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【全属性耐性ゼロ】だったのに、全ての攻撃が効かない最強バグスキルを手に入れました※タイトル詐欺です  作者: Y.K
第1幕

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80/300

アロマは何も言わない(ただし仕事は超できる)

こんにちは。

今回は、我らがクール系毒舌女子・アロマの本格ギャグ戦線デビュー回です。


パンに飲まれかけたセリスティアの“断パン修行”に付き添うのは、情報分析と現実ツッコミに定評のあるアロマ。

しかし、事態は静かにバグっていく──空からごはん男子が降ってきたあたりでね。


パン vs ごはんの“主食戦争”が開戦する裏で、唯一まともな感性で世界を見ているのがアロマという皮肉。

冷静な彼女の言葉が、ツッコミであり、真理であり、もはや哲学です。

ホワイトガーデンの朝は、いつもと同じように始まった。

けれど、そこに“いつも通り”でない気配が漂っていたことに、誰も気づいていなかった。


 


「…………」


銀髪の少女、アロマは無言で湯を沸かし、ゆっくりとポットへ注ぐ。

紅茶の香りが湯気とともに立ち上り、空気の層を一枚、静かに揺らす。


 


誰もいないはずの空間に、微かな“ノイズ”が混ざった。

音ではない。光でもない。存在の“ズレ”とも言うべき、世界の綻び。


 


──存在干渉:微小。

──座標誤差:+0.004sec

──発生源:局所・食糧構成物


 


アロマの左目が、僅かに発光する。

通信を受信していた。誰にも聞こえない暗号化データが、彼女の神経へと流れ込む。


 


その手は、紅茶を注ぐ動きを止めない。

あたかも、何も起きていないかのように。


 


数秒後、音を立てて扉が開いた。


「アロマー! パンが、パンがいっぱい……っていうか、なんか増えてる気がするんだけど!?!?!?!?!?」


ミルミが髪をボサボサにしたまま部屋に飛び込んでくる。

その後ろから、寝癖だらけのカグラがのそのそと現れた。


「うるさい朝だな……俺は寝る……」


 


「おはよう。今日は……いい日になりそうね」


セリスティアがふわりと微笑んで現れるが、彼女の手には既に三本の焼きそばパンがあった。


 


アロマはそれを横目で見ながら、

トレイに静かにティーカップを置いた。


その中身は──

※紅茶ではなかった。


「見て、これ全部! ホワイトガーデンの冷蔵庫、パンで埋まってるの!!」


ミルミが叫びながら、持ちきれないほどの焼きそばパン(とその派生パン)をぶちまけた。

あんパン、メロンパン、カレー焼きそばパン、クリーム焼きそばパン──


 


「いやこれ、パンの顔した何かも混じってるよね!?」

カグラが思わずツッコミを入れる。


「なんか、すごい笑ってる焼きそばパンが混ざってた……」

セリスティアが神妙な顔でパンを見つめる。


 


「──自律増殖……?」


唯一、真顔のまま紅茶(※もはや何かの検体)をすすっていたアロマがつぶやいた。

通信で得た情報を再解析していたようだ。


 


「アロマ、それってつまり──」


「パンが勝手に繁殖してるってことだね!?」

ミルミがなぜか嬉しそうに言った。


「いや“ね!?”じゃない! なんで嬉しそうなの!? あとなんで焼きそばパンが自己増殖してるの!?」

カグラが頭を抱えた。


 


そして次の瞬間──


 


ボスッ!!


 


パンが爆発した。

あの“笑ってたパン”が、陽気なメロディを奏でながら。


 


「パン、オーバーフロー!!」

ミルミが空中で回転しながら叫ぶ。


「なにそれ!? 技名!? ギャグ!? どっち!?」

カグラは完全に振り回されていた。


 


そんな中──

アロマは黙ったまま、1枚のデータを空間にホログラムで表示した。


──発生源:セリスティアの“パン複製魔術”によるバグ反応。

──拡張原因:昨晩、夢遊状態で発動された模様。


 


「……えっ、わたし!? 記憶にないんだけど!?」

セリスティアが目を丸くする。


 


「焼きそばパンを夢で量産……?」

カグラの顔が引きつる。


 


