はじまりはいつも鮫
「男の人って中華好きよね~」
沙羅の父も中華舌であった。
「僕もそうだけど、中国の中華料理と日本の中華料理は別物に感じるよ」
光道が土曜のランチに誘っていた。
「太公望ね」
二人の行きつけだ。沙羅は中華味の和菓子も作れないか、アンを練っている。
「いらっしゃい~」
夫人が迎えた。店主は奥で黙々と仕込み作業をしている。物静かなシャイナ料理だ。
「いつかコース料理を頼んでみたいよ」
単品で頼んでいく予定だ。
「あんた結構バイトで稼いでるみたいじゃない」
秀吉に影響されて、とりあえずなんでもやってみようとの心構えはある。
「だけど、月によってマチマチだよ」
まだ15歳。その勢いで邁進して欲しい。
「ええと。スープは、と」
玉子スープとコーンスープの文字を交互に見る沙羅。
「やっぱ最初はフカヒレスープじゃない?」
「あんたが出すんならいいわよ」
スープ分は、ということである。沙羅はそこまで図々しくない。
「太公望に来てこれは外せないよ」
背を向けた店主の口元がほころんだ。
「そうしましょう。チャーハンのチキンスープも美味しいんだけどね」
ご飯物は豚玉チャーハンだ。誰がなんと言おうと、炭水化物を先に頼む光沙羅コンビ。
「焼き餃子に肉野菜炒めと・・・」
「それから麻婆豆腐に五目焼きそばでしょ」
お二人様とは思えない頼みっぷりだ。
「メインは牛の天ぷらだね」
昭和の町中華には、このメニューを見掛けたものだ。
マガジンとりぼんを読んでいる間に、太公望夫人が次々と大皿を運んできた。
丁寧に礼をする三人。
「ああ~、みなぎるわ~!」
ほっとくと早食いしてしまうので、意識して抑えている沙羅。
「フカヒレで正解っしょ?」
正解は、あかぼし製菓。
「財布に余裕があればね」
良妻賢母の片鱗が見える。
「知ってる? ここはすっぽん汁もあるんだよ」
はじまりはいつも亀。
「・・・遠慮しとくわ」
(なんか変なこと考えてるんじゃないでしょうね)




