光あるうち、光の道を歩め
「100円落ちてないかなあ」
下を向いて歩こう。篁光道少年のように、何かおこぼれがあるかも知れない。
「あんた暇そうね」
明野沙羅。こんなことを言っているが、光道を観察する沙羅は楽しんでいる。女心と明野沙羅だ。
「これも金儲けさ」
交差点で拾った百円は、交番へ届ける予定だ。
「その間にバイトでもすれば? それじゃ金無くしよ」
金を無くす行動はこの世に溢れている。金を払ってジムへ行くことほどもったいないことはないと考えている沙羅。肉体労働ならエクササイズをして金まで手に入る。これぞ金肉だ。
「沙羅の和菓子屋さん? あそこでもっぱら働くのは胃袋だよ」
光道の舌は確かだ。そして沙羅は、人を見る目が確かだ。
「おやつなら出すわよ」
「喜んで!」
二人は“あかぼし”へと進路を変えた。
「お母さ~ん」
沙羅が声を出すと、奥から母の穂希が顔をのぞかせた。
「あ~ら、ミッチーじゃないの~」
出来たての饅頭のように柔和な顔を浮かべる穂希。
「何本でも焼きますよ」
やる気のミッチー。
「光道、そうじゃないのよ。いまウチでは新商品を開発しててね。色んな物を詰め込んだお得感のある和スイーツを考えてるの」
「なるほど。和菓子のパッチワークって訳か」
言うは易し、行うは和菓子。
「そうなの。ミッチー、そういうの考えるの得意だったでしょ~」
やけに穂希には気に入られている。
「う~ん。洋菓子ではよく見かけるけど、団子をいろんな惑星状にして、天体ジオラマみたいにすると面白いかもね」
「いいアイデアだわ! お父さんもそういうの好きだったからね~」
夫の明野苗穣。生前は光道を猫かわいがりしていた。
「ああ、あの可愛いやつね! 結構高価なのよね」
沙羅は手から先に生まれたような女子高生である。とにかく手を動かすのが好きだ。苗穣のSFチックな作業場は、沙羅が受け継いでいる。
「さっそくかかりましょう!」
肝っ玉かあさん。
色つけはお手の物だ。みるみる内にカラフルな団子が並んでいく。穂希も光道も捏ねる。三色どころか、団子は200色あるのよとでも言わんばかりに、試作品が積み上げられていった。
「こんなとこかな」
皿に盛り付ける沙羅。
「見事な太陽系だ」
みたらしに近いのは、木星である。
「私は土星のきな粉がいいかしら~」
このあたりまでは良いだろう。
「問題は青系よね」
地球の彩色が難しい。
「ソーダにしたけど、味はどうだろうね」
一気に夏のスイーツに早変わりだ。
「まあ、無理に考えることもないわね。これは没で、と」
沙羅に言われ、水金地火木土天の地を後ろへ追いやる光道。
「なんか急に真っ暗になったわ!」
太陽が、遙かに遠い。
「それに、寒いわよ!」
震える穂希。
あわてて地を前の方に戻す光道。
「外が真っ赤っ赤よ!」
「こんどは熱っ苦しいわ!」
惑星間移動ではなく、惑星ごと移動してしまったようである。
(光道、やっとるの~)




