さよなら、焼きそばパン……?
「まさか…カグラが焼きそばパンを食べない!?」
そんな恐ろしい事態から始まる今回。
誰もが予想しなかった異変に、パン次郎は涙し、セリスティアは全力で焼きそばパンを再発明し、
アロマとシオンは謎のデータと哲学で空回る──。
ちょっぴり成長、でもやっぱりツッコミまみれの一日をお楽しみください。
──朝の《白の庭園》
セリスティアはテーブルの上に焼きたてのパンをずらりと並べていた。
黄金色の湯気、香ばしいソースの香り、そして――一番奥に輝く一本の焼きそばパン。
「よし、完璧……。あとはカグラが来て、パンにかぶりつくだけ……!」
セリスティアはワクワクしながら椅子に座る。
だが。
カグラ「……おはよ。今日の朝飯、これでいいや」
手にしていたのは、まさかの――
サラダチキン。
セリスティア「……え?」
カグラ「ちょっとさ……食生活、見直そうかと思って」
アロマ(即分析)「体調変化、自己意識向上、あるいは精神的ショックによる嗜好変化。
──俗に言う“焼きそばパン離れ”」
セリスティア「いやいやいや!? 待って!? ちょっと待って!? あんなに“うめぇ”って言ってたじゃん!!」
カグラ「いや、好きだよ? ただ、毎日だと……飽きるというか……胃が重いというか……」
パン次郎(机の端から覗く)「…………」
カグラ「うわっ!? 出たパン!喋るパン!!」
パン次郎「……わたし、もう……必要ないんですね……」
カグラ「いや、捨ててないし!? ちょっとヘルシーにしてるだけだし!?」
アロマ「観測上、焼きそばパン依存率が急落。これは“炭水化物危機”です」
セリスティア「焼きそばパンが……失業の危機……!?」
哲学者・シオン(突然現れる)「……存在は、摂取を持って完了する。
だが、摂取されない存在に価値はないのか?
問うべきは、“なぜ食べないか”ではなく、“なぜ食べてきたのか”──」
カグラ「いやうるさいな!? 哲学で問い詰めないで!? 朝から胃もたれなんだって!!」
──記憶喪失、戦争、バグスキル……
数多の混沌を乗り越えてきた男が、今、最大の危機に直面する。
“焼きそばパンを、食べない日常”という名の空白に。
──数時間後、《ホワイトガーデン》裏庭。
セリスティアは、テーブルいっぱいにパンの試作品を並べていた。
セリスティア「“チーズ焼きそばパン”! “激辛焼きそばパン”! “抹茶あんこ焼きそばパン”!!」
(ガタッ)「“焼きそばパンのなかに、さらに焼きそばパンが入ってる焼きそばパン”!!」
アロマ(ドン引き)「それはもう概念がバグってる」
カグラ(遠巻きに見てる)「おい、なんかあいつらやばくない?」
パン次郎(泣きそう)「……もう、ボクの居場所なんて……」
(くるんと転がり、花壇のすみへ)
そこへ──
シオン「……パンは、記憶だ」
パン次郎「シオン様……」
シオン「“思い出の味”とは、過去と現在を繋ぐ“可食の連続体”。
それを断ち切れば、きみは“過去から消える”。それでも、よいのか?」
パン次郎「うぅ……でも……カグラさんが、もうボクのこと……」
──と、そこへ。
風に乗って、甘く香ばしい匂いが、ふわりと庭に流れた。
セリスティア「あっ、パン焦げたかも!」
カグラ(ピクッ)「……この匂い……」
──あの、旅の朝。
──初めて一緒に食べたあの瞬間。
カグラ(無言で近づく)
パン次郎「……?」
カグラ「……お前さ」
(そっとパンを手に取り)
「俺の記憶に、めっちゃしみ込んでるんだよな……」
パン次郎「……!」
カグラ「……いっただきまーす!」
──カグラ、復帰。
セリスティア「戻ってきたあああああ!!」
アロマ「情緒の波動、回復確認」
シオン「パンの存在、再定義されたな……」
パン次郎「……うん、ボク……食べてもらえて……よかった」
──夜。ホワイトガーデンのテラス。
庭に咲く月見草が、ほんのりと淡く光っていた。
その明かりの中、カグラはゆっくりと、残ったパンの耳をかじっていた。
カグラ「……まあ、毎日ってわけじゃなくてもさ。
こうして、たまに食べるぐらいの距離感も、悪くねぇか」
パン次郎「うんっ……それで、いいんです……!
ボク、ずっと“主食”じゃなくていい。“思い出”になれたら、それで……」
カグラ「急に卒業式みたいなこと言うな! てかなんで泣いてんだよ!?」
パン次郎「ううっ、うれし涙ですうううっ!!」
──そこに、ジュッと音を立てて、
セリスティアが“あつあつ”の焼きそばパンを皿に盛って持ってきた。
セリスティア「はい、これ! “しらすとレモンの焼きそばパン”! ヘルシー志向!」
カグラ「焼きそばパンの意味とはいったい」
アロマ「高タンパク低脂質、カルシウム豊富。実用性は高い」
シオン「存在の核心とは、進化の余地があるということ……」
──そして気づけば、
焼きそばパンを囲んで、
みんながぽつりぽつりと、昔話を始めていた。
「最初に食べたのは、あの村の屋台だったよね」
「そのとき、シオン様ずっと“これは神託か?”って言ってたよね」
「セリスティア、ソースの飛び方がすごくて──」
「カグラ、焼きそばパンを一口で吸い込んだの、衝撃だった」
カグラ「うっせぇよ!」
──そんな笑い声が、夜空へと広がっていく。
焼きそばパンは、主食じゃない。
けれど、仲間たちの記憶のなかで、ずっと“あたたかく”あり続ける──
──焼きそばパン、復帰。
焼きそばパンは主食か、記憶か、はたまた神託か──
そんな壮大なテーマ(?)に迫った今回。
食べるという行為のなかに、仲間との思い出や絆があるんだよなぁ…なんてしんみりしたり、
しらすとレモンを挟んでギャグに振り切ったり、結局この作品らしい回になったと思います。
さて、次は何がバグるのか。焼きそばパンは再び旅立つのか。
――お楽しみに!




