あの2人”、世界がバグってるのに空気読まない
お読みいただきありがとうございます!
今回は、懐かしの(?)キャラが再登場したり、パンが光ったり、世界がバグったり……相変わらずゆる〜く世界が崩れていくお話でした。
ジルドくんとリリィちゃん、覚えてましたか?
忘れてても大丈夫。テンプレ勢なので、登場した瞬間にテンプレ感で思い出させてくれます。
カグラとの再戦(?)もきっと……何か意味が……あるような気がします(適当)
さて、次の舞台は「干渉地帯」。
なんかいよいよ話が進みそうな雰囲気ですが、たぶん気のせいです。
「ラドリウスは……去った、のよね?」
セリスティアがゆるく溜息をつく。
空気はまだざらついている。さっきまで“戦争”の火種が投げ込まれかけていたのに──
今は庭に焼きそばパンの香りがただよっているだけ。
「で、俺はその間にパンを焼いていたわけで」
カグラが堂々と胸を張る。
もはやツッコミも慣れたものだ。シオンも何も言わず、隅でパンを食べていた。
「焼き加減、よし。魔導炉の温度安定もよし。焦げてない。うむ、完璧」
「……カグラくん、それ、報告することだったの?」
「一応? 食品衛生、大事」
セリスティアが額に手をあてて「やれやれ」と肩をすくめたそのとき──
「そこまでだァァァ!!」
空気が──割れた。
比喩じゃなく、本当に“風圧”で庭の空気が爆ぜた。
やたら派手なエフェクトとともに、誰かが庭の石畳にド派手に着地する。
──スーツのような軍服風の上着。
──赤いマント。
──輝くエリートの証・金色の肩章。
「……誰?」
カグラが焼きそばパン片手に首をかしげる。
「久しいな、カグラ=シノノメ! 我が輩を忘れたとは言わせんぞ!」
そう叫んで、堂々とポーズを決めたその男──
ジルド=フォン=グランツ。
かつて魔術院にてカグラに開幕5秒で吹っ飛ばされた男である。
「覚えてる?」「微妙」「いや、顔は……」「誰だっけ?」
「ぐおおぉぉぉぉぉ!!」
ジルドのHPが開幕から0になりかけていたその時──
「まったく、しょうがないわね……!」
ふわりと舞う金髪ツインテール。
「お嬢様参上!! カグラ! 今日こそ決着つけてやるわ!!」
もう一人のテンプレキャラが、空気を読まずに空から落ちてきた。
リリィ=ハートフィールド。
正統派に見せかけて中身は脳筋の、テンプレツンデレ令嬢。
──世界がバグっていても、空気は読まない。
そんな2人が、久々の再登場。
カグラは──焼きそばパンの焼き加減しか気にしていなかった。
「で、何しに来たの? 焼きそばパン食べる?」
カグラが当然のようにパンを差し出す。
「ち、違うッ! 我が輩はこの世界のバグを正すためにだな──!」
「いやそれラドリウスのセリフでは?」
セリスティアの冷静なツッコミが飛ぶ。
シオンは黙ってお茶を飲んでいる。やはりノータッチ。
「と、とにかく!」とジルドが身を乗り出す。
「我が輩はカグラ、お前にリベンジを果たすべくここに来たのだッ!」
「ふーん、で誰だっけ?」
「ぬあああああ!! 1話の開幕でぶっ飛ばされたエリートだと、あれほど言ってるのにぃぃ!!」
「……あー。あー、いたかも。えーと、バルド?」
「ジルドだぁぁぁ!!!」
隣でリリィが堂々と腕を組み、ふんっと胸を張った。
「いい? あたしたちは、この物語にちゃんと再登場するために、全力で空気を読まずに登場したのよ!」
「自分で言っちゃうんだ……」
「演出も予算も抑えめだったけど、ちゃんと落下エフェクト出たでしょ!?」
「それエフェクトって言っちゃダメなやつ!」
──そして。
「模擬戦を認める。特別に」
ひょっこり現れた魔術院の監察官が、淡々と告げた。
「あれ、メルゼスさんじゃん。生きてたの?」
「誰が死んでた想定だったんですか」
「ジルド=フォン=グランツ、リリィ=ハートフィールド。
貴様らには、“2人で1人”の扱いで模擬戦を許可する。相手はもちろん──」
「焼きそばパンの人だよねー」
「カグラ=シノノメだ」
「だよねー」
──テンプレ再戦イベント、まさかの実現。
だが、世界はすでにバグっている。
果たしてこの勝負、成立するのか?
