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帰れない勇者パーティーがうちに住みつきました  作者: leemero


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グリドラ初めてのたこ焼きパーティー

有斗たちがグリーンハイツドラゴンで暮らし始めてから三週間が過ぎていた。


現代生活にも少しずつ慣れてきた頃。


その日の夕方。


仕事帰りの葵は、スーパーの袋を両手いっぱいに抱えていた。


---


「重い……」


---


中身は大量の食材。


そして。


たこ焼き器。


---


「なんで買ったんだろう私」


---


疲れている時の買い物は危険だった。


---


グリドラへ戻る。


---


共有スペースの扉を開けると、いつもの面々がいた。


---


有斗。


---


莉愛奈。


---


瀬玲奈。


---


しおり。


---


部長。


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全員揃っている。


---


「おかえりなさい」


瀬玲奈が笑顔で出迎える。


---


「ただいま」


---


葵は袋を机へ置いた。


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ガタン。


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大きな音が響く。


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有斗が中を見る。


---


「なんだこれは」


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「たこ焼きパーティー」


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沈黙。


---


「たこ……?」


---


「焼き……?」


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予想通りの反応だった。


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「食べ物」


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「なるほど」


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全然理解していない顔だった。


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---


三十分後。


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机の中央。


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たこ焼き器。


---


有斗たちは興味津々だった。


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「鉄板だな」


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「鉄板だね」


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「戦闘には使えそうにない」


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「使わないから」


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葵は生地を流し込む。


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じゅうううう。


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音が響く。


---


瀬玲奈の目が輝いた。


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「おお……」


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「料理ですか」


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「料理」


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「楽しそうです」


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その顔は本当に楽しそうだった。


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具材を入れる。


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タコ。


---


紅しょうが。


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天かす。


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ネギ。


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有斗は真剣に見ている。


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まるで戦術会議だった。


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「何故丸い穴がある」


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「たこ焼きだから」


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「なるほど」


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全然なるほどではなかった。


---


---


そして。


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ひっくり返す。


---


くるり。


---


くるり。


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綺麗な球体になっていく。


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莉愛奈が感心した。


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「職人技ですね」


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「慣れればできるよ」


---


「私もやりたいです」


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挑戦。


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結果。


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崩壊。


---


「……」


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「……」


---


たこ焼きではなく。


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謎の生命体になった。


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「難しい」


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莉愛奈が真面目に呟く。


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しおりも挑戦した。


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器用だった。


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綺麗。


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非常に綺麗。


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「できた」


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「すご」


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「ネットで見た」


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「万能だなネット」


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---


有斗も挑戦する。


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真剣だった。


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無駄に真剣だった。


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剣を振る時と同じ顔だった。


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結果。


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成功。


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「おお」


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思わず声が出る。


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「できたな」


葵が笑う。


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有斗は少し誇らしげだった。


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完成。


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たこ焼き山盛り。


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いただきます。


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有斗は一つ口へ運ぶ。


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熱い。


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非常に熱い。


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「熱っ」


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初めて聞く声だった。


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「だから気を付けてって言ったじゃん」


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「熱い」


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「知ってる」


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瀬玲奈も食べる。


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「美味しいです!」


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笑顔。


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莉愛奈も続く。


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「これは良いですね」


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「だろ?」


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何故か葵が誇らしげだった。


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しおり。


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黙々。


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黙々。


---


黙々。


---


「どう?」


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葵が聞く。


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しおりは一瞬だけ顔を上げた。


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「美味しい」


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それだけだった。


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しかし。


---


かなり気に入ったらしい。


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既に五個目だった。


---


---


その時。


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部長。


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じっと机を見る。


---


たこ焼きを見る。


---


見続ける。


---


「ダメだよ」


葵が言う。


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「にゃあ」


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「ダメ」


---


「にゃあ」


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諦めない。


---


---


有斗が一つ持ち上げる。


---


「食べるか?」


---


「ダメ!」


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葵が止めた。


---


「猫はダメ」


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「そうなのか」


---


有斗は素直に引っ込めた。


---


部長だけが不満そうだった。


---


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食事が終わる頃。


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外はすっかり暗くなっていた。


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誰かが話し。


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誰かが笑う。


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そんな時間が自然になっていた。


---


数週間前。


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有斗たちはこの世界へ来た。


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帰る方法も分からない。


---


未来も分からない。


---


それでも。


---


今だけは。


---


こういう時間も悪くない。


---


有斗はそう思った。


---


「またやるか」


---


ぽつりと呟く。


---


葵が笑った。


---


「いいね」


---


瀬玲奈も頷く。


---


莉愛奈も。


---


しおりも。


---


部長だけは眠っていた。


---


平和な夜だった。


---


第十三話 有斗、初給料の夢を見る

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