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【全属性耐性ゼロ】だったのに、全ての攻撃が効かない最強バグスキルを手に入れました※タイトル詐欺です  作者: Y.K
第1幕

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これが戦争ですか?バグですか?それともパンですか?

お久しぶり(?)のラドリウス登場回です。

今回は「戦争の足音」が聞こえてきたので、そろそろ世界観っぽい展開……

のはずが、やっぱりバグってパン焼いてます。


誰が悪いって、だいたいカグラです。

朝。

ホワイトガーデンの空は相変わらず青く、空気はピリッと冷たく澄んでいた。

ここが“世界の狭間”であることを忘れてしまいそうな、そんな穏やかな朝だった。


カグラは、庭のベンチで焼きそばパンを焼いていた。


「……焼きたてって、なんでこんなにうまいんだろな……」


ジュウウ、と焼きそばがパンの中で音を立て、

ほんのりとバターの香りが空間に溶け込んでいく。


そこに、セリスティアが顔を出した。

王国の姫にして、“保護者”を名乗る不思議系ヒロインである。


「カグラ。そろそろ、王国と魔王軍の動きが本格化してきたみたいなの」


「んー?」


「いま、世界の東側で“大陸境界帯”が揺れてるって報告があったわ。

 たぶん、魔王軍が集結してるの……このままだと、開戦するかもしれない」


「へぇー」


焼きそばパンをくるりとひっくり返す。


「……まぁ、とりあえず焼き終わってからにしようか。戦争ってやつは」


「またそれ!? パン優先なの!?」


カグラは焼き上がったパンを一口かじりながら、空を見上げた。


その瞬間、

──空間がわずかに揺れた。


セリスティアが目を見開く。


「いま……また、世界が“バグった”……?」


「いや、パンがうますぎただけじゃね?」


「違うでしょ!!」


 


──そして、その“違和感”の中から、

ひとりの男が現れる。


 


「……世界の温度が、変わったな」


赤と黒のローブ。白銀の髪に、深紅の瞳。

その男は、ふわりと庭に降り立った。


 


「……またお前か、ラドリウス」


セリスティアが構える。

ラドリウス──魔王軍の使者。そして、意味深な発言しかしない男。


 


「この世界は、そろそろ“選択”を迫られる。

 人間か、魔王か。そして──そのどちらにも属さぬ、観測外の者か」


「よう、久しぶり。焼きそばパン食う?」


ラドリウスの言葉を、カグラは鼻で受け流す。


 


「貴様……戦争の予兆を、焼きそばパンで誤魔化す気か」


「いや、パンは世界の真理だから」


「何言ってるの!?」


 


──空が、再びわずかに“揺れる”。


世界は、何かを訴えている。

だがそれが戦争の気配か、パンの香りかは、誰にもわからなかった。


ラドリウスは、ゆっくりと右手を掲げた。


「神託は示している……この地に、第一の火種を落とせと」


空がまた揺れる。風がざわめき、庭に不自然な影が差した。

ラドリウスの掌から、黒い光の球が浮かび上がる。


「いまここに──魔王軍と人類の、戦争を始めよう──」


 


「いや、まだ焼きそばパン焼いてるから待って」


「なに?」


「あと3分。これ焦げやすいから」


「…………」


 


沈黙。

魔王軍の使者、世界の均衡を崩す者、ラドリウス──


完全にペースを崩された。


 


セリスティアは頭を抱えた。


「なんでこの人、こんな場面でもパンなんですか……!」


「いや、ちゃんと空気読んでるよ? “あ、そろそろ戦争始まるな〜”って感じはしてる」


「だったらパンやめて!!」


 


そこへ、ひょっこり現れたシオン。


「……空間の歪みが強まっている。君のパンのせいだと思う」


「どう考えてもラドリウスのせいだろ」


「否、パンだ」


「お前もかよ!!」


 


──そんなやり取りをしている間にも、

ラドリウスの周囲に黒い結晶のようなものが浮かび始めた。


「この世界に、神託のまま第一の“炎”を──」


「──はい、できたー! 焼きそばパン!」


バチィン!


ラドリウスの魔力球が弾け飛んだ。


「な……!?」


「熱気で爆ぜたな。パンの。……すごい熱量だった」


「ふざけているのか貴様ら……」


 


カグラは焼きそばパンをフーフーしながらかじった。


「でもうまいんだよな〜これが」


「世界の崩壊よりパンを優先するとは……やはり貴様、観測外だ」


「焼きそばパンを観測できない時点で、お前もバグってるけどな」


「っ……!」


 


──戦争の導火線に火が灯る、はずだった。


だが、

パンが先に焼き上がった。


「この空間……もう、収拾がつかなくなってきてる……」


セリスティアは両手で空間を制御しようとしたが、

ホワイトガーデンの結界すら、微細なノイズを帯び始めていた。


「見て、空が……!」


空には、“もうひとつの月”が浮かんでいた。

それは赤く、歪み、まるでどこか別の世界を映し出しているような……


「……“黒の月”。まさか、魔王軍が……」


「いや」


シオンがカグラの手元を指差す。


「おそらく、そのパンの影響だ」


「ちょ、なんで!? なんで黒い月がパン由来なの!?」


 


ラドリウスは苦しげに眉をひそめた。


「神託に……反応がない。パンによって、神の観測が遮断されている……」


「いや、どんなパンだよ!? それもう世界改変してない!?」


 


そこへ突然、

“あの2人”がやってきた。


「ふふん、我が輩の分析によれば、この空間はすでに限界寸前──」


「お、お兄様! ちょっと、カグラがまた変なことしてるのよ!」


金髪ツインテがぷりぷり怒ってる。

テンプレ脳筋お嬢様・リリィ=ハートフィールド、そして──


「学年主席のジルド=フォン=グランツ様登場だ。よく拝め」


「誰も呼んでないよ?」


「うるさい! 君たち、いま非常事態なんだぞ!? パンの暴走で世界が──」


 


──ズボォォン!!


