俺がパンで、パンが俺で──ってコト!?Ω
焼きそばパンって、そんなに深いもんだったっけ?
“パン”が概念になりつつあります。
バグも進行中。
それでも、カグラは今日も言うんだ──「焼きそばパン食ってただけなんだけど!?」って。
ギャグと陰謀とパンとバグが渦巻く、召し上がれ!
──俺は、パンの海にいた。
ふわふわと焼きそばパンが漂う空間。
カレーパンもメロンパンもいるけど、中心にいるのは──神々しく光る、一本の焼きそばパン。
「……ここ、どこ……?」
声に反応して、焼きそばパンがくるんと回った。
黄金の湯気が立ちのぼり、そこから一人の老人(?)が姿を現す。
「よくぞ来た、カグラ=シノノメよ……我が名は“パンの神”……」
「パンの神!?」
「そなたは選ばれし者……“焼きそばパンの器”じゃ……」
「器ってなに!? パンの中身になるの!?」
パンの神は語りだす。
「世界は今、焼きそばパンのバランスを失いかけておる……
カレーパン派、揚げパン派、そして……“菓子パン至上主義”による戦乱が始まろうとしておるのじゃ……」
「やばっ、パンで世界が争ってんの!?」
「そなたのスキル“絶対無効(Ver0.01β)”は、パンの概念すら包み込む……まさに“神域パン術”に到達する可能性を秘めておる……」
「何その初耳のやばい能力!!」
「さぁ、ゆけ。世界をパンで救うのじゃ──!」
そのとき──
「焼きそばパンよ、翼を広げよ!!」
パンの神が両手を掲げると、焼きそばパンから“羽根”が生えた。
いや、マジで羽根ついてる!?
「この力……目覚めよ、“パンの聖騎士”!!」
「もうなんなんだよこの夢ーーーー!!!」
──バサァッッ!!!
「うわあああ!!」
俺はベッドから飛び起きた。
隣のセリスティアが、普通にパン焼いてた。
「おはようカグラ。なんか叫んでたけど、パンの夢?」
「え、なんでわかったの……!?」
「いやだって、口から“パンの神よ……”とか寝言言ってたし……」
「うわああああ恥ずかしいやつぅぅぅ!!」
その瞬間──
バゴォォォンッ!!
外から爆発音が響いた。
セリスティアが焼きそばパンを持ったまま振り返る。
「……まただね。中立の拠点が、今日も襲撃されてる」
「え、平和な日とかないの!?てか俺、昨日から焼きそばパン食って寝ただけだよ!?」
カグラの、世界を巻き込む朝は──今日も焼きそばパンとともに始まる。
バゴォォォン!!!!!
爆発音とともに、拠点の防御結界がきしむ。
「来たね……また“アンチブレッド”派かも」
「なんだよそのパンクバンドみたいな名前……!」
空に浮かぶのは、黒いマントに身を包んだ謎の集団。
先頭の男が、誇らしげに叫んだ。
「我らは! 反パン教義を掲げる者たち!! この世からすべての“パン”を排除することを使命とする!!」
「いやそれ、ただのパン嫌いの逆恨みじゃね!?」
「でもなんか……勢いすごくない?」
セリスティアが構えながら、小声でつぶやく。
「今回のやつ、ちょっと本気かも。……“フランスパンの呪い”を使ってくるタイプだ」
「なにその呪い!? てかフランスパンって呪えるの!?」
「……歯を折るらしいよ」
「地味に強力!!」
敵のリーダーが叫ぶ。
「世界は! ふわふわパンではなく、硬派なクラスト(皮)に支配されるべきなのだァァァ!!!」
バシュッ!!
空から、巨大なバゲット型の魔法陣が現れた!
「こっちは全属性無効だからな!! ──いけ! 焼きそばパン・カウンター!!」
カグラが、手に持ったパンを構え──
「……ってただのパンなんだけど!? 武器じゃねーし!!」
「いや、いま若干光ってるけど……?」
「やっぱりバグってるよ俺のパン!!」
敵の呪文が空を裂く!
セリスティアが素早く結界を展開するも、バゲット弾の破片がカグラに直撃──!
──ボフッ。
……無傷。
「ほらな。やっぱ俺、バゲットにも強い」
「おまえなにパン特化のチート持ってんの!?」
「なんか……もう世界にツッコミが追いつかないよ……」
爆風の中、アンチブレッドたちが絶叫する。
「くっ……パンに! パンごときに負けるなど……!!」
「これが焼きそばパンの……真の力……ッ!!」
いや違う、たぶん違う。
でも──もういいや。
「いけぇぇぇ!! パンの雨を降らせろォォォ!!」
カグラがなぜか叫ぶと、空から大量の焼きそばパンが降ってきた。
(どこから!?)
敵は次々にパンに押し潰されていく。
──完封。
「……俺、マジで何なの?」
「世界が君をパンの神に選んだのかも」
「やだなぁ、その神選、辞退できないかな……」
平和を取り戻した《白の庭園》。
しかし──
まだまだ、パン戦争は終わらない……!
