7.高級レストランにいってみたかった(前)
「遂にこの日が来たか!」
お約束ともなりつつあるセリフを発し祐一はご機嫌だった。
前世で俗にいうドレスコードのあるような高級レストランに行く日だった。
「予約ヨシ!服ヨシ!」
指差呼称で次々と確認していく。
するとティオが駆け寄ってきて
「ご主人様、今日はお帰り遅くなりますか?」
「いあ、ティオも一緒に行くよ」
「・・・」
「・・・!」
「ふぇっ、私もですか?」
表情はあまり変わらないが珍しくティオが焦っている。
「私、そんな所いった事ないですし・・・」
「それなら大丈夫だ、俺も初めてだから」
「でででも、服とかもってないですし・・・」
「こんな事もあろうかと知り合いのツテを頼りにレンタルしておいた」
前世でもこのセリフだけは一回言ってみたかったと祐一の包囲網は狭まる。
「わ、分かりました。これは勤務時間内ですから仕事ですよね」
ティオは自分に言い聞かせながら準備を始めた。
少ししてティオの準備が出来た。
んー愛想は変わらないが、そのなんだ。可愛いというか美しい。
いつもは地味な作業性重視の服(メイド服ではない)なので見違えるようだ。
「似合っているよ」
ベタ過ぎるセリフしか祐一の口から出てこなかった。
気のせいか、ティオの顔が緩んだように見えたが・・・気のせいかな。
「じゃあ、ティオ行こうか」
「はい、ご主人様。場所はどちらでしょうか?」
「ああ、俺もびっくりしたんだが、転移魔道具がある」
店の予約をした際に、行きと帰りの2回分の使い切りの転移魔道具が届いたのだ。
魔力が事前に込められたものでこれなら祐一でも使える。
使い切りのアイデアも祐一が前世の「電池」から生まれた発想だった。
元々は冒険ギルドからの依頼で、魔力が尽きたり、魔法が使えない者がどんな窮地からでも脱出できる魔道具の開発依頼が起源だったがまあそれは別の話だ。
まあ、高級店の完全予約制、前払いなので料金に入っているとみるべきだろうな。
転移魔道具のスイッチを押した瞬間、俺とティオは既に店の中にいた。
「ようこそ、美食亭へ」




