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今度こそ洞窟内を調べよう!

 町に着いて二日目。ようやく問題の洞窟探検の日。今日は服着て寝られたから、ザインも私も元気いっぱい。

 朝ご飯もしっかり食べて、いよいよ洞窟へ向かう。途中で衛兵さんに話を聞いたけど、あれからアンデッドはあまり出てないみたい。散発的に出てくるけど、一匹二匹だから対処はできてるとのこと。

 ガリーナとは現地で落ち合い、全員で入口に立つ。

「さすがに臭いはだいぶ減ったね。これなら行けそうだ」

「あたしが魔力尽きかけるまでやったんだから、当然ね。ただ、そこの妖精が同等の活躍してたのが気になるけど」

「ちょっとした節約術使ってただけだよ!さすがに純粋な魔力量は敵わないと思う!」

 いや、わかんないけどね?魔力大量に使うとすんごくだるいから、本当の意味で尽きるまで使ったことはないし……でもまあ、そういうことにしておこう!

 いよいよ、私達は洞窟内を進み出す。割とどこにでもある洞窟のように見えるけど、音の響き具合から考えると内部はだいぶ広そう。

「あ、昨日のホーンラビット」

「……美味しいらしいわね?」

「でも毒で死んでるから、やめた方が良いと思うよ!血抜きもしてないから、確実にまずくなってるしね!」

 この子、ホーンラビット食べたことないのか。普段何食って生きてるんだろう?

 それから、私達はなぜ血抜きをしないと肉がまずくなるのか、どう食べるのがいいのかなどを話しながら洞窟内を進んだ。

 何となく予想してたけど、ガリーナは良い所のお嬢様っぽい。だから庶民ならみんな知ってるようなことでも、びっくりするほど知らない時がある。

 アンデッドの姿はほとんどない。でもたまにはあるんだけど、ザインもガリーナも単体相手じゃ負ける要素が無い。

「せいやっ!っと、今のはガリーナの方が早かったね」

「ふふん、当たり前よ!でも、ザインは無詠唱が出来るのが納得いかないわ!どうやるのか教えなさいよ!」

 魔法に関してはとんでもなくプライドが高い。正しくプライドが高い。だから自分を高められると思えば、教えを乞うのも厭わない。教えを乞う立場にしては偉そうだけどね。

「――つまり、完全に頭の中で思い浮かべられるなら、詠唱は無くてもいいんだって」

「やっぱり……そうよ、そうよね!馬鹿共は絶対詠唱しなきゃダメだとか言うけど、なんで出来る奴が出来ない奴の言う事聞かなきゃいけないのって話よね!ほんと、ザインとリィンと話せて良かったわ!」

 どうやら、自分が色々出来るだけに、周囲に不満を溜め込むタイプだったらしい。新しい魔法理論を聞いて、ものすごく良い笑顔を浮かべてる。

 んで、そこで一人落ち込んでいる空気がゼルって奴。こいつほんとに何もしねえな!

「嘘だろ……だって、情報にも『魔力を詠唱に乗せて』ってあるんだぞ……」

「いきなり上級者向けの情報出しても、みんな挫折しちゃうからね!そもそも口に出す必要性ってないでしょ!?」

「あれを見て、そこまで曲解できるのはお前だけだぁ!でもそれが正しいんだよな!?つまり曲解じゃなくて俺が間違ってたんだな畜生め!」

 うーん、まあ同情はするけど、なんでまず全てを疑わないのか謎。上から見せられた情報なんて、どんだけ歪んでるかわかりっこないのにね。

 非常に緊張感のない状態で進んでた私達だけど、それが良くなかったのか。でも、緊張してても無理だったとは思うけど。

 ゴゴゴゴっと、妙な地鳴りが聞こえたと思った瞬間。突然、私達の足元が崩れ去り、ザインとガリーナが奈落の底へと落ちて行った。

「うわぁー!?」

「きゃあー!」

「ザイン!ガリーナ!」

「お嬢!」

 私達は即座に追いかける。けど、出だしが遅れたせいで追いつけない。

「くそぉ!こんなとこでお嬢を失ってたまるか!くそっ、くそぉ!」

 ゼルは下に向かって飛びながら、とにかく悪態を吐くばかり。でも、やっぱり自分の勇者って大切だよね。

 ザインはガリーナを抱き寄せ、自分の上に置いている。この男は……ガリーナを下にすれば、自分は助かるかもしれないのにね。何を考えてるんだ。何も考えてないのかな。

 でも、そういうところがほっとけないんだよね。だから、二人は私が助ける!

