前編 セリスティア、テンプレ魔法学園で講師をする
今回は実験的に前後半で分けてみます
ホワイトガーデンの朝は、焼きそばパンの香りで始まる──
……はずだった。
だがこの日は、どこか様子が違った。
「セリスティア様ああああああああああああ!!」
ミルミの声が空気を裂いた。
「た、大変よっ! 焼きそばパンの箱に──なんか、変な封筒がっ!」
「……うるさいわね、朝から騒がないで。カグラが爆睡してるんだから」
セリスティアは湯気の立つ紅茶を置いて、封筒を手に取った。
金の紋章。紫のリボン。やけに重厚な雰囲気。そして──
「この羽ペン、勝手に字が書かれてるわ……」
宛名にはこう書かれていた。
【親愛なるセリスティア・アルマ=レーヴェ様】
このたび、王国立テンプレ魔法学園より、臨時講師としてのご協力を仰ぎたく……
「……なにこれ?」
そこへ寝起きのカグラが、パン咥えながら登場。
「ふぁ〜……ん? 学園って……教師やるの? 先生になるの?」
「やりたくないわよ、そんなの! でも──」
セリスティアは封筒の最後に添えられた一文に目を留める。
※謝礼として“幻の焼きそばパン”を3個進呈予定
「…………ミルミ、準備しなさい」
「えっ!? 行くの!? ていうか私も!?」
「もちろん。非常勤の助手兼、教室騒がせ係として任命するわ」
「わぁーいっ! 騒ぐよー!!(使命感)」
「カグラはどうする?」
「……パンがもらえるなら行くわ」
こうして、焼きそばパンのためだけに、セリスティアは教壇へ向かうことになった。
向かう先は──
テンプレ魔法学園《グランフェルミナ魔導学院》。
そこで、彼女たちを待っていたのは──
金髪のお嬢様、生徒会の黒幕、中二病男子、そして……パンに魅せられた謎の校長だった。
ホバーカーが校門前に降り立つと、
カグラは焼きそばパン片手に、目の前の建物を見上げた。
「……塔、多くね? どこに向かって建ててんの? 宇宙?」
セリスティアは呆れ気味にため息をつきながら、案内人を探した。
そこへ、パッと現れたのは──
「おはようございます〜! 本日から講師をお願いする予定の、セリスティア先生ですね〜?」
登場したのは、ちょっと気だるげな猫耳フードの少女だった。
名札には「ヒュイ=ナベル|広報係」とある。
「えっと〜、今日の講義室はC塔三階の“実験用教室”でして〜……
まあ、たぶん誰か爆破してると思うんで、行く前に止めてくださいね〜」
「爆破前提!?」
そこに、ゴォン! と遠くで小規模な爆発音。
屋上から飛び降りてきたのは──
「ふっふっふ……今朝も物理法則を1つ裏切ってやったぜ!!」
ゴーグルをつけた、やたらテンションの高い錬金術少年。
名前は「ディア=スピンデル|研究科所属」。
「危なっ……ってか、着地するの上手すぎない?」
カグラが自然とツッコむ。
「問題ない! 着地の衝撃を、焼きそばパンの湯気で軽減している!」
「絶対ウソだろそれ……」
セリスティアはその横で冷静に呟いた。
「この学園……思った以上に、カオスね」
最後に現れたのは、ひときわ冷たいオーラを纏った男子生徒。
白髪、無表情。名札には「ノルド=レクス|生徒会(保安担当)」
「君たちが講師か。……ルールは守れ。以上」
「え、怖っ!? 喋るたびに気温下がってない!?」
ミルミはその横で、校舎の張り紙を見てはしゃいでいた。
「わーっ! 『今日の学食:パンマグマ定食(辛)』って書いてある〜!」
こうして始まった、“講師”としてのセリスティアの一日。
だがその裏で、校舎の地下に眠る「禁断のパン魔導書」が、うっすらと光り始めていた──
セリスティアは、指定されたC塔三階の教室に入るなり、無言で立ち尽くした。
「…………なにこの空間」
壁に貼られたスローガンは「パンは魔法だ!教育は具材だ!」。
黒板には「焼きそばパンの魔力曲線」と大きく書かれている。
「誰よ、こんな内容にしたの」
「私です〜」
後ろから猫耳フードのヒュイが手を上げる。
「パンって、なんか魂に近いじゃないですか? 焼けて膨らんで、ほら、進化……っぽい!」
「っぽいじゃないのよ!」
生徒たちはバラバラに座っていた。
机の上には魔導書ではなく、パンの空き袋が散らばっている。
「えーっと、みんな静かにー。今日の臨時講師はこの方です、拍手〜」
パチパチパチ(まばら)
「……セリスティア=アルマ=レーヴェよ。今日は“エネルギー変換魔法”について話す予定だったのだけど──」
「先生っ! パンでお願いします!」
「パンにしてください!」
「パンの魔力について知りたいです!!」
生徒の熱意(という名の思考停止)がすごかった。
(……このテンプレ魔法学園、思った以上にパンに汚染されてるわね)
──そして、そのとき事件は起こった。
「先生、実験で焼きそばパンを魔力注入してみてもいいですかー?」
ディア=スピンデルが聞く前に、
机の上のパンが膨れ上がり──爆発した。
「って爆発したー!!」
「成功! エネルギー変換率……112パーセント超え!」
「それ大事故レベルじゃない!?」
騒然とする教室。煙。炭。鼻に刺さるソース臭。
そのとき、地下の封印書庫で何かが反応した──
禁断の“パン魔導書”《グラタン・オブ・パンドラ》が、静かに目を覚ました。
一方カグラは──廊下の自販機で焼きそばパンを買っていた。
「騒がしいな……まあいいか、焼きそばパンうまい」
後半へ続く
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セレスティアの臨時講師どうなる!?




