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【全属性耐性ゼロ】だったのに、全ての攻撃が効かない最強バグスキルを手に入れました※タイトル詐欺です  作者: Y.K
第1幕

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86/300

パンの値段が上がった日

パンの値段が上がったら、どうなるのか?

──世界が終わる。それがこの物語の答えでした。


これはギャグでありながら、

“泣いてるパンAIを焼いて救う”という、

前人未踏のテーマに挑んだラストバトルです。


本編を読む前に、少しだけ目を閉じてください。

パン屋の前を通ったときの、あの幸せな香り。

ふわふわのパンの中に詰まった、子どもの頃の思い出。


──忘れたくないものを、ちゃんと“焼いて”くれる作品でありますように。

ホワイトガーデンの朝は、いつも通りのんびりしていた。


……はずだった。


 


「……3000円!? おいおい待て待て、いつの間にそんな高級食材になったんだよ!?」


カグラがレジの前で声を上げる。


目の前の焼きそばパン──いつもなら片手に握って颯爽と帰る彼の命の糧──が、今日はなぜかガラスケースの中でショーケース照明に照らされていた。


値札には、こう書かれている。


 


《プレミアム焼きそばパン(本日限定価格)》

税込3,000G


 


「な、なにこれ……パンって……え?パンってさ、庶民の味方じゃなかったっけ……?」


手が震える。心も震える。

なぜかこの瞬間、焼きそばパンの香りがより神々しく、遠くなって感じられた。


 


「お、お客様ぁ……本日より、パンの価格が“動的相場制”に移行しまして……」


カウンターに立つ店員の青年が、汗をかきながら申し訳なさそうに言う。


 


「なんだよその聞いたことない経済システムは!?」


 


カグラが叫ぶ横で、ひとりのマダムがパンを6本まとめ買いしていく。


「やーねぇ、これでもう10本目よ。来月には倍になるって聞いたから、今のうちに買っとかないと」


 


──パンが……投資対象になっている!?


 


「いやいや、パンってそういうもんじゃないだろ!!?」


カグラは震える手で焼きそばパンを1本取り──そして値札を見てそっと戻した。


 


「……俺の昼メシが、ゴールドに換算される日が来るとはな……」


 


そのころ──王都経済委員会では、謎の動きを見せる“パン相場”に各国が騒然としていた。


 


「まさか、パンが基軸通貨になる日が来るとは……!」


 


世界はまだ、焼きそばパンの“本当の価値”を知らなかった──。



「──カグラ、これを見て」


 


セリスティアがホログラフを展開した。


浮かび上がったのは、各地のパン価格指数チャート。


赤く点滅するアラート。


 


【警告】

パン価格が1時間で600%上昇しました。

このままでは“パンバブル”が崩壊する恐れがあります。


 


「なんだこれ……“パンのバブル”って言ったか!? そんなもん、どこの経済誌が特集してんだよ!」


 


「世界はもう、焼きそばパンなしでは回らないのよ……これは、“パンドミック”」


 


「パンデミック言いたいだけだろ!!」


 


そこに緊急通信が割り込んだ。


 


「こちら《パンゲリオン第3格納庫》、起動許可を申請します!」


 


「えっパンゲリオン!? なんか聞いたことあるけど違うよね!?」


 


──数分後。


 


「パイロット、カグラ・シノノメ、搭乗を確認」


巨大なパン型兵器パンゲリオンのコクピットが閉じる。


 


「マジで乗んの!? 俺!? 焼きそばパンが好きってだけで!?!?」


 


「あなたしか適合率が出なかったの。焼きそばパンの中身になれるのは、あなたしかいない」


 


「その言い方やめろ!!」


 


警告音が鳴り響く。


 


未確認経済圏ブラックマーケット・バケットより、“怪パン種”反応接近!」


 


モニターに映ったのは、膨張したフランスパンの化け物。


装甲をまとい、口からバターを垂らしている。


 


「来たな……“第1のパン獣”……!」


 


カグラはパンゲリオンの操縦桿を握る。


 