「ザイン!両手両足開いて!少しでも風を受けるように!」

「風……そうか!ウィンドブロウ!ウィンドブロウ!」

 お、ザインも自分で何とかしようと頑張ってくれてる。吹き上げる風のおかげで、落下速度が少し落ちた。その隙に、私とゼルは二人の下に回り込む。

「ゼル、ガリーナを助けたいんだよね!?なら、死んでもいいくらいの覚悟はある!?」

「そ、それぐらい当然だ!お嬢のためなら……!」

「じゃ、ダメ」

「えっ!?」

「自分のせいで身近な人が死ぬなんて、最悪でしょ?一生ものの心の傷になるよ?だから、死なない覚悟でいてね?」

「お……おう」

「ま、ぶっちゃけどっちでもいいんだけど!超級筋力、飛翔力強化!さあ、持ち上げろぉー!」

 超級魔法を私とゼルに掛け、ザインの背中を思い切り押し返す。本当の意味で持ち上げることはできなかったけど、滞空させることはできた。

「ザインっ……今、シャベル……!」

「ありがとう、リィン!ゼル!」

 ガツンと、近くの岩壁にシャベルを打ち込み、何とか刺し込むことに成功する。シャベル強化しててよかった……じゃないとさすがに無理だったかも。

 と、安心する間もなく、ザインとガリーナの表情が曇った。

「ぐっ!?こ、これ……やばい、かもっ……!」

「う、ぐ……うえぇぇ……」

 やばいやばい!ガリーナ吐きそう!ザインが汚れる!

 じゃなくて!この臭い、毒ガスか!?だいぶ落ちてきたし、ここまでは換気しきれてなかったんだ!

 下は……5メートルくらい下がもう岩場だ!本当に危なかった!けど、やばいやばい!アンデッドだらけで、何匹かこっち気付いた!

「リィ……ン……!」

 うわあぁぁぁ!どうしよどうしよ!?敵は今は放置!なら優先すべきは……ザイン達の空気!いやでも!ここの換気なんてとてもじゃないけど無理だぁ!!

「くっそぉ!昨日からずっと、俺は何もできてねえよ!どうすればいいんだ!?どうすりゃ助けられるんだ!?畜生!空気の玉でも持ってこられりゃよかったのに!!」

 空気の玉……?そ、それだぁ!!!

「ゼル、ナイスサポート!!」

「え?」

「ザイン!ガリーナ!息止めて、あと10秒耐えて!」

 私は魔力を集中し、遥か上部で大きめの氷の玉を生成する。それを完全中空にして、外が見えるくらい薄くして、二人の上まで持ってくる。

 仕上げに下側に穴を空け、頭からスポッと被せ、軽く首周りを凍らせて出来上がり!リィン特製、氷の宇宙服(頭だけ)の完成!

「うっ、げほっ!げほっ!こ、これは……?」

「はっ、はっ、はっ……はぁ……氷の、玉?」

「応急処置でしかないけど!今第二陣用意中!」

「ちょ、待って!?この魔法何!?一体どういう……!?」

「お嬢!喋るな!!」

 私が声を出す前に、ゼルがそれを止めてくれた。

「ど、どうしたの!?」

「あの、な!生き物が空気を吸うと、酸素ってのを消費する!で、無くなったら死ぬ!」

「えっ!?」

「今あるまともな空気は、その玉の中だけだ!騒いだりしたら、酸素の減りが早くなる!だからお嬢、まずは呼吸だけ整えて、絶対に騒ぐな!」

 なぁんだ、ちゃんと勉強はしたんだね。やろうと思えばサポート妖精の真似事できんじゃん。

 下の様子はちょっとよろしくない。どうも一部のゾンビとスケルトンの動きが速いし、何か投げようとしてる節もある。これは急がないとやばそうだね。

 出来る限りの全力で、私は二つ目の宇宙服を作り、二人の上で待機させる。

「じゃあ解くよ!息を止めて目を瞑って、せぇの!」

 しゅん、しゅぽんと、交換作業は一瞬で終わった。後はこの場を、何とか切り抜けるだけだね。

「りがとリィン。れ、どする」

 ザイン、地味に音数少なくして酸素節約してくれてるな。そのまま津軽弁を極めるがいい。

「結構やばそうなのがいるから、殲滅するしかないと思う!ザイン、ガリーナ!準備が出来たら、戦いになるよ!」

「ん」

「わ、わかったわ」

 さぁて、どうしたもんかな。でも、きっと大丈夫。ザインもガリーナも、ここまで戦ってきた勇者なんだから。

 まだまだやばい状況には変わりないけど、希望はある。私は羽を振るわせ、気合を入れ直すのだった。

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