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【全属性耐性ゼロ】だったのに、全ての攻撃が効かない最強バグスキルを手に入れました※タイトル詐欺です  作者: Y.K
第1幕

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婚約破棄?知らんがな、焼きそばパン食ってろ

こんにちは、焼きそばパンの神に召された者です(嘘です)。

今回は、なろうテンプレ「悪役令嬢転生もの」を完全にカグラワールドに取り込んでみたという試みです。


きっかけは「パンの魔力で運命をねじ曲げたら面白くない?」というノリから始まり、気づけば令嬢アリシアが一番まともでした。


破滅フラグを回避する手段が「焼きそばパン」って何やねん、というツッコミはごもっともですが、それで本当に救われるなら、パンも捨てたもんじゃないですよね。

──そこは、どこかキラキラしていた。


お城の中庭。花々が咲き乱れ、鳥がさえずり、貴族たちの笑い声がこだまする。

どう考えても、カグラのいるべき場所じゃなかった。


 


「……おかしいな、さっきまでパン屋の在庫整理してたのに」


カグラは頭をかきながら、純白の噴水前に立ち尽くしていた。

背後では、金髪の王子とドレス姿の令嬢たちが──絶賛、修羅場中。


 


「○○令嬢、君との婚約は──ここで終わりだ!」


 


「またかよ!!」


カグラが絶叫する。

どこかで聞いたことのある“婚約破棄”というセリフ。

周囲の空気が一気に張り詰めていく中、カグラだけが空気を読まずにその場に歩み寄る。


 


「おーい!ちょっと待て!今、“婚約破棄”って言ったよな!?それ、テンプレだよな!?何ループ目だよ!?」


 


「……どなたですの、あなたは」


高飛車な金髪の令嬢──アリシア=ヴェルファインがカグラを睨む。

対する王太子は、怒りで顔を真っ赤にしながら叫ぶ。


 


「警備!この場に不審者がいる!すぐに──」


 


「まてまてまてまて!!!!」


 


──その瞬間、カグラが懐から取り出したのは、焼きそばパン。


 


「このパン、王宮では入手できない逸品なんだが……一口どうだ?」


 


「焼きそば……パン?」


「さすがに貴族世界でそれは……下品だわ……!」


 


──だがその匂いが、全てを変えた。

王太子の腹が鳴る。


 


「……ゴクリ」


 


カグラが一言。


「このイベント、断罪じゃなくて昼食にしねぇ?」


 


そして、物語はバグり始める。


アリシア=ヴェルファインは、自分の身に何が起こっているのか分からなかった。


つい数分前まで、彼女は「婚約破棄イベント」の主役だったはずだ。

王太子の浮気、側近たちの罵倒、そして“断罪”。

すべての展開が、あまりにも予定調和だった。


 


「なのに……!」


 


目の前には、片手に焼きそばパンを持ってにやけている謎の男。

そして──


 


「うまっ……!これ、パンなのに……麺が……!いや、そんな……!」


王太子ががっついていた。


 


「お前、“断罪”の前に食うテンションかよ!!」

「う、うるさい!君が押しつけたんだろう!?焼きそばパンを!」


 


アリシアは震えた。

彼女は“悪役令嬢”として、幾度となく転生を繰り返してきた。

婚約破棄も、断罪も、敗北も、すべて経験済み。


だが──


 


「……パンでイベントが止まる世界は初めてですわ」


 


カグラはアリシアの隣に腰を下ろす。

そして袋からもう1個パンを取り出し、差し出した。


 


「食ってみなよ。バグるぜ?」


 


アリシアはそれを受け取る。


(バグる……世界が……?)


口に入れた瞬間、視界が揺らいだ。


 


──ズルッ。モグモグ。


 


「おいし……ッ!」


脳内で鐘が鳴った。

なぜか断罪用の魔法陣が解除され、空に文字が浮かぶ。


 


【《世界律:イベント分岐ミス》】


【補正:異世界料理介入】


【進行ルート:EX《パン界介入編》へ移行】


 


「なんだよこれぇぇぇぇえええ!!!」


カグラが天を仰いで叫ぶ。


 


──かくして、「焼きそばパン」によって、悪役令嬢の運命が書き換えられた。


アリシアは唖然としていた。


さっきまで、自分を断罪しようとしていた王太子や貴族たちが──

焼きそばパンを片手に、全員で輪になってピクニックを始めていたからだ。


 