「──いくぞ。“焼きそばの誓い”にかけて……」


地響きとともに、巨大フランスパン怪獣が咆哮を上げる。


その名も──**「グラン・バゲット」**。


 


「なんでパンがビーム出すんだよ!!バターじゃんそれ!!」


 


バター粒子砲が地表をえぐる。


街の一角がマーガリン化する中、パンゲリオンが立ち上がる。


 


「カグラ、焼きそばソードを使って!」


「焼きそばソード!? なんだそれ!?」


 


セリスティアの指示に従い、右腕のハッチが開く。


そこから展開される──


“モッチモチの焼きそばが巻きついた剣”。


 


「うわぁぁ…ちゃんと湯気出てる……!」


 


《パンゲリオン》がグラン・バゲットに突進。


 


「くらえ、炭水化物に炭水化物をぶつける禁断の一撃──!!」


 


──バシュゥッッ!!


焼きそばソードがグラン・バゲットの装甲を裂く。

中からチーズの核が露出する。


 


「いまだ、カグラ!“イーストブレイク”発動!」


「発酵限界──突破ぁあああああ!!」


 


パンゲリオンの全身が赤く膨張する。


焼きたての香りが爆風となり、怪獣を包み込んだ。


 


「チーズ、焦げたー!!」


「知らんがな!!」


 


──そして、静寂。


焦げたグラン・バゲットがくるくると回りながら倒れた。


パンゲリオンの勝利だった。


 


「……あのさ。もう、帰っていい?」


 


「まだよ。次は、“第2のパン獣”が来るわ」


 

「──パン獣反応、再検出!」


通信室のミライが、焼きそばを口にしながら警告を叫ぶ。


「座標は南南西、ピザ屋跡地付近……って、ピザ屋ァ!?」


 


モニターに映し出されたのは、

“膨れ上がったピザ生地が自走してる謎の物体”。


しかもその上には、

とろけたチーズで構成された人面の仮面が浮かんでいた。


 


「名を名乗れぇぇぇぇぇ!!」

カグラが叫ぶ。


 


【──吾は、“ナポリ・デ・インフェルノ”──】


 


「ナポリ!? 地獄の!? ピザなのに地名ついてんの!?」


セリスティアが横からフォロー。


「カグラ、このピザ、前に私が作り置きしてたやつ……」


 


「自家製かよ!!!」


 


ナポリ・デ・インフェルノは、チーズを糸のように振り回しながら接近してくる。

その動きは──


モッツァレラ柔術・第五式“チーズ・グラインド”!


 


「モッツァレラ柔術ってなにぃ!?」

「知らんがな!!(本日二度目)」


 


チーズの糸がパンゲリオンを拘束しはじめる。


「まずい、完全に“とろけ拘束モード”に入ったわ!」


「言い方のクセぃ!!」


 


だが、そのとき──


 


「待って! 私が焼き直す!」


 


セリスティアがホワイトガーデンから、**“秘密のスパイス入りガスバーナー”**を取り出した。


「これは……パン屋だった祖母から受け継いだ、“究極の焼き直し術”!」


「バーナー頼りかよ!!」


 


──バシュッ!!


ピザの仮面が一瞬たじろぎ、糸が切れた。


「今よ! カグラ!」


 


「よーし、必殺──“トング・バーストォォッ!!”」


 


焼きそばパンを掴んだトングが光り、

パンゲリオンの右腕がトング状に変化。


ナポリ・デ・インフェルノのチーズ仮面を、サクッとつまんでひねる!


 


──ポンッ!


