パンがしゃべる世界線って、バグじゃなくて正式仕様なんですか?
パンの焼き加減って、本当にムズいよね。
焦げてもダメ、生焼けでもダメ、でも焼きすぎると個性が死ぬ。
……って、これ何の話だっけ?
今回の敵(?)は、焼きそばパンをジャッジしに来た謎のパン監査官。
いやマジで誰だよ。なんでそんなパンにストイックなんだよ。
もはや焼きそばパンの扱いが、完全に哲学とか宗教の域に入ってきました。
そんなわけで、今夜もノリと勢いでお送りします。
──そのとき、時空が“カリッ”と音を立てて割れた。
まるで焼きたてパンの表面を割ったときのような……
香ばしく、でも異常な感触だった。
「また来た……っ!」
セリスティアが杖を構える。
だが、現れたのはどこかシュールで、しかし圧倒的な威圧感を放つ存在だった。
「パン監査官《バルミューダ=エアレイド》、参上。」
「バルミューダ!?めっちゃ高そうな名前来た!!」
現れたのは、全身スーツにパン型のエンブレムをつけた男。
頭にはトーストスロットのような飾り、背中には熱風を巻き起こすジェットファン。
そう、彼こそが“パンの焼き加減を監査する者”。
「全世界のパンを均等に、完璧な焼き加減で統一する……それが我の使命」
「いや、個性なくなっちゃうじゃん!?」
「てかパン監査官って、思ったより独裁者寄りぃぃぃ!!」
バルミューダの手には、“焼き加減調整装置”なる謎の機械。
「貴様らのパンは、焼きムラが多すぎる……全て“標準中焼き”に修正してやる……」
「うわー!パンの多様性が失われるー!!」
「いま、パンで人権っぽいこと言ったよね!?」
そのとき、“超次元焼きそばパン・Ω”が反応した。
ソースがじゅわっと蒸発し、空間をねじ曲げる熱波が放たれる。
──焼き加減戦争、開戦。
「いくぞ……“超高温・裏面パリパリモード”!!」
「焼きムラを、焼き返せえぇぇぇぇぇ!!!」
空と大地が焦げるような戦いが、いま始まる――!!!
「……貴様、パンを……焦がしたな?」
低く、重たい声だった。
パン監査官《バルミューダ=エアレイド》は、黄金に輝く鉄仮面の下から、焼き加減を検知するレーザーを照射してきた。
「焦げ率3.2%。中は生焼け。評価、不可」
「パンにそんなジャッジある!?」
しかも、背中にはパン型のパラボラアンテナが背負われており、空間から“パンの香りの粒子”を検出してるっぽい。何その職人魂、怖すぎ。
「この世界において、パンは文化であり、秩序であり、すなわち法だ」
「パン法って何!?」
「焼きすぎは暴力、生焼けは甘え。すべてのパンに、最適解を──」
ビシィッ!!
謎のレーザー測定器を構えるバルミューダ。
「この焼きそばパン、焼き直しを要求する」
「やめろォ!! この焼きそばパンには! 思い出が詰まってんだ!!」
「感情は、焦げ目の言い訳にはならぬ」
「お前、マジでパンに厳しすぎない!?」
「我は幼少より、パンの焦げと向き合ってきた……」
回想が始まった。
「かつて、我が母は言った。“あなたのパン、ちょっと硬いね”と……!」
「地味に傷ついてんじゃねーか!!」
「その日から、我はすべてのパンに“真実の焼き加減”を求めるようになったのだ……!」
「重い、パンに対してストーリー重すぎる……」
セリスティアがぽつりと呟く。
「この人、パンにすべてを捧げてきたタイプの人間なんだね……」
「うん、つまり敵だね!!」
カグラは、潰れかけの焼きそばパンを両手で抱え込んだ。
「焼き加減はな、自由でいいんだよ……!」
「──愚か者」
バルミューダの背後で、炎のようなパンオーラが燃え上がる。
「ならば力ずくで、その思想を焼き潰す!!」
「焼き直し・強制起動!」
バチバチバチバチッ!!!
空間が歪み、巨大なオーブントースター型の魔導兵器が召喚された。
「その名も──《ヘルズトースターMk-II》!!」
「焼き直しにしてはスケールでかすぎるだろ!!」
全長5メートル、炎属性の魔力でパンを一瞬で炙る仕様。
「さぁ、全焼してもらおうか……貴様の信念ごと!」
「やめろー! 俺の焼きそばパンに手を出すなあああ!!」
カグラの“全属性無効”が発動し、ヘルズトースターの熱波を完全にシャットアウト。
「……あれ? あったかいだけで、全然効いてない」
「ぬっ……!? 我が熱波が……熱波が通らぬ……!!」
「つまり──パンを焼く熱が通らないってことは、もう“焼き加減論争”に意味がないってことだな」
「そ、そんな……ッ!」
「もう終わりにしようぜ。お前の焼き加減も、尊重する。でもな──」
カグラは、潰れた焼きそばパンを高々と掲げた。
「俺のパンは、これで完成形なんだ!!」
「潰れてるではないか……!!」
「潰れてるからいいんだよ!! 思い出が圧縮されてるんだよ!!」
セリスティアが小声で呟く。
「潰れてるのはたぶん、さっきの爆発のせいだよ……」
バルミューダは、その言葉に膝をついた。
「……敗北だ。貴様の“焼きそばパン観”……完璧に貫かれている……!」
「うん、よくわかんないけど勝ったっぽい!」
──後日。
「ねぇカグラ、バルミューダさん、パン焼いてくれるようになったね」
「うん、すっげえウマい」
「でも、全部“ジャストミディアム”で焼いてくるの、ちょっと怖い」
「そこは変わってねぇのかよ……」
白の庭園に、また一人、パンと向き合いすぎた仲間が増えた。
「今日も焼きそばパンがうまい。それでいいじゃないか」
「うん……あ、でも今度は“蒸しパン戦争編”とか起きたりして」
「やめろ、死亡フラグになる!!」
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。
今回の物語、いかがでしたでしょうか。
ギャグに振り切ったお話ではありますが、「焼き加減」という
ちょっとしたこだわりの中に、“らしさ”や“違い”を込めてみました。
次回も、ゆるくてバグった冒険をお届けできればと思っておりますので、
よろしければ、引き続きお付き合いください。




