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【全属性耐性ゼロ】だったのに、全ての攻撃が効かない最強バグスキルを手に入れました※タイトル詐欺です  作者: Y.K
第1幕

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朝メシ部、爆誕 〜そして哲学者はパンを焼く〜

──パンを愛する者たちが、朝から集った。

そこには、混沌と哲学と生カレーがあった。

これは、“朝メシ部”という名の小さな革命のはじまり。

──ホワイトガーデンの朝は、静かで、ゆるやかだった。


まるで世界が、もう少しだけ夢を見ていたいと願っているかのような空気が、屋敷の中に流れている。


サンルームの奥、朝日が差し込むガラス窓のそばで、

セリスティアは湯気の立つカップを両手で包みながら、小さくため息をついた。


 


「……最近、朝ごはん、ちゃんと食べてない気がするのよね」


 


何気ないその一言が、運命を狂わせた。


 


「よし、部活作るか」

紅茶もまだ飲み干していないのに、隣の席でぐでっとしていたカグラが唐突に言い出す。


セリスティアはカップを置いて、顔だけカグラの方に向けた。


「部活?」


「そう。朝ごはん食べるだけの部活。《朝メシ部》。今決めた」


「……発想が、単純というか……貧相というか……」


「いやいや、最近の若者は朝食を食べなくなってるって統計が出てるんだ。

 これは社会的意義のある取り組みだぞ。教育的配慮もバッチリ」


「おおよそ“焼きそばパンしか食わない”人間の言うこととは思えないんだけど」


 


──カグラは立ち上がって、腕を組むとふてぶてしい笑みを浮かべた。


「ふっ、だが俺は気づいた……。

 “朝食とは、心のストレッチ”なんだよ!!」


「あなたが言うと全部台無しなのよ……」


 


そんなふたりの横で、パンの耳をカリカリ齧っていたミルミが、ぱぁっと顔を輝かせる。


 


「ねぇねぇ、じゃあ私も入る!

 朝からスパイスたっぷりのカレーとか作って持ってきていい!?」


「それはもう別の部活では?」


「あと、おにぎりの具にチョコ入れる実験とかも……!」


「やめて!!!」


 


──かくして、

ホワイトガーデンにて謎の非公認団体《朝メシ部》が立ち上がる……寸前であった。


 


しかし。


 


「……この場所に、新たな“名称”を刻むというのか」

そんな低く、意味深な声が部屋の奥から聞こえた。


振り向けば、そこには──


哲学者・シオン=ヴァレアが、朝食のトースト片手に、いつものごとく片目を閉じて佇んでいた。


 


「この空間は……存在の再定義を許された、朝の黎明域……

 名をつけるには、それ相応の覚悟が必要だ……」


 


カグラ「……また朝から難しいこと言ってんな!?!?」



「……そもそも、朝とはなんだ?」


シオン=ヴァレアが、温かいトーストの端を噛みちぎりながら、ふいに問いかけた。


「“時間”か? “概念”か? “日付の始まり”に過ぎぬのか?……否」


彼は軽くパンくずを払うと、ぽたりと落ちたジャムのしずくを見つめる。


「朝とは、“昨日”を乗り越えた者にのみ許された、新たなる試練……

 それは存在の確証であり、世界の初期化処理。

 パンとはその供物。咀嚼とは世界再構築の予兆……」


 


セリスティア「ちょっと待って、言ってることめちゃくちゃ難解になってるんだけど……!?」


 


ミルミ「でも、シオンくん朝にトースト焼いてるってことは、つまり“朝食の大切さ”を理解してるってことだよね!」


カグラ「“理解”というより“祀ってる”レベルだぞ。パンに供物とか言ったぞ今……」


 


──そんな哲学的オーラを撒き散らすシオンの背後で、


こっそり画面が光った。


 


《アロマ・ログインしました》


 


『……プロテイン20g、炭水化物40g。ビタミンB群不足。』


アロマの冷静すぎる栄養指摘が、朝の空気を一撃でぶち壊す。


 


「うわ、いきなり始まった!?リモート参加!?」


「私は“朝の栄養バランス監査官”としてこの部に参加を認められたはずだが」


「そんな役職作った覚えないけど!?」


 


カグラは頭を抱えながらも、ちょっと嬉しそうに笑っていた。


 


