神も観測者もたぶん無理って言った
こんにちは。
今回は「テンプレがバグったらどうなるか」を検証する回です。※たぶん
久々にジルド&リリィの二人が登場しましたが、
「あれ誰だっけ?」という読者のために、ゆるっと補足を入れておきました。
そして“意味を問う男”ことシオンの観測バグも、さらに深みに突入。
いろんな意味で「物語が壊れていく音」が聞こえ始めた気がします。
……でも大丈夫。焼きそばパンは今日も無事です(たぶん)
空は、今日も安定の青空だった。
たぶんログ上では晴れだったのだろう。
いや、もしかしたら晴れ「っぽい」だけなのかもしれない。
「ねぇ、あれ……最初からいたっけ?」
セリスティアが指差したその先に、男がひとり、立っていた。
誰も彼もが気づいていなかったのに、
なぜか今このタイミングで、全員の視界にその姿が入った。
「……いたっけ?」
カグラが焼きそばパンをかじりながら首を傾げる。
男は、ただそこにいた。
銀灰色の髪に、淡い瞳。片目は不思議な模様で覆われていて、
一見すると文系研究者か詩人か、どこかの変人にも見えなくはない。
「……あ、知ってるわ。あの人……」
セリスティアが一歩踏み出すと、男がゆっくり顔をこちらに向けた。
「また会ったな。君たちの“観測点”は、どうやら俺に干渉してくるらしい」
「なんか意味深なこと言ったーーー!?!?」
カグラの叫びが、世界に響き渡る。
しかし、世界はそれすらも静かに受け入れていた。
「観測とか、観測点とか、そういうの禁止にしない!?」
「言ってる意味がまったくわからないけど、すっごく面倒くさそうなのは伝わったわ」
セリスティアが腕を組み、ため息をつく。
一方、何も事情を知らないジルドとリリィはというと──
「……ふむ。まるで詩人だな。だが私の方が語彙力は上だ」
「誰よあれ。髪の色が金じゃない時点でテンプレ度が足りてないわ!」
彼らは彼らで、テンプレ的混乱に突入していた。
──そして、誰もが気づいていなかった。
この時点で、すでに“世界の演算処理”がほんの少しだけ遅延しはじめていたことに。
「君たちは、なぜ存在している?」
──はい、出た。
唐突な“意味問う系男子”の登場である。
「……おい、なんか始まったぞ」
カグラが焼きそばパンをもぐもぐしながらセリスティアの肩越しに囁く。
「やっぱり来たわね、めんどくさいパターン」
「観測者ってこういうキャラ多くね?もっとさ、普通に“おはよう”とかから始められないの?」
シオンは動じず、淡々と続ける。
「存在とは、どこから始まり、どこへ向かうのか。
思考の根にある原初的な意識こそが──」
「いや長いな!?」
カグラがパンを掲げて、まるで“会話中断ボタン”のように割り込む。
「こっちは昼飯中だっつーの。存在理由?焼きそばパンがうまいからだけど?」
──その瞬間だった。
空間が、“ピキ”っと音を立ててひび割れた。
「ちょっ!?今、空間が反応したわよ!?カグラくんの発言で!?」
「すげえな……世界、腹減ってたんか?」
「世界もバグってんだよ多分……」
その隙に、ジルドが割って入る。
「そこの意味厨!この俺が叩き直してやる!」
──が、
「貴様……見えているのか?」
シオンの目が、一瞬だけ赤く染まった気がした。
「……ん? え? 何? 今、何か俺にバグった???」
ジルドの脳が、0.2秒ほどフリーズした。
「ほらね。テンプレが壊れると、だいたい面白いのよ」
リリィがなぜか嬉しそうにツインテを揺らす。
世界はちょっとずつ、けれど確実に、“こっち側”にズレ始めていた。
空間のゆらぎが、もはや日常レベルになってきた。
ただでさえ異常だったのに、
いまや風が逆再生したり、鳥が文章を読み上げていたりと、世界の表示バグが洒落にならない。
「……これ、もうダメかもね。調整ユニット、そろそろ来るわよ」
セリスティアが腕を組んだまま、まるで天気予報でも語るように呟く。
その直後。
「──ログ調整プロセス開始。異常観測を検出」
空中にノイズ混じりのホログラムが浮かび上がり、謎のユニットが現れる。
見た目はキラキラした浮遊ディスクにビリビリしたオーラ。
前にも現れた“あの”存在だった。
「おっ、来た来た。こいつ、もうすっかりレギュラーじゃん」
カグラがパンをかじりながら手を振る。
ユニットの電子音が空に響く。
「観測外存在:シオン=ヴァレア。該当ログなし。
存在整合性の確認が不能。演算領域にエラー発生」
「そらそうよ。意味とか言い出す奴がログにいるわけないし」
セリスティアが冷静に突っ込む。
リリィが大きくため息をついた。
「もう!こういう展開、テンプレじゃないわよ!!
