焼きそばパン、神になる
こんにちは(こんばんは?)、今日もゆるく始まります。
前回のお話でカグラと哲学者シオンくんが「焼きそばパンとは何か」みたいな問いに迷走した結果、
今回は逆に吹っ切れて、世界がパンに支配されていくという謎展開に突入しました
「なんでそんなことに?」って思った方、大丈夫です。
書いてるこっちも 「なんで?」 って思ってます。笑
では、神に祝福されしパンの物語へ、いざ。
朝。
今日も俺は、焼きそばパンを片手に目を覚ました。
「……ん? この焼きそばパン、昨日よりフワフワしてない?」
寝ぼけ眼でパンを見つめる。なんか、光ってる気がする。
いや、気のせいか。たぶん、夢見がちだっただけだろ。
「カグラ〜、朝ごはんよ〜」
セリスティアの声が優しく響く。
でも手元には、すでに“朝ごはん”がある。
「もう食ってる。てか、焼きそばパンしかないんだが?」
「……え?」
セリスティアが小首をかしげてテーブルを見て、少し目を丸くした。
「……ほんとだ。全部、焼きそばパンになってる……」
「え、マジで?」
まさかと思って冷蔵庫を開けてみた。
中は――焼きそばパン、焼きそばパン、焼きそばパン。
種類の違う焼きそばパンが、整然と詰め込まれていた。
チーズ入り、ピリ辛、ソースダブル、粒マスタード、関西風……。
「焼きそばパン冷蔵庫って何?」
「……異常事態だわ」
俺は振り返ってセリスティアを見た。
「この家、いつから《せれす亭》になった?」
「なってないわよ!? うち《白の庭園》だから!!」
──だが、扉の上には、しっかりとした木彫りの看板が。
《やきそばパン食堂・せれす亭(神の献立)》
「看板が俺の記憶を超えてるーー!?」
「いや、どう見てもこれバグってるわよ!!」
「えっ、神のいたずら……?」
「焼きそばパン神が本当にいたらしい……」
そのとき。
窓の外から、なんだかおかしな行進の音が聞こえてきた。
「ぱんぱんぱんぱん……ぱんぱんぱーん……♪」
「……なんか来てる」
俺とセリスティアは顔を見合わせて、そっとカーテンを開ける。
そこには、フードをかぶった謎の集団が行進していた。
全員、焼きそばパンを手に持ち、空に向かってこう唱えていた。
「パンの恵みに感謝を……!」
「神よ、パンの御名において導きたまえ!」
「なにこれ、新興宗教……!?」
「“パン教団”よ……!」
セリスティアの顔が真っ青になる。
「しかも看板見て! “カグラ=シノノメ神”って書いてある!!」
「俺、パンの神になってるーーー!!?」
パン教団(仮称)が家の前で立ち止まり、ひとりの司祭っぽい男が進み出た。
フードを脱ぐと、そこにはやたら目力の強いおっさんが現れた。
「カグラ=シノノメ様……あなたこそ、我らが預言にある《パンの導き手》……!」
「いや知らんし!」
「お導き、ありがとうございまーす!!」
一斉にひれ伏す信者たち。
地面に額をこすりつけながら、謎の祝詞を唱え始めた。
「やきそばぱん、やきそばぱん、ありがたき、そばのたまもの……」
「ソースと麺とパンの三位一体……!」
「カグラ神の名のもとに……!」
「うわあああああああ!!!」
カグラ、全力で家の中へ退避。
それを見てセリスティアが肩をすくめる。
「……あれ、もしかしてスキル【???】の影響?」
「え、俺のスキルで焼きそばパン教が爆誕したってこと!?」
「つまり、存在の記録が……パンに書き換えられた……?」
「めちゃくちゃ怖っ!!」
──そのとき、教団の司祭がまた声を張り上げる。
「神よ、お受け取りください!」
そう言って、黄金に輝く超高級焼きそばパンが差し出された。
ソースは粒子状に輝き、パン生地には“神の印”が刻まれている。
「なにこれ、神パン……?」
「神パン!?(語感が最悪)」
「さあ、これを受け入れ給え!」