「……いや、なんで空からパンが降ってくるの?」
セリスティアがぽつりとつぶやいた。
「それ、俺が聞きたい。しかも全部焼きそばパンだったし」
庭園の芝生には、ふっくらした焼きそばパンが無数に転がっている。
さっきの襲撃で傷ついたはずの花壇には、不自然なくらい整然とパンが積み重なっていた。
──そして、そこにあらわれたのは。
「……はじめまして。“パンの記録管理者”、ノリト・メロンパンです」
「誰!?」
登場したのは、異常にツヤツヤしたメロンパン柄のローブを着た老人。
髭はふわふわ、頭はツルツル。
「……パンの神話を記録する者さ。君の存在が、あまりにも“規格外”でね。そろそろ書き足さないと世界が追いつけない」
「追いつけないの、俺じゃなくて世界の方なの!?」
ノリトはパンを一口かじり、静かに語る。
「太古よりこの世界には、“五大パン”という概念が存在していてね」
「なにそれ……おいしいの?」
「もちろん。焼きそばパン、カレーパン、メロンパン、あんパン、そして──バゲット」
「最後だけ明らかに固さの系譜じゃねーか!!」
「カグラくん、君はその中でも最も“不安定なパン”……焼きそばパンに選ばれし者」
「なんだよそれ!! めっちゃ腹くだしそうな称号じゃん!!」
セリスティアが割り込む。
「それってつまり、カグラが“パンの神話の中心”ってこと?」
ノリトはうなずいた。
「その通り。君の力、“絶対無効(Ver0.01β)”の本質は、パンに宿る“自由”そのもの……!」
「いや急に詩的になるな!? パンに自由とか宿ってねぇよ!?」
ノリトは一枚の古びた羊皮紙を取り出し、読み上げた。
「──“混沌の時代、神は焼きそばパンに安寧を求め、世界を再構築した”」
「嘘つけぇぇぇぇぇぇ!!!」
ノリトは続ける。
「というわけで、君を“次期パン神候補”として正式に召喚させてもらった」
「いや勝手に認定すんな!! 俺はただのパン好き男子高校生だ!!」
「だからだよ」
「だからかよ!?」
……こうして。
カグラは焼きそばパンを握りしめながら、世界の裏側──“パンの神話”に巻き込まれていくことになるのだった。
でも、まだこの時は知らなかった。
“フライパン帝国”が、静かに世界の裏で動き出していたことを──。
「……フライパン帝国?」
セリスティアが、眉をひそめる。
「そう。焼きの国、蒸しの王国、そして……“揚げ”を司る暗黒の国家。それがフライパン帝国だ」
ノリト・メロンパンが深刻そうに言った。
「いやちょっと待って。フライパンって揚げ物っていうより焼くもんじゃないの?」
「そう思うだろう?だが彼らは“少量の油で揚げる”ことにこだわった。いわば……中庸を極めた揚げの異端だ」
「なんだその厨二設定は!!」
ノリトは芝生に指を突き刺し、地面からパンでできた立体地図を召喚した。
焼きそばパンで作られた山々、メロンパンの森、バゲットの砦──
「うわ、想像以上にパンまみれ!!」
「これは“パン界の世界地図”だよ。今、北東に位置するフライパン帝国が、世界のバター資源を独占しようとしている」
「バター戦争……?」
「そう、パンに塗るか否かで争いは起きるのだ」
そのとき──
「うるせえぞぉぉぉぉぉ!!」
突如、空から轟音が響く。
雷鳴のごとき炸裂音。空を裂いて落ちてきたのは──
「どこのバターが一番うめぇか決めてやるよぉ!!」
金色に光る揚げパンを装備した、全身衣装が油まみれの漢。
「フライパン帝国より参上! 揚げ将軍“カツオ=ヘルスロス”様のおなーりだァァァ!!」
「名前ふざけすぎじゃね!?」
将軍カツオは、油の香りをまき散らしながら着地。
その足元で、芝生の焼きそばパンたちがじゅわっと揚げパンに変化していく。
「うわっ!? パンが勝手にカロリーアップしてる!?」
「このままだと、焼きそばパンのレジスタンスたちが揚げ物信仰に染められてしまう……!」
ノリトが震える。
「君しかいない、カグラ。今こそ、“焼き”の意志を継ぐ者として……!」
「なんでパンのために戦わなきゃいけないんだよぉぉぉ!!」
だがカツオは構わず、巨大な“油の槍”を取り出した。
「いくぜ、パン神候補ぉ!!」
「ちょ、戦闘開始!? 話し合いの余地とかねぇの!?」
「パンの世界に、話し合いなど存在しない!!」
こうして、世界は“焼き”と“揚げ”の二大勢力の狭間で、新たなカロリー戦争に突入するのだった──!!
「油槍・第一形態、カロリー爆刺!!」
ドガァァァン!!!!
カツオの槍から飛び出した油の塊が、空間ごとバターでコーティングしながら爆発した!
