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男爵家の六人目の末娘は、○○を得るために努力します  作者: りな
第5章

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ラニアとローデン

ローデンはラニアとともに、中庭に立っていた。

セリウスは調合室に籠もりきり。

リリアーナはエドモンドと狩りに出ている。

理由は、「ロキに新鮮で美味しい肉を食べさせたい」から。

――いや、ついでに薬草も摘んでくるのだろう。

「久しぶりに二人で行こうか?」

というリリアーナの言葉に、エドモンドは

「いいな」

と、躊躇なく頷いていた。その様子を見ていたローデンは、……仕事は大丈夫なのか?と、ぼんやり思った。二人だけの世界に飛び込んでいった背中を見送って、ようやく我に返る。

すぐそばに、ラニアとロキがいることに気づいた。

「やっと、話ができるね」

ラニアが言った。その横で、ロキがゆっくりと尻尾を振っている。

「用件は何だ」

ローデンは短く返した。

「えー。直接言うの?」

ラニアは両手を後ろに回し、もじもじと身を揺らす。

「……早くしろ」

相手は人外だ。そういう仕草に意味などない。ローデンは自分に言い聞かせる。

ラニアはつまらなそうに口を尖らせた。

「ローデン、見えてるよね?」

背筋が、ぞわりと粟立つ。

「……なに、が」

「僕と、ロキの本質?」

小首を傾げたまま、ラニアは一歩、ローデンに近づいた。手は、後ろで組んだまま。

ロキも、音もなく、それに続いた。


「……何のことだ」

ローデンは、辛うじて声を絞り出した。

「ふーん。言いたくないんだ」

ラニアは唇を尖らせた。

その瞬間だった。ロキから、強大な魔力の威圧が放たれた。空気が、押し潰されるように重くなる。

ほんの一瞬。だが、確かに。

ローデンは不意を突かれ、体勢を崩した。地面に、手の平が着く。すっと、視界に手が差し出される。ラニアの手だった。

――取れ。そう言われている気がした。

ローデンは、ラニアの瞳から目を逸らせず、無意識にその手を取った。

立ち上がろうとした、その瞬間。ラニアの顔が近づき、耳元で囁かれた。

「気づいてるなら、言うな」

びくり、とローデンの身体が強張る。

「言ったら、永遠に、眠らせてあげる」

恐る恐る、ラニアを見る。

ラニアは――とても良い笑顔で、ローデンを見つめていた。

「ふふ。内緒だよ」

ラニアはそう言って、人差し指を立て、自分の口元へそっと当てた。わずかに浮かべた微笑みは、妖しく、それでいてひどく可愛らしい。

――天使のような。

そんな場違いな言葉が、不意にローデンの頭に降りてきた。


「ねぇローデン、暇でしょ。散歩しようよ」

ラニアは何気ない声でそう言った。

……拒否権、あるのか?ローデンは一瞬だけ考えた。だが、すぐに答えは出る。無い、の一択だ。ローデンは黙って歩き出したラニアの後を、ロキと共に追った。

それはまるで、終わりの見えない死の行進の始まりのように思えた。



調合室の中で、中庭に面した窓辺に立った、セリウスは手を止めた。

視線の先に、ラニアとローデン、そしてロキの姿がある。ラニアは楽しそうに歩き、時折ロキに話しかけ、ロキはしっぽを振りながらそれに応える。ローデンは少し後ろから、無言でついていく。

その距離が、妙に自然だった。セリウスは目を細める。

……ああ、なるほど。

ロキが急に方向を変える。ラニアが笑って追いかける。ローデンはゆっくり、その後を追う。ラニアが振り返って何かを言うと、ローデンは小さく頷く。その仕草が、ひどく柔らかく見えた。

セリウスは、ふっと笑った。

……ローデン、わかりやすいな。

あれは、守っているのではない。見ていたいのだ。視線が、いつもラニアに向いている。

ロキが間に割って入っても、ローデンの目は、自然とラニアを追っている。


……好きな子の後ろを、理由もなく歩いている少年のような、そんな空気があるように見えた。

セリウスは窓から離れながら、くすりと笑う。

……本人は、絶対に気づいてないし、認めないだろうけどね。

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― 新着の感想 ―
ローデン、どうなるんだろう? 結構好きなキャラなので、この先が気になります。
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