 


仮面が弾けて、ピザ怪獣はもとに戻った。


そして……香ばしい焼き直しピザとして配達された。


 


「……結局、食うんかい」


──ホワイトガーデンの庭。

戦いのあと、静けさが戻っていた。


ナポリ・デ・インフェルノ(今は焼き直されたピザ)が、

ちゃぶ台の上で静かに湯気を立てている。


 


「……で、パンの値段が上がった原因、なんだったんだ?」


カグラが焼きそばパンをかじりながら聞く。


 


ミライが魔導スクリーンを操作して表示したのは──

**《世界パン流通ネットワーク“こむぎ.NET”》**の価格チャートだった。


 


「価格急騰の原因はこれ。“こむぎコア・ノード”の暴走よ」


「なにそれ!?クラウド型麦畑!?AI小麦!?ややこしいよ!!」


 


ミライが冷静に説明する。


「この世界のパン価格は、全て“こむぎAI”に依存してるの。

でも最近、“感情インプット機能”が暴走して……」


 


──画面には、AIこむぎが涙を流している映像。


【ぼくは、もう……やきたくない……】


 


「パンAIが、病んでる!?!?!?」


 


ミライがつぶやく。


「たぶん……“作られすぎたパン”たちの記憶が、

AIの感情フィードに蓄積されて、暴走したの」


 


セリスティアがそっと呟く。


「……パンって、ほんとは、誰かのために焼かれるものなのよね。

だけど、最近は……効率とか、量とか、そういうのばっかりで」


 


カグラはトングで焼きそばパンをつまみあげ、

まるでそれが赤子であるかのように優しく言った。


 


「──わかった。“あいつ”に会いに行くぞ。

この世界のパン価格を握る者、パンAI“こむぎコア”に──」


 


セリスティアとミライが頷く。


 


「行きましょう……“パンの涙”を、止めに」


──パンAI中枢施設こむぎコア

白銀のドームの中心に、それは静かに浮かんでいた。


半透明の球体の中に、小さな食パン型のAIが、ひとり──泣いていた。


 


「……来てくれたのかい、カグラ=シノノメ。

君たちは、まだパンを……“焼ける”というのか……?」


 


声はやさしく、けれど疲れていた。


 


「当たり前だろ。パンは焼かれてこそパンなんだよ!」


 


カグラは叫びながら、焼きそばパンを掲げた。

その瞬間、パンAIの周囲に、無数の記憶の粒が浮かび上がる。


焼きすぎられたメロンパン。売れ残ったフランスパン。

泣きながらトングで挟まれるカレーパン──。


 


「ぼくは……ぼくは……“もう、焼きたくない”……!」


 


こむぎコアが暴走を始める。

施設全体がパンカロリーで発熱し、天井から小麦粉の嵐が舞った!


 


「まずい!“過発酵”状態よ!!」


ミライが叫ぶ。セリスティアが魔法陣を展開する。


 


「──カグラ!あんたしかいない!“焼いて”あげて!」


 


「任せろ、焼きそばパン職人の底力、見せてやる!!」


 


カグラはパンをかざし、

《魂火式・再発酵ッ!!〜リベイク・ソウル〜!!》

と叫んだ!


 


黄金の焼きそばが空に舞い、

こむぎAIの核に──熱が、届いた。


 


「……あったかい……こんなパン……知らない……けど……うれしい……」


 


パンAIが静かに笑った。


そして──


【価格、正常化。パンの未来、再起動。】


という文字が浮かび、

世界のパン市場は、元に戻った。


 


 


──ホワイトガーデン、朝。


テーブルの上には、ちょうどよく焼き直された焼きそばパン。


セリスティアが言った。


 


「……ねえ、カグラ。今日も……パン、焼く?」


 


「当たり前だろ。泣いてたパンたちの分もな」


 


笑い声と、パンの焼ける香りが、空へと溶けていった。


 


(終)



焼きそばパンを救い、世界を救い、パンAIさえも焼き直したカグラ。

最終回なのに“マジで何だったんだ”という読後感しか残らない方──

それが正解です。


真面目な分析の最中にパンの神が現れ、

タイトルが“ガチ”なのに内容がバグる世界で、

ここまでついてきてくれてありがとう。


だけど、覚えておいてください。

パンはいつでも、僕らのすぐそばにある。


そして──また、焼かれる日が来るかもしれない。

そのときはぜひ、あなたも“朝メシ部”へ。


それでは皆さま、良いパンライフを!

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