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【全属性耐性ゼロ】だったのに、全ての攻撃が効かない最強バグスキルを手に入れました※タイトル詐欺です  作者: Y.K
第1幕

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観測者シオン、バイト始めました

観測者であることに疲れた男が、パン屋の前で立ち尽くしていた。

空間干渉?時間の歪み?そんなのよりも大事なものが、たしかにそこにはあった。

──そう、レジ締め作業である。

「………………これか」


ホワイトガーデンの裏手、そこには“時々バグる”と言われる掲示板がある。

カグラが貼ったポスターに、シオンの目がとまった。


『パン屋バイト募集(哲学者・異能者歓迎)』


「異能者歓迎……?」


紙にじっと目をやり、シオンはつぶやく。


「この世界に“歓迎”されることなど、久しくなかったが……

 ──なら、バイトされる側として、俺は世界を歓迎すべきか……?」


「うるさいぞ、ポエマー観測者」

背後からアロマが声をかけてくる。


「お前の観測詩、バグレベルでくどい」


「詩ではない、これは“問い”だ。

 ……パンとは何か。焼きとは、祝祭か、それとも刑罰か……」


「黙ってバイトしろ」


 


──そして、面接の日。


「えーっと、志望動機は?」


カグラがノートを持って椅子に座っていた。


「我が存在が世界に迎え入れられたとき、そこに“焼きたての香り”があった」


「なるほど採用」


「えっ」


 


というわけで──

観測者シオン、パン屋でバイトはじめました。


朝──。パンホワイトガーデンの厨房から香ばしい香りが漂う。


「……バイトってこんなに早起きなんだな……」

シオンはやや目をこすりながらエプロン姿で現れた。


「“焼かれる”側の気持ちを知るためには、まず“焼く”ことを学ばねばなるまい……」


「そんな深読みいらねぇんだよ!!」

カグラが叫ぶ。「パンを!レジで!売れ!!」


 


──午前10時、開店。


「おはようございまーす!クロワッサンひとつ!」


シオン「……それは、三日月の夢を織り込んだかたち」


「え?」


「このサクサク感──まるで過去と未来が“いま”に折り重なるような──」


「えっと、ポイントカードあります?」


 


──午前11時、混み始めた店内。


「カレーパンください!」


「それは……かつて炎に包まれた王都の記憶……」

「いやそうじゃなくて“揚げたてかどうか”聞いてんの!!」


アロマが後方から無言でバチン、と彼の頭をはたく。


「意識を“過熱”させるな。物理的に火傷するぞ」


 


──レジ前のサインポールには、こう書かれていた。


【本日のスタッフ】

・観測者シオン:思考停止する前にレジ打ってね。

・アロマ:無口系ツッコミ(火の玉飛ばす)

・ミルミ:ホール担当(本日テンションMAX)


 


──12時。ミルミが叫ぶ。


「焼きそばパーン追加でーす!!」


「……この熱は……空間干渉を伴う高エネルギー反応……!」

「違うよ!!湯気!!普通の湯気!!」


 


──レジに並んだ少女が、ぽつりと訊ねた。


「お兄ちゃん、パンって、どうしてこんなに美味しいの?」


シオンは目を細めて、かすかに笑った。


「……きっとそれは、“意味”じゃなくて、“出会い”だからさ」


──その瞬間、なぜかレジがバグって一瞬だけ時間が巻き戻った。


カグラ「だからお前の一言ひとことが世界壊すんだよ!!!」


──ピーンポーン♪


「いらっしゃいませー!ご注文は?」


カグラは慣れた手つきでレジを打ちながら、パンを袋に詰める。


その後ろ──厨房の奥、突如“空気が震える”ような異変が走った。


 


「ん?なんか……ピリついてね?」


 


──バチッ。


パン焼き釜の上空に、小さな“ひび”のようなものが浮かぶ。


「……空間の膜が……歪んでる」


アロマがすっと眉をひそめた。


「厨房、次元裂ける五秒前」


 


「……マジかよ!? これパン屋だよな!? ねぇ、パン屋だよな!?」


「たぶん……」ミルミが笑顔で焼きそばパンをひっくり返しながら言った。


 


──ズガァン!!


空間が裂け、そこから――“黒い煙を纏ったパン”のようななにかが這い出てきた。


「……パン?」


「いや、明らかに違う。パンのフリした“ナニカ”だッ!!」


「……え?それって……」


 


──カグラの脳裏に、あの幻の存在がよみがえる。


「まさか……あのときの……パン怪獣バタゴンの残滓!?」


「名前ついてたんかい!!」


 


怪獣(仮)は、パン焼き釜の上でうごめきながら叫んだ。


「バ……ター……ナイ……フゥ……」


「なに!?今度はバター不足に恨みを!? どこから社会風刺ねじこんでくんだよ!!」


 


──一方その頃、シオンは静かに“観測”していた。


「これは……存在の裂け目。その向こうに、“パンに宿る意思”がある……」


「真顔で何いってんだお前!?」


アロマがツッコミを入れるが、すでに怪獣は厨房から客席側へ──!


