宇宙の中心で、焼きそばパンを焼く
みなさん、おひさしパン!
今回はついに宇宙規模でパンが戦う回、
名付けて――「パン神vs焼きそばパン」宇宙決戦編!
「ここまで来ると、何が始まって何が終わったのかわからない」というあなた、
正しい感想です。
焼きそばパンに神の一撃が飛ぶ、
空に浮かぶパン大陸ができる、
そして世界中にパンが降る……
うん、たぶんこれ、昼メシ回です。
──宇宙、それはパンを巡る戦場である。
「……って、ナレーションが重いんだけど!!」
セリスティアのツッコミが木霊するなか、空間は既に戦火のただなかにあった。
無数の宇宙船が光の矢を交錯させ、レーザーの波にまぎれて巨大なベーグル型の艦船が堂々と浮かぶ。
「我ら、銀河パン連邦は警告する! 地球パン保守派よ、焼きが甘い!」
「甘くてなにが悪いんだ! 焼きそばパンはソースの焦げ目が命なんだよ!」
──そう、これは「焼き加減」をめぐる銀河規模の宗教戦争だった。
カグラは宇宙服のヘルメットの中で、いつもどおり焼きそばパンをもぐもぐしていた。
「うーん、やっぱり宇宙でも食うならこれだよな……重力ないと麺こぼれるけど」
セリスティアは隣でホバーボードに乗っていた。
「っていうか、なんであんたが真空空間でパン食べてんのよ。常識という概念は?」
「うちのパン、常識の外で焼いてるからな」
「どこの超常現象パン屋よ!!」
その時、艦内モニターに緊急信号が表示される。
《観測者連盟からの通信:コード・パンターゲン発動》
セリスティア「……なんか、またろくでもない事態が始まる気がするんだけど」
カグラ「パンの香りが濃くなってきた……」
「パンの香りで危機を察知すんのやめて! それ嗅覚じゃなくてバグ!」
──銀河戦争、焼きそばパンの香りとともに加速する。
──数時間後。宇宙艦隊は一時停戦し、謎の信号の発信源を包囲していた。
「これは……巨大な……パン?」
セリスティアがぽつりと呟く。
宇宙の彼方、惑星サイズの“何か”が、ゆっくりと光の中から姿を現す。
それは、まるで──
「……アンパンだった」
「いやデカすぎるだろ!? 星じゃん!?」
巨大アンパンの表面には、無数の古代文字とバターの筋が刻まれていた。
中心には、うっすらと“顔”のような模様すら浮かぶ。
「……あれ、動いてないか?」
「いや、動いてるわ。あれ生きてるわ。完全に生命体よ!」
──その瞬間、艦内に直接語りかけるような“声”が響いた。
「……パンを、忘れたか……」
カグラ「……だれ?」
「我こそは、“始まりのパン”──パン祖《パネウス=サクレ》なり」
セリスティア「パンの神来ちゃったわよこれぇぇぇ!!!」
パン祖の声は続く。
「かつて宇宙をひとつにした味……それが“焼きそばパン”だった。されど、そなたらは分裂を選び、カレーパン、メロンパン、ナン……異なる焼成へと走った」
「パンとは……ひとつなり」
その言葉とともに、宇宙空間に“パン重力波”が発生。
すべてのパンがふわふわと漂い、統合されていく。
セリスティア「……やばい、焼きそばパンが吸われてる!!」
カグラ「俺の昼飯がぁぁ!!」
──このままでは、すべてのパンが“ひとつ”になってしまう!
果たして宇宙に多様性は残るのか?
焼きそばパンの運命は!?
