“あの2人”、世界がバグってるのに空気読まない
タイトルは『次回 “あの2人”、世界がバグってるのに空気読まない』。
あ、先に言っときます。この話、ギャグ回です。世界観ガン無視です。
久しぶりに出てきた初期キャラ、ジルドとリリィ。
みんな覚えてた?……いや、覚えてなくても読める構成になってるから大丈夫!
焼きそばパンは、今回も健在です。え?もはや要素薄い?気のせいです(?)。
──その日も、カグラは焼きそばパンを焼いていた。
「……なんか、最近世界のルールゆるくなってない?」
ぽつりとつぶやきながら、鉄板の上でじゅうじゅう音を立てる焼きそばを見つめる。
魔導結界で安定化された屋台《せれす亭》。
そこに漂うソースの香りは、どんな敵意もとろけさせる。
「観測者に魔王軍に使徒に……敵のバリエーションだけやたら増えてるのに、
俺がやってることって、焼きそばパン焼くだけなんだよなあ……」
セリスティアが、紅しょうがを添えながら返す。
「その“焼き”にすべてが集約されてる気がするけどね。いろんな意味で」
「哲学的パン理論やめて」
ミルミは屋台の屋根で昼寝中。
シオンは横で黙々と“バグ報告メモ”を整理していた。
──そこに。
「──あら? ここって、もしかして……出番じゃない?」
とびきりのテンプレお嬢様ボイスが、空気をぶち破った。
バサァッ!!と屋台のカーテンがめくれ、
現れたのは金髪ツインテール、フリルまみれの少女──
「リリィ=ハートフィールド!! 久々のご登場よっ!!」
※リリィ=ハートフィールド:
第1話で登場していた、いかにもな“金髪お嬢様”……なのに、実は脳筋。
ヒロインポジションを狙っていたはずが、出番が消滅していた。
今回は記憶を捻じ曲げてでも登場したいらしい。
「えっ、マジで!?リリィさん!?!?!?」
カグラ、トング持ったままフリーズ。
その横から、今度はめっちゃ偉そうな声が重なった。
「ふん。観測外だか帳の使徒だか知らんが……このグランツ家の天才たる私を差し置いて、
“世界バグの主役”とはいい度胸だな、カグラ=シノノメ!」
──ジルド=フォン=グランツ、再臨である。
※ジルド=フォン=グランツ:
第1話で「学年主席」の肩書きをドヤ顔で披露した直後に、カグラにぶっ飛ばされた男。
その後は謎のブランクを経て、なぜかアップグレードされた制服姿での再登場。
「なんか制服だけアップデートされてない!?てかお前ら何でここにいんの!?」
リリィがくるりと回って一言。
「え? 出番かな〜って思って?」
「ゆるっ!!!」
セリスティアがぽつりとつぶやいた。
「この世界、ついに“登場理由すら観測できなくなってきた”のかもしれない……」
ジルド「ちなみに、観測者への履歴書はまだ返ってきてない。封筒には“既読”って刻印だけついてた」
シオン「観測者に既読機能など……いや、あるかもしれん。バグのせいで」
カグラ「観測者SNSあんの!?」
リリィ「それより聞いて!この新作、“焼きそばパンソード”って名前で──」
カグラ「何を切るつもりだよパンで!」
セリスティア「……じわじわくる」
──世界がバグってても、彼らは今日もテンプレ全開で元気です。
「というわけで、私たちも同行するわ。世界の異変? そういうの、気になっちゃう系お嬢様なのよ!」
リリィが腰に手を当て、どやっと決めポーズ。
ツインテが太陽光を反射してるのがちょっと腹立つ。
「いやいやいや、普通に迷惑なんだけど!?こっちは今パン焼いてるし!」
「パン焼きがそんなに重要なら、私が代わってあげるわ。リリィ特製・気合焼きそばパン!」
「絶対に焦げるだろそれ!いやむしろ発火しそう!」
横で、ジルドは真面目に世界バグの話をしていた。……なぜか竹刀を持ちながら。
「そもそも、空間座標の重複は“存在律”の異常を示す。つまり、貴様が2回同じ台詞を言うのも、偶然では──」
「いやそれ“前の回でも同じこと言った”って俺へのメタ指摘じゃん!?お前バグに乗っかってくるなよ!?」
「ふ、やはり私の頭脳はこの世界律にさえ通用する……」
セリスティアがふっと息をついて、ミルミの寝てる屋根に寄りかかる。
「どうする?この空気。ツッコミ役、足りないわよ?」
「任せろ」