 


「避難!!避難だ!!これより《非常パン事態》を宣言する!!」


「なんだその訳わからん災害名!?」


 


──そしてミルミは、パンをトングでつまみながら叫んだ。


「よーし!販売数で勝てば怪獣だって仲間にできるってどっかのRPGで聞いたー!!」


「聞くなそんなRPG!!」


「おい、こいつ……焼きそばパンの匂いに反応してるぞ!!」


怪獣(仮)のバタゴンが、ぐるる……と唸りながらカグラの手元を凝視していた。


「これか? 俺の……朝メシ」


──手には、アツアツの焼きそばパン。


その香りに、怪獣の動きが止まる。


「もしかして……これは戦わなくても、和解できるんじゃ……?」


「無理だと思うよ!!」と即ツッコミするミルミ。


「たぶんバタゴン、そっちじゃなくて**“過去の焼きそばパン”の記憶”**に反応してる!」


「いやメタすぎるだろ!? この世界のパン、記憶持ってんの!?」


 


──そのとき、厨房の奥からセリスティアが颯爽と登場。


「わたしの焼いた焼きそばパンは、未来をも焼き直す!!」


「名言っぽく言ったけど意味不明だぞ!? しかもラップっぽいぞ!?」


 


セリスティアは、カグラの手からパンを奪い取り、宙に放った。


「焼きそばパン・リバースシュート!!」


──それはまばゆい光を放ち、空中で分裂した。


「焼きそば……ソウル……スプレッド!!」


パンから溢れた光の粒子が、怪獣の体に降り注ぐ。


バタゴン「バ……ター……イ……フ……(浄化)」


──次の瞬間、怪獣の体がパァッと光に包まれた。


「え、これホントに救えちゃった!?」


「物理的に焼きそばパンぶつけて世界救う話だったのか……」


「さすが……焼きそばパン」


 


──空間の裂け目が閉じ、平和を取り戻したホワイトガーデン。


しかし、床にはひときわ黒いパンくずがひとつ、静かに残されていた。


「……まさか、まだ終わってない……?」


「バタゴン……第二形態……?」


 


──カグラは残されたパンくずを拾いながら呟く。


「……これ、普通にうまそうなんだけど」


「絶対食うなよ!? 絶対にだぞ!?!?!?」


──〈せれす亭〉の屋台は、今日も盛況だった。


 


「はい、焼きそばパンひとつ! マヨ抜きで!」


「かしこまりました〜♪ パンは魂の焼き加減、セリスティアです♪」


 


表ではセリスティアが軽やかに焼きそばを炒め、明るい声で接客していた。


その後ろ──


レジの前には、ひとりの男が立っている。


黒いジャケット。中性的な顔立ち。

そして、片目には光を吸い込むような“封印紋章”。


 


──シオン=ヴァレア。


 


かつて観測者として世界律に属していた男は、

いまやパン屋でレジを担当していた。


 


「……ここで君が焼かれる意味を、君はまだ知らない」


ピッ。


「その焦げ目は、選択の痕跡だ。存在とは、焼かれた後の残響に他ならない……」


ピッ。


「──税込みで、二百四十円」


 


「いや誰が“存在の焼き目”で決済すんだよ!?」

カグラがすかさずツッコむ。


 


「“焼かれる前に、意味を問え”……それが、私のレジ哲学だ」


「レジ哲学って何だよ!!!」


 


屋台の奥で、焼きそばの香りと共に、バグった詩が今日も響いていた。


──パンと真理は、同時に包まれるのだ。


 

「ふう……今日もよく売れたな」


夕暮れの光が、屋台の軒先に差し込む。


片付けが一段落した〈せれす亭〉の裏手。

カグラはベンチに腰をかけて、焼きそばパンを片手に空を見上げていた。


その隣には、マグカップを両手で包んだセリスティアがちょこんと座っている。


 


「……けっこう、いろんな人が来てくれるようになったわね」


「そりゃそうだろ。なんせ、世界一“意味深なレジ打ち”がいる屋台だからな……」


 


ふたりの視線の先、レジの影に静かに佇む男──シオンは、何やら帳簿を見ながら詩をつぶやいていた。


 


「“売上とは、魂の対価”……今日の詩、悪くなかった」


「やっぱやめさせたほうがよくない?」


「いや、もはや名物になってるし……」


 


笑いながら、セリスティアが小さくうなずく。


そしてふと、真面目な表情でカグラを見た。


 


「ねえ……あのね、私、ちゃんと考えてるの。これからのこと」


「ん?」


 


「お店のことも、世界のことも──それに、あなたのことも」


 


静かな沈黙が落ちる。


カグラはパンを一口かじって、もごもごしながら返事した。


 


「……ああ、そっか。じゃあ、俺もちゃんと……考えとく」


 


セリスティアが微笑む。


パンの香りと、暮れゆく空。

そして、笑い声と詩の断片。


 


──今日も、この世界はちょっとだけバグってて、でもそれが心地いい。


タイトルに全力でツッコミたくなった方、安心してください──正解です。


この回では、ついにあのシオンが! まさかの! バイトデビュー!!

……というわけで、存在の観測や空間干渉から一転、

今日はバーコードを観測してました。ピッて。


彼は相変わらず“意味”とか“存在”とか哲学的なことを口走ってるのに、

やってることはめちゃくちゃ庶民的で…


ここまで読んでくれて、本当にありがとうございました。

“観測外”のあなたの存在も、ちゃんとこの物語に刻まれてます。

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