「いやだから俺、神じゃねぇって!!」
「“神は謙虚”という記述通りですねぇ!!」
「違う! 都合よく解釈すんなぁ!!」
そのまま、神輿(※屋台改造)に乗せられそうになるカグラ。
「やめろー!! 焼きそばパン神になるつもりなかったのにーーー!!」
セリスティアはちょっと笑いながら、呟いた。
「……でも、これだけの規模になると放っておけないわね」
王都、王立情報局・バグ監視部門──
魔術スクリーンに映し出されたのは、信者たちが焼きそばパンを掲げて踊る謎の儀式映像。
「……また、あの“パン信仰”の映像ですか?」
「うむ。問題はこれが一過性の錯乱ではなく、“バグ干渉記録”として検出されたということだ」
魔導官たちはざわめいた。
「つまり……この宗教現象そのものが、現実干渉されてる?」
「記録領域が、パンによって上書きされている可能性がある」
「そんな……まさか“パンの神”が実在するというのか!?」
──王立魔術院だけじゃない。
魔王軍サイドでも同様の事態が起きていた。
「報告、焼きそばパンなる存在による“構文揺らぎ”を複数観測」
「観測機構、ノイズ反応多数──信仰波形と一致」
「パンで信仰波形!? そんなものが……!」
魔王軍の通信士・アロマは、真顔で言った。
「……神託干渉の再発生」
「なんでパンでそれが起きるんだよ!?」
──そして場面は《白の庭園》。
セリスティアは、通信魔法の報告を受けていた。
「焼きそばパンに関する“誤認集団”が発生し、それが次元構造へ影響を与えている……?」
その横で、カグラがぼりぼりパンをかじっていた。
「いやー、うまいなぁ、神パン。もちもちしてて」
「……その“食べてる行為”が原因だと思うのだけど」
「えー!? 俺パン食っただけで世界バグらせてるの!?」
──そして王国、魔王軍、観測機構、すべてが結論に達する。
「これは、バグ存在“カグラ=シノノメ”による信仰型現実干渉だ」
「即刻、対処が必要……!」
だが、誰一人としてこうは言えなかった。
“なんでパンでそんなことになってるのか”と──
世界が……焼きそばパンに侵食されていた。
「……な、なあ……あれ、見間違いか?」
「空から……パン?」
パンだった。
いや、正確には、**“神々しく輝く焼きそばパン”**だった。
雲間から差す後光とともに、ふわりふわりと舞い降りてくる、焼きそばパン。
「天啓……? これは、神の……パン?」
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「我らがパン神に、祝福あれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
──信者、誕生。
それも、世界各地で。
「どうしてこうなった……」
セリスティアは額に手を当てた。
目の前では、焼きそばパンを両手に掲げて踊るカグラとミルミがいた。
「ぱんぱんぱんぱんやきそばぱーん!!」
「ぱーんぱーんぱーんのちからー!!」
「そろそろ止めてぇぇぇぇぇ!!」
そのときだった。
――空間が、ゆらいだ。
「また……バグ?」
ぴたりと踊りをやめたカグラが空を見上げた。
そこに、あの観測者がふわりと現れる。
「……再観測を試みたが……不可能」
「は?」
観測者は、焼きそばパンを見つめながら呟いた。
「この物体は……“概念侵食型現実バグ”……
君のスキル【???】が、世界律の“食”カテゴリに干渉している」
「ちょっと何言ってるかわかんない」
「簡単に言えば──世界中の食に焼きそばパンが上書きされている」
「えええええええええええええ!?!?!?」
セリスティアが思わず絶叫した。
「観測した限り、米もパンも魚も全部、分類上“焼きそばパン”に……」
「何それこわい!!!!」
「だが……被害は限定的。