「なにこの油煙幕!? めちゃくちゃうまそうな匂いしてんだけど!?」
「バターと砂糖の揚げ香り……これは、禁断の“誘惑系範囲攻撃”だ!」
セリスティアがカグラの鼻先にハンカチを押し当てる。
「嗅いじゃだめ! 一度吸ったら、カツサンドになりたくなる!!」
「どんな状態だよ!?」
ノリトが飛び上がって叫ぶ。
「やらせはせん!焼きパンの誇りは、揚げには渡さぬぞ!!」
彼の背中から、謎の“耳付きパンコート”が生える。
「ノリト・メロンパン、第一覚醒──《焼成獣・メロンウルフ》!!」
「なんか進化したァァァ!?」
獣化したノリトは、メロン皮の装甲でカツオの攻撃を防ぐ!
カグラはその隙を突いて、セリスティアとともに高台の木箱に退避する。
「なあセリスティア……俺、何してんだろう」
「たぶん焼きそばパンの意思を継ぎながら、メロンパン獣人と揚げ将軍の戦争を見てる」
「やばすぎる世界観じゃね!?てか胃がムカムカしてきた……」
そのとき、突然頭の中に“声”が響いた。
──我ハ……バグ神。
──汝ノカロリー感覚、ズレ始メタ……焼キソバパン、足リナイ……。
「え? バグ神? 焼きそばパンが足りないって……」
カグラの足元に、いつのまにか転がる“黒焦げ焼きそばパン”。
それを拾い上げると、焼き面に謎の文字が浮かび上がる。
【再焼成:発動条件達成──“真のパン神形態”へ】
「な、なにぃぃぃ!? パンがしゃべってるぅぅぅ!!」
セリスティアの瞳が輝く。
「……きたわね。第二のバグ進化……《パン神形態》……!」
「いや! 俺もう訳わかんねえええええええ!!」
カツオが吠える。
「くくく……貴様にその資格があるなら、証明してみせろ!!」
激化する焼きと揚げの神戦争──!
そして、目覚めはじめるカグラの“もう一つのスキル”!
「俺の……俺の中の、焼きそばパンが叫んでるッ!!」
カグラの手に握られた、黒焦げの焼きそばパンがふつふつと光りはじめる。
【最終形態へ移行中──“超次元焼きそばパン・Ω(オメガ)”】
「なんかすごい響きキターーーーー!!!」
光に包まれたパンから、謎のオーラが立ち昇る。
ソースの香りが風に乗り、あらゆる生命体の胃袋を刺激する。
その場にいたすべての戦士たちが──
「……腹減った……」
「揚げたくない……食べたい……」
「カロリーって……美しい……」
──正気を失っていった。
「うわぁ!空気だけで糖質取れてる感じする!?」
「甘じょっぱさで精神汚染してくるタイプの必殺技だコレ!」
セリスティアが耳を押さえながら叫ぶ。
「カグラ!そのままいって!!あなたは今、“パンの神託”を受けてるッ!」
「パンの神託!?なにそれ!?おいしそうだけど正体不明なんだけどぉぉ!!」
そのとき──空間に金色の巨大な輪っかが現れた。
まるで聖なるオーブンのように、ぐるぐると熱を帯びたエネルギーが回転していく。
【召喚:超次元焼きそばパン・Ω《オメガ》──降臨完了】
ズゥゥン!!!
空から、巨大な焼きそばパンが降ってきた。
長さ2メートル、ソース自動循環システム搭載、キャベツは高密度スパイラル構造!
完全に意味不明だけど、なぜか“ありがたい”気がしてくる迫力だ。
「これが……俺の、最終兵器……!」
「いやパンじゃん!!見た目どう見てもパンじゃん!!!」
しかし──そのパンが、ゆっくりと開いた。
中から──
「……やぁ、カグラくん。ようやく目覚めたね」
出てきたのは、**“もうひとりのカグラ”**だった。
「うわあああああ!?俺がパンの中から出てきたァァァ!?」
「多層構造!?自己分裂!?いやアイデンティティどうなってんの!?!?」
双子のような存在は静かに語る。
「僕は、“焼きそばパンに転生したときの、記憶の残滓”」
「なにその“やたら詳しい自分の前世”、しかもパンて」
「カグラ。君は選ばれし者。パンの未来を託された、“唯一のパン神候補”なんだ」
「いやパン界のこととか初耳すぎるってばぁあああ!!!」
そのとき。
空間に、**“何か”**が再び侵入してくる気配。
セリスティアが振り向き、真剣な表情でつぶやく。
「来た……次の“観測者”……いや、“パン監査官”……ッ!!」
「そんな職業あるの!?パン界、どうなってんの!!!?」
──次回、
『パンがしゃべる世界線って、バグじゃなくて正式仕様なんですか?』
へ、続く!!
どうしてこうなった。
シリアスに寄りそうになった瞬間、だいたい焼きそばパンがぶち壊していく。
でも、そういう「バグってる日常」が、この作品の正しい在り方なんじゃないかって最近思えてきました。