「お、おかしいですわ……!ここ、王宮の謁見の間ですのよ!?パン広げるところじゃありませんのよ!?」


 


「まあまあ、ええやんか」

謎の関西弁でノリ始めた王子が、パンをもう一つ差し出す。


 


「俺も気づいたんや……お前のツンデレ、ワイ、わりと好きやで」


「な、なんで関西風なの!?っていうか今さら何言って──」


 


「──で、君は結局誰なの?」


アリシアは、となりに座るカグラに問いかけた。


 


「通りすがりのパン配達人だ。あと一応、“世界のバグ”」


 


「バグ……? えっ、あなた異世界転生者ではなくて……?」


 


「いや、俺はもうバグってるから最初から世界にいない扱いだよ。

たまにイベント喰うし、たまに空間歪めるけど。まぁ普通だよ?」


 


「……普通じゃないですわよ!?というか、パンで国一個の運命が変わるってどういう……」


 


「そういう物語になっちゃったから、しょうがないよね」


カグラはサラッととんでもないことを言い放つ。


 


「でもな、アリシア」

「はい……?」


「今ここでお前が笑ったら──」


 


「“悪役令嬢”ってラベル、ぶっ壊せるぜ?」


 


その言葉に、アリシアの胸の奥が、少しだけ温かくなった。


──ぱくっ。


彼女は二つ目のパンを口に運び、ふっと笑った。


 


(……なんだろう。転生十数回目にして、初めて“救われる”気がする)


 


その瞬間、世界律が再び揺れる。


【ルート変動確認】


【アリシア=ヴェルファイン:カテゴリ《悪役令嬢》より《自由人》へ昇格】


【称号取得:《転生者補正破壊者》】


 


「えっ……バグったの私の方ですの!?」


──その日の王宮は、世界で一番おいしいパンの香りに包まれていた。


 


アリシアは、焼きそばパンを両手に抱えながら、ふらふらと王宮の中庭に出る。


誰もがぽかんと口を開け、異変の中で立ち尽くしていたが──

それを一番理解していなかったのは、他でもない彼女自身だった。


 


「わたくし……なにか、すごく……どうしてこうなったんですの……?」


 


「運命って、案外パン一個で変わるんだよな」


 


いつの間にか隣にいたカグラが、ぽそっと呟く。


彼は焼きそばパンを片手に、地面に寝そべりながら空を見上げていた。


 


「……あなたは、なんなの?」


「ただのパン屋の配達員。ついでに観測外個体。

あと今週はレジ打ちバイトもしてる。来週は不明」


「意味が分かりませんわよ!?」


 


──けれど、アリシアは笑っていた。


本当に久しぶりに、心の底から、くすっと笑ってしまっていた。


 


「こんなわけのわからない世界で……私の人生、変わってしまったのね」


「変わってないよ。お前が“自分で変えた”んだよ」


 


その言葉に、アリシアは少しだけ、涙ぐんだ。


異世界に転生してから何度も、誰かの都合に振り回されてきた。


けれど、今回は──たった一つのパンを、自分の意思で選んだ。


 


「ありがとう……カグラさん」


「いいって。俺はただ、焼きそばパンを配っただけだから」


 


その瞬間、どこからともなくポップアップが現れる。


【新スキル獲得:バグ式パン配達術】


【アリシア=ヴェルファインが“仲間”になりたそうにこちらを見ている】


【仲間にしますか?】


 


──YES/NO


 


「……そんなの、YESに決まってますわ!」


 


かくして、パンをきっかけに一人の悪役令嬢が世界の理から外れ、

バグの旅に巻き込まれることとなった。


「いや、仲間にするのはいいけどさ……悪役令嬢って、なに?」


カグラは焼きそばパンを頬張りながら、ぽつりと呟いた。


 


「え? もしかして、あなた……」


アリシアは思わず目を見開いた。


「転生者じゃないの!? “乙女ゲーム”のことも知らない!?」


「ゲームって、焼きそばパン大食い選手権のこと?」


「ちがいますわ!!!」


 


──その後、観測拠点「ホワイトガーデン」の居間にて。


 