“焼きそばパン”という語とイメージだけが世界に浸透しており、
実際の物質には影響がない」
「つまり?」
「記録と記憶だけパンってことだよセレっち」
「いや“セレっち”言うなーーーっ!!」
観測者は静かに目を閉じる。
「我々は……撤退する」
「え、いいの!?これ放置で!?」
「……記録を改変する存在に、我々は関与できない。
ただ……気をつけろ。君のスキルは、既に“情報存在”すら超えつつある」
そう告げて、観測者はパンを手にしたまま消えた。
「……いや、お持ち帰りしてんじゃねぇよ」
一同が沈黙した。
いや、違う。
「ぱーん、ぱーん、ありがたや~~~」
後ろで誰かが拝んでた。
焼きそばパン──それは、神になったのだ。
──その日以降、
人々の記憶には、確かに“焼きそばパンの神”が存在していた。
「信じられない……本当に……浸透してる……」
セリスティアが魔導書のひとつを手に取って呟いた。
そこには、こう記されていた。
“最古の神、焼きそばパン神。
火と麺とソースを司り、空より顕現せし存在なり”
「絶対そんなの書かれてなかった……私、読んだもん……」
「初版じゃなくて“改訂版”って書いてるし」
「誰が改訂したのよ!!?」
一方その頃、庭園の一角で──
「ふー……やっぱ焼きそばパン、最高だな」
カグラは今日もごきげんで、パンを片手に空を見ていた。
「パン食ってるだけで神格化されるとは……俺、どんなバグなんだよ」
その背後に現れたシオンが、淡々とつぶやく。
「……世界の記録にまで干渉している。君のスキル【???】は……“出来事そのもの”を書き換える力かもしれない」
「え、それってやばくね?」
「うん、かなり」
──事象の上書き。
スキルの名前すら記録できない【???】は、すでに“記憶”“観測”“物語”を、境界ごと崩しはじめていた。
「……やっぱ、世界のほうが俺にバグってんじゃない?」
「……その認識、正しいかもしれない」
シオンが小さく笑った。
それでも、今日も世界は回っていた。
焼きそばパンの神話を抱えながら──。
──その日。
パン屋《せれす亭》の前に、なぜか**小さな祠**が建てられていた。
「……え、誰が作ったのこれ」
カグラが眉をひそめて問いかけると、
「朝起きたら……できてたのよ」
セリスティアは、もはや諦めたような表情だった。
石碑には、こう刻まれていた。
“ここに眠るは、焼きそばパン神。
麺の導きによりし者たちに、炭水化物の加護あれ”
「眠ってねぇし!! 俺は今、生きてるし!!」
「というか、“導き”って何!? 俺ただ、パン食ってただけだぞ!?!?」
「……神ってそういうもんらしいわよ?」
──さらにその夜。
なぜかパンの形をした彫像が、村の広場に建立された。
「これは……信仰、なのか?」
ラドリウスが虚空を見つめてつぶやき、
「くっ……これはまずい……人類の思考に“炭水化物”が浸食されている……!」
と、なぜか観測者も動揺していた。
だが──
「うめぇ……やっぱ、焼きそばパンは最強だなぁ……」
その中心で、カグラはのんびりとパンを頬張っていた。
神も、魔王も、王国も、観測者も。
誰もがバグったこの世界で、
彼だけが、なにも変わっていなかった。
──世界がパンに侵されていようと。
──記録が改ざんされようと。
「俺は……今日もうまいパンが食えた。それでよくね?」
──焼きそばパン神、ここに爆誕。
その起源は、案外テキトーだった。
お疲れさまでした!
気づけば「焼きそばパン」が、
神に祀られ、信仰され、彫像になってました(←何があった)
ラドリウスも観測者もセリスティアも、なんか真面目に反応してるけど、
カグラだけは変わらずに「うめぇ」って言ってるのが彼らしいですね。
なお、世界のログが一部「パン化」された件については、誰かが気づくまで放置しておきます。