もっとこう、最初は敵だと思ったけど実は味方だったり、
バトルでライバルになってから信頼してく感じでしょ!?」
「いまそれ全部ぶち壊されてるんだけど」
ジルドが真顔で肩を落とす。
そして──ユニットが再起動を開始し、演算補正を試みるも……
「再調整……失敗。存在因果処理に失敗しました……」
シオンが、まるで独り言のように呟く。
「……俺は、“意味”を消すためにここにいる。
それが、俺という“かつての観測者”の選択だ」
空間が、もう一段階バグった。
世界が、まるで“本当にバグを認めた”みたいな顔をしている。
ジルド=フォン=グランツ。かつての学年主席。
第1話でカグラに“物理的に”論破されたエリート様である。
以降、しれっと再登場してはテンプレを爆走しているが、
最近ではテンプレがバグってきている気がする。
そしてリリィ=ハートフィールド。
金髪ツインテのお嬢様。自称テンプレヒロイン。
……だが中身は完全に脳筋。
筋トレで魔力が上がると信じて疑わないタイプである。
彼らの存在が物語に必要かどうかは……さておこう。
何しろ、いま世界そのものがバグりかけているのだから。
空間の歪みが、今にも崩壊しそうなところで、
シオンはポツリと呟いた。
「この世界は、“意味”を求めすぎた」
カグラは相変わらずパンをかじっていた。
セリスティアはそれを横目で見ながら、やや心配そうにシオンを見つめている。
「……え、いまのって“厨二”じゃなくて、ガチのやつ?」
「たぶんガチ」
「うわーめんどい……」
ジルドが腕を組み、ふんっと鼻を鳴らす。
「世界がどうだろうと、俺が俺である限り、テンプレは不滅だ」
「え、むしろテンプレが危機なんだけど……」
リリィが呆れながらジルドを小突く。
そのとき──
「存在は、観測されることで確定する。
だが“君”は……違う。存在そのものが、観測結果を上書きしている」
シオンの目が、カグラを捉えていた。
カグラは「ん?」とパンの中身(焼きそば成分)を見ながら応じる。
「それって、オレがすごいって話?」
「いや、バグってるって話だと思う」
セリスティアが苦笑した。
「まじか……。
でもさ、意味とか観測とか、どうでもよくね?」
焼きそばパンをもう一口。
そして、言い切った。
「だって“意味ないこと”って、だいたい楽しいじゃん」
──その瞬間、世界のひび割れが少しだけ癒えた。
「っ……」
シオンが目を見開く。
何かに気づいたように──いや、“思い出した”ように。
「……そうか。お前は、“意味の外側”から来たんだな」
彼の表情が、ほんの一瞬だけ、穏やかになった。
だが、世界のバグは収まったわけではない。
むしろ、ここからが本番だ。
「──これより、調整不能領域への突入を開始します」
ホログラムユニットが、冷徹な声を響かせた。
世界は、完全に“崩壊進行中”に突入した。
バグは進行している。
風景はモザイクとノイズに覆われ、地面と空の区別も曖昧になりつつあった。
なのに──
「ん〜、このソースの香り、やっぱ神だわ」
カグラは、最後のひと口をゆっくりと味わっていた。
「……世界が壊れかけてるってのに、あんたは……」
セリスティアが半分呆れながらも、少し笑う。
「てか、さっきちょっとバグおさまったわよね?
まさか……焼きそばパンが“鍵”だったりして」
「えっ、マジで? 世界の存続がこのパンにかかってる感じ?」
「いやそれは困るでしょ!!」
リリィが本気で動揺していた。
「カグラ、お前……“調味料干渉型スキル”とかじゃないだろうな」
ジルドも意味わからない方向に推理を始める。
そこへ、シオンがポツリと呟いた。
「……お前のスキル“???”、
たぶんこの世界がまだ理解してない“概念”そのものだ」
「それ、焼きそばパンの話?」
「違う(即答)」
再び、空間に“観測不能のノイズ”が走る。
ホログラムユニットが震え、静かに警告を放った。
「観測対象:カグラ・シノノメ
スキル“???”による領域干渉を検出。
干渉対象:現実そのもの──」
──だが、そこでホログラムがパチン、と一瞬の静寂を挟んで消えた。
「……え、なんか終わった?」
カグラが首をかしげる。
「観測限界を超えたのよ。あんたの存在が、もはや記録不能領域に入ったの」
セリスティアがさらりと言う。
「それってつまり──」
「“無敵”ってことよ、たぶん」
「やったぜ。
つまりこのパンもうまいし、俺もすごいってことだな!」
「だから違うって!!」
リリィが全力で突っ込んだところで、バグだらけの世界に、ほんの少しだけ“日常”が戻り始めた。
──バグってても、テンプレが壊れても。
焼きそばパンは、やっぱり美味しい。
そう、これはたぶん、そういう物語。
(つづく)
お疲れ様でした!
今回は、ジルドとリリィの空気を読まないテンプレ爆走、
シオンの存在哲学、カグラの無敵っぷり、
そして焼きそばパンの尊さが炸裂した回でした。
世界が壊れてても、キャラが覚えてなくても、
パンはうまいし物語は進む。
そんな感じで、ゆる〜く続けていければと思います。
次回はまた、新たな“お騒がせキャラ”が出てくる……かも?
それでは、また次回も焼きそばパン片手にお会いしましょう。