「……ってことで、シオン、お前も入部だな?」


「……我は、すでにこの空間にて……毎朝パンを焼いていた……

 それは既に、魂の“活動”だったのかもしれない……」


「それ入部どころか創設者じゃん」


 


──こうして。


突如ホワイトガーデンの一角で、

時空と概念と主食を超えた《朝メシ部》が、正式に(非公認で)結成されたのだった。


 


【朝メシ部・暫定ルール】

1.活動時間は日の出から1時間以内(ただしガーデン内は時空が歪んでいるので自由)

2.朝食は各自で準備する(ただし哲学的意義が求められる)

3.焼きそばパンはメイン扱い不可(異論は聞く)



「──よし、各自持ってきた朝メシを披露しろ!」


カグラの号令で、ホワイトガーデンの長テーブルに一同が並んだ。


テーブルには、まだ何もない。

だがこの数分後、そこに主張の強すぎる朝ごはんたちが並び始めるとは、誰も想像していなかった。


 


「まずは私から行くわね」


セリスティアがふわりと白いクロスを取り払うと、そこには──


 


「おいしそうな……オムレツ?」


「いえ、“マナと祝福の香草を使った聖王家秘伝オムレツ”よ。

 正式名称は、えっと……“エンシェント・ソウル・エッグ・オブ・エターナル・ブレス”」


「長すぎんだろ!!」


「しかも朝に出す名前じゃないのよ!」


 


見た目はごく普通のふわとろオムレツだった。

だが口に入れた瞬間、カグラは一瞬、背筋を震わせた。


「な、なんだこの……口内に広がる浄化感……

 マナが……マナが流れ込んでくる……」


「完全にエリクサーじゃんそれ」


 


続いて、ミルミがどんっと布ごと投げ出したのは──


「どーん!特製・朝カレー!

 ジャガイモもにんじんも、ぜーんぶ“生”だよ☆」


「なんで!?どうして加熱を怠った!?」


「エネルギーを直接摂取するスタイル!」


「人間の胃じゃ処理できねぇよ!?」


 


さらにシオンが、神妙な面持ちでパンを一枚差し出す。


「これは……虚無のパン。何も塗っていない。焼いてすらいない。だが、そこに“意味”はある」


「シンプルすぎて逆に重いな……」


「食の本質を問うタイプの朝メシだこれ……」


 


最後に、アロマの映像がカチッと切り替わり、画面上にプレートのCGが表示される。


『これは栄養計算に基づいた理想的な朝食構成だ。

 ・玄米おにぎり

 ・温泉卵

 ・青菜のおひたし

 ・豆腐の味噌汁

 ・バナナ一本』


「……普通すぎて逆に浮いてる!」


「ていうか、なんでアロマだけ“ガチ健康志向”なんだよ!」


「バランス重視。それが“勝利”の鍵」


 


──こうして、テーブルの上には

•エリクサーオムレツ

•生カレー

•虚無パン

•CGごはん


が並び、圧倒的カオス空間が爆誕した。


 


「……で、カグラは?」


「オレ? 焼きそばパンしか作れねぇよ」


「知ってた」



「……では、まずは試食タイムといこうか」


誰が言うともなく始まった朝メシ品評会。

だが、それはただの試食で終わるはずもなかった。


 


「うわぁあああああああ!!舌がっ!舌がああああああ!!」


ミルミの“生カレー”を一口食べたカグラが、勢いよく椅子ごと倒れ込む。


「このジャガイモ……硬すぎて“武器”レベル……!!」


「むしろ、焼きそばパンの敵なんじゃない!?」

「いっそ揚げよう!コロッケにしてくれ頼むから!!」


 


「次は、私のオムレツね。心して味わいなさい」


セリスティアが得意げにオムレツを差し出す。


カグラは恐る恐る口に運んだ。


──その瞬間。


「……………はは……」


「カグラ……?」


「オレ……オレもう、パンだけじゃ生きていけない気がする……」


「パンの裏切りきたーーーっ!!!」


 


次は、シオンの“虚無のパン”。


「無とは、すなわち余白……そこに何を感じるか、それは食す者次第……」


カグラが一口かじった。


「うん、普通に乾いてるな」


「なんでそんな真顔で言った!?」


「でも、妙に腹にはたまるな……虚無って、腹に来るのか……?」


 


──そして最後、アロマの“CG朝食”。


画面に映る美しい朝ごはんに向かって、カグラがツッコむ。


「いや食えねぇよこれ!!映像だからな!!」


「味覚を仮想空間に転送する技術、開発中」


「それはそれですごい未来すぎるよ!!」


 