「やばいやばいやばい! 吸われる! 吸われるってば!!」
カグラが両手で必死に焼きそばパンを抱きしめながら叫ぶ。
だがその手の中で、パンはふわふわと浮き、まるで「使命を果たす」とでも言うように勝手に飛び去ろうとしていた。
「ちょっと待て!! お前まで行くのかよ!!」
「……あれ、なんかパン、自己意思持ってない?」
セリスティアの言葉どおり、焼きそばパンはくるくると空中を旋回し、
まるで“嫌だ”とでも言うように、パン祖《パネウス=サクレ》の重力波に逆らっている。
「これは……抵抗している?」
「そうだよ! 焼きそばパンは他のパンとは違うんだよ!!」
カグラが叫ぶと同時に、焼きそばパンから謎の光が発せられる。
──それは、焼きそばとパンの融合が生んだ、宇宙最古のバグ。
「なに? なにこのデータ……!」
アロマが解析を試みるが、パンが発する“旨み波動”が演算フィールドを妨害してくる。
「読み取れない!? なにこの、えげつないソース成分!!」
そして焼きそばパンは、他の吸われかけたパンたちを“巻き込む”。
「焼きそばパンが……仲間を取り戻してる……?」
──パンが、逆流した。
焼きそばパンを先頭に、全宇宙のパンたちがパネウスの重力を振りほどき、ひとつ、またひとつと反抗を始めたのだ。
「……うそ……パン、目覚めてる……!」
「パンが、自由意志を持ち始めてる!?」
セリスティアが顔を引きつらせたそのとき──
パネウスが怒りの声を轟かせる。
「分裂は罪……パンは、ひとつ……!」
──空間が裂ける。
いま、パンをめぐる宇宙の戦争が始まろうとしていた。
「我が名は……パネウス=サクレ。
焼きたての時代より眠りし、パンそのものを統べる者──」
空間に響くのは、低く、重く、そして妙に腹が減る声。
彼の姿は、もはや“パン”の定義から外れていた。
金色に焼き色のついた外殻、無限に広がる耳(※パンの耳)、
中央には巨大なバゲットを斜めに背負い、額には“穀”の字が浮かぶ。
「いや、なにその……宗教画みたいなデザイン」
セリスティアが引きつった笑いをこぼす。
だが次の瞬間──空が割れた。
いや、“宇宙パン棚”が姿を現したのだ。
「見よ、これぞ真なるパンの秩序──
宇宙全域のパンを“等配”し、いずれ全てをパンと化す!」
パンディストリビューション・システムの起動。
宇宙のあらゆる星に“パン”を転送し、文明をパン文明へと塗り替える狂気の機構が発動する。
「……あかんてこれ。ガチの宇宙バグやん」
セリスティアが即座に結界を展開し、周囲のパン転送を阻止しようとする。
「ダメだ……! パンが、すでに私の結界を“具材”として取り込んでる!!」
「そんな都合のいいバグあるかー!!」
しかし──
そこに割って入る影があった。
「……焼きそばパンよ……いまこそ、世界をバグらせよ」
カグラが、ついに“アレ”を起動する。
《???スキル》:焼きそばパン共鳴・Ver 0.01β
焼きそばパンが空中で光を放ち、パンの神の演算を上書きし始めた。
「なにをする……! パンの秩序が……バグっていく……!」
「知らん! こちとら、ソースの味しかしらん!!」
「……演算が……く、崩壊する……!」
パネウス=サクレの身体に、無数の焼きそばパンがめり込んでいく。
黄金のバゲットの輝きが鈍り、かわりにソースの香ばしさが空間を支配しはじめた。
「焼きそばパン……まさか、パン界における特異点……?」
セリスティアの目が点になる。
「これもう完全にパン対パンの戦争でしょ……」
そのとき、空が裂けた。
裂け目から現れたのは、惑星サイズの――究極焼きそばパン。
宇宙に浮かぶその巨体は、具がはみ出し、マヨネーズが天の川のように流れていた。
「……あれ、俺が一昨日コンビニで落としたやつだな」
「落としてそのまま宇宙行ったの!? どういう物理よそれ!」
そしてその巨大焼きそばパンが、まさかの変形をはじめた。
──そう、人型に。
「我、統合されしパン。名を《ヤキソ=パン=グレイヴァ》と申す」
なぜか名前がいきなりロボっぽい。
しかも左腕から高周波焼きそばブレードを展開し、敵性パン(=神)に斬りかかった!
「うわ、マジで戦ってる!? パンが! パンがパンと戦ってる!!」
パネウス「パンに刃向かうパンがあるか!!」
ヤキソ「パンは自由な存在。定義を縛るな!」
宇宙で交差する焼きそばソードとバゲットブレード。
真のパン神決戦が、いま始まった。
そして――カグラは。
「おれ……正直、そろそろ飽きてきたかもしんねぇ」
セリスティア「パンの根源に届く寸前で言う!? 空気読んで!!」
パン対パンの戦争は――終わった。
バゲットの神・パネウス=サクレは、最期の言葉を遺して消滅した。
「……焼きそば……挟んだだけで……なぜ、ここまでの力が……っ……!」
カグラは頭をかきながら言った。
「知らん。……でも、うまいじゃん? 焼きそばパン」
セリスティアは呆れた顔で、宇宙に漂う巨大な焼きそばパンの残骸を見上げた。
「これ全部……パンでできてるのよね?」
「世界の半分くらい、パンだな」
まさかの空に浮かぶパン大陸。
空の一部が「ふわっ」と揺れ、カグラの頭上に影がさした。
──ゴトンッ!
「うおっ!? パン降ってきた!」
焼きそばパンが、空からふわふわと降り注ぐ。
まるで祝福のように、宇宙からパンが地球各地へ舞い降りていった。
「なんか……これって、もう世界終わったんじゃない?」
「いや、始まったんだよ。**“パンの時代”**が」
「やめて。その言い方めちゃくちゃ嫌な予感しかしない」
そうして、地上にはパンがあふれ、
人々は――昼飯を浮かべて空を見上げる時代に突入する。
おつかれさまでした!
ここまでパンが世界を動かす物語、見たことありますか?
ない? ですよね!
今回は「パンの神が宇宙から来て、焼きそばパンとガチバトル」という、
もはや編集部に送ったら怒られそうな話を全力でやりました。
でもね、楽しかったんですよ。
焼きそばパンって、やっぱり最強なんだなって。
次回もたぶん、まともには戻らないです。
ではまた次回!




