ザイン視点 温泉マニアのアホの子リィン
「これは……塩化物泉だね!ほら、お湯に塩気が多いんだー!湯冷めしにくいのが特徴だよ!」
「この色は含鉄泉だね!貧血とかに良く効くよ!だから女の人にお勧めだね!もちろん、ザインも入れるよ!」
「単純泉……かな?あ、いや、これ二酸化炭素泉だぁ!わあ、この温度で珍しい!入ってると気泡が付いて楽しいし、マッサージ効果もあるよ!」
リィン、信じられないくらい温泉に詳しいし、滅茶苦茶好きらしい。魔物の地に入ってから、あっちにふらふら、こっちにふらふらしつつ、温泉を探しては入っている。
二日くらい見つからないと、やたら高い所を飛ぶようになって高所から周囲を見回したりもしてるし、本当にどれだけ好きなんだって言いたくなるレベル。
でも、入ってみるとその気持ちもよくわかる。単にお湯を沸かしたお風呂とはまた違って、泉質によって違った感じが楽しめるのもいい。
……僕もどうやら、リィンに毒されてきてるみたいだ。でもまあ、楽しみが増えるのは良いよね。
そして、何より!
お風呂は一緒に入れる!!!
つまり、リィンの裸が見られる!!!!!!
とはいっても、さすがにリィンも最初以降は学んだみたいで、僕のハンカチを体に巻くようになっちゃったけど。けど、なんか拘りがあるようで、お湯の中には入れようとしない。なので透明度の高い温泉の時は結構見られる。
温泉って良いものだなって、そういう時には本気で思う。
うん、宿屋がないから、正直結構溜まってるんだよね……旅を始めたばっかりの頃を思い出す。あの時は死にそうになったり、初めて生き物を殺したことがトラウマになったりで、性欲に向き合う余裕なんか良くも悪くもなかったけど、今は、まあ、うん。
しかも、だ。寝る前には、昏倒しない程度にリィンに魔力を渡している。つまり、その度にリィンとキスをしている。あれが結構来るものがある。
最初は僕の勘違いかと思ったけど、リィンも結構キス好きみたいなんだよね。恥ずかしそうにしてたり、ワクワクしてたり、その時の気分によって多少差はあるけど、何にしろ魔力を渡そうとしてもしばらく魔力が動かないときあるし。
さらに、唇を離したときのリィンの顔!名残惜しそうな、蕩けたような、そんな上目遣いの目で見られるんだから、本当にリィンを衝動的に全力で抱き締めないよう、毎回毎回地味に努力してる。ここに来てようやく、自制心が強くなってきたのかも。
で、今はアルカリ性単純泉?という温泉に入ってるところ。なんか肌がつるっとというか、ぬるっとというか、そんな感触になるのが特徴らしい。美肌の湯、だそうだ。
温泉には必ず魔物とか動物の姿もあるけど、ここでは絶対に争いが起きない。最初こそびっくりしたし怖かったけど、最近はさすがに僕も慣れた。
リィンは安定の寛ぎモード。なんか、僕に見られて恥ずかしいって気持ちはあるらしいんだけど、いざ温泉に入るとそっちに気を取られて無防備も良い所なんだよね。
「ん~……匂いが付く心配もないし、これはこれでさいこー……」
そんなことを言いながら、仰向けになって浮かんでいる。そんな体勢になると、お湯から胸だけ出ちゃってすごく目立つんだけど……。
でも、気にしてないので僕もありがたく見させてもらう。やっぱり膨らみ目立たないけど、しっかりあるんだね。ていうかお腹も胸と同じくらいお湯から出てるな。
こう、下手すると子供っぽい体型なのにお尻は張ってて胸もちょっと膨らんでてっていう、すごく絶妙なバランスの身体だよね。大人になりかけっていうか、ギリギリ子供っていうか、ちょうどそんな感じ。全体のスタイルとしては結構いいと思うけど。
「あはは、お肌すべすべー。そうそう、アルカリ泉はこれがいいよねー」
言いながら、水中で羽ばたいて仰向けのままくるくる泳ぎ……泳ぎかあれ?まあとにかく動き出す。仰向けのまま動く姿は、夏の終わりのセミを思い出すんだけど。でもリィンだから全然許せる。何ならぶつかって来てほしい。セミはやめろ。
「熱ぅ、ちょっと休憩ー。あ、まだ上がんないからね?もうちょっと入ってる」
「好きなだけ入ってて大丈夫だよ」
リィンはセミ泳ぎをやめて、温泉の縁に上半身だけ出した。向こう向いちゃってるけど、その分うつ伏せになってこっちにお尻が突き出されてるので何も問題はない。むしろしばらくそのままでいてほしい。
「ふんふふんふふーん。温泉だー、温泉だー。魔物と一緒に温泉だー。動物達もー入ってるー。妖精私とゴブリンだー。人間ザインの一人だけー。ゆーあーじゃすと、おんりーわん」
なんかまた、上機嫌に変な歌を歌いだした。リズムに合わせて足もパタパタして、お尻もゆらゆら揺れてる。実に良い。そして体の一部にとても悪い。
「あ~、温泉から温泉への旅、すごく良いよねぇ~。私ここに住みたい」
「平和になったら、考えてもいいと思うよ」
「あははー。そしたら色んな温泉、毎日楽しめるね!頑張らないとね!」
割と本気トーンの声だ。そこまで温泉好きなんだ。知ってたけど。
とぷん、とリィンが肩まで浸かる。これは、そろそろ出るサインだな。
「ふーぃ、あったまったー!そろそろ出ようかな!」
「じゃ、僕も上がるよ」
上がる前に、ブラックベアとかのやばそうな相手を見て、心と体をしっかり落ち着ける。その上でササッとお湯から出て、あまりリィンを見つめないように気を付けつつ、自分の体を拭く。
服を着たら、あとはもう気にしなくて大丈夫。リィンの方を見ると、いつもの貫頭衣とズボンにしてるおかげでもう着終わってたらしい。ガリーナにもらった服は、温泉によってはボロボロになっちゃいそうだから着られないんだとか。
「気持ちよかったねー!じゃあザイン、またがんばろっか!」
「そうだね、頑張って進もう」
そうして、僕達は再び歩き出す。目的地が魔王の居場所なのか、次の温泉なのかは多少の議論の余地があるけど。
で、五分くらいすると、リィンは『またやってしまった』って顔で真っ赤になるのが、もう本当に可愛い。温泉好きすぎて僕の視線とか忘れちゃうんだよね。
基本的には、良い悪いは別としていっつも何か考えてるみたいなのに、温泉に入ってる時だけは信じられないぐらいのアホの子と化しているみたいだ。
でもここに関しては、もう学習とか全然しないでいいから、ぜひそのままでいてほしい。