カグラが額を押さえながらため息をついた。


「……というかさ……なんで朝メシ食べるだけで、

 こんな哲学と破壊と科学技術が混ざるんだよ……?」


 


シオンは、ぽそりと呟いた。


「朝とは、“混沌”だ……。人類の始まり、1日のリセット……そこに、真理がある……」


 


「うるせぇよ」


「だいたい全部、焼きそばパンでいいだろ」


 


──朝の庭には、湯気と、カオスと、哲学が立ち上っていた。



「焼きそばパンで、全部いいわけないでしょっ!!」


ついにセリスティアが立ち上がった。目にはマジの火。


「この国には……この世界には……パンの種類がいくつあると思ってるの!?

 そこに、朝の希望が、可能性が、詰まってるのよっ!!」


 


「いやでも焼きそばパンだけでよくね? 

 炭水化物 in 炭水化物という完全栄養食、ビジュアル的にも満足度最強、

 そしてなにより、名前に“焼き”って入ってるから朝っぽいだろ?」


 


「反論になってねぇ……!」


ミルミがスプーン片手に口を挟む。


「じゃあ私は生カレーに誇りを持ってるもん!

 噛めば噛むほどスピリチュアル!!」


「噛めなかったけどな!!」


 


シオンは焼きそばパンを一瞥し、低く唸った。


「それはただのパンではない。

 焼きそばという“混在性”……それが“人間”を象徴しているのだ」


「……あれ?シオンが焼きそばパンに共鳴してきてない?」


「やつの“混沌”は、私の“内なる空虚”に似ている……」


「ラブストーリー始まりそうなんだけど!?」


 


そこへ、リモート中継のアロマが冷静に一言。


『焼きそばパンは、糖質と脂質が過剰に集中している。

 長期的な健康には向かない。栄養価的には──』


「うるさいぞ、リモート健康番長!」


 


騒然とするホワイトガーデンのテーブル。


その中央に、カグラが立ち上がった。


「……オレはな。

 焼きそばパンが好きなんだよ。それだけでいいだろ?」


 


静まり返る一同。


 


「焼きそばパンが、“正しい”かどうかなんて知らねぇ。

 でも、こいつはいつも……俺の隣にいた。

 深夜も、早朝も、三日徹夜のときも……」


「なにその重い関係!?婚姻届出しにいく流れなの!?」


 


そしてカグラは、焼きそばパンを一口、静かに食べた。


「──うめぇ。」


 


パンの断面から、ほんのり立ち上る湯気。


あまりに静かなその一口が、

誰よりも雄弁に、朝の混乱を鎮めていった。



──数分後。

テーブルの上には、残された食器と、ぬるくなった紅茶。


 


「結局……今日の朝飯部って、なんだったんだろうな……」


カグラがぽつりと呟くと、誰も答えなかった。


 


「私は、朝から哲学をこねた気がする」

「オレは、胃を壊した気がする……」

「私は、新たなカレージャンルを切り拓いた気がする!」


「……パンは沈黙しているが、満足げだ」

シオンがパンを見つめながら呟いた。


 


──焼きそばパンは、静かに湯気を立てていた。

 彼もまた、戦ったのだ。さまざまな価値観と。


 


そのとき、セリスティアがふっと笑って言った。


「でも、なんか……楽しかったわよね」


「……そうだな」


カグラも、ちょっと照れたように笑い返した。


 


「次は、“具材持ち寄り対決”とか、やってみない?」


「じゃあオレ、焼きそば持ってくる」


「それあなたのレギュラーでしょ!!」


「じゃあ……唐揚げとか?」


「ほう……“焼きそば×唐揚げパン”……それはそれでアリ……?」


「うわっ、みんなノリノリじゃん!」


 


アロマの画面から、声が響いた。


『次回、“激突!焼きそばパン拡張戦争”』


「勝手にタイトル決めるな!!」


 


こうして、ホワイトガーデンの朝はにぎやかに終わった。


今日も、焼きそばパンはそこにいた。


いつもと同じようで、どこかちょっとだけ違う──

そんな、不思議にあたたかい朝だった。


焼きそばパンは、何も語らない。

でもたぶん、ずっとそばにいてくれる。

今日も明日も、君の食卓の隅っこで──。


次回:たぶんまたパンの話。

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