バグを直しても、焼きそばパンは焼く
パンによってバグった世界、
それを修正するために集まった識者たち──
だが、そこにいたのは……
焼きそばパンを食べながら寝落ちしてる本人だった。
今回のテーマは「修正」と「混沌」、そして
**「どうしてこうなった」**です。
ギャグは止まらない。バグも止まらない。
でも、焼きそばパンだけは焼き続ける。
ふわふわした気持ちで、どうぞお楽しみください。
「……というわけで、演算の齟齬が広がっています」
真顔で告げたのは、観測機構の“眼”ことアロマ。
その視線の先、半円形の魔導ホロスクリーンに表示されているのは、世界の現在進行ログ──
その大半が、焼きそばパンだった。
「カグラさん、あなたのせいで“因果律の主語”が全部パンになってるんですよ」
セリスティアが青筋を立てながら言う。
「どーでもいいけど、“主語”って何だよ……ってか、パンうめぇ」
カグラは床に寝そべりながら、焼きそばパンを一口。もぐもぐ。ごろごろ。
「……君のせいで、時間軸がパンでできている」
シオンが重々しく言った。
「時の流れって、焼くと香ばしいんだな」
「その発想がバグだわ」
世界の中心の会議室に集まったのは、
観測機構、魔王軍、王国、第三勢力、それと……カグラ。
本来ならあり得ないメンツの共演だが、
“世界が焼きそばパン化する”という緊急事態の前では、全勢力が一時停戦せざるを得なかった。
「もはや、パンを食べると記憶が上書きされるレベル。
このままでは“文明”そのものが“ランチ”になる……」
シオンの言葉に、誰もツッコまない。もう慣れた。
「……パッチを適用します」
アロマが立ち上がり、魔導式の修正プログラムを展開した。
「このバグは、パンを起点とした存在拡張干渉。
パンをパンとして保ったまま、干渉構造を初期化します。理解できましたか?」
「ほとんどの読者が理解してないけどやってくれ」
「じゃあ、“パン以外のもの”をパンじゃない状態に戻すってことで」
「うん、なんとなく分かる気がする……気がするだけ」
──世界の修正は、静かに始まった。
だが、カグラが黙っているわけがなかった──
「ん? このコード、ソースにソース味って書いてある……
……ちょっとだけ、味見していいか?」
「やめろォォォォ!!!」
その瞬間、修正パッチに指を突っ込むカグラ。
ソースがはじけ、世界がふたたび“ジュウッ……”と香ばしく焼かれ始める。
「バグを除去したが、別の何かが壊れた……」
アロマの顔が、魔導ホロに映るジュースまみれのコードを見て凍りつく。
「……あ、これ……うっかり世界のフォントも焼きそば風に変わったかも」
「カグラァァァァァ!!!!」
世界は修正された──が、
同時に何かが、確実におかしくなっていた。
世界の修正パッチ──
それは本来、極めて繊細かつ絶対に人間の指など触れてはいけないものだった。
なのに。
「うーん、ソース少なめ……ってか、この辺“マヨ抜き”って書いてあるのがバグじゃね?」
「それはお前の味覚の問題だァ!!!」
セリスティアの絶叫が、世界のコードにこだまする。
修正作業が始まって数分。
──もうすでに、世界の挙動は“ちょっとだけ変”になっていた。
「……マスター、さきほどからこの部屋に小さな黒猫が混じってますが」
アロマが静かに言った。
「え? ああ、うちのご主人やで」
猫が喋った。
「え、喋った!?」
「にゃー。ていうか、喋るようになったんや。突然や。
しかも最近、味のセンスが悪いにゃって言われると落ち込む性格になった」
「誰が設定したんだそれ!?」
「……セリスティアの口調が……」
シオンが眉をひそめた。
「……あっかーん! こらアカンわ!! なんやこの世界、全体的に味付け濃いっちゅーか、ソース多すぎや!!」
セリスティアが突如、流暢な関西弁になっていた。
「えっ!? えっ!? なんで!? 私、なんでエセ関西人になってんの!?」
「いや、むしろめちゃ本格的」
「カグラのパンが……」
アロマが呆然と指を差す。
「……浮いてる……しかも、空間を……吸ってる?」
「ちょっ、お前のパン、勝手に異空間生成し始めてるぞ!? なんか裏の空間がパカッて開いたけど!?」
「いや~……ほら、トーストってサクッてなるじゃん? 空間もサクッと開く的な」
「黙れ! 意味わかんなすぎるのにそれっぽいのが腹立つ!!」
──結果。
世界の修正は、いったん止まった。
原因:カグラが味見したから。
現在の状況:
•猫が喋る
•セリスティアが関西弁
•空間がパンで圧縮されている
•流れるジュースが熱燗になる温泉が湧き始めた(謎)
「……これ、ホンマに直ったって言えるんかな?」
「なんか、“直った風”って感じだよな……」
「なんならより深刻なバグ生まれてない?」
「……おはようございます、ご主人」
起きたら隣にいたのは、**猫耳メイドの黒猫(人型)**だった。
「いや誰だよお前!!?」
「……まさかとは思ったが、君のパンが具現化した存在かもしれない」
シオンが神妙な顔で言う。
「具現化!? パンが!? しかもなんで猫耳!?」
「深層パン意識の中で君が最も欲していた存在……そういうことでは?」
「やめろ! 勝手に俺の無意識をパン化するな!」
その頃、白の庭園では──
「温泉……が……ジュースになってる……」
セリスティアがぽちゃんと足を入れる。
「んあっつ!!」
カグラが足を突っ込んだ瞬間、レモンソーダだったはずが熱燗に変化。
「なぜ!?」
「温泉のアルゴリズムが“ランダム変換式”にバグってる……」
アロマがメガネをクイッとする。
「これは……“しばらくは温泉に期待してはいけない状態”です」
そしてついに庭園の空間がパンで圧縮され──
空間が“ふわふわ”になる。
「……歩くたびに跳ねるんだけど」
「重力干渉がバターロールベースになってるね」
「バターロール基準!? なんでパンのふわふわが重力に影響与えるのさ!!」
そこに突然──
「ハァ〜〜〜い♡」
ふわふわ空間を突き抜けて現れたのは、王立魔術院の厳格なはずのメルゼス。
……なぜか、女装していた。
「誰がこっちにバグ干渉した!!?」
「観測外です」
アロマが即答。
「観測外で終わらせるな!!」
結論:
世界は……たぶん元通り。
少なくとも、焼きそばパンはうまい。
「パンがあれば、世界は救える」
カグラのそんなひとことを、誰も否定しなかった──
(脳が焼きそばパンに支配されつつある)
次回!
『“修正済み”って書いてあったのに直ってなかった件』
乞うご期待──!
焼きそばパンがバグを起こし、
焼きそばパンが世界を圧縮し、
そして焼きそばパンが重力を書き換えた──
……どうしてこうなった。
今回は“世界の修正回”だったはずなのに、
気づけば女装、温泉ジュース、関西弁と、
謎の事象がてんこ盛りになっていました。
でもまあ、カグラ的には「なんとかなった」みたいです。
(たぶん、ならないよりマシ)
次回はさらなる“修正済みバグ”と戦うお話……かもしれません。
それでは、次回も焼きたてでお会いしましょう!




