂・献金・利権による実質的な資本主義の温床だ。我々は民族という、遺伝子に組み込まれた国境を侵されていたのだ、防衛を怠れば、戦争も無しに自ずと国は崩壊していた」
那東「戦争を仕掛ける理由は見えないな」
アデリナ「ホロコーストや東側の動きを参考にしたのだ。愛国心を持たない者や移住者の多くが、ウクライナ侵攻によって旧ロシアからの脱出を図った。中東では数々の紛争によって、難民として国民が他国へと移動した。我々は戦争を引き起こすことによって、自国を愛さない者、国に属さず移動を繰り返す者を追い出し、また虐殺することで、将来移民や難民がドイツの土を踏まないようにと、世界に印象付けさせたのだ。ホロコースト以降ユダヤ人がドイツに移住したくないのが当たり前のように、ドイツはゲルマン民族以外の人種が移住したくないような国にすれば、今後、国民の3~4割が移民になるなどという事態を、例えどれだけ政治屋同士でやり取りがあろうとも、人種として嫌われるため、未然に防げるのだ」
那東「日本の場合、そもそも安い労働力としか見ないで移民を受け入れていたという通説がある。安い労働力が欲しい大企業の後押しが政治家にあったりはしなかったでござるか?そうしたものは、大抵は国民の政治への関心の薄さからくる。つまり、全て自業自得」
アデリナ「大企業と政治屋の繋がりを潰せなかったのは国民の責任だ。だから、世界から嫌われる、孤立する可能性を拾って、あるいは国家としていきながらえる可能性を棄ててでも、僅かな可能性に懸ける他なかった。我々は遅かったのだ」
那東「あくまでも責は認めるとは……」
アデリナ「殺せ。私を殺せば、国民は虐殺の責任を押し付ける存在を失い、自責に潰され行動力を失うだろう。ESPの本質はそこにある。拳に理由さえあれば、相手が弱者だろうが何だろうが振り下ろせる。それが人間だからこそ、私のようなこわっぱでも、どこまでも操れるのだ」
セナ「……この戦争で誰が最も儲けられると思いますか?」
マイロー「それは」
セナ「マザーからの質問です」
アデリナ「そうだな……ドイツはきっとNATO直轄にでもなるだろう。直接の儲けといえばNATO各国、そしてナチズムは極右政党という印象があるからこそ、もし今後ドイツが生き残るとしたら、左翼政党が台頭するし、世界中で反右翼が芽生えるだろう。話の意味合いはすげ替えられ、ナチズムはダメ、から右翼はダメ、になるだろう。移民・難民への同情から世界は左翼の独壇場となる。そうなればアメリカでいうUSAIDのような機関は量産され、世界のグローバリズムは拡大、ドイツやフィンランドを筆頭にヨーロッパ圏のような、戦争無き侵攻の被害者が世界中に現れる。左翼の台頭が直接そうなるとは限らないがそれでも、すなわち共産圏の拡大と捉えることもできるだろう。我々の戦争の一部には、新ソ連の助力もあった」
マイロー「新ソ連も、この戦争に一枚噛んでいるとは……君は、なぜ選ばれた?」
アデリナ「子供すら国を憂いているという看板を立て掛けることで、国民は自分が立ち上がる理由を作り出した。正統性をあくまで主観で持ちたかったのだろう。私は確かに選ばれるよう動いたのは事実だが、私を国民が選んだ理由は、自分たちの正しさを裏打ちしたかったのだろう」
セナ「最後に儲かるのはNATOと左翼、そして新ソ連……ありがとうございます」
セナが引き金に指をかける。那東が銃口に手を当てて、発砲を防ぐ。
セナ「?」
那東「いや、国の殺意を全て背負った少女を、ただ殺すだけで何になるでござろう?この娘にとって、まだヴァルハラは早いでござる」
那東は刀をアデリナから引き抜くと、大きく振りかぶる。石突で首元を殴り付け、気絶させた。自分の腕を出して刀で斬る。垂らした血をアデリナの喉に振りかけていき、端末で写真を撮った。
セナ(無線)「データと、アデリナの確保をHQへ送信します」
那東(無線)「善意や、何なら綺麗事などは言わない。ただ、死は一度のみ、しかしそれで贖罪は叶わないでござろう。そういう理屈でござる。奪った命幾百万、対して代価は命1つ、勘定が合わないでござる」
ベネット(無線)「やらなくていいに越したことはないだろう。大人の都合で死ぬ子供の数は、1人でも減らさないとな。確認だが、ロリコンだから、じゃないだろうな?」
那東(無線)「何を言う、自由に生きる娘こそ至高。この娘を嫁にしようなどとはおもっていないでござる」
ヴェロニク(無線)「ねぇ、なんか敵が全員出てこなくなったんだけど?」
セナ(無線)「現在、大々的にアデリナの死を全国的に拡散させています。ネット社会の現在だからこそ、軍部にもその情報は入るはず」
ヴェロニク(無線)「兵士たちに、アデリナの死が伝えられてるの?軍がそんなことする?」
セナ(無線)「……自責、でしょうか。アデリナという対象がいてこその、ナチズムだったのでしょう。軍部すら、アデリナに責任を押し付けて暴走していたという話なのでしょう」
ヴェロニク(無線)「ESPって、結局何だったんだろうね」
マイロー(無線)「心の動かし方、煽動のやり方、人の操り方。彼らはESPというコードネームで、心理学を利用していた、ということでは?」
ベネット(無線)「ガチで敵が動かねぇ……マジか、じゃあこれで」
セナ(無線)「はい、第三次世界大戦は終結となります。勿論、上の話し合いはまだ終わっていませんが」
ベネット(無線)「そこがどうなるか、だな。それはそうと、アデリナはどうする?」
セナ(無線)「マザーからの連絡です。ペンタゴンが引き受けるとのことです」
ベネット(無線)「じゃあ終わりだな、はぁ、黒ビール呑みてぇ~!」
那東(無線)「呑んだことないでござる」
ベネット(無線)「いいぜぇありゃ。なんつうかこう、親近感がある」
那東(今度、海苔とかオススメしてみるでござる)




