最後の四天王と戦おう!
人里を離れて、はや二週間。温泉から温泉への旅は順調。魔王の居場所へは……どうなんだろう?
最近はザインも温泉にハマってくれてるようで何より。だんだん種類も覚えてきてるみたいだしね。まあ、それは毎回私が解説してるからなんだけど。
ただ、毎回きっちり私の裸を眺めるのはちょっとやめてほしい……いや、わかってるんだけどね。毎回私が気にせず温泉楽しんじゃってるのが悪いんだっていうのは……。でも、あとで思い出してめっちゃ恥ずかしくなるんだよ、ほんとに。
ともあれ、旅は順調。温泉のおかげで色々快適でもあるし。このまま魔王の居場所まで着いて、さっさと倒して終わりにできないかなー。
などと思っていたところで、私達の前の空間が歪みだした。私もザインも即座に戦闘態勢を取り、何が出てくるかと待ち構えていると、歪みが急速に元に戻る。
そして、歪みが完全に消えると、そこには扇子を持った痴女が立っていた。
「……痴女だね」
「うん、見なかったことにして行こうか」
「ちょっ、失礼な奴等ね!?私は魔王四天王の……ちょっと、聞きなさいよ!?」
私は痴女に用事はないし、ザインも年齢が上っぽいから興味ないのか、ほぼ完スルー。溜まってそうではあるんだけど、よっぽど好みじゃないんだな。
「あ、温泉なら南南東にあったよ。寒そうな格好だし、温まってきたら?」
「あんたら、このままぶち殺していいかしら?」
「へぇ?私と戦う気?」
「う……そ、それはちょっと……」
ほんとに何なんだ。何しに来た痴女。帰れ。
「リィン、からかうのはその辺にしてあげようよ。で、何なんですか?戦うつもりですか?」
こんなのの相手してあげるなんて、ザインは優しいなあ。もうさっさと首刎ねて終わりたいよ私は。
「そ、そうよ!私は最後の四天王、サキュバスのアデラ!あんた達を魔王様のところへ行かせるわけにはいかないわ!」
あー、四天王の最後の一人か。そういえばいたねえ、そんなの。正直、どうでもいい存在だったから忘れてたよ。
でも、ザインは多少なりとも思うところがあったみたいで、真面目な顔で話しかけた。
「……ギィエンさんとは、共闘することもできました。戦わないって道はないんですか?」
「あ~、あいつは……まあ、ねえ……あー、あのフィーグの馬鹿を止めてくれたのってあんたらなの?じゃあ、そこはお礼言うけど……でも!魔族と人間が、相容れることはないわ!」
「温泉では仲良くやってるけど?」
「あんたらどんだけこの地に馴染んでんのよ!?普通の人間は温泉の面子見て逃げ出すわよ!そこの妖精が異常なのは知ってたけど、勇者の方まで異常だったわけ!?」
こいつ、割と突っ込みキャラなんだなあ。きっと四天王の中でもボケと突っ込み両方できる便利な人だったんだろうな。
「はぁ……あんたらと話してると疲れるわ」
「温泉は南南東だよ?」
「温泉に追いやろうとするんじゃないわよ!あんた私を何だと思ってるわけ!?」
「痴女」
「張り倒すわよ!?」
本当にもうきーきーと、うるさい痴女だね。正直、他の四天王と違ってこいつは全く強そうにも見えないし、やばそうな雰囲気もない。
ま、それ言っちゃうと最たるものはウォルスって奴だったけど、あれはだいぶ勢い付いた状態で始まったしな。凝った出現モーションまで使ってこれは、逆になかなかの逸材。
「じゃあ何?戦えば満足?ちゃちゃっとやっていいの?」
「うっ……ま、まあ、今の状態が続くよりはマシかもね……」
「だったら、さっさと倒しちゃおう!ザイン、ちょっと魔力貰うよ!」
「え、何……んむっ!?」
私はザインの唇を奪い、魔力を強奪する。
ふっふー、最近知ったんだけど、奪い取りたいって考えてると強引に取れるんだよね。もちろん、相手が心のどこかでそれを許容してくれないと無理なんだろうけど。
唇を離すと、ザインは少し惚けた表情でその場にへたり込んだ。よぉし、この間にこいつを――。
「ぐっ……リィンにばっかり任せられないよ!ここは僕が!」
「んむあ!?」
いきなり体を掴まれ、強引に唇を重ねられた。あ、しかもやばい、さっきので奪い方覚えられたっぽい!ま、魔力ががんがん抜けるぅ……!
「あふぁ……」
今度は私が、その場にへたり込む。ああ、頭の芯までぼーっとするぅ……。
「アデラ、さん。正直、あまり戦いたくはないです。でも、貴方が戦うと言うなら――」
「ぐぅぅ……溜まってるザインに、そんな痴女と戦わせられるかぁー!」
「ちょお!?ん、ぐっ!?」
取られた分の二割増しで奪い返す!これでもう動けまい!
さすがに、色々溜まってそうなザインじゃあサキュバス相手には事故起きそうだし、大人しく見ててもらった方が――。
「負け……るかぁ!」
「いや私敵じゃっ……ん、んっ!?んむぅぅ!!??」
し、舌にぷにって!?こ、この男、舌入れてきたぁ!?やぁぁぁディープキスとか待って待って!!心の準備がぁぁぁ!!
ああぁぁやばい、あ、あたまくらくらに……。
と、放置プレイだったアデラとやらが、額に青筋浮かべてこっちを見てるのが見えた。
「サキュバスの前で盛るとか、随分余裕ねあんたらっ……!だったら、死ぬまで盛ってるがいいわ!!テンプテーション!!」
あっ……や、やばい!ただの面白痴女だと思ってたけど、これ本気でやばっ……!
頭がぼーっとなる。下腹部が強くうずく。ザインを見るだけでうずきが強まる。頭の芯が蕩けそうになる。
「リ……リィ、ン……!」
あ、ザインが名前呼んでくれたぁ……頭から下腹部まで、一気に痺れが走る。お腹の奥から、何かが溢れてる感じがする。
ザインのこえがする、ザインのにおいがする、ザインがみてる。ああ、ああ、もっと、もっとザインをいっぱいかんじたい――。
そう思ったのを最後に、私の意識はピンク一色に染め上げられ、何も考えられなくなった。