カグラが手をあげた。
──バグ技、発動。
《???》が一瞬だけ起動し、**“空間処理の遅延”**が発生した。
次の瞬間、ジルドが──
「んあっ!?脚が、床に埋まったァ!?!?」
地面に半分沈んでいくジルド。焼きそばパンを手に。
リリィ「ちょ、ちょっと!私の台詞も読み込み中って出てるんだけど!?」
シオンが記録を取りながらぽつり。
「カグラ氏のスキル、観測ログに干渉して“テンプレ挙動”の処理順をいじってる……恐るべし、焼きそばパン効果」
カグラ「いや俺はただパンを食いたいだけなんだけど……!」
──結論:世界のバグにも、テンプレキャラにも、焼きそばパンは効く(かもしれない)
「……ふむ。わかったぞ」
地面から半身埋まったまま、ジルドが真顔で言った。
「この世界は“テンプレデータベース”を失っている。だから、私たちのような純度100%のテンプレキャラが再び台頭するチャンスというわけだな!!」
「えっ、逆に前向き!?」
「そうよねっ!」
リリィも勢いよく挙手。
「私たちのような、“わかりやすいキャラ付け”が、世界の安定に貢献するってことよね!?」
「いやいやいやいやいや、絶対混乱招くタイプのテンプレだろお前ら!?」
カグラが即ツッコミを入れるが、ジルドとリリィは止まらない。
「名乗り口上も必要だな」
ジルドが咳払いしてから叫ぶ。
「世界の調律!記録の支配者!学年主席!ジルド=フォン=グランツ、ここに推参!!」
「いらん名乗り多い!!」
続いてリリィ。
「ツインテール・フルパワー!財閥令嬢!筋力400超え!リリィ=ハートフィールド、プリティ☆登場っ!」
「キャラ渋滞にもほどがあるわ!!」
そのとき──
ミルミが寝ぼけながら屋根から顔を出した。
「……むにゃ……なんか、バグよりうるさいのいる……」
シオンもメモをとりつつひと言。
「バグ世界への侵食速度が一時的に鈍化。……原因、“テンプレ過剰キャラの騒音による干渉”」
「いやそれ物理的にうるさいってだけだろ!」
──でも確かに、バグの気配は、ちょっとだけ薄れていた。
セリスティアがふわりと微笑んだ。
「……なんだかんだで、役に立ってるのよね、あの2人」
「……ぐぬぬ……認めたくない……」
──テンプレの力、恐るべし。
そして、世界がバグっても、ギャグの勢いだけで日常は維持できるのかもしれない。
──そして事態は、いつの間にか悪化していた。
「な、なによこの空気の圧!?」
リリィがスカートを押さえながら後ずさる。
「くっ……まさか、我らのテンプレ波動に反応して、バグが呼応したか……!」
ジルドの顔が、いつになく真剣だった(でも若干嬉しそう)。
目の前の空間が、ひび割れるように“ズレ”始めていた。
まるで映像のコマが飛ぶように、周囲の景色が一瞬ずつバグっていく。
カグラがつぶやく。
「おいおい、こっちはパン焼いてただけなんだけど……またバグの波、来たか?」
「観測範囲に異常な存在圧。数値、リリィ=ハートフィールドとジルド=フォン=グランツの波形と一致」
「うわー完全にお前らのせいかーーー!!」
──そのとき。
空間の裂け目の奥から、声が響いた。
「……テンプレ、確認。再出現……“調整”が必要だな……」
低く、機械的な声。
そこから現れたのは、モニターフェイスを持った謎の人物。
全身に流れるようなラインが光り、頭上には【DEBUG】の文字が浮かんでいる。
「誰!?」
「また新キャラ!?てか管理者!?デバッグ!?!?」
カグラが思わず焼きそばパンを落としかけた。
(※セリスティアが魔法でキャッチして無事)
シオンが、目を細めて分析を開始する。
「……あれは……“整合性調整個体”。観測外テンプレの出現に対して、世界律が送り込む自動調整ユニット……!」
「つまり、テンプレキャラが濃すぎると出てくる“中和剤”ってこと!?」
ジルドは逆に燃えていた。
「ふはははは!来い!!調整者よ!!テンプレが悪で何が悪い!!」
「おまえテンプレ中毒か!!」
リリィも目を輝かせる。
「“正規分布の破壊者”、そんな肩書きも悪くないかも……!」
「だから脳筋すぎるって!!」
──世界の整合性はますますズレていく。
テンプレ vs デバッグ。
焼きそばパン片手に、物語はまだギリ日常寄り(?)