それ以前に、パンは冷めないのか──。
「──では、始め!」
メルゼス監察官が手を振り下ろすと同時に、ジルドとリリィが動いた。
「行くぞリリィ! 覚えているか、我らが連携奥義!!」
「もちろんよ、ジルド! “魔導騎士連撃——”」
\\ “スターライト・ジャスティス・インパクト・ブレイカー!” //
「名前、長っ!!」
セリスティアが思わずツッコんだ。
「いやほんと、言い終わるまでに負けてそうなんだけど……」
カグラが焼きそばパンの袋を開けながら呟いた。
ジルドの詠唱魔法とリリィの突撃が同時に繰り出され──!
……た。
「えい」
カグラ、避ける。半歩だけ。
「うそ!? 避けた!?」
「動きが……無駄に軽い!? 私の槍が当たらないなんて!」
──ジルドの魔法、発動直前で止まる。
「お、おいリリィ!? 早いってば! 我が輩の詠唱がまだ終わって──」
\ドッカーン/
ジルド、自爆。
「自爆してんじゃないわよ!!!」
「我が輩は悪くない!!これは魔力の流れがバグったせいで──!」
「それ、おれのスキルのせい?」
カグラが焼きそばパンをかじりながら、のんきに首をかしげる。
「……スキル:??? のせいで、あらゆる魔法演算がズレた可能性があるわね」
セリスティアがさっきの戦いの記録を見ながら、うんうん頷いた。
「でも焼きそばパンは完璧に焼けてたじゃん?」
「それと魔法干渉は別なのよ、たぶん!」
──結果、テンプレコンビの連携奥義は、
・技名が長すぎて詠唱ズレ
・カグラが動かず避ける
・ジルドが自爆する
・リリィが巻き込まれる
というお約束大崩壊コンボで終了。
それを見ていた魔術院監察官・メルゼスが、静かに記録メモに書き込んだ。
「“テンプレ奥義は、この世界に対応していない”……っと」
「……さっきの、なんだったの?」
模擬戦(仮)終了後、カグラたちは《白の庭園》の中庭に戻っていた。
あの2人──ジルドとリリィは、軽い火傷と精神的ショックを負って、庭の片隅でアイスを食べている。
「チョコミント……うま……」
「うう……我が輩はなぜあんな長い技名を……」
「おかしいですね」
珍しく口を開いたのは、シオンだった。
「ジルドの魔法構成は正確だった。むしろ完璧に近い。
にもかかわらず、最終段階で演算が崩れた。まるで、誰かがコードを書き換えたみたいに」
「コード……?」
セリスティアが眉をひそめる。
「この世界は、確かに“魔術演算”で動いている。
でも今のは……“演算”というより、“観測ミス”に近かった」
──観測ミス。
それは、“世界が間違った情報を読み取った”ということ。
ジルドの魔法は正しかった。
だが、“世界”がそれを間違って理解した。
「それって……俺のせいか?」
カグラが、パンのかけらを頬張りながら呟く。
「わからない。でも、君のスキル【???】は、
“この世界の法則そのもの”に干渉している可能性がある」
「……パンの焼き加減にも?」
「そこは無干渉なの、なんでか知らないけど!!」
静かな中庭に、ふと吹き抜ける風。
何かが、ゆらいだ。
ほんの一瞬──“世界のプログラム”が、誰かに触れられたような、そんな感覚。
「……また、何か来るかもしれない」
シオンの目が、どこか遠くを見ていた。
「それで結局、模擬戦ってなんだったの?」
中庭のテーブルに戻ったカグラが、パンの袋を新しく開けながらぼやいた。
「模擬というか、喜劇だったわね」