「じゃあ……あの爆発パンって、セリスティアの夢の具現化なの……?」


その瞬間、また一つ、

“笑顔のパン”がポンっと爆ぜた。



──夜。


みんなが眠りについた後。

ホワイトガーデンの空間が、ほんの少し、軋んだ。


それは誰にも気づかれないほど微細で、けれど確かに、“世界”が歪んだ瞬間だった。


 


「……パン……もっと……ふわふわに……」


セリスティアがうわ言のように寝言をつぶやきながら、両手をゆっくり掲げた。


 


その指先から、淡くゆらめく魔力が漏れ出す。


本来なら結界によって制限されるはずのその力が、なぜか干渉を受けず、空間全体へと染み出していった。


 


──“焼きそばパン増幅式・拡張領域”発動。


それは、セリスティアの魔術と夢と、ちょっとした焼きそばパンへの愛が奇跡的なバグで融合してしまった結果だった。


 


【夢の中】


セリスティアは、パン畑を駆けていた。


地平線の先まで、焼きそばパン、焼きうどんパン、ナポリタンパン、タコ焼き入りフランスパンが実っている。

小麦粉の風が吹き抜け、ソースの香りが漂う。


 


「ここは……天国……?」


そう思ったそのとき、パン畑の中心から、**パン次郎(自我拡張モード)**が現れた。


 


「セリスティア様……夢と現実の境界が、パンによって、今……消えつつあります……」


「えっ?」


「あなたの心が望む限り……パンは増え続けるでしょう……」


「やだそれ怖い!!」

セリスティアが絶叫した。


 


その声は、現実の空間にも波紋のように伝わり──


翌朝、カグラが目を覚ましたとき、


ホワイトガーデンは、完全に“パンの楽園”と化していた。


 


壁がパン。床がパン。

朝食も、ベッドも、玄関も、冷蔵庫の中身も、全部パン。


 


「──どこもかしこもパンじゃねえかああああああ!!!」


カグラの魂のツッコミが、パン天国にこだました。


「……ふむ、ついに来たか」


パンの海に沈みながら、シオン=ヴァレアはひとり静かに目を覚ました。


 


「パンに侵食される世界……夢と現実の境界が、焦げ目の数だけ曖昧になっていく……」


 


彼の周囲には、焼きたてパンの群れ。

ふわふわ。もちもち。こんがり。ひたすらに柔らかく、やさしく、甘美な世界。


それでも、シオンの目は真剣だった。


 


「我々は、“焼かれるため”に生まれてきたのだろうか……?」


 


突然、隣から声がした。


「いや、焼くために生まれてきたのかもしれない」


カグラだった。

頭にクロワッサン、肩にメロンパン、腰に食パンの帯。もうツッコミすら疲れたのか、見た目もバグっていた。


 


「パンによって包まれ、パンによって癒やされ、パンによって満たされ──」


「パンによって溺れるんだよ!」


 


カグラが頭のクロワッサンを振り落としながら叫ぶ。


「ていうかさ!なんで俺、起きたら“パン風呂”に浸かってんの!? どっから湧いてんだよこれ!!」


「パンは、望まれた瞬間に生まれ、忘れられた瞬間に消える──」


「詩的なこと言ってるけどそれ、単なるバグだろ!」


 


そんなカグラの隣で、セリスティアが寝ぼけた顔で起き上がる。


「……ん……朝ごはん、焼きそばパンで……」


またパンが生まれた。しかも今度はスパム入り。


 


カグラが顔を覆って叫ぶ。


「いい加減にしてくれえええええええ!!!」


 


──シオンは静かに立ち上がり、手を掲げた。


「パンの存在は、観測されたときのみ実体化する……ならば──」


 


彼が詠唱を始めると、空間がゆっくりと収束し、パンの気配が霧散し始める。


「この世界のパン密度を、“理性の限界値”まで下げよう──“焼却知覚バグ・ディゾルブ”発動」


 


光が弾け、空間が揺れる──!