突然、空間に“穴”が空いた。


焼きそばパンがふわりと宙を舞い、

赤い月と黒い穴が融合しかけ──


「って、ちょっ!? カグラ! あんたのパン、次元吸い込んでるんだけど!?」


「えっ えっ 俺のせい!?」


 


そしてその瞬間。


カグラの背後で、まばゆい光が弾けた。


「……パン、転送されたな」


「うそでしょ!? どこに!?」


「……たぶん、魔王城の食堂あたりだと思う」


「なんでピンポイント!?」


 


──“黒の月”は、パンによって満たされた。


そして世界は、“戦争”ではなく、“腹ごしらえ”へと進路を変えた。


魔王城、食堂。


そこでは──

突如、転送されてきた謎の焼きそばパンをめぐって、ちょっとした混乱が起きていた。


「……なんだこれは?」


魔王軍幹部らしき男が、目を細めてパンを見下ろす。


「……焼きそばパン、ですね。たぶん、これは“世界の外”から届いた……」


「なぜパンが届く」


「わかりません! ですが、香りがすごく食欲をそそります!」


 


──戻って、ホワイトガーデン。


カグラは床に座り込んで、頭を抱えていた。


「やべぇ、パン……送り込んじまった……!」


「どこに!?」


「……魔王軍の、たぶん幹部会議中の机の上……」


「最悪のタイミングじゃん!!」


 


セリスティアも叫ぶ。


「どうするのよ! これ、完全に宣戦布告じゃない!?」


「いや、逆に……“パン和議”の可能性もある……」


「パン和議って何!?」


 


そのとき、空間に通信ノイズのような“音”が走った。


──プツ、ピッ──


 


『……我ら魔王軍は、貴様らとの戦争を……一時、見送る』


 


全員「え?」って顔をする。


『パンが、うまかった……このような文化を持つ者たちと、容易に血を流すわけにはいかぬ……』


 


沈黙。


ラドリウスが、苦悶するように頭を抱えた。


「神託が……沈黙した……パンに負けた……!」


「うちのパン、神託に勝ったの……?」


 


ジルドとリリィもぽかんとしている。


「ちょっと……え、なに? 我が輩ら、なんか今すごい場面に居合わせてない?」


「……うん、なんか、世界がパンで救われたっぽい」


「いや、納得いかん! そんなテンプレ破壊、ありかー!?」


 


──そして、世界は静かに、

“開戦”の火を、一度だけ見送った。


 


魔王軍と人類との歴史に残るはずの瞬間は、

焼きそばパンによって、優しく包み込まれたのだった。


静まり返ったホワイトガーデンの庭で、誰もがぽかんと立ち尽くしていた。


さっきまで戦争だった。

さっきまで、世界がバグってた。

……いや、たぶん今もバグってるけど。


 


カグラは地べたにぺたんと座って、

空を見上げながら、しみじみと呟いた。


「……パンって、すげぇな」


 


セリスティアが、ゆるく微笑む。


「ほんとに……あなたって、なんなの……」


 


「救世主かもしれんぞ」


どこからともなく、シオンの声。

彼は庭の隅で、ちょこんと座っていた。


「パンで神託をねじ伏せ、戦争を防いだ存在……そう、“世界をも誤魔化すパンの使徒”」


「言い方が重い!!」


 


ジルドは悔しそうに地面を拳で叩いた。


「くっ……こんな形で、我が輩の出番が終わるとは……!」


リリィは頬を膨らませながら叫ぶ。


「なんかもう、あんたたちに全部持ってかれた気がするんだけどっ!!」


 


「まぁ、焼きそばパンうまかったしな……」


カグラがポケットから、もう1個取り出す。


「これ、どこから出してるの!?」


「???スキルかな? パン無限ストック機能」


「いや、チートが地味なんだよ!」


 


 


──そして今日も、世界はバグっている。


たぶん明日もバグってる。


でも、そんなバグの隙間に、

ほんのりと香ばしい、パンの匂いがしていた。


 


 


次回:『“あの2人”、結局パンの話しかしてない』


 


……のか、それとも、新たな脅威が……?

続きは、焼きたてのパンの香りと共に──


お読みいただきありがとうございました!

戦争回のはずが、いつの間にかパンによる和解ルートになってました。


いやほんと、焼きそばパン強すぎる。


カグラの“???”スキル、実は「パンの生成と転送」に全振りしてる説も出てきましたが、たぶんバグってるだけです。


あと、ジルドとリリィの久々の再登場も、完全にパンのかませ犬ポジションでしたね……ごめん、君たちテンプレだから仕方ない。


ラドリウスもシリアスブレイクされまくってて、

「神託がパンに負ける」というワードが出てきた瞬間、もう自分でもどうにも止まらなかったです。


……たぶん、またパンが出る気がします。

次回も、焼きたて気分でゆるっとお楽しみに!


ではでは!


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