「調整開始──対象、ジルド=フォン=グランツ、リリィ=ハートフィールド、および……焼きそばパン保有個体」
「なんで俺が一緒くたなんだよ!!!」
謎の調整ユニットがゆっくりと手をかざすと、空間に“整合処理”のエフェクトが走った。
光と数字の羅列が空中に浮かび、ジルドの口上が途中でノイズまみれになる。
「わ、我こそは、世界律に──【再構築中】──え、えっ!?」
リリィのテンプレ台詞も途中で止まる。
「さあ、行くわよ!私のツインテが……【待機状態】って何よコレ!!」
「やべぇ、マジで強制処理され始めてる……」
カグラが半笑いでパンをかじる。
──と、そのとき。
《???》が反応した。
カグラの周囲に、またも“何か”がぶわっと広がる。
世界のプログラムに無断で干渉するバグスキル、発動。
「……また来たか、謎の発動」
セリスティアが額に手を当ててつぶやく。
調整ユニットが固まった。
いや、正確には、処理落ちした。
【整合性解析中……】
【整合性解析中……】
【整合性解析中……】
【整合性解析中……】
カグラ「いや、なんかフリーズしてない……?」
シオン「……完全に“未対応スキル”に遭遇してオーバーフローしてる」
──そして次の瞬間。
ユニットの頭上に、でかでかと表示された文字列があった。
【しばらくお待ちください】
「それただのエラー画面じゃねぇか!!!」
ジルドとリリィが叫ぶなか、カグラは口にパンを放り込みながらつぶやいた。
「やっぱ、焼きそばパンは最強なんじゃね?」
──世界律が止まりかけても、
──テンプレが暴れても、
──焼きそばパンは、うまい。
──しばらくして。
空間のヒビは止まった。
デバッグの輝きも消えた。
【整合性調整ユニット:停止】
【原因:スキル“???”による非対応バグ干渉】
【結論:様子見】
「おい、“様子見”ってなんだよ!?そのまま帰んのかよ!?」
カグラがパンの袋で顔を仰ぎながらツッコむ。
調整ユニットは、最後にこう言い残して去っていった。
「……テンプレも、バグも、想定外すぎる……また後で来る……」
そして、ふっと姿を消す。
空間の歪みも少しずつ元に戻っていく。
「……勝ったの?これ」
「わからん……だがテンプレが……世界に“許容”された気がする」
ジルドは意味深に頷いた。胸を張って。
「ふふ、私たちの魅力、世界がわかってくれたのね……!」
リリィも誇らしげにツインテを揺らす。
「いや、単に“処理するの面倒だったから後回し”にされた気がするけどな……」
シオンの小声は届かない。
セリスティアがにこっと笑って、カグラの隣に腰を下ろす。
「……焼きそばパン、残ってる?」
「ラスト一個なら。二つに割る?」
「割る気あったんだ……!」
──というわけで。
世界がバグっても、テンプレが空気読まなくても、
焼きそばパンは平和で、おいしい。
そして──
「ま、そんなこんなで今回の騒ぎは収まった。次回は……」
カグラがふと空を見上げたとき。
──また別の“存在”が、そっと姿を現そうとしていた。
(※次回、新展開!)
お疲れ様でした!
いやー、テンプレって強いよね。物理的にも、存在的にも。
ジルドとリリィ、書いてて楽しかったです。完全にボケとツッコミ要員。
そしてそれすら調整しきれず、デバッグキャラが帰るという前代未聞の展開に。
世界観崩壊?
いいえ、“世界が空気を読んだ”とも言えるでしょう(たぶん)。
次回からは、ちょっぴり新展開に入ります。
また新しいキャラ(意味深な男)が登場しますので、お楽しみに!
それではまた、焼きそばパン片手に!




