喫茶養生記
「光道、コーヒー飲みに行きましょう」
沙羅は和菓子屋の娘だが、お茶と合わせることが多いだけに、無性にコーヒーを飲みたくなることがある。
「了解。若鶏の喫茶だな」
交差点の喫茶店だ。
「コーヒー豆も買えるからお気に入りなのよ」
その場で焙煎もしてくれる。二人とも酸味も苦みも好みではないので、いつも中煎りを頼んでいる。
「焙煎飲んだらまた焙煎だな」
「誰が分かるのよ、それ」
前話が破天荒すぎたので軌道修正である。タイトルも近い内に変わるかもしれない。
若鶏の喫茶はジャコビアン様式の設えである。マスターの松本の趣味だ。
ウェイトレスのあゆみは、きびきびと愛想を振りまいていた。
「アイスコーヒーは邪道なんていうけど、こうも暑いとね~」
コーヒーアイスも好きな二人。
「これでコーヒーゼリー作ったら、美味さは免れないぞ」
プリンよりもゼリー党の光道。
「あんたゼリーアラモードにしてなんて無茶頼んでたわよね」
夏場はゼリーの出番だ。
「コンビニのみかんゼリーは、みかんはもちろんゼリーも美味いんだ」
梨ゼリーも見掛けるようになった。
「お中元の定番よね」
水ようかんも微笑ましい。
「軽食は何になさいますか?」
沙羅とそこまで年は離れていないであろうあゆみが訊ねた。
「僕はハムエッグで」
トーストに挟むつもりの光道。
「あたしは牛こま切れの塩胡椒炒めをお願いします」
これをパンに挟むのは最高だが、ご飯もとってもススムだろう。
あゆみはフリースマイルで踵を返し、厨房に消えた。
「バターと和菓子は手を取り合った感があるけど、もっと何かないものかしらね」
凡人が思い付くアイデアは、たいてい名古屋人が先にやっている。
「和菓子じゃないけど、おにぎりバーガーなんてどうだろう?」
「へえ、いいじゃない」
海苔の値段がどんどん高騰している。
「肉寿司は食べ歩きで定番化しつつあるけど、フォアグラ寿司とかね」
「高校生のくせに贅沢な舌ね!」




