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【全属性耐性ゼロ】だったのに、全ての攻撃が効かない最強バグスキルを手に入れました※タイトル詐欺です  作者: Y.K
第1幕

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12/300

その男、世界に意味を問う

お読みいただきありがとうございます!

今回は、魔王軍パン戦争編(?)の後、ちょっとだけ雰囲気の違う“意味深な出会い”のお話です。


ついに登場、謎の新キャラ・シオン=ヴァレア。

世界の外側にいるような男と、いつも通りパンを食べてるだけのカグラ。


テンション差がすごいけど、なんか妙に噛み合ってるような、そうでもないような──

不思議なバランスで進んでいきます。


パンは、いつも通り安定の存在感です。

──平和だ。


いや、正確に言うと、「パンが爆発してないから平和」くらいの意味だけど。


 


《せれす亭》は、いつもの空をのんびり飛んでいた。

目的も特になく、ただ風に流されている感じ。


 


「……ようやく静かになったな〜」


カグラは、屋台の縁に腰掛けながら、

片手に焼きそばパンを持って──もう片方で、それを食べていた。


 


「いやぁ、平和って……うめぇな」


 


焼きそばパンのソースが、ぽたっ、と空に落ちる。

下には何もないから、たぶん誰にも迷惑はかかってない……はず。


 


セリスティアが屋台のカウンター越しにカップを置いた。


「でも、なんか……気になるのよね」


 


「何が?」


「空間の“密度”が、少しずつ変わってきてる気がする。

……たとえば、ほんの少しだけ、光の反射が変わったり」


 


「ほえ〜。で、それパンに関係ある?」


「ない。多分」


「じゃ、俺の担当外だな(モグモグ)」


「何その役割分担」


 


ミルミが、謎にバネみたいな動きで飛び跳ねながら現れた。


「ねぇねぇ、あっちの空の端っこで、なんか落ちてるパンみたいなの見えたよ〜!」


 


「またかよ!? いや、それは確定パンなの!?」


「多分、パンっぽい“なにか”。もしくは、パンの概念が具現化した系!」


 


「やべぇな!? 情報が全部信じられねぇ!!」


 


セリスティアがふっと真顔になる。


「……けど、たしかに。“あそこ”だけ、妙に視線が滑る」


「視線が滑る!?」


「たとえば、そっちを見ると……何もないようで、“何かを忘れさせられる”感じがするの」


 


カグラがパンをかじったまま立ち上がる。


「忘れさせられる? いやでも俺、何も覚えてないけど?」


 


「……それはそれで問題なんだけど」


 


《せれす亭》が、ゆるやかにその方向へと旋回する。


 


そして──


“そこ”に到達した瞬間。


 


ミルミが、ピタッと止まった。


「……あ、いる」


 


「誰が?」


「人。ひとり。……ずーっとそこに座ってる。

でもね──さっきまで、絶対いなかったのに」


 


セリスティアが端末を覗き込む。


「反応、ゼロ。魔力も、気配も、ログすらも──何もない」


 


カグラがパン片手に屋台の外へ出て、ふらっと近づいていく。


風が止まったような静けさの中、そこに“男”がひとり、

静かに、まるで存在そのものを“隠すように”座っていた。


 


──黒いローブ。

──伏せた顔。

──片目を覆う印のような封印。


 


「……あれ、おっさん?」


カグラが声をかける。


「パン、食う?」




 


──その男は、ゆっくりと顔を上げて、言った。


 


「君は──“なぜそれを食べられる”?」


 


「出た、意味深!!!!!」


「……君は──“なぜそれを食べられる”?」


 


謎の男の問いに、カグラはふつうに返した。


「え? 朝ごはん抜いてたから?」


 


「…………」


 


沈黙。


静寂。


風すら吹かない。


 


男の雰囲気は、ただでさえ重いのに、空間まで無言で従っている。


 


セリスティアが、屋台の陰から小声で言う。


「カグラ……その人、たぶん普通じゃないわ」


 


「いや見りゃわかるけど!?