「──で、これはなんなの?」


アロマが腕を組み、じっとセリスティアを見下ろしていた。


 


「ぱ、パン断ち修行です……」


セリスティアは、両膝をそろえて正座していた。

その目の前には、焼きそばパン(立体ホログラム)がふわふわと浮いている。


 


「24時間、パンに触れず、パンに頼らず、パンを想像しない」

「──それが“パン断ち”だ」


カグラがやや遠巻きに、そっとパン耳をむしゃむしゃしながら見守っている。


「おまえそれ触れてんじゃん!」


 


一方、アロマは魔導パネルを操作しながら、

パンの出現頻度・魔力干渉値・セリスティアの脳波と胃袋の反応を解析中。


 


「……やっぱり。“ソース濃度”が異常。」


「そ、ソース濃度……?」


「夢の中で焼きそばパンを500本くらい生成してたわね。

そのせいで潜在魔術式が“炭水化物・強制具現”モードに切り替わってる。完全に糖質中毒よ」


「つ、つらい……パンが……恋しい……」

セリスティアがふらふらとホログラムに手を伸ばしかけ──


 


パシッ!

アロマが彼女の額に冷却スプレーを直撃。


「──妄想パンは脂肪のもとよ」


「ぐっ……!」


 


「ちなみに、この状態で“食パン系の幻覚”を見始めたら末期」

「特にあんバターは危険。意識が持ってかれるわ」


 


「う、うぅぅぅ……そこまで言う!?」


涙目のセリスティアを、アロマは冷たく見つめる。


 


「……パンに溺れる者は、パンに食われる。

いい?これは修行じゃない。“社会復帰プログラム”よ」


 


 


──そのとき、空間に微かな揺れが走った。

遠くから、パンの波動が──再び迫っていた。


「……まさか、パン次郎が……!?」


「カグラ! 異常な魔力反応、北東から接近中!」


アロマが警告するのと同時に、大地がぐらりと揺れた。

空が、ザザザザ……とノイズ交じりにバグりはじめる。


 


「ちょっ……パン関係ない方向からバグってんだけど!?」


カグラが叫ぶ横で、セリスティアはうつろな目でこう呟いた。


「……パン……焼かれる音がしない……何か……ちがう……これは……」


 


ズドォォォォォン!!!


 


爆音とともに、地面を突き破って現れたのは──


漆黒の茶碗をまとった、

“ふわ炊き系・第七ごはん意思体セブンス・ライス・コンシャスネス


 


「……パンに支配されたこの世界に、我は反旗を翻す──」


彼は静かに立ち上がった。

腰にはごはんですよベルト、背中に梅干しバリア、

手には巨大しゃもじを構えている。


 


「な、なんだあいつ!? ただの炊飯器系男子じゃねーか!!」


カグラが叫ぶと、アロマが補足する。


 


「分析完了。……“おかず召喚士”ね。

対パン特化型の反主食系存在よ。

たぶん、本気で戦うと【佃煮時空】を展開してくる」


 


「それ、何が起きるの?」


「パンが……しょっぱさに屈する」


 


ごはん男(仮)は、フッと笑った。


 


「この星は、焼きたての幻想に酔いすぎた……

いまこそ目覚めよ、“炊きたての真理”に──」


 


「炊きたての真理ってなんだよ!!!???」


 


 


──ついに、パンとごはん、二大勢力の抗争が幕を開けた。


次回:


『第○話 主食大戦 -ライス・リベリオン-』


——世界は、白米に染まるのか。

あるいは、焼きそばパンが守りきるのか。(嘘です)


アロマが真面目にバグに対処すればするほど、世界はどんどんギャグで崩壊していく──

そんな**「優等生が不条理ギャグ世界に突っ込まれる系回」**でした。


本来は情報戦・魔導結界分析などが得意なアロマ。

でも今回は、炊飯器が地面から飛び出してくるという謎の現象に対し、


「対パン特化型の反主食系存在」

「たぶん、佃煮時空を展開してくる」


などと冷静に解説しながらギャグ世界の正気を保つ役に回ってくれました。


たぶん、読者のあなたも「一番共感できたのアロマだった」と思ってるはず。


今後、アロマの毒舌と超冷静分析は、さらにバグった敵に対して冴え渡る予定です。

パンの平和は、アロマにかかっている──かもしれない。


それでは、次回もお楽しみに!

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