「つまり、この世界は貴族同士の社交と恋愛模様を描いたゲームで、

私はプレイヤーが攻略しないと地獄ルートを迎える“悪役ポジション”……」


「ふむふむ。で、君がその“破滅エンド”を回避して、パンを選んだと」


「ええ。まさか焼きそばパンが、運命の分岐点になるなんて……!」


 


セリスティアが紅茶を差し出しながら、こっそりカグラに耳打ちする。


「……これってつまり、“フラグをバグらせた”ってこと?」


「だな。“パンルート”が存在しなかったのに、強引に開いた」


「やっぱり、カグラくんってバグだよね」


 


そのとき、部屋の隅で静かにノートを取っていたシオンが呟いた。


 


「……観測できないイベントが発生した……ルート分岐不明……要調査……」


 


「お前、また記録してたのかよ!? しかも就業中じゃね!?」


「これは……バイトではなく、観測の一環……」


「ダメです。レジの休憩時間にシフト組んでるんですからね!」


 


セリスティアが、ぺちんと彼の額を軽く叩く。


 


──なんだこの空間。


異世界なのに、恋も戦争も起きずに、パンと茶とバグが並んでる。


けれど──それが、なんだか心地よかった。


 


アリシアはふと窓の外を眺め、そして静かに呟いた。


「……わたくし、もっと自由に生きてみたいのです。

“物語の役割”じゃなく、“私自身”として」


 


「じゃあ、今日からお前はパン係な」


「唐突すぎますわ!!」


「ほら、焼きそばパンにマーガリン塗っといて。あと冷凍クロワッサンも温めといて」


「そんなの聞いてませんのーーーーー!!」


 


──こうして、世界の理をバグらせるチームに、

また一人、“予定外”の仲間が加わったのだった。



──数日後。ホワイトガーデンの中庭。


 


「……では、これでお別れですわね」


 


アリシアは優雅にドレスの裾を持ち上げ、一礼した。


焼きそばパンが詰まったバスケットを抱え、空間転移の魔法陣の上に立っている。


 


「ほんとにいいのか? バイト、続けてもいいんだぞ?」


カグラが手を振りながら言うと、


 


「いえ……わたくしには、“元の物語”でやるべきことがありますの。

もう“破滅エンド”なんて怖くありませんわ。……だって、焼きそばパンを知ってますもの」


 


「パンで世界を変えるとか……マジで意味わかんねぇよ……」


「でも、変わったでしょ?」


セリスティアがにこっと笑いながら言うと、アリシアも笑った。


 


「この不思議な世界で、わたくし、たくさんのバグと出会いました。

──だから、あちらの世界でも“自分だけのルート”を進んでみせますわ」


 


「よし、いってらっしゃい。パンの神のご加護を」


「その神様、本当に存在してるんですの?」


「たぶんパン生地の中で寝てる」


「意味がわかりませんわ!!」


 


──キラキラと魔法陣が輝き、アリシアの姿が光の中に消えていく。


 


「……ふぅ。これで、また静かになるかと思いきや──」


 


「ただいま戻りました」


シオンが帰ってきた。レジ打ちバイト帰りで、手にはコンビニ袋。


「おい、何買ってきた?」


「……割引された、焼きそばパン……と、バター……と……セリスティア用に、抹茶プリン」


「気が利く〜!」


セリスティアがぱぁっと笑顔になる。


 


カグラは焼きそばパンを受け取りながら、ぽつりと呟いた。


 


「……“物語”ってのは、いろんなとこで動いてんだな」


「ええ、でも始まりは──」


 


セリスティアが、くすりと笑う。


 


「たった一つの、パンかもしれませんね」


 


──こうしてまた、焼きそばパンが一つ、誰かの未来を変えた。


この世界のバグは、まだまだ増えていく。


どうも、レジ打ちバイトは観測外だと思っていたカグラです。

今回はシオンがついに人間社会に溶け込む(?)という歴史的回でした。パンのためにバイトを始める観測者って、絶対に観測機構の規約に反してる気がします。


そして今回のゲストヒロイン、アリシアさん。

令嬢らしく優雅に、でもギャグ世界に完全に馴染んで、最後は爽やかに旅立っていきました。彼女は確かに異世界から来た“悪役令嬢”だったけど、ちゃんと自分の物語を取り戻して帰っていった感じがあって、これはこれで綺麗に収まったかなと。


あと、焼きそばパンって万能なんじゃね?


──次回もバグりながら、世界をちょっとだけ変えていきます!

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