普通の人はパン見て“なぜそれを食べられる”とか聞かないって!!」


 


カグラが恐る恐るもう一口パンをかじると──


空気が、“バチッ”と揺れた。


 


「うおっ!?」


「……なるほど」


男はぽつりとつぶやいた。


 


「君は……“意味の外側”にいる」


 


「おい、ちょっと何言ってるかわからないぞ!?

パンに外側とか内側とかある!?!?」


 


男は立ち上がる。

長い黒髪が風に揺れ──その目は、まるで万象を見通すかのような、どこか壊れた静けさ。


 


「“食う”という行為が、ここまで世界に波紋を与えるなど──

君という存在は、やはり“意味”から逸脱している……」


 


「……いやマジで何言ってんの!? 焼きそばパンだよ!?」


 


そこにミルミがぴょこっと現れる。


「わー、哲学的な人だね〜! ねぇねぇ、名前は?“焼きそばパン信仰者第3号”とか?」


 


「違うだろ絶対!!!!」


 


男はようやく名乗った。


「……私は、“シオン”。ただそれだけだ。

もともと、何者だったかも……思い出せない」


 


セリスティアが慎重な口調で言う。


「記録に……いない。完全に“観測外”の人間……」


 


アロマだったら即ログを取ってるだろう。


でも今ここにアロマはいない。


だから、代わりにパンのかけらが風に舞った。


 


「君の隣にいて……世界が崩れたなら、

私の存在が“何か”だったと知れるかもしれない──」


 


シオンがそう言って、カグラの隣にすっと立つ。


 


「いやいやいやいやいや!!

何? 俺、なんか“試金石”みたいになってない!?!?」


 


ミルミはにこにこしながらカメラ(?)を構える。


「わーい!記念写真撮ろー!パン片手に友情の芽生え!」


 


「違うからな!?!? パンと意味の対話じゃないからな!!!」


 


──こうして。


カグラの隣に、世界の“外側”から来た謎の男──シオンが加わった。


──屋台の影。


セリスティアは、腕を組んだままじっと“シオン”を見つめていた。


 


「……間違いない。この人、“空間に存在してる”のに、

“世界の記録”に残ってない」


 


「え、そんなことある? 消しゴム機能付きの人なの?」


 


「もっと厄介よ。“最初から観測されてない”の。

つまり、“いなかったはずの人間”」


 


カグラは特に深刻な顔もせず、普通にパンをかじっている。


「で、そういう人に近づかれた場合、どうすればいいの?」


 


「……普通は避ける。絶対に関わらない。

けど──」


 


セリスティアは、ふと口元に笑みを浮かべる。


「──あなたには、通用しないかもね。“普通”って言葉」


 


「うん、通用しないね。だって今、

俺“焼きそばパンくわえながら意味の外側にいる”って言われたし」


 


シオンは、相変わらず淡々としたまま。


「君の言葉は、定義が曖昧だ。だが、曖昧だからこそ“届く”こともある」


 


「急に詩的なこと言い出した!? え、これ口説き文句なの!?」


 


「違う。たぶん」


 


「たぶん!?」


 


ミルミがシオンのまわりをぐるぐる回りながら言う。


「でも変だね〜! 普通さ、こういう“ヤバそうな人”って、

じわじわ距離詰めてきたりするけど──」


 


「この人、初手から横に並んでんの!」


 


「ほんとだー!!カグラの“右隣ポジ”とってるー!!」


 


カグラが口を尖らせる。


「おい、そこ俺の“なんとなく落ち着く位置”なんだけど」


 


「……パンの香りが、ちょうど心地よい場所だったから」


「その理由!?」


 


セリスティアが割って入る。


「で、あなたは──どうしてここに?」


 


シオンは少し考えるように目を閉じ、そしてゆっくりと答えた。


 


「……気づいたら、そこにいた。

ただ──“意味を探していた”記憶だけが、残っていた」


 


「ふつうそこ、“パンが食べたかった”とかじゃない?」


「……パンは結果だった。意味の手段」


「いや“パン=意味の手段”って新しい宗教かよ!!」


 


