15.ひと手間かけたコーヒーを飲んでみたかった
「ご主人様、プロンテラ商店よりお荷物が届きました」
「遂にこの日が来たか!」
「また何か始まるんですか?」
愛想の無いティオがジト目な気がするが気のせいだろう。
それよりもプロンテラ商店という事はあの特注品が出来たという事だ。
「ティオ、今からコーヒーを淹れるぞ」
「はい、では直ぐにお持ちします」
「いやっ、作るのだ」
「ご主人様、よく話が見えなのですが?」
ティオが困惑するのも無理も無い。
この世界のコーヒーは焙煎や抽出等の工程が魔道具で省かれている。
商店で既に完成品を販売するスタイルになっている。
各家庭より容器を持っていき、それに入れてもらう。
魔法が使える者は魔道具へ。
魔法が使えない者は通常の容器で自宅で冷蔵庫なり保温機に入れる。
つまり自宅で淹れるという文化が無いのだった。
「ティオ、見ていて」
そういって、商品の梱包と解くと必要な一式が出てきた。
「焙煎機もこんなにコンパクトに出来るのか」
感心しつつ、コーヒー豆を焙煎し、ミルを使い粉砕していく。
「手回しミル最高。粗挽きに仕上げていこう」
「ティオ、もうちょっとだからね」
抽出はサイフォンを使ったネルドリップ。
喫茶店でこれを見るのが祐一は昔から好きだった。
無事にコーヒーが出来上がりティオにお揃いのマグカップをお願いした。
いい香りだ。
「ティオ、最高のコーヒーだよ。たぶん!」
祐一渾身のコーヒーを飲む。
「!」
「ご主人様、こんなにおいしいコーヒー初めてです」
ティオはきっと驚いているだろう。
でも今回は「道楽」でない自信があった。
この世界のコーヒーは豆から専用の魔道具で焙煎や粉砕などの工程を飛ばして抽出している。
祐一がプログラムをみた際、合理的ではあったが「うまみ」「香り」の引き出し方に改善の余地がある事は依然より分かっていた。
「ご主人様、おいしいコーヒー有難うございました」
「そ、その今度で良いので私にも使い方を教えていただけないでしょうか?」
「えっ、作るのすごく面倒だよ」
「えーと、その・・・」
ティオにしては歯切れが悪いな。
そうか、分かった。
「ああ、ティオもおいしいコーヒー飲みたいよね。いいよ」
「そ、そうなんです。有難うございます」
コーヒーの解説をしながらゆっくりと時間が流れていった。
ティオSide
「ご主人様、今日もイキイキしていました」
「あのコーヒーは準備、手間、片付けがちょっと大変ですね」
「ご主人様に、魔道具で今度・・・あっ」
そこでティオは思った。
「もしかしたらご主人様はこの手間も含めて愉しんでいるのかも」
ご主人様ならあり得ると思うティオであった。