セリスティアが肩をすくめる。
「パンの方がまだ勝率高いんじゃ……」
シオンがまたお茶をすすっていた。
──その時。
「ピコン」
カグラの手元で、何かが鳴った。
手にしていた焼きそばパンの包装紙が、ふいに“チカチカ”と点滅し始めたのだ。
「……おいパン、光ってない?」
「光ってるね!? え、バグ?」
包装紙の内側に、黒い文字が浮かび上がった。
『観測値オーバーフロー検知:座標13・式番7-Aにて“逸脱体”を確認』
『対象:シノノメ=カグラ』
『記録を分離、外部ログへの転送を開始します』
「な、なにこれ……パンが俺のことログってるの?」
「いやパンじゃない、それ“観測者のメッセージ”よ!!」
セリスティアが席を蹴って立ち上がる。
「観測者……?」
「かつて世界を“記録”していた存在。神にも等しい情報の管理者たちよ。
でも今はもう……ほとんどが消えてるはず……」
シオンが、じっと浮かび上がった文字を見つめる。
「違う。“外部ログ”って書いてある。誰かが、この世界の外から見てる」
「誰だよ……そんな気持ち悪いことしてんの……」
「言ってるそばから、観測外の発言……」
セリスティアが顔を手で覆った。
──と、次の瞬間。
『次なる接触は、“干渉地帯”にて』
『コード:Ω-LIM / 招待者:ラドリウス』
「ラドリウスだって!? もう帰ったんじゃ……」
「“干渉地帯”って……王国と魔王軍の間にある中立領域かも……」
シオンが静かに立ち上がる。
「次、行くべき場所が見えたな」
カグラが、袋の中から最後のパンを取り出しながら言った。
「パン……持ってくの?」
「当然」
王都の空は、どこかざわついていた。
それは風の音か、それとも……誰かの視線の残り香か。
「……で、“干渉地帯”ってどこにあるの?」
「だいたいまっすぐ120キロくらい先だよ!」
突如現れたのは、例の元気すぎる案内役──
魔王軍の使者、ミルミだった。
「えっ、なんでお前がここに!?」
「うーん、なんか招待された気がして?」
ミルミはくるっと回って指を立てた。
「ラドリウスの伝言、届けにきたのだ! “干渉地帯にて、真実が歪む”だってさ!」
「真実って歪むものなの?」
「パンだってつぶれるんだから、歪むでしょ?」
「……妙に説得力ある例えやめて」
セリスティアが、眉間を押さえながらため息をつく。
「とにかく、向かうしかなさそうね。“干渉地帯”。
でも、今回は私も同行するわ。“観測外”に干渉するには、それなりの結界術が必要だから」
「おれは、パンがあれば大丈夫」
「あなたの基準、マジでよくわかんないのよ」
そして。
空の上空には、誰も気づかないほどの微細な揺らぎが走った。
それは、“観測者”の残した残響か。
それとも、新たな存在がこの世界に干渉しはじめた兆しなのか──
「ま、なるようになるっしょ」
カグラがパンを片手に笑った。
次の舞台へ。
世界のバグは、まだほんの入口でしかない。
お疲れさまでした!
観測者のメッセージとか、干渉地帯とか、世界の構造とか……
ちょっとシリアスっぽい単語が並びましたが、心配いりません。パンは無事です。
今回はカグラのスキル「???」がパンの包装紙を光らせるというバグ性能を発揮しました。
強い。たぶん。いや、強くなくてもいいか別に。
次回はついに、干渉地帯へ。
ラドリウスと再会? それともまた変な人? というか何しに行くんだっけ?
それでは次回もお楽しみに!