セリスティアは、ほんの少しだけ気を緩めたように笑った。


「この人、危険かもしれない。でも──

なんか、“あなたと似てる”のかもね」


 


「やめて! 変な方向で似てるって言わないで!!」


 


だが──


そのとき。


屋台の奥で、魔導端末が“ピッ”と小さく点滅した。


 


【ログ未検出の人物を追跡中】

【新たな観測不能領域、拡大中】


 


カグラはそれを見ながら、ソースをつけ直したパンをもう一口。


「……なぁ、シオン。お前、ほんとに何者なんだ?」


 


シオンは答えなかった。


ただ、風の中で──“意味を問うような沈黙”が、

ふわりと揺れた。


──《せれす亭》の周囲に、風が吹いた。


……はずだった。


けれど。


 


「……音、消えてない?」


セリスティアが、わずかに眉を寄せる。


 


「風が動いてるのに、木の葉も草も、なにも音を立ててない」


 


カグラもようやく気づいたらしく、パンを止めて周囲を見渡す。


 


「……あれ?」


「ん?」


「パンの袋、揺れてない」


 


その瞬間、周囲が“ぴたり”と静止したような感覚に陥る。


 


──いや、感覚じゃない。


 


風の流れ。魔力の粒。鳥の影。

全てが“スロー再生”になっていた。


 


「……ちょっと、また世界おかしくなってない!?」


 


ミルミが目を丸くして、ゆっくりと指差す。


「ねえ……あれって、前からあった?」


 


指の先──


空間の端に、ぼんやりと揺れる“黒い門”のようなものが浮かんでいた。


 


それは、風の流れすら拒絶するかのように、

存在そのものが“異物”のように見えた。


 


「……観測不能領域」


セリスティアが呟く。


「間違いない。“シオン”がこの場所に現れて以降、

この空間そのものが、少しずつ“ログ外”にずれてきてる」


 


カグラはソースを指につけたまま、突っ立ってる。


「いやだから、何が起きてんのこれ!?

俺、パン食べに来ただけなんだけど!?」


 


すると──


シオンがふらりとその“門”の方へ足を進めた。


 


「お、おい待て、勝手に突っ込むなって!お前はそういうキャラなのか!?」


 


「……この場所に“意味”があるなら。

私が見つけた“問い”が、君と重なった理由も──そこにあるはず」


 


「重なるなぁぁぁああああ!!!」


 


その瞬間──


門が、シオンの接近に反応したかのように、“ノイズ”とともに揺れた。


 


そして、周囲の空間が“ゆらいだ”。


 


まるで、誰かが世界のプログラムを一瞬だけ書き換えたかのような、そんな違和感。


 


「……なんか、またバグったかも」


 


セリスティアが隣で小さく呟く。


「この世界、壊れてない……?」


 


カグラはパン片手に、呆然と“門”とシオンの背中を見つめていた。



──空間が“ゆらいだ”。


 


まるで、誰かが世界のプログラムを一瞬だけ書き換えたかのような、そんな違和感。


 


「……なんか、またバグったかも」


 


「この世界、壊れてない……?」


セリスティアと顔を見合わせたまま、俺たちはしばらく固まっていた。


 


 


だが次の瞬間──


 


「カグラ=シノノメ! そこにいるのはわかっている!」


「出てこい! 魔王軍と接触した件について、王国の正式な取り調べだ!」


 


うわ、なんか物騒なの来たーーー!!


 


魔術院の正門前に、めっちゃ重装備の人たちがずらっと並んでる。


え、待って。なんでこっちに全員振り向いてんの?

てか、ここ空中だよね?屋台ごと、なんか着地してない?


