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【全属性耐性ゼロ】だったのに、全ての攻撃が効かない最強バグスキルを手に入れました※タイトル詐欺です  作者: Y.K
第1幕

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保護者、やめてもいいですか?2

今回はセリスティアの“保護者としての葛藤”に少し踏み込んでみました。

バグギャグが続く中で、ちょっとだけ真面目なやりとりを混ぜたことで、カグラとセリスティアの関係がほんのり深まった……かも?


でも結局、最後はパンがしゃべるんだよな……。

白の庭園ホワイトガーデン──

朝の空気は、まるで昨日の騒動などなかったかのように澄みきっていた。


けれど、セリスティアの心は、ちょっとだけ曇り気味だった。


「……はぁ」


ベッドの上でごろんと仰向けになりながら、彼女は長い金髪を無造作に手で梳いた。


「なんで私、毎日パンに振り回されてるのかな……」


 


そのとき──


「セーレースティアぁ~! 焼きそばパンあった? なかった? どこかの異世界に行ったりしてない?」


例のテンションで現れたのは、もちろん彼。

チート能力(物理)+行動力バグの権化・カグラ=シノノメ。


「いま、寝起きでテンション死んでるから静かにしてくれる?」


「え、珍しく機嫌わる……あれ? 泣いてる?」


「泣いてない!」


顔を伏せたセリスティアの肩がぴくっと揺れる。


「……本当に、やめようかなって思ってるの。保護者」


「まじで?」


思わずカグラが正座した。


「そりゃ……最近のパン情勢は、俺も正直やばいと思ってる」


「そこじゃないの!」


セリスティアは勢いよく立ち上がり、ドアをバンッと開ける。


「今日は! 私、一日考えるから!! 一人にして!!」


「え、えええ!? パンの相談もできないの!?」


「パンじゃない! カグラの話!!」


 


──そして彼女は部屋を飛び出した。


残されたカグラは、焼きそばパン片手にぽつりと呟く。


「……やっぱ、俺って保護対象として手強いのかもな」


そのパンは、今日もちょっと温かかった。


白の庭園の中庭。

セリスティアは噴水の縁に腰掛けて、ぽつりとパンをかじった。


──カグラのじゃない。あえて、トースト。バターの香りがやさしい。


「……最初は、ただの好奇心だったんだよね」


回想が始まる。


あの日──魔王軍に囲まれて、絶体絶命だったカグラを「保護者になります!」と勢いだけで宣言した自分。


「……いや、あれはむしろ口が勝手に動いたような……?」


そこから始まった、焼きそばパンまみれの日々。


世界が崩壊しようとしているのに、彼は“今日の昼メシ”で頭がいっぱいだった。


「……あのときは、パンデミックで空から食パンが降ってきて……」


「“浮遊パン大陸”が発生して……」


「“始祖パン”がしゃべりだして……」


言葉にするほど頭が痛くなる。


「どうして私……全部付き合ってたんだろ」


パンと一緒に、思い出も噛みしめていた。


そのとき──


「やっぱ保護者やめる?」という声が、空から降ってきた。


「カグラ!?」


見上げると、焼きそばパンを片手に、ホウキみたいな飛行術式で彼が浮かんでいた。


「セリスティアが悩んでるときこそ、焼きそばパンだと思って」


「違う!!」


「違う!?」


思わず吹き出してしまう。


「……本当に、なんでこうなるのよ」


パンと彼のせいで、まともな悩み方すらできない。


でも──


「……まぁ、こういうのも、悪くないか」


口元が、ほんの少しだけ、笑っていた。


「……このままじゃ、ダメかもしれない」


セリスティアは庭園の小道を歩いていた。


心の中で何度も反芻する。

“保護者”って、そもそも何だったのか。

カグラを守ること? 支えること? ツッコミ役になること?(たぶんこれ)


「私がいなくても……案外、アイツって大丈夫なのかも」


 


──そのとき。


 


「なあ、セリスティア。いま“やめる”って考えたでしょ?」


「……!?」


 


頭の中に、ダイレクトに声が響いた。

どこか無機質で、メカニカルで、バグっぽいトーン。


「え、だれ!? っていうか脳内に直接ツッコミ入れないで!!」


 


視界の隅が、ノイズみたいにちらつく。

花壇が一瞬、バグ文字の羅列に見えた。


 


《保護者_役割_破棄_確認》

《再割り当て:パン(エラー)》

《再割り当て:観測対象→セリスティア本人(仮)》


「……何これ。私のターン始まるの!? 保護者の座、そんな感じで移譲されるの!?」


 


慌ててカグラを探そうとするが、目の前に現れたのは……


 


「──やあ。再契約に来たよ」


 


なぜか、焼きそばパンにネクタイをつけた“パン紳士”だった。


「は??」


 


「セリスティアさん、保護者をやめるなら、代わりに“パンがあなたを保護”します」


「嫌すぎる!!!」


 


 


もはや何が現実で何がパンなのか。


セリスティアは、ふらふらと空を見上げた。


「……バグって、ほんとどこまでもついてくるのね」


 


そして静かに言った。


 


「ちょっとだけ……本気で、やめようかと思ったよ」


 


空はまだ晴れていた。

でも、セリスティアの心は、少しだけ曇っていた。


 

「……あれ?」


 


焼きそばパン片手に、庭園のベンチに座っていたカグラは、

ふと、違和感を覚えた。


 


セリスティアが──いない。


いや、ただ居ないだけならよくある。彼女は勝手にふらっとどこかへ行く。

でも今は、なんかこう、空気が違う。


 


「……あの感じ、たぶん“やめるかもモード”だ」


直感が、警報を鳴らしていた。


 


「このままじゃ、保護者やめられる……!