 


ミルミがふよふよと浮かびながら小声で言う。


「パンの重さで、たぶん勝手に下降しちゃった☆」


「パンどんだけ重いの!?!?」


 


兵士たちは叫び続けている。


「──直ちに屋台から降りて、身柄を拘束されなさい!」


 


「えーっと……」


俺は手元の焼きそばパンを見つめた。


「……とりあえず、パンだけは食っとくか」


 


──もぐ。


 


その瞬間。


 


“ピシッ”と、空気が割れた。


 


「また!?!?」


 


観測不能領域だったはずの“門”が──


まるで、カグラの咀嚼に反応するかのように、じょわ〜っ……と溶けはじめた。


 


「え、なに? ソースの香りが効いたの!?」


「いや、どう考えても関係あるのおかしいだろ!!」(セリスティア)


 


シオンが、パンを見て呟いた。


「……この世界は、君を“定義できない”」


「それずっと言ってるけど、つまりどういうこと!?」


 


魔術院兵「っていうか屋台、なんか空間ごと元の場所に戻ってないか!?」


 


「戻ってるううううう!!」


 


周囲の歪みが、ゆっくりと──だが確実に“修復”されていく。


門は消え、空の色はいつもの“ちょっとバグった空”に戻る。


 


セリスティアの端末が反応した。


【スキル“???”:自動発動】【バグ構造の巻き戻し完了】


 


「スキル発動したの!?!?」


「いや、してたの!?!?」


「お前、パン食ってただけじゃん!!!」


 


 


──“記録されなかった世界”の一部が、またひとつ“なかったこと”になった。


 


けれど、その痕跡は、確かにここに残っている。


カグラのそばに立つ、ひとりの男──シオン。


 


「君の存在は、観測できない。意味も測れない。

……だが──美味しそうに食べるその姿は、“真実”に近い」


 


「え、俺パン食ってるだけで人生褒められてる!?」


──事件は、終わった。


いや、正確には“なかったことになった”。


例の“門”も、空間の歪みも、観測不能領域のログも──全部、綺麗さっぱり消え去った。


 


だけど。


この男だけは、残っている。


 


「……本当に、なにも覚えてないのか?」


カグラは、最後のひとかけらを口に入れながら訊いた。


 


「名前以外、全てが曖昧だ。

ただ……“意味”という言葉だけが、胸にこびりついている」


シオンはそう言って、空を見上げた。


 


「君を見ていると……わかるんだ。

“意味”が、定義されるものじゃないって」


 


「……いや、ほんとになに言ってんの?」


 


「それが、君のすごさだよ」


 


「いや褒められてんの!? パン食ってただけなんだけど!?」


 


セリスティアがその様子を見ながら、呆れたように、でもどこか安心した顔で言った。


 


「……結局、なんだかんだで“いつも通り”だったわね」


 


ミルミもパンを半分にちぎりながら笑う。


「うんうん! 世界がちょっと壊れて、ちょっと戻って、

ちょっとだけ仲間が増えた回だった〜!」


 


「お前の要約、なんか妙に的確だな!!」


 


そのとき。


シオンが、ふっと立ち上がる。


 


「私は、君のそばで少しだけ……歩いてみたいと思う。

“意味を探す”のではなく、“意味が変わっていく”様を、見てみたい」


 


「え、なに? それって“旅に同行します”って意味で合ってる?」


 


「……たぶん」


 


「“たぶん”ってやめろおおおおおおおおお!!!」


 


 


──こうして。


カグラの隣に、“意味を問う男”が加わった。


世界は変わり続ける。

バグりながら。ズレながら。

パンの匂いを漂わせながら。


 


でも──今は、それでいいのかもしれない。


 


 


──次回予告──

『次回 パンがないなら、空を食べればいいじゃない』


(※内容は未定です)


お疲れ様でした!

焼きそばパンは、今回も美味しくいただかれました(世界のバグを添えて)。


新キャラ・シオンは、記憶を失った謎の存在。

寡黙で意味深、でもパンの隣に立つとちょっとマヌケに見えてしまう──そんな彼が、今後どう絡んでくるかは作者にも未知です。


とりあえず、カグラの「パン=世界安定装置」説はさらに強まってます。


次回はまた、ちょっとだけ方向を変えて、“空”をめぐるエピソードへ……?


次回『パンがないなら、空を食べればいいじゃない』(仮)


お楽しみに!


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