 オレ、保護者なしで世界バグらせる系男子になる……!!」


 


焼きそばパンを床に落としそうになって、あわてて拾う。


「うお、あぶね。セリスティアに“食べ物を粗末にしない!”って怒られるとこだった……」


 


その瞬間──気づく。


 


「あ、もう怒ってくれる人がいなくなるって、こういうこと?」


 


なんか……さみしい。


世界がバグっても、宇宙人が攻めてきても、

魔王軍が会議を押しつけてきても──

全部セリスティアがツッコミ入れてくれてた。


 


「まさか……オレ、めっちゃ依存してた?」


 


思わず立ち上がる。


 


「やべぇ……ちゃんと、ちゃんと話し合わないと!」


 


と、そのとき。


 


「──あら、珍しく真面目な顔してるじゃない?」


 


振り向くと、セリスティアがいた。

少しだけ、表情が硬い。


 


「あのさ……ごめん」


「え?」


「オレ、保護者って“便利な盾”ぐらいに思ってたのかもしれない」


「……」


「でも違ったわ。お前がツッコミ入れてくれるだけで、だいぶ世界まわってたわ」


 


少し沈黙があって──


 


「……もうちょっと、話す?」


「うん。頼む。保護者、やめられたら普通にメンタル終わる」


「……そこまで!? というか自覚あったのね、それ」


 


ちょっと笑ったセリスティアを見て、カグラもほっとする。


 


「焼きそばパンあるけど、食う?」


「まずは、話してから」


「ですよね〜」


 


──そして、二人の距離は少しだけ近づく。


バグはまだ治らないけど、それでも。


 

セリスティアは、静かにカグラの向かいに腰を下ろした。


 


「ねえ、カグラ。あなたにとって、“保護者”って何?」


 


「うーん……焼きそばパンくれる人?」


 


「それは“パン屋”じゃないかしら?」


 


「じゃあ、ツッコミ入れてくれて、バグってもついてきてくれて、保護してくれて──

 焼きそばパンくれる人?」


 


「パン屋だわ、完全に。」


 


そんなくだらないやりとりを挟んで、ふたりの間に、少しの沈黙。


 


「……でもね、私にとっての“保護者”って、もうちょっと違うの」


 


「え?」


 


「あなたがバグって、周りが混乱して、何もかも崩れてくとき──

 私がそばにいて、“だいじょうぶ”って言ってあげたいの。

 あなたが世界を壊しても、私はその真ん中で、“戻れる場所”でありたかった」


 


「……」


 


「でも、最近は……ちょっとだけ、怖かった。

 “この人、どこまで行くんだろう”って。

 “保護者”って肩書き、どこまで通用するのかって」


 


カグラは、黙ってそれを聞いていた。

何かを言いたそうにしながらも、言葉が出てこない。


 


「だけど──やっぱり、私はあなたの“保護者”でいたい」


 


「セリスティア……」


 


「だって、あなたがこの世界でどれだけ“意味不明”でも……

 いちばんそばで“意味あるもの”にしていけるのは、私だと思ってるから」


 


「……パンの話してる?」


 


「違うわよ! 今は真面目なとこでしょ!」


 


「……ありがとな」


 


「もう、しっかりしてよね」


 


ふと、セリスティアが手を差し出す。

カグラは、その手を取った。


 


世界はまだバグってるけど。

それでも、二人の間には、ひとつの“秩序”が戻っていた。



夜が更けていく。


 


カグラとセリスティアは、白の庭園の縁側に並んで腰を下ろしていた。


 


「結局、今日もバグったけど……まあ、元に戻ったし?」


 


「“元に戻った”の定義がどんどん雑になってる気がするわ」


 


「細けぇことは気にすんなよ。焼きそばパンでも食う?」


 


「……食べるけど。もはや私も“保護者”というより“被害者”に近いわよ」


 


ふたりは、焼きそばパンを半分こにしてかじった。


その味は──たぶん、どこかズレてたけど、ちょっとだけ、あたたかかった。


 


「……ところで」


 


「ん?」


 


「なんか……パンがしゃべった気がするんだけど、気のせい?」


 


「えっ、それ俺のスキルのせいじゃないぞ!? たぶん! 多分な!」


 


その瞬間──

カグラの手の中で、焼きそばパンがむくりと起き上がった。


 


『……我は、“パンの意志”を継ぐ者……この肉体に宿りし、始まりのバグ……』


 


「うわーーーっ!? なんか始まったーーーっ!!」


 


「だから言ったじゃないのーーーっ!!」


 


──終わったかに思えた一日が、またバグって始まる。


保護者って、大変。


「バグってるけど、信じたい」

そんな気持ちでセリスティアは保護者を続けることを選びました。


そしてカグラは、バグりながらも“保護される側”として、ちゃっかりパンを食べてます。

このふたり、たぶん世界が崩れても笑ってる